1問1答 論文 エンド

根尖から押し出す量、ファイルで違う?——抜去小臼歯60本・35℃の実験で、XP-endo ShaperはReciproc Blueより有意に少なかった(HyFlex EDMは中間で差なし)(2018年)

1問1答 論文 エンド

エンド|根管形成のとき根尖孔の外へ押し出されるデブリ(削りカスなど)の量は、使うNiTiファイルで変わるのか。往復運動のReciproc Blue、回転運動のHyFlex EDMとXP-endo Shaperの3種を、体温に近い35℃の環境で比べた抜去歯の実験研究(Uslu 2018・Journal of Endodontics)

根管形成で根尖孔の外へ押し出されるデブリや洗浄液は、術後の痛み・炎症・フレアアップの一因になりうると考えられてきました。では、ファイルの種類で押し出す量は変わるのか。著者らは抜去した単根の下顎小臼歯60本をReciproc Blue(往復運動)・HyFlex EDM(回転)・XP-endo Shaper(回転)に20本ずつ無作為に割り付けました。XP-endo Shaperは体温で形が変わるファイルなので、装置ごと35℃のお湯に沈め、根尖の外は1.5%寒天で歯周組織の代わりにして、押し出された量を重さで測っています。結果、3種類とも押し出しはゼロではありませんでした。中央値はReciproc Blue 11.5mg、HyFlex EDM 9.1mg、XP-endo Shaper 6.0mgで、有意差があったのはXP-endo ShaperとReciproc Blueの間だけ。HyFlex EDMは他の2種と差がありませんでした。ただし抜去歯での実験で、術後の痛みそのものは測っていません。

論文
Apically Extruded Debris during Root Canal Instrumentation with Reciproc Blue, HyFlex EDM, and XP-endo Shaper Nickel-titanium Files
著者
Gülşah Uslu, Taha Özyürek, Koray Yılmaz, Mustafa Gündoğar, Gianluca Plotino(トルコ・イタリア)
掲載
Journal of Endodontics 2018;44(5):856-859. doi:10.1016/j.joen.2018.01.018
種類
抜去歯を使った実験研究(in vitro)。歯周病で抜去された単根の下顎小臼歯60本(根尖が完成・根尖孔1つ・湾曲5°未満・長さ19±1mm・根尖孔は#15を超えない大きさ)を3群(各20本)に無作為に割り付けた。作業長は根尖孔から1mm手前。根尖1mmを除いて根面をテフロンテープで覆い、あらかじめ重さを量ったエッペンドルフチューブ内の1.5%寒天に根尖を埋め、装置全体を35℃の温水に沈めた。Reciproc Blue R25(往復運動)、HyFlex EDM(回転 500rpm・2.5Ncm)、XP-endo Shaper(回転 800rpm・1Ncm、作業長到達後さらに10ストローク)で形成。洗浄は蒸留水で合計20mL(側方開口の30Gニードル)。術者は1人、計量は別の1人が担当。形成前後の重さの差を押し出し量とし、Kruskal-Wallis検定で比較(有意水準5%)
PMID
29550013

①そのファイル、根尖の外へどれだけ押し出している?

丁寧に根管形成したのに、翌日「ズキズキする」と電話が来る。原因の1つとしてよく挙がるのが、根尖孔の外へ押し出された削りカスや洗浄液です。

では、使うNiTiファイルを替えれば、押し出す量は変わるのか。この研究は、往復運動のReciproc Blue、回転運動のHyFlex EDMとXP-endo Shaperの3種類を、体温に近い35℃の環境で比べました。

結論を先に言います。3種類とも押し出しはゼロになりませんでした。中央値はReciproc Blue 11.5mg、HyFlex EDM 9.1mg、XP-endo Shaper 6.0mg。統計的な差が出たのは、XP-endo ShaperとReciproc Blueの間だけです。ただし測ったのは押し出された「量」で、術後の痛みではありません。

②なぜ「押し出し」が気になるのか、なぜ35℃なのか

根管形成では、象牙質の削りカス・歯髄組織・細菌・洗浄液が根尖孔の外へ押し出されることがあり、術後の痛み、炎症や感染、フレアアップ、治癒の遅れといった合併症につながりうる、と著者らは緒言でまとめています。そして、どの器具・どの術式でも、量の差こそあれ押し出しは起こること、その量はファイルの形や動かし方(キネマティクス)で変わりうることが報告されてきました。

今回の3種類は、どれも1本で形成を進めるタイプのNiTiファイルです。

・Reciproc Blue:往復運動(レシプロ)で使う。断面はS字で刃は2枚。従来のReciprocに新しい熱処理を加えてしなやかにしたもの(青い色はその熱処理による)
・HyFlex EDM:回転運動で使う。放電加工(EDM)で作られたコントロールドメモリー合金のファイル
・XP-endo Shaper:回転運動で使う。先端径0.30mm・テーパー1%だが、体温で合金の相が変わり、蛇のように波打つ形になってテーパー4%相当まで広がる

ここが著者らの着眼点です。これまでの押し出しの研究は室温で行われてきました。しかしXP-endo Shaperは体温で形が変わるので、室温の実験では本来の動きで測れない。しかも著者らが調べた範囲では、この3種類の押し出しを調べた研究はまだありませんでした。

③今回の一手:35℃のお湯の中で、押し出された重さを量る

対象=歯周病で抜去された単根の下顎小臼歯60本。根尖が完成し根尖孔が1つ、湾曲5°未満、長さ19±1mm、根尖孔が#15のKファイルより大きくない歯をそろえ、3群に20本ずつ無作為に割り付けました(本数は検出力計算で決定)。作業長は根尖孔から1mm手前です。
・温度:装置ごとガラス瓶に入れ、35℃の温水に沈めて形成
・寒天:根尖1mmを残して根面をテフロンテープで覆い、エッペンドルフチューブの1.5%寒天に根尖を埋める(歯周組織の代わり)
・重さの測り方:形成前に量っておいたチューブと寒天の重さと、形成後に歯を外したチューブの重さの差を押し出し量とした(計量は術者とは別の1人)
・追加の10回:XP-endo Shaperだけは、作業長に届いたあとメーカー推奨どおりさらに10回出し入れ

ファイルはすべて新品を1本ずつ使い、形成は1人の熟練した術者が行っています。洗浄は蒸留水で1本あたり合計20mL。回転数やトルクなど細かい条件は、冒頭の「種類」欄にまとめました。データは正規分布を前提にしないKruskal-Wallis検定で比べました。

④結果①:XP-endo ShaperはReciproc Blueより少なかった

0 5mg 10mg 15mg 根尖から押し出された量 中央値(mg) 11.5mg 9.1mg 6.0mg Reciproc Blue(往復) HyFlex EDM(回転) XP-endo Shaper(回転) 原著Table 1(単位gをmgに換算)。各群20本。XP-endo ShaperはReciproc Blueより有意に少ない(P<.05)。HyFlexEDMは他の2群と有意差なし
根尖孔の外へ押し出された量の中央値(原著Table 1。単位gをmgに換算)。各群20本

押し出された量の中央値は、Reciproc Blue 11.5mg(0.0115g)、HyFlex EDM 9.1mg(0.0091g)、XP-endo Shaper 6.0mg(0.0060g)。3群全体の比較はP=.003でした。

群どうしでは、XP-endo ShaperがReciproc Blueより有意に少なく(P<.05)、HyFlex EDMは他の2種のどちらとも有意差がありませんでした(P>.05)。つまり順番は Reciproc Blue > HyFlex EDM > XP-endo Shaper ですが、統計的に差と言えるのは「両端の2つ」だけです。

そして大前提として、3種類とも、根尖孔の外へいくらかのデブリを押し出していました(どの群も最小値は0ではありません)。回転でも往復でも、押し出しはゼロにはならない——これは過去の研究とも一致する結果です。

⑤結果②:1本ごとの幅は大きく、3群は重なっている

1本ごとの押し出し量の幅(mg) 0 8 16 24 32 mg Reciproc Blue 中央値 11.5 2.0〜30.8 HyFlex EDM 中央値 9.1 3.6〜27.7 XP-endo Shaper 中央値 6.0 0.4〜16.2 原著Table 1(単位gをmgに換算)。点=中央値、横線=最小〜最大。各群20本(下顎 小臼歯の抜去歯・35℃)。3群の範囲は大きく重なっている
1本ごとの押し出し量の幅(原著Table 1)。点=中央値、横線=最小〜最大

最小〜最大を見ると、Reciproc Blue 2.0〜30.8mg、HyFlex EDM 3.6〜27.7mg、XP-endo Shaper 0.4〜16.2mg。同じファイル・同じ手順でも、歯によって量は大きく違いました。

XP-endo Shaperは最大値も3群でいちばん小さい一方、Reciproc Blueでも少ない歯(2.0mg)はあり、範囲は大きく重なっています。「このファイルなら必ず少ない」と1本単位で言える結果ではありません。

⑥なぜ差が出たのか——運動様式だけでは決まらない

著者らは、今回の結果を「往復運動のファイルは回転運動より押し出しが多い」という過去の報告と同じ傾向だとしています。

ただし、話はそう単純ではありません。考察では、逆に往復運動のほうが押し出しが少なかったという研究もいくつもあり、差が無かったという研究もあると紹介されています。今回もHyFlex EDM(回転)とReciproc Blue(往復)の間には差がありませんでした。生体の歯根膜で炎症に関わる物質の出方を調べた研究では、Reciprocの群が最も少なかったという報告もあります。

著者らは、研究ごとに結果が割れるのは使ったファイルと実験方法が違うからだろうと述べています。XP-endo Shaperがなぜ少なかったのかを、形や動きの面から直接確かめた研究ではありません。「回転なら少ない」「往復なら多い」と運動様式だけで決めつけず、今回の3種類・今回の条件での結果として読むのが妥当です。

⑦明日の臨床へ

・どのファイルでも押し出しはゼロにならない。回転でも往復でも、根尖の外へいくらかは出ていた。
・この抜去歯の条件では、XP-endo ShaperはReciproc Blueより押し出しが少なかった(中央値6.0mgと11.5mg)。HyFlex EDMはその中間で、どちらとも差は無かった。
・ただし術後の痛みやフレアアップの差を示した研究ではない。「このファイルなら痛まない」とは読めない。
・1本ごとの幅が大きく、3群の範囲は重なっている。ファイルの選択だけで押し出しが決まるわけではない。
・数字はまっすぐで根尖孔の細い下顎小臼歯、作業長は根尖孔の1mm手前という条件のもの。湾曲根や根尖孔の大きい歯にそのまま当てはめない。

ファイルを選ぶときの材料の1つとして、「押し出し量のデータがある」ことを知っておく——このくらいの距離感で使うのがちょうどよさそうです。

⑧ここだけ、冷静に補助線

これは抜去歯を寒天に埋めた実験研究で、患者さんの術後の痛みを比べたものではありません。著者ら自身も、抜去歯の結果は実際の臨床条件に慎重に当てはめるべきだとし、生体では根尖周囲の組織の抵抗が押し出しを妨げうること、歯によって象牙質の硬さが違うことを挙げています。寒天は、歯周組織と密度が近いという報告をもとに採用された代わりの材料です。また、炎症の強さは、細菌の数よりも毒性に関わるという報告もあると紹介しています。
ここからは筆者の読みです。使ったのはまっすぐな下顎小臼歯だけで、各群20本です。また、仕上がりの太さは3群でそろっていません(Reciproc BlueはR25、XP-endo Shaperは先端0.30mm、HyFlex EDMは号数の記載なし)。XP-endo Shaperだけは作業長到達後にさらに10回動かしています。結果は中央値と最小・最大だけで示され、どの群どうしに差があるかを調べた方法(多重比較)の名前は書かれていません。なお、方法には乾かす工程の記載がなく、原著も「デブリと蒸留水を含むチューブの重さ」を記録したと書いているので、測った重さには押し出された洗浄液も含まれていると読むのが自然です(筆者の補足)。それでも、体温で形が変わるファイルを35℃で比べるという条件づくりをして、3種類の押し出し量を初めて並べた点は、ファイル選びを考える材料になります。著者らは利益相反は無いと記載しています。

今日のひとこと

35℃の抜去歯実験で、3種類のNiTiファイルはどれも根尖孔の外へデブリを押し出していました。中央値はReciproc Blue 11.5mg > HyFlex EDM 9.1mg > XP-endo Shaper 6.0mgで、統計的な差があったのはXP-endo ShaperとReciproc Blueの間だけ。HyFlex EDMは他の2種と差がありませんでした。ただし1本ごとの幅は大きく、3群の範囲は重なっています。そしてこれは押し出された「量」を測った実験で、術後の痛みやフレアアップを比べた研究ではありません。持ち帰るのは「どのファイルでも押し出しはゼロにならない」「ファイルの違いで量が変わりうる」の2点。著者ら自身も、抜去歯での結果は実際の臨床条件に慎重に当てはめるべきだと書いています。

Uslu G, Özyürek T, Yılmaz K, Gündoğar M, Plotino G. Apically extruded debris during root canal instrumentation with Reciproc Blue, HyFlex EDM, and XP-endo Shaper nickel-titanium files. J Endod. 2018;44(5):856-859. doi:10.1016/j.joen.2018.01.018. PMID: 29550013
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。