エンド|往復運動(レシプロ)は1本法の専用ファイルとセットで考えていないか。S字状の模型根管で、ウェーブワン1本・プロテーパー連続回転・プロテーパー往復運動の3通りを比べた実験室の研究(Giuliani 2014・Journal of Endodontics)
S字状の根管は、形成するほど根管がまっすぐに引き伸ばされやすい難所です。著者らは、市販の透明樹脂ブロック(S字状の模型根管)75本を25本ずつ3群に分け、群1=ウェーブワン Primary 1本を往復運動で、群2=プロテーパー S1→S2→F1→F2 を連続回転で、群3=同じプロテーパー4本を往復運動で形成しました。形成前後の写真を重ねて比べた結果、根尖側の湾曲の半径を元の形に最も近く保ったのは群3で、群3と他の2群の間に統計学的な差がありました(群1と群2の間には統計学的な差は認められない)。歯冠側の湾曲には3群で統計学的な差は認められませんでした。削った量は、群2がどの高さでも群1・群3より有意に多く、根尖0mmの高さでは図から読み取ると群1 約0.18mm・群2 約0.26mm・群3 約0.12mm。ただし高さと左右を調整した全体の量には3群で差がありませんでした。
①S字の根管、レシプロ1本で足りる?
根管の途中で一度曲がり、根尖の近くで逆向きにもう一度曲がるS字状の根管。ファイルを進めるほど、根管がまっすぐに引き伸ばされていく感覚に不安を覚えた経験は、多くの先生にあると思います。
近年は、1本のファイルを往復運動(レシプロ)で使う「1本法」が広く使われるようになりました。では、S字のような難しい湾曲でも、専用ファイル1本で元の形を保てるのでしょうか。
結論を先に言います。樹脂でできたS字の模型根管では、1本法専用のウェーブワン(WaveOne Primary)よりも、本来は連続回転で使うプロテーパー(ProTaper Universal)を4本の順番どおりに往復運動で使った群のほうが、根尖側の湾曲を元の形に近く保ちました。ただし本物の歯ではなく樹脂ブロックでの実験です。
②なぜ「往復運動」は1本法とセットだったのか
ニッケルチタン(NiTi)ファイルの登場で、湾曲根管でも元の形を保ちやすくなりました。一方で、強い湾曲や細い根管では、曲げやねじれの負担によるファイル破折が心配になります。
その対策として提案されたのが往復運動です。切削方向に回したあと逆方向に戻すことで、ファイルが食い込んだまま回り続けることを避け、ねじれの負担を減らします。ウェーブワンやレシプロックは、この往復運動で1本だけ使うように作られた専用ファイルです。
③今回の一手:S字の樹脂ブロック75本を3通りで形成
・群1=ウェーブワン Primary 1本を、専用モーターの往復運動でペッキングしながら作業長まで
・群2=プロテーパー S1→S2→F1→F2 の4本を連続回転で
・群3=同じプロテーパー4本を往復運動で(別のモーターで、時計回りに1回転の10分の4・反時計回りに10分の2、500rpm)
潤滑剤は全群でGlydeを使用。
評価は、形成の前後に同じ位置で撮った写真(実体顕微鏡・10倍)を重ね合わせて行いました。見たのは2つです。①根尖側と歯冠側の湾曲の半径が、形成前後でどれだけ変わったか(湾曲がまっすぐに近づくほど半径は大きくなる)。②根尖から0〜7mmまで1mmごとの高さで、左右それぞれ何mm樹脂を削ったか。
④結果①:根尖側の湾曲を保ったのは「往復運動のプロテーパー」
群3(プロテーパー・往復運動)は、根尖側の湾曲の半径が元の模型根管に最も近いままでした。群3と他の2群との間には統計学的な差がありました(p<0.05)。
・群1 vs 群2:100.69(−165.85〜367.24)=信頼区間が0をまたぐ=根尖側の湾曲では、ウェーブワンと連続回転のプロテーパーに統計学的な差は認められない(Table 1の信頼区間から)
・群1 vs 群3:460.45(158.41〜762.48)
・群2 vs 群3:359.756(48.74〜670.76)
なお、この表の数値には単位の記載がありません。差の向きと、信頼区間が0をまたぐかどうかで読むのが安全です。
一方で、歯冠側の湾曲には3群で統計学的な差は認められませんでした(p>0.05)。差が出たのは、より半径の小さい(きつい)根尖側の湾曲でした。
⑤結果②:連続回転は、どの高さでも最も多く削った
高さ別に見ると、群2(プロテーパー・連続回転)は根尖0mmから7mmまでのすべての高さで、群1・群3より有意に多く樹脂を削っていました。根尖0mmの高さでは、図から読み取ると群1 約0.18mm・群2 約0.26mm・群3 約0.12mmです。
・0mm:0.18/0.26/0.12
・1mm:0.16/0.23/0.13
・2mm:0.24/0.28/0.21
・3mm:0.23/0.29/0.21
・4mm:0.21/0.26/0.23(この高さだけ群3が群1を上回る)
・5mm:0.27/0.31/0.28
・6mm:0.31/0.34/0.30
・7mm:0.31/0.34/0.30
根尖寄りの0・2・3mmの高さでは、群1(ウェーブワン)も群3より多く削っていました(4mmの高さだけは例外)。根尖側で群3の削り方が控えめだったことが、湾曲を保てた結果と重なります。
ただし、高さと左右を調整して全体の量で比べると、3群に統計学的な差はありませんでした(図から読み取ると約0.24・0.29・0.22mm)。
根管の中心を保てたか(左右の削り方の偏り)も調べられています。群1と群2は、各高さで左右の削った量に統計学的な差がありました。群3も多くの高さで統計学的な差がありましたが、根尖0mmと4mmの高さでは統計学的な左右差はありませんでした。
⑥なぜ往復運動のプロテーパーが良かったのか
著者らの説明はこうです。細いテーパーから太いテーパーへ段階的に広げながら、ファイルを根尖方向に押し込まずに作業長へ到達できたから。ただし、同じ4本を同じ順番で使った群2(連続回転)では差が出ておらず、順番だけでは説明しきれません。また考察では、往復運動は食い込んだファイルを逆回転ですぐ外すため、ねじれの負担を減らすとも述べています。
反対に、1本法のウェーブワンについて著者らは、事前の通り道づくり(グライドパス)がないと、湾曲根管をまっすぐにして作業長が短くなりやすいという既報を引用しています。今回の原著には、#10 Kファイルで穿通を確認したという記載はありますが、通り道づくりの記載はありません。著者らは、ウェーブワンにパスファイルを組み合わせた既報でも、今回の群3に近い結果だったと述べています。
⑦明日の臨床へ
・1本法を使うなら、その前の通り道づくりを検討する。今回の原著には通り道づくりの記載がなく、既報(Berutti 2011)では、ウェーブワンが湾曲根管をまっすぐにして作業長を短くしやすいと報告されています。
・往復運動の角度はモーターと設定で変わる。今回の群3は時計回り10分の4・反時計回り10分の2という特定の設定です。同じ結果を期待するなら、使うモーターの設定を確かめる必要があります。
・連続回転のプロテーパーは、今回どの高さでも最も多く削った。削りすぎを避けたい細い根管では、覚えておいてよい結果です。
なお、プロテーパーは本来、連続回転で使うファイルです。モーター・設定・破折のリスクを含め、今回の実験条件がそのまま臨床に当てはまるとは限りません。
⑧ここだけ、冷静に補助線
今日のひとこと
S字状の樹脂模型根管では、プロテーパー4本を往復運動で使った群が、根尖側の湾曲を元の形に最も近く保ちました。根尖側の湾曲では、ウェーブワン1本と連続回転のプロテーパーの間に有意差はありませんでした(削った量は連続回転が有意に多い)。連続回転のプロテーパーはどの高さでも最も多く削り、根尖0mmでは約0.26mm(往復運動のプロテーパーは約0.12mm・図から読み取り)。一方、歯冠側の湾曲と、全体で削った量には3群で統計学的な差は認められませんでした。持ち帰りは、「往復運動=1本法」と決めつけず、4本の順番を保ったまま往復運動で動かすという組み合わせがあり得ること。同じ順番でも連続回転(群2)では差が出ておらず、順番だけでは差が出なかった点も押さえておきたいところです。ただし樹脂ブロックでの実験で、本物の歯での成績やファイル破折は見ていません。


