エンド|根尖3mmにある副根管(側枝・根尖分岐)は、実際にどれくらいの太さ・長さで、どんな形をしているのか。抜去歯の根尖をマイクロCTで撮影し、1本ずつ中心線に沿って計測した形態研究(Xu 2016・Journal of Endodontics)
根管の本管から歯根の外へ抜ける副根管(accessory canal=側枝と根尖分岐の総称)。洗浄も充填も難しく、再感染の原因の1つと考えられてきましたが、本物の太さや形を測ったデータは多くありませんでした。著者らは抜去した永久歯204本の根尖3mmをマイクロCTで撮り、本管から歯根の外まで通じていた副根管178本(93歯)を、中心線に沿って1本ずつ計測しました。結果、直径の中央値は67.0µmで、48%は60µmより細く、150µmを超えるのは8%だけ。大臼歯の副根管がいちばん細く(中央値53.3µm)、断面は円ではなく楕円(長い径と短い径の比は中央値で約4:3)、道すじは直線より約6%長く曲がっていました。著者らは、この形の複雑さが副根管の清掃を難しくしうると述べています。
①根尖の副根管、どれくらいの太さを想像していますか
根管充填後のエックス線写真に、シーラーが細い線になって側方へ抜けている——いわゆる「側枝が写った」写真。あの枝は、実際にはどれくらいの太さなのでしょうか。
本管から枝分かれして歯根の外へ抜ける副根管(accessory canal)は、側枝(lateral canal)と根尖分岐(apical ramification)をまとめた呼び名です。洗浄も充填も難しく、根管の再感染や治療がうまくいかない原因の1つと考えられてきました。
結論を先に言います。根尖3mmの副根管178本を測ったこの研究では、直径の中央値は67.0µm。半数近く(48%)は60µmより細く、断面は楕円、道すじは曲がっていました。
②「多い」ことは知られていても、「形」はわかっていなかった
副根管そのものは珍しくありません。著者らが引用する報告では、側枝や根尖分岐がある歯は全体の約75%、大臼歯と上顎小臼歯では80%以上。上顎中切歯では60%以上に副根管があり、その80%以上がリーマー10番以下の太さだったという報告もあります。
ところが、断面の形・直径・長さ・走り方を測ったデータはほとんどありませんでした。
③今回の一手:マイクロCTで、副根管を1本ずつ「中心線」で測る
・根尖3mmを切り出し、まず解像度30µmでマイクロCT撮影
・本管から歯根の外まで通じている(穿通した)副根管がある93本(前歯30・小臼歯32・大臼歯31)を選び、解像度2.5µmで撮り直す
・副根管を立体モデルにし、中心線を自動で引いて、その線に沿って計測
・測ったのは直径(同じ断面積の円に換算)・長さ(中心線に沿った道のり)・断面の楕円度・曲がり(道のり÷両端の直線距離。まっすぐなら1)
中心線を使う方法は、血管の枝分かれの長さや太さを正確に測る研究で使われていた手法です。曲がりくねった細い管でも、道のりに沿って太さを追えるのが強みです。
なお、途中で途切れていた副根管は、多くがとても細く測れないため解析から外しています。つまり今回の数字は、本管から外まで通じていた副根管だけの値です。
④結果①:直径の中央値は67µm、半数近くが60µmより細い
178本の副根管の直径の中央値は67.0µm(16.7〜238.4µm)。48%が60µmより細く、44%が60〜150µm、150µmを超えるのは8%だけでした。1本の歯根に見つかった副根管の数は1〜7本とさまざまです。
長さの中央値は786.6µm(約0.79mm)。67%が500〜1500µm、25%が500µmより短く、8%が1500µmより長いという分布でした。
⑤結果②:大臼歯の副根管がいちばん細い
直径の中央値は前歯79.2µm・小臼歯72.5µm・大臼歯53.3µm。原著本文では、大臼歯は前歯より有意に細いとしています(P<.05)。
また原著本文では、断面の楕円度と曲がりに小臼歯と大臼歯の間で有意差があったとしています(曲がりの中央値は大臼歯1.10、小臼歯1.05)。
⑥結果③:断面は楕円、道すじは曲がっている
副根管の多くは、断面が円ではありません。楕円度の中央値は0.65で、著者らはこれを長い径と短い径の比がおよそ4:3の楕円と説明しています。長い径が短い径の2倍を超える、平たい副根管は10%でした。
曲がりの指標(道のり÷両端の直線距離)の中央値は1.06。つまり副根管の道のりは、両端を結ぶ直線より約6%長い——まっすぐではなく、うねりながら外へ抜けていました。44%は1.06を超える曲がり方です。
⑦なぜ「細い・楕円・曲がり」が清掃を難しくしうるのか
副根管の中の清掃について、著者らは既存の研究を引いてこう整理しています。器具や洗浄液を変えても、副根管が完全にきれいになることはまれで、化学的・機械的な拡大清掃では、壊死組織を入口付近から部分的に除けるだけ。エックス線で「詰まって」見える副根管も、実際には完全には封鎖されておらず、中に残った歯髄組織が炎症を起こして充填材と絡み合っていた、という組織学の報告もあります。
今回わかった楕円の断面や曲がりが強いほど、洗浄液による化学的な清掃が難しくなりうる、というのが著者らの見立てです。そのうえで、本物に近い副根管のモデルと、より徹底した消毒の方法を開発すべきだと結んでいます(今回の研究は形を測ったもので、清掃効果そのものは調べていません)。
一方で著者らは、太く、よく通じた副根管ほど細菌や細菌の産物を多く含み、側方の歯周炎を起こしやすくなりうるという見方も紹介しています。細い副根管だけでなく、太い副根管にも別の意味で注意が要る、ということです。
⑧明日の臨床へ
・大臼歯の副根管はとくに細い(中央値53.3µm)。
・エックス線で側枝が写っても、中まで詰まって清掃されているとは限らない(著者らが引用する組織学の報告)。
・洗浄法や充填法の論文で「人工の側枝にこれだけ入った」と読んだら、その側枝がファイルで開けた人工の穴だった可能性を思い出す。本物は細く、楕円で、曲がっている。
どの洗浄法・消毒法が本物の副根管に届くのかは、この研究からは答えが出ません。だからこそ、本管の清掃と封鎖をていねいに行うという基本の重みが、改めて見えてくる数字だと思います。
⑨ここだけ、冷静に補助線
今日のひとこと
根尖3mmの副根管178本を測ると、直径の中央値は67.0µm(16.7〜238.4µm)。48%が60µmより細く、150µmを超えるのは8%だけでした。大臼歯は中央値53.3µmで最も細く、断面は円ではなく楕円(長い径と短い径の比は中央値で約4:3)、道すじは直線より約6%長く曲がっていました。「細く・楕円で・曲がっている」——これが本物の副根管の姿で、ファイルで開けた人工の側枝とは違います。副根管の清掃・消毒を考えるときの物差しになる数字ですが、この研究は形を測ったもので、清掃や充填の効果を調べたものではありません。


