1問1答 論文 エンド

トゥルーナトミー、本当に「しなやか」?——人工根管での比較で、2.0 mmたわませたときの曲げに必要な力は4システム中もっとも小さく、形成中のトルクも小さめだったが、回転疲労の強さは3番目だった(2022年・in vitro)

1問1答 論文 エンド

エンド|ミニマルインターベンション向けに設計されたNiTiロータリー「トゥルーナトミー(TruNatomy)」を、HyFlex EDM・ProTaper Next・WaveOne Goldと、曲げ試験・回転疲労試験・根管形成中のトルクと垂直方向の力・根管の偏り(センタリング)の4つの実験で比べた研究(Unno 2022・Materials)

歯質をなるべく削らない「ミニマルインターベンション」のエンドでは、細くテーパーの小さいファイルが勧められます。その考え方で作られたNiTiロータリーがトゥルーナトミー(TRN)。東京医科歯科大学のグループは、TRNをHyFlex EDM(HEDM)・ProTaper Next(PTN)・WaveOne Gold(WOG)と比べました。2.0 mmたわませたときの曲げ荷重はTRN<HEDM<WOG<PTNで、TRNがいちばん小さい(しなやか)。樹脂製のJ字型人工根管を自動で形成したときも、TRNは多くの比較でトルクと垂直方向の力が小さめでした。一方、回転疲労で折れるまでの回転数はHEDM>WOG>TRN>PTNで、TRNは3番目。抜去歯ではなく金属と樹脂の人工根管・室温での実験で、患者さんでの破折や治療成績は調べていません。

論文
Mechanical Properties and Root Canal Shaping Ability of a Nickel–Titanium Rotary System for Minimally Invasive Endodontic Treatment: A Comparative In Vitro Study
著者
Hayate Unno, Arata Ebihara, Keiko Hirano, Yuka Kasuga, Satoshi Omori, Taro Nakatsukasa, Shunsuke Kimura, Keiichiro Maki, Takashi Okiji(東京医科歯科大学 歯髄生物学分野)
掲載
Materials 2022;15(22):7929. doi:10.3390/ma15227929
種類
実験室の研究(in vitro)。比べたのはTRN・HEDM・PTN・WOGの4システム。①片持ち梁の曲げ試験(TRN Prime #26/0.04・HEDM One File #25・PTN X2 #25・WOG Primary #25、各n=10。先端から2 mmの位置を押し、0.5 mmと2.0 mmたわんだときの荷重)②動的回転疲労試験(ステンレス製の人工根管:直径1.5 mm・湾曲60°・曲率半径3 mm、2 mm幅の上下運動を加えて折れるまでの回転数NCFを計測、各n=10)③J字型の樹脂製人工根管(湾曲45°・作業長16 mm、各群n=10)を自動の形成装置で、グライドパス→2本のシェーピングファイルで形成し、トルクと垂直方向の力(上向き=食い込み・下向き)の最大値を測定④形成前後の画像からセンタリング比(根尖から0〜3 mm)を算出。すべて室温。二元配置分散分析・一元配置分散分析とTukey検定(有意水準5%)
PMID
36431416

①「細くてしなやか」なファイル、何がどれだけ違う?

歯質をなるべく残したい。とくに歯頸部の象牙質は、歯の破折を防ぐために削りすぎたくない。そう考えると、細くてテーパーの小さいNiTiファイルに目が向きます。

その考え方(ミニマルインターベンション)で作られたNiTiロータリーがトゥルーナトミー(TruNatomy、以下TRN)です。では、TRNはほかの現行ファイルと比べてどれだけしなやかで、形成中にどれだけ力がかかるのか。東京医科歯科大学のグループが、実験室でまとめて比べました。

結論を先に言います。2.0 mmたわませたときの曲げに必要な力はTRNがいちばん小さく(0.5 mmのたわみではTRN・HEDM・WOGの間に有意差なし)、樹脂の人工根管を形成したときのトルクと垂直方向の力も、多くの比較で小さめでした。ただし、回転疲労で折れるまでの回転数は4システム中3番目。「しなやか」と「折れにくい」は、同じではありませんでした。

②なぜ比べる必要があったのか

NiTiファイルは、熱処理・断面形状・動かし方(回転か往復か)で性質が大きく変わります。TRNは次のような設計です(著者らの緒言より)。

・製造後に独自の熱処理をしたNiTi合金
・逆テーパー(regressive taper)、刃部の最大径は0.8 mm
(考察では、TRNの0.8 mmに対し、比べたほかのファイルは1.2 mmと書かれています)
・平行四辺形で中心をずらした(オフセンター)断面
・オリフィス用1本、グライドパス用1本、形成用3本の構成で、形成はシングルレングス法

TRNが回転疲労に強い、根尖の偏位が小さいといった報告はすでにありました。でもしなやかさ・回転疲労・形成中のトルクと力・根管の偏りを同じ条件でまとめて比べたデータは多くありません。そこで今回、TRNを代表的な3つのシステムと並べました。

③今回の一手:4つの実験でまとめて比べる

比べたのは、TRN、放電加工で作ったCMワイヤーのHyFlex EDM(HEDM)、MワイヤーのProTaper Next(PTN)、ゴールドワイヤーで往復運動のWaveOne Gold(WOG)の4システムです。

・曲げ試験:TRN Prime(#26/0.04)・HEDM One File(#25)・PTN X2(#25)・WOG Primary(#25)を先端から7 mmで固定し、先端から2 mmの位置を押して、0.5 mmと2.0 mmたわんだときの荷重を測定(各n=10)
・動的回転疲労試験:ステンレス製の人工根管(直径1.5 mm・湾曲60°・曲率半径3 mm)の中で、2 mm幅の上下運動をさせながら回転させ、折れるまでの回転数(NCF)を測定(各n=10)
・トルクと垂直方向の力:J字型の樹脂製人工根管(湾曲45°・作業長16 mm)を自動の形成装置で、グライドパス→形成ファイル2本の順で形成し、最大トルクと上向き・下向きの力を測定(各群n=10)
・センタリング比:形成前後の画像を重ねて、根尖から0・0.5・1・2・3 mmの位置で根管の偏りを計算(0に近いほど偏りが小さい)

回転数とトルク設定はメーカー推奨に合わせ、実験はすべて室温で行いました。

④結果①:曲げに必要な力はTRNがいちばん小さい

0 0.7 1.4 2.1 2.0 mmたわませたときの曲げ荷重(N・約) 0.7 0.9 1.6 1.9 TRN HEDM WOG PTN 原著Figure 4Bの棒から読み取った概数(本文に数値の表はない)。4群すべての間に有意差(P<0.05)。小さいほどしなやか
2.0 mmたわませたときの曲げ荷重(原著Figure 4Bから読み取った概数)。小さいほどしなやか

2.0 mmたわませたとき(超弾性の領域)の曲げ荷重は、TRN<HEDM<WOG<PTNの順で、4群すべての間に有意差がありました(P<0.05)。図から読むと、TRNは約0.7 N、PTNは約1.9 Nです。

一方、0.5 mmのたわみ(弾性の領域)では、PTNだけが有意に大きく、TRN・HEDM・WOGの間に差はありませんでした。TRNが目立ってしなやかになるのは、大きく曲げたときです。

著者らは、TRNのしなやかさは合金の相の違いでは説明できず、細い刃部の最大径(0.8 mm)、平行四辺形の断面、先端付近の小さいテーパーといった形の違いによるところが大きいだろう、と考察しています。

⑤結果②:形成中のトルクと力も、TRNは小さめ

0 7 14 21 2本目のシェーピングファイルのトルク(N·mm・約) 3 17 19 19 TRN PTN HEDM WOG 原著Figure 6Cの棒から読み取った概数。J字型の樹脂製人工根管、各群n=10。本文の順位はTRN<PTN<HEDM・WOG(P<0.05)
2本目のシェーピングファイルで形成したときの最大トルク(原著Figure 6Cから読み取った概数)

J字型の樹脂製人工根管を形成したとき、2本目のシェーピングファイルのトルクはTRN<PTN<HEDM・WOGの順でした(P<0.05)。図から読むと、TRNは約3 N·mm、ほかの3つは約17〜19 N·mmです。1本目のシェーピングファイルでも、トルクはPTN・WOGのほうがTRN・HEDMより大きい結果でした。

・上向きの力(ファイルが根管に引き込まれる力=スクリューイン):2本目のシェーピングファイルではTRNが有意に小さい。ただし1本目ではHEDMがTRNより小さかった(HEDM<TRN<WOG<PTN)
・下向きの力:1本目ではWOGがTRNより有意に大きく、2本目ではPTNとHEDMがほかより有意に大きい
・形成中にファイルの破折は1本も起きなかった
・グライドパスファイルのトルクと力は、どのシステムも小さかった

つまりTRNは「どの比較でも最小」ではなく、多くの比較で小さめというのが正確なところです。

⑥結果③:回転疲労は3番目、センタリングは同等以上

ここがこの論文のいちばんの読みどころかもしれません。折れるまでの回転数(NCF)はHEDM>WOG>TRN>PTNで、TRNは3番目でした(P<0.05)。図から読むと、HEDMは約16万回、WOGは約10万回、TRNは約7万回、PTNは約3万回です。TRNはPTNよりは有意に長もちしましたが、HEDMとWOGには届きませんでした。

・著者らは、しなやかなファイルほど回転疲労に強いという見方と食い違う結果だと述べています
・理由として、HEDMはマルテンサイト相が多い合金、WOGは往復運動であることが、細さやしなやかさの影響を上回ったのだろう、と考察しています

根管の偏り(センタリング比)は、TRNはほかのシステムと同じか小さい値でした。例外は根尖(0 mm)の位置で、ここではWOGがTRNを含むほかの3つより有意に小さい値でした。著者らは、WOGの往復運動で刃が根管壁に触れる時間が短くなるためだろうと見ています。

⑦明日の臨床へ

・TRNは「曲げに強く逆らわない」タイプ。湾曲根管で歯質をなるべく残したいときの選択肢として、しなやかさとトルクの小ささは魅力になりうる。
・ただし「しなやか=疲労破折しにくい」ではない。この実験の回転疲労はHEDM・WOGのほうが長もちした。ここからは筆者の読みですが、使用回数や湾曲の強い根管での扱いは、しなやかさとは別に考えたほうがよさそうです。
・著者らは、前のファイルより太さ・テーパーが一段上がるファイルでトルクや上向きの力が有意に増えることを指摘し、システムごとに「どのファイルで負担がかかるか」を意識した操作が要るかもしれない、としている。
・数値は樹脂と金属の人工根管・室温での話。そのまま患者さんの歯での安全性や成績に当てはめない。

「ミニマルインターベンション用に設計された」という特徴が、実験室の物差しでどう出たかを知る材料——このくらいの距離感で読むのがちょうどよさそうです。

⑧ここだけ、冷静に補助線

これは実験室の研究(in vitro)です。著者ら自身も、樹脂の人工根管は形が揃う反面、象牙質より柔らかく表面もなめらかで、実際の根管より小さい力で形成できてしまう可能性があること、実験が室温で、体温下ではNiTiの性質が変わりうることを限界に挙げています。ねじれ強さ・表面硬さ・切削効率は測っておらず、根管の形のばらつきも今後の課題としています。
ここからは筆者の読みです。比べたファイルは、太さ・テーパー(TRN Prime #26/0.04に対し、ほかは#25でテーパーも異なる)と回転数・トルク設定が完全には揃っていません。著者らもTRNと同じ設計のファイルは存在しないため、寸法の近い代表的なシステムを選んだと説明しています。また、本文に数値の表はなく、この記事の数値は図の棒から読み取った概数です。各群n=10は事前の計算(効果量0.6・検出力0.85)で決めた数です。臨床での破折率や治療成績は調べていません。それでも、しなやかさ・疲労・トルクと力・偏りを同じグループが同じ装置で並べて示した点は、ファイル選びの手がかりになります。

今日のひとこと

人工根管の実験では、トゥルーナトミー(TRN)は曲げに必要な力がいちばん小さく(2.0 mmたわみでTRN<HEDM<WOG<PTN)、根管形成中のトルクと垂直方向の力も多くの比較で小さめでした。センタリング比も、根尖0 mmでWOGに負けた以外はほかと同じか小さい。一方で、回転疲労で折れるまでの回転数はHEDM>WOG>TRN>PTNの3番目で、「しなやか=折れにくい」とは限りません。著者らは、TRNの性質はミニマルインターベンションの考え方に合う可能性があるとまとめています。ただし金属と樹脂の人工根管・室温の実験で、ファイルの太さやテーパーも完全には揃っていません。実際の歯での破折や治療成績は、この研究からはわかりません。

Unno H, Ebihara A, Hirano K, Kasuga Y, Omori S, Nakatsukasa T, Kimura S, Maki K, Okiji T. Mechanical properties and root canal shaping ability of a nickel–titanium rotary system for minimally invasive endodontic treatment: a comparative in vitro study. Materials (Basel). 2022;15(22):7929. doi:10.3390/ma15227929. PMID: 36431416
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。