意志の力に頼らない。通い続けられる「デザイン」を考える
蛇口のレバー、Caps Lock、ロナウドのルーティーン。そこから予防歯科の仕組みづくりを考えた話。

ボタンが多いほど、使われなくなる
アプリを作るときにいちばん意識しているのは、ボタンの数です。ボタンが多いほど、道具は使われなくなっていきます。だから、なるべく押さずに済むように、今までより確実に早く、手間も少なく済むように。そこを考えながら画面を組み立てています。
ちょうど同じ頃、ラジオでデザインの話を耳にしました。レバー式の水道の蛇口は、上げると水が出るか、下げると水が出るか。朝礼でみんなに聞いてみたら、答えは割れました。
今の主流は「上げると出る」です。感覚だけで言えば、押し下げたら下に水が出るほうが自然なはず。それでも上げる方式になっているのは、うっかり触れて水を出してしまうのを防ぐためと、地震などで上から物が落ちてきたときに、レバーが押されて水が出っぱなしになるのを防ぐためだそうです。人の感覚より、間違いが起きないことを優先した設計なのです。

気づけない誤操作は、いちばんたちが悪い
逆に、私がいちばんイライラする設計が「Caps Lock」キーです。一生使わないのに、キーボードの左側、押しやすい場所にある。うっかり押すと大文字のまま何文字も打ってしまい、しばらく気づけません。
大文字はShiftキーを押している間だけで十分だったはずです。便利そうだからと付け足した機能が、結局は失敗になり、それでもずっと残り続けている。ちなみにラジオでは無効にする方法も紹介されていて、私もさっそく無効にしようと思いました。
意図しない操作が起きにくいようにすること。そして不要な機能は付けず、シンプルにすること。とくに「間違えたのに気づけない」作りは、できるだけなくしたいと思っています。

ロナウドは、トレーニングを「決まっていること」にした
デザインが大事なのは、アプリだけではありません。医院の動線もそうですし、患者さんを予防へつなげるための仕組みもそうです。
最近、クリスティアーノ・ロナウド選手がインタビューで、なぜ毎日トレーニングを続けられるのかを話していました。嫌な日は絶対にある。だからルーティーンにしている。ルーティーンは、自分の意志とは関係なくやらなければいけないこと。学校に行くのと同じで、トレーニングに行くのは「もう決まっていること」なのだ、と。それをやるだけで人生は変わる、という話でした。
予防歯科も同じだと思います。熱意のある方にはもちろん来てほしい。でも、そこまでの熱意がなくても、3か月から6か月に1回くらいは自然と検診に来ている。そんなふうに、
それが大事なのではないかと考えています。たとえばアプリで通知を届けたり、定期的に来ることでちょっとしたメリットがあるようにしたり。院内のサイネージも、その入り口になるかもしれません。


