1問1答 論文 エンド

次亜塩素酸ナトリウム、濃いほど効く?——0.5%と5%で差は見えず、3回目はEDTA併用群が数のうえで最少(検定なし)

1問1答 論文 エンド

エンド|根尖病変のある失活単根歯60本を、0.5% NaOCl・5% NaOCl・5% NaOCl+15% EDTAの3つの洗い方で20本ずつ治療し、来院ごとに根管から菌を培養した古典(Byström&Sundqvist 1985・Int Endod J)

根管洗浄の次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)は、濃いほうが効くのか。スウェーデン・ウメオ大学のByströmとSundqvistは、根尖部に骨の破壊像がある失活した単根歯60本を、0.5% NaOCl、5% NaOCl、5% NaOCl+15% EDTAの3通りで20本ずつ治療し、来院のたびに根管から検体を採って嫌気培養しました。1回目の治療のあと、根管には貼薬をせず空のまま封鎖しています。3回目の来院時に菌が見つかったのは、0.5%群で20本中8本、5%群で6本、EDTA併用群で3本。著者らは「0.5%と5%の抗菌効果に差はなかった」「EDTA併用はNaOClだけより効率がよかった」と述べました(数本の差で、検定はされていません。2回目の来院時は3群とも10〜12本で差がありません)。そしてもうひとつ、治療で生き残った菌は、薬を入れずに空にした根管の中で、次の来院までに急速に数を増やしていた——これが著者らが以前の研究と合わせて示した「重要な観察」です。

論文
The antibacterial action of sodium hypochlorite and EDTA in 60 cases of endodontic therapy
著者
A. Byström、G. Sundqvist(ウメオ大学 歯内療法学講座・口腔微生物学講座、スウェーデン)
掲載
International Endodontic Journal 1985;18:35-40
種類
臨床研究(3群・各20根管の比較。割り付け方法の記載なし・統計学的な検定の記載なし)。対象は歯髄が壊死し、髄室壁が保たれ、エックス線で根尖部の骨破壊像がある単根歯60本。洗浄液は0.5% NaOCl(pH 9)5% NaOCl(pH 9)5% NaOCl+15% EDTA(pH 8)の3通りを各20根管。NaOClのみの群は15分間の拡大形成中に計6 mLで繰り返し洗浄、EDTA併用群はNaOCl 10分→EDTA 10分(繰り返し交換)→NaOCl 5分。最後に5%チオ硫酸ナトリウムでNaOClを失活させ、根管内は貼薬なしで酸化亜鉛ユージノールセメントで封鎖。検体は各来院の処置前にペーパーポイントで採取(来院間隔2〜4日)し、嫌気培養(10日)と好気培養(血液寒天48時間)を並行して菌数を数え、3回目の来院時の菌は同定。3回目の検体採取後に水酸化カルシウム(Calxyl)を貼薬。0.5%群のうち15本は著者らが1983年に既報
PMID
3922900

濃くすれば、菌は減る?

感染根管の治療で、次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)を何%で使うか。「濃いほうが効きそう」「でも刺激が心配」と、迷ったことのある先生は多いはずです。では、患者さんの根管の中で、濃度の違いは菌の残り方にどれだけ差を生むのでしょうか。

この疑問に、根管から菌を培養するという直接的な方法で答えたのが、1985年のこの研究です。結論を先に言うと、0.5%と5%では、菌が残った根管の数に差が見えませんでした。EDTAを併用した群では3回目の来院時に菌が出たのが20本中3本で、数のうえでは3群でもっとも少なくなりました(0.5%で8本、5%で6本。検定はされていません)。そして著者らがいちばん強調したのは、治療を生き延びた菌が、貼薬をしない空の根管の中で、次の来院までに増えていたという観察でした。

当時わかっていなかったこと

NaOClは、試験管の中での抗菌作用、組織を溶かす力、組織への刺激の少なさがすでに報告され、根管洗浄の主役でした。ただ、走査電子顕微鏡(SEM)で根管壁のきれいさを見た研究では結果が割れていました。きれいになったと報告した研究は5%以上を使い、そうでない研究は1%を使っていた——濃度の違いで説明できそうだ、と著者らは整理しています。

もうひとつの論点がスメア層です。器具操作で根管壁にできる主に無機質の層で、NaOClはこれにほとんど作用しません。キレート剤のEDTAなら除去できるため、NaOClとEDTAを組み合わせる洗浄も勧められていました。しかしSEMの研究からは、抗菌効果についての情報はほとんど得られていませんでした。

著者らは以前、生理食塩液で洗浄しながら器具操作だけを繰り返した研究で、4回治療しても半数の根管に菌が残ったと報告しています。消毒薬の後押しが要る。では、どの洗い方が実際の根管で効くのか——そこを培養で確かめたのが今回です。

60根管を、3通りの洗い方で

対象:歯髄が壊死し、髄室の壁が保たれていて、エックス線で根尖部に骨の破壊像がある単根歯60本
3つの群(各20根管):0.5% NaOCl(pH 9)②5% NaOCl(pH 9)③5% NaOCl+15% EDTA(pH 8)。0.5%群のうち15本の結果は、著者らが1983年にすでに発表しています。
洗い方:NaOClだけの群は、15分間しっかり器具操作をしながら繰り返し洗浄し、総量は6 mL。洗浄液は23ゲージ針のシリンジで入れ、吸引で回収。EDTA併用群は、NaOClで器具操作と洗浄を10分→EDTAを入れて繰り返し交換しながら10分→最後にNaOClで5分。最後に5%チオ硫酸ナトリウムで根管を洗い、残ったNaOClを失活させました。
来院間:アクセス窩洞を酸化亜鉛ユージノールセメントで封鎖。根管内には何も貼薬しません。来院の間隔は2〜4日。
検体の採り方:全工程を無菌的に行い、髄室を開ける前に対照の検体で術野の無菌を確認。根管の検体はペーパーポイントで採り、酸素に触れないよう嫌気性の培地に入れて培養し、菌数を数えました。2回目は器具操作と洗浄の前、3回目は水酸化カルシウムを貼薬する前に採取。菌の同定は3回目の検体だけで行っています。

結果:菌が残った根管の数

0 7 14 21 菌が検出された根管の数(各群20根管中) 12 8 10 6 11 3 0.5% NaOCl 5% NaOCl 5% NaOCl+EDTA 2回目の来院時 3回目の来院時 治療前は60根管すべてで菌を検出。濃い棒=2回目、淡い棒=3回目(各来院の処置前に採取)。来院間は貼薬なし・2〜4日。検定の記載なし
各群20根管のうち、来院時の検体から菌が検出された根管の数。治療前(1回目)は60根管すべてで菌を検出。原著本文とFig. 1の値。統計学的な検定は記載されていない
治療前:60根管すべてで菌を検出。検体中の菌数の中央値は、0.5%群で1.6×105、5%群とEDTA併用群でそれぞれ3×105
2回目の来院時:菌が出たのは0.5%群12本、5%群10本、EDTA併用群11本(各20本中)。
3回目の来院時:0.5%群8本(40%)、5%群6本(30%)、EDTA併用群3本(15%)
3回目の菌数(中央値):0.5%群2×105、5%群1×106、EDTA併用群8×105。菌が出た根管(8・6・3本)での値と読めますが、原著に中央値の定義は明記されていません。
急性症状:1回目の治療のあと、12本で症状の急性化があり、各群4本ずつでした。
残った菌の顔ぶれ:3回目に回収された44株のうち80%が嫌気性菌FusobacteriumBacteroidesEubacterium、レンサ球菌などで、特定の菌が治療に抵抗したという傾向は見られなかったと著者らは書いています。

割合にすると、3回目に菌が出た根管は40%→30%→15%。0.5%と5%の差は20本中2本で、著者らは「差はなかった」と読み、5%とEDTA併用の差3本は「EDTA併用のほうが効率がよい」と読みました。どちらも数本の差で、原著に検定はありません。またEDTA併用群が少なかったのは3回目だけで、2回目は11本と、ほかの群(12本・10本)と差がありません。そしてEDTA併用群でも20本中3本には生きた菌が残っていました

なぜ5%でも菌が残ったのか

著者らは考察で、2つの点に触れています。ひとつはNaOClの消耗です。NaOClは根管内の有機性の残渣と反応して清掃を助けますが、その反応で失活し、抗菌力が落ちます。だから新しい液を頻繁に根管へ入れ直す必要がある。ところがこの研究では、頻繁に入れ直しても5%で全部の菌は消えませんでした。

その理由として著者らが推測したのが届かない場所です。NaOClは根管の入り組んだ部分に入り込めていないかもしれない。さらに器具操作でできるスメア層は象牙細管をふさぎ、菌を抱えたまま、洗浄液が感染した細管へ入るのを妨げる可能性がある。EDTAを加えるとスメア層の形成を防げるかもしれず、今回の結果もEDTA併用群が少なかった——ただしスメア層を防ぐことの臨床的な意味はまだ証明されていない、と著者らは慎重に書いています。

考察では、界面活性剤で表面張力を下げることや、超音波の併用が効率を上げるかもしれないという、当時の他の研究にも触れています。

なお、これらは著者らが「5%でも全部の菌が消えなかった」理由として挙げた推測です。0.5%と5%で差が見えなかったことも、液の消耗や届きにくさで説明できるかもしれない——というのは筆者の読みで、原著がそう結びつけているわけではありません。

著者らの観察:空の根管で、菌は増える

この論文でいちばん重く読みたいのが、この観察です。著者らは、今回とそれ以前の自分たちの研究を通して、器具操作と洗浄を生き延びた菌が、来院と来院の間に空の根管の中で急速に数を増やしていたと書いています。来院間に根管貼薬をしなかった他の研究でも、同じような結果が出ていたそうです。

ただし、この研究の中にはそれを直接示すデータはありません。検体は各来院の処置前にしか採っておらず、洗浄直後の菌数は測っていないためです。3回目の菌数の中央値(2×105〜1×106)は菌が出た根管だけの値と読め、20本全部の治療前の値とそのまま比べて「増えた」とは言えません。著者らの以前の研究と合わせた観察として受け取るのが正確です。

だから著者らは、来院間に置く薬(根管貼薬)の抗菌効果を評価すべきだと結んでいます。この研究でも、3回目の検体を採ったあとには水酸化カルシウムを貼薬しています。

明日の臨床へ

著者らの結論:0.5%と5%のNaOClでは、臨床での抗菌効果に差はなかった。EDTAと5% NaOClの併用は、NaOClだけより効率がよかった。器具操作と洗浄を生き延びた菌は、貼薬をしない来院間に急速に増えた。
補足(筆者の読み):
「濃度を上げれば解決」ではなさそうだ、というのが第一のメッセージです。著者らは5%でも菌が残った理由として、液の消耗と届かない場所を推測しています。この研究は入れ直しの頻度や届かせ方を比べてはいませんが、新しい液を頻繁に入れ直すこと、根管の隅まで届かせる工夫にも目を向けたくなります(筆者の読み)。
NaOClとEDTAを組み合わせる洗い方は、この研究では3回目に菌が残った根管が数のうえでいちばん少なくなりました(検定なし・処置時間も長い)。組み合わせの抗菌的な利点を臨床で示唆した早い例と読めます。ただし当時の方法(15% EDTAを10分、23ゲージ針、NaOCl計6 mL、最後にチオ硫酸ナトリウムで失活)は、今の一般的な手順とは違います。
・それでも20本中3本には菌が残りました。洗浄だけで根管が無菌になる、とは考えないほうが素直です。
・そして来院間を空の根管にしないこと。著者らは、生き残った菌が封鎖した根管の中で次の来院までに増えると観察しています(以前の研究と合わせた観察)。複数回で治療するなら、来院間に何を入れておくかまでが感染対策です。
・なお、この研究はNaOClの組織を溶かす力や刺激性を比べたものではありません。濃度の選択には、抗菌効果以外の要素も入ります。

ここだけ、冷静に補助線

読むときの補助線:まず、各群20根管の小さな臨床研究で、群への割り付け方法は書かれておらず、統計学的な検定も示されていません。「0.5%と5%に差はなかった」は、20本ずつで目立った差が見えなかったという意味で、同じ効果だと証明したわけではありません。EDTA併用群の「より効率がよい」も、20本中3本と6本・8本という数の差に基づく読みです。第二に、EDTA併用群は処置時間が25分(NaOCl 10分+EDTA 10分+NaOCl 5分)で、NaOClだけの群の15分より長く、差がEDTAそのものによるのか、時間や洗浄の回数によるのかは切り分けられません。第三に、検体は各来院の処置前にだけ採っていて、洗浄の直後に菌がどれだけ減ったかは今回の研究では測っていません。来院間に菌が「増えた」という観察は、著者らの以前の研究とあわせての読みです。また、3回目の菌数の中央値は菌が出た根管だけの値と読め、定義は明記されていません。第四に、EDTA併用群が少なかったのは3回目だけで、2回目は11本とほかの群と差がありません。第五に、培養で菌が出なかったことは、根管のどこにも菌がいないことを意味しません。第六に、0.5%群のうち15本は既報の症例で、対象は単根歯に限られ、治療成績(治癒)は追っていません。1回目の治療後に急性化した12本を、その後どう扱ったかも記載がありません。それでも、患者さんの根管で洗い方ごとに菌を数え、来院間に菌が戻ることまで示したこの研究は、洗浄と貼薬を組み合わせて考える今の歯内療法の土台のひとつです。自分の洗浄は「濃さ」だけに頼っていないか——見直すきっかけになる1本です。

今日のひとこと

著者らの結論:臨床的に評価した範囲では、0.5%と5%のNaOClで抗菌効果に差はなかったEDTAと5% NaOClの併用は、NaOCl単独より効率がよかった。そして、器具操作と洗浄を生き延びた菌は、貼薬をしない来院間に空の根管の中で急速に増えていた。筆者の読みでは、この論文の値打ちは「何%を使うか」より、洗浄だけでは根管は無菌にならず、来院と来院の間に何を入れておくかまで含めて感染対策だと、培養の数字で示した点にあります。

Byström A, Sundqvist G. The antibacterial action of sodium hypochlorite and EDTA in 60 cases of endodontic therapy. Int Endod J. 1985;18:35-40. PMID: 3922900
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。