1問1答 論文 エンド

S字に曲がった根管、レシプロ1本で足りる?——樹脂ブロック75本で、プロテーパー4本を往復運動で使った群が根尖側の湾曲を最もよく保った(2014年)

1問1答 論文 エンド

エンド|往復運動(レシプロ)は1本法の専用ファイルとセットで考えていないか。S字状の模型根管で、ウェーブワン1本・プロテーパー連続回転・プロテーパー往復運動の3通りを比べた実験室の研究(Giuliani 2014・Journal of Endodontics)

S字状の根管は、形成するほど根管がまっすぐに引き伸ばされやすい難所です。著者らは、市販の透明樹脂ブロック(S字状の模型根管)75本を25本ずつ3群に分け、群1=ウェーブワン Primary 1本を往復運動で、群2=プロテーパー S1→S2→F1→F2 を連続回転で、群3=同じプロテーパー4本を往復運動で形成しました。形成前後の写真を重ねて比べた結果、根尖側の湾曲の半径を元の形に最も近く保ったのは群3で、群3と他の2群の間に統計学的な差がありました(群1と群2の間には統計学的な差は認められない)。歯冠側の湾曲には3群で統計学的な差は認められませんでした。削った量は、群2がどの高さでも群1・群3より有意に多く、根尖0mmの高さでは図から読み取ると群1 約0.18mm・群2 約0.26mm・群3 約0.12mm。ただし高さと左右を調整した全体の量には3群で差がありませんでした。

論文
Shaping Ability of WaveOne Primary Reciprocating Files and ProTaper System Used in Continuous and Reciprocating Motion
著者
Valentina Giuliani, Luca Di Nasso, Riccardo Pace, Gabriella Pagavino(フィレンツェ大学 歯内療法学講座・イタリア)
掲載
Journal of Endodontics 2014;40(9):1468-1471(図書館の原本は掲載前版 Article in Press から読んだ)。doi:10.1016/j.joen.2014.02.024
種類
樹脂ブロックの模型根管を使った実験室の研究(in vitro)。ISO 15・テーパー0.02・長さ16mm、根尖側20°(半径3.5mm)・歯冠側30°(半径5mm)のS字状模型根管75本を無作為に3群(各25本)に割り付け。群1=WaveOne Primary(専用モーター・往復運動・ペッキング)、群2=ProTaper Universal S1・S2・F1・F2(連続回転)、群3=同じ4本を往復運動(時計回り1回転の10分の4・反時計回り10分の2、500rpm)。形成前後の写真(実体顕微鏡10倍)を重ね、①根尖側・歯冠側の湾曲の半径の変化、②根尖0〜7mmの1mmごとの左右の削った量を計測。統計は一元配置分散分析とTukey-Kramer法、混合効果線形モデル
PMID
25146035

①S字の根管、レシプロ1本で足りる?

根管の途中で一度曲がり、根尖の近くで逆向きにもう一度曲がるS字状の根管。ファイルを進めるほど、根管がまっすぐに引き伸ばされていく感覚に不安を覚えた経験は、多くの先生にあると思います。

近年は、1本のファイルを往復運動(レシプロ)で使う「1本法」が広く使われるようになりました。では、S字のような難しい湾曲でも、専用ファイル1本で元の形を保てるのでしょうか。

結論を先に言います。樹脂でできたS字の模型根管では、1本法専用のウェーブワン(WaveOne Primary)よりも、本来は連続回転で使うプロテーパー(ProTaper Universal)を4本の順番どおりに往復運動で使った群のほうが、根尖側の湾曲を元の形に近く保ちました。ただし本物の歯ではなく樹脂ブロックでの実験です。

②なぜ「往復運動」は1本法とセットだったのか

ニッケルチタン(NiTi)ファイルの登場で、湾曲根管でも元の形を保ちやすくなりました。一方で、強い湾曲や細い根管では、曲げやねじれの負担によるファイル破折が心配になります。

その対策として提案されたのが往復運動です。切削方向に回したあと逆方向に戻すことで、ファイルが食い込んだまま回り続けることを避け、ねじれの負担を減らします。ウェーブワンやレシプロックは、この往復運動で1本だけ使うように作られた専用ファイルです。

著者らが注目したのは、往復運動がこれまで1本法の専用ファイルとの組み合わせでしか試されていなかった点です。ふだん4本を順番に使うプロテーパーを往復運動で動かしたら、形成の仕上がりはどうなるのか——を確かめた研究です。

③今回の一手:S字の樹脂ブロック75本を3通りで形成

対象=市販の練習用の透明樹脂ブロック(S字状の模型根管)75本。根管はISO 15・テーパー0.02、長さ16mm。根尖側に20°(半径3.5mm)、歯冠側に30°(半径5mm)の2つの湾曲があります。穿通は#10 Kファイルで確認し、無作為に25本ずつ3群に分けました。
・群1=ウェーブワン Primary 1本を、専用モーターの往復運動でペッキングしながら作業長まで
・群2=プロテーパー S1→S2→F1→F2 の4本を連続回転で
・群3=同じプロテーパー4本を往復運動で(別のモーターで、時計回りに1回転の10分の4・反時計回りに10分の2、500rpm)
潤滑剤は全群でGlydeを使用。

評価は、形成の前後に同じ位置で撮った写真(実体顕微鏡・10倍)を重ね合わせて行いました。見たのは2つです。①根尖側と歯冠側の湾曲の半径が、形成前後でどれだけ変わったか(湾曲がまっすぐに近づくほど半径は大きくなる)。②根尖から0〜7mmまで1mmごとの高さで、左右それぞれ何mm樹脂を削ったか。

④結果①:根尖側の湾曲を保ったのは「往復運動のプロテーパー」

群3(プロテーパー・往復運動)は、根尖側の湾曲の半径が元の模型根管に最も近いままでした。群3と他の2群との間には統計学的な差がありました(p<0.05)。

原著Table 1の「根尖側の湾曲の平均の差(信頼区間)」は次のとおりです。
・群1 vs 群2:100.69(−165.85〜367.24)=信頼区間が0をまたぐ=根尖側の湾曲では、ウェーブワンと連続回転のプロテーパーに統計学的な差は認められない(Table 1の信頼区間から)
・群1 vs 群3:460.45(158.41〜762.48)
・群2 vs 群3:359.756(48.74〜670.76)
なお、この表の数値には単位の記載がありません。差の向きと、信頼区間が0をまたぐかどうかで読むのが安全です。

一方で、歯冠側の湾曲には3群で統計学的な差は認められませんでした(p>0.05)。差が出たのは、より半径の小さい(きつい)根尖側の湾曲でした。

⑤結果②:連続回転は、どの高さでも最も多く削った

0 0.1 0.2 0.3 0.4 削った樹脂の量(mm・図から読み取り) 0.18 0.16 0.31 0.26 0.23 0.34 0.12 0.13 0.30 群1 ウェーブワン 群2 プロテーパー回転 群3 プロテーパー往復 根尖から0mm 根尖から1mm 根尖から7mm 原著Fig. 2の8高さから0・1・7mmを抜粋した、棒から読み取った概数(原著に数表はない)。濃い棒ほど根尖寄り。群2はどの高さでも群1・群3より有意に多く削った。4mmでは群3が群1を上回る(全高さは本文)
根尖からの高さ別に見た、削った樹脂の量。原著Fig. 2の8つの高さのうち、根尖側の差がはっきり出た0・1mmと、歯冠側の端の7mmを抜粋(棒が多すぎて読めなくなるため。全8高さの値は下の表)。原著Fig. 2の棒から読み取った概数で、原著に数表はありません

高さ別に見ると、群2(プロテーパー・連続回転)は根尖0mmから7mmまでのすべての高さで、群1・群3より有意に多く樹脂を削っていました。根尖0mmの高さでは、図から読み取ると群1 約0.18mm・群2 約0.26mm・群3 約0.12mmです。

全8高さの読み取り値(群1 ウェーブワン/群2 プロテーパー回転/群3 プロテーパー往復、mm)
・0mm:0.18/0.26/0.12
・1mm:0.16/0.23/0.13
・2mm:0.24/0.28/0.21
・3mm:0.23/0.29/0.21
・4mm:0.21/0.26/0.23(この高さだけ群3が群1を上回る)
・5mm:0.27/0.31/0.28
・6mm:0.31/0.34/0.30
・7mm:0.31/0.34/0.30

根尖寄りの0・2・3mmの高さでは、群1(ウェーブワン)も群3より多く削っていました(4mmの高さだけは例外)。根尖側で群3の削り方が控えめだったことが、湾曲を保てた結果と重なります。

0 0.1 0.2 0.3 削った樹脂の量・全体の平均(mm・図から読み取り) 0.24 0.29 0.22 群1 ウェーブワン 群2 プロテーパー回転 群3 プロテーパー往復 原著Fig. 1の棒から読み取った概数。高さと左右を調整すると、3群の合計量に統計学的な差はなかった
削った樹脂の量の全体平均。原著Fig. 1の棒から読み取った概数

ただし、高さと左右を調整して全体の量で比べると、3群に統計学的な差はありませんでした(図から読み取ると約0.24・0.29・0.22mm)。

根管の中心を保てたか(左右の削り方の偏り)も調べられています。群1と群2は、各高さで左右の削った量に統計学的な差がありました。群3も多くの高さで統計学的な差がありましたが、根尖0mmと4mmの高さでは統計学的な左右差はありませんでした。

⑥なぜ往復運動のプロテーパーが良かったのか

著者らの説明はこうです。細いテーパーから太いテーパーへ段階的に広げながら、ファイルを根尖方向に押し込まずに作業長へ到達できたから。ただし、同じ4本を同じ順番で使った群2(連続回転)では差が出ておらず、順番だけでは説明しきれません。また考察では、往復運動は食い込んだファイルを逆回転ですぐ外すため、ねじれの負担を減らすとも述べています。

反対に、1本法のウェーブワンについて著者らは、事前の通り道づくり(グライドパス)がないと、湾曲根管をまっすぐにして作業長が短くなりやすいという既報を引用しています。今回の原著には、#10 Kファイルで穿通を確認したという記載はありますが、通り道づくりの記載はありません。著者らは、ウェーブワンにパスファイルを組み合わせた既報でも、今回の群3に近い結果だったと述べています。

⑦明日の臨床へ

・S字の模型根管で根尖側の湾曲を最もよく保ったのは、「4本の順番を保ったまま往復運動で動かす」組み合わせでした。同じ4本を同じ順番で連続回転させた群2では差が出ておらず、順番だけでは差が出なかった点がポイントです。
・1本法を使うなら、その前の通り道づくりを検討する。今回の原著には通り道づくりの記載がなく、既報(Berutti 2011)では、ウェーブワンが湾曲根管をまっすぐにして作業長を短くしやすいと報告されています。
・往復運動の角度はモーターと設定で変わる。今回の群3は時計回り10分の4・反時計回り10分の2という特定の設定です。同じ結果を期待するなら、使うモーターの設定を確かめる必要があります。
・連続回転のプロテーパーは、今回どの高さでも最も多く削った。削りすぎを避けたい細い根管では、覚えておいてよい結果です。

なお、プロテーパーは本来、連続回転で使うファイルです。モーター・設定・破折のリスクを含め、今回の実験条件がそのまま臨床に当てはまるとは限りません。

⑧ここだけ、冷静に補助線

これは透明樹脂ブロックの模型根管を使った実験室の研究で、本物の歯の象牙質の硬さや、根管の形の多様さは再現できていません(著者ら自身もそう述べ、抜去歯とCBCTでの検証を勧めています)。模型根管は1種類の形・太さだけで、形成にかかった時間やファイル破折は調べていません。また、湾曲の差を示したTable 1には単位の記載がなく、有意水準も方法では「P<.0001」、結果では「P<.05」と書かれています。要旨では「群3は歯冠側と根尖側の湾曲をよりよく保った」とありますが、本文の結果では歯冠側の湾曲に3群の差はなかったと書かれており、読み方に注意が要ります(本記事は本文の結果に従いました)。さらに、結果では全体の削った量に3群の差はなかったとしながら、結論では群2(連続回転)が最も多く削ったと書いており、ここも原著の中で食い違っています。著者らは利益相反はないと記載しています。それでも、「往復運動=1本法」という組み合わせの思い込みを外し、ファイルの順番と動かし方を分けて考えるきっかけをくれる研究です。

今日のひとこと

S字状の樹脂模型根管では、プロテーパー4本を往復運動で使った群が、根尖側の湾曲を元の形に最も近く保ちました。根尖側の湾曲では、ウェーブワン1本と連続回転のプロテーパーの間に有意差はありませんでした(削った量は連続回転が有意に多い)。連続回転のプロテーパーはどの高さでも最も多く削り、根尖0mmでは約0.26mm(往復運動のプロテーパーは約0.12mm・図から読み取り)。一方、歯冠側の湾曲と、全体で削った量には3群で統計学的な差は認められませんでした。持ち帰りは、「往復運動=1本法」と決めつけず、4本の順番を保ったまま往復運動で動かすという組み合わせがあり得ること。同じ順番でも連続回転(群2)では差が出ておらず、順番だけでは差が出なかった点も押さえておきたいところです。ただし樹脂ブロックでの実験で、本物の歯での成績やファイル破折は見ていません。

Giuliani V, Di Nasso L, Pace R, Pagavino G. Shaping ability of WaveOne Primary reciprocating files and ProTaper system used in continuous and reciprocating motion. J Endod. 2014;40(9):1468-71. doi:10.1016/j.joen.2014.02.024. PMID: 25146035
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。