エンド|エックス線写真で根の弯曲角度を測って直線・中等度・重度に分け、手用ファイルで拡大した根管の断面が丸くなるかを比べた古典。弯曲角度の測り方の原典とされる(シュナイダー法・筆者の補足)(Schneider 1971・Oral Surg Oral Med Oral Pathol)
規格化されたファイルとポイントは、根尖側が丸い。では手用ファイルで拡大した根管も、根尖部で丸くなっているのか——テキサス州オースティンのSchneiderは、イリノイ大学の歯内療法の認定取得のための論文として、この問いを確かめました。抜去した単根歯29本の弯曲角度をエックス線写真で測り、直線(5度以下)10本・中等度(10〜20度)10本・重度(25〜70度)9本に分けて、同じ手順で根管を拡大。銀ポイントとシーラーで充填したあと、根尖から1 mmと5 mmで輪切りにして、形成が丸いかどうかを25倍の実体顕微鏡で見ました。根尖から1 mmで丸い形成になったのは、直線根管で10本中8本(80%)、中等度弯曲で10本中4本(40%)、重度弯曲で9本中3本(33%)。5 mmの位置では、それぞれ40%・10%・0%でした。著者の結論は「直線根管は、弯曲根管よりはるかに丸く形成しやすい」。統計学的な検定はなく、手作業による単純な集計です。
①弯曲した根管、ちゃんと丸く削れている?
下顎の犬歯や小臼歯で、術前のエックス線写真に根尖側の弯曲が写っている。いつもどおりファイルを号数順に上げ、白い削片も出てきた。マスターポイントも作業長まで入る。——でもその根尖部の形成は、ファイルやポイントと同じように「丸く」なっているのでしょうか。
この問いを、弯曲の角度ごとに確かめたのが1971年の本論文です。結論を先に言うと、根尖から1 mmの位置で丸い形成になったのは直線根管で80%、中等度弯曲で40%、重度弯曲で33%。根尖から5 mmの位置ではさらに少なく、40%・10%・0%でした。そして著者は、弯曲がいったんはっきり存在すれば、中等度か重度かで丸くなる割合に大きな差はなかった、と書いています。
②当時の問題意識
著者はIngleとLevineの言葉から始めます。歯内療法の第一の目的は、根尖孔での液密な封鎖と、根管腔を完全に埋めること。だとすれば、形成した根管と充填材がぴったり合うほどよい。
この「合う」を良くするために、第2回国際歯内療法会議でファイル・リーマーと、銀ポイント・ガッタパーチャポイントの規格化が定められました。規格化された器具とポイントの根尖側6 mmは、ほぼ丸い。そこで疑問が生まれます。手用ファイルで拡大した根管も、同じように丸くなっているのか。
先行研究のHagaは「上顎中切歯を除く、どの種類の根管でも不十分な形成の割合が驚くほど高かった」と報告していました。著者は予備実験で、まっすぐな根の上顎中切歯なら、根尖から1 mmで丸い形成を繰り返し作れることを確かめたうえで、本題の「直線と弯曲で、丸くなる頻度はどう違うか」に進みます。
③弯曲を「角度」で測って分けた
条件のそろえ方:歯冠をすべて落とし、根を歯冠側から削って約15 mmにそろえました。これで髄腔開拡の違いと根の長さの違いを実験から外しています。
弯曲の測り方:頬舌方向と近遠心方向の2方向からエックス線写真を撮り、①根管の長軸に平行な線、②根尖孔から「根管が長軸から離れ始める点」まで引いた線、の2本がなす鋭角を分度器で測定。拡大表示できるビューボックスを使いました。
3群:直線=5度以下(10本)、中等度=10〜20度(10本)、重度=25〜70度(9本)。
④拡大と判定の手順
どこまで広げたか:Hagaの方法に従い、根尖から5〜6 mmの位置で最初に食い込んだファイルが35号以下なら2サイズ上、35号を超えれば3サイズ上まで拡大。ファイルは根尖孔でちょうど見えるところまで進めました。終了の基準にはしていないものの、全標本で白い象牙質の削片が出ていたと記されています。
充填と切断:合わせた銀ポイントとシーラーで充填し、根尖から1 mmと5 mmの位置で薄切機を使って輪切りに。
判定:25倍の実体顕微鏡で、いちばん大きく見える方向と小さく見える方向の2か所を、接眼マイクロメーターで直交して測定。断面が斜めに切れて楕円に見える誤差を避けるため、丸いことが分かっている銀ポイントと根管の関係がぴったり保たれていれば「丸い」と判定しました(2方向の測定値が完全に同じでなくてもよい)。
⑤結果:弯曲があると、丸くなりにくい
根尖から5 mm:直線 4/10(40%)、中等度 1/10(10%)、重度 0/9(0%)。
全体:丸い形成は1 mmの位置で51%、5 mmの位置で17%(著者の結論の数値。表から数えると29本中15本と29本中5本)。
著者が考察で挙げたのは3点です。1つ目、1 mmの位置では、直線根管のほうが2つの弯曲群より丸い形成になる見込みが「ほぼ100%高かった」。2つ目、どの群でも5 mmの位置は1 mmの位置より丸くなりにくかった。3つ目、いったんはっきりした弯曲があると、中等度と重度の間で丸くなる割合にあまり差がなかった——これは1 mmでも5 mmでも同じでした。
原著の図2には代表的な断面写真が載っています。直線根管でも1 mm・5 mmで丸くならなかった例がある一方、中等度弯曲で1 mm・5 mmとも丸く形成できた例もあり、弯曲の有無で白黒がつくわけではなく「なりやすさ」の差だと分かります。
⑥なぜ弯曲で丸くならないのか
原著は弯曲根管で形成が丸くならない仕組みを、実験では確かめていません。著者は、この研究の変数を髄腔開拡・根の弯曲・根管の器具操作・根管の解剖の4つに整理し、このうち器具操作と解剖は抜去歯と手作業ではどうしても統制しきれない、と述べています。
筆者の補足として、ここでの「丸くない」は根管の断面の形の話で、根管がどちらに寄って削れたかまでは測っていません。まっすぐな器具を曲がった管の中で回せば、管壁に均等には当たらない——という直感とは合う結果ですが、その中身を調べるのは後の研究の仕事になりました。
⑦明日の臨床へ
補足(筆者の読み):
・いちばん長く生き残ったのは、結果の割合よりも「弯曲を角度で測る」手順です。長軸の線と、根尖孔から弯曲の始まりへ引いた線の角度——この測り方は、のちに著者の名前で呼ばれ、弯曲根管を扱う研究の分類に広く使われています(筆者の補足)。術前のエックス線写真で、目分量ではなく角度で弯曲を見積もる習慣は、そのまま臨床に持ち込めます。
・5度以下の群と10度以上の2群で、丸くなる割合が大きく違った一方、中等度と重度の差は小さかった(検定はしていない数字です)。「強く曲がっていなければ大丈夫」ではなく、はっきり曲がっていれば、形成は丸くならないことも多いと構えておくのが素直です。
・形成が丸くなければ、丸いマスターポイント1本がぴったり合うとは限りません。弯曲根管では、ポイントが入った=根尖部が封鎖できた、とは言い切れないことを頭に置いて、シーラーの使い方や充填法、洗浄を組み立てたいところです。
・直線根管でも1 mmで20%、5 mmで60%は丸くなりませんでした。白い削片が出た・号数を上げた、は「形成できた」の証明にならない——筆者はこう読みます。著者も結論③で、形成できたと判断する方法の研究が必要だと書いています。
⑧ここだけ、冷静に補助線
今日のひとこと
著者の結論:直線根管は、弯曲根管よりはるかに丸く形成しやすい。丸い形成が得られたのは全体で根尖から1 mmの位置で51%、5 mmの位置では17%。そして「根管がきちんと形成されたと判断する方法」を、さらに研究する必要がある。筆者の読みでは、この論文の値打ちは割合そのものより、「弯曲を角度で測って分けてから比べる」という物差しを示した点にあります。弯曲が見えたら、丸いファイルで削っても丸い穴にはなりにくい——術前のエックス線写真でそう構えておくだけで、充填や洗浄の組み立てが変わります。


