1問1答 論文 エンド

NiTiロータリーか手用Kファイルか——根管内の細菌の減り方に差は検出されなかった。生理食塩水だけで形成すると、最終ファイル後に菌が検出されなくなったのは、菌がいた根管の28%(1998年・根尖性歯周炎の患者48人)

1問1答 論文 エンド

エンド|根尖性歯周炎の患者48人を無作為に2群へ分け、洗浄を滅菌生理食塩水だけにそろえて、NiTiロータリー(ProFile .04)と手用ステンレスKファイルのステップバック法で、形成前と最後の3本のファイル直後に根管の細菌を採って比べた臨床研究(Dalton 1998・Journal of Endodontics)

NiTiロータリーには「根管がきれいになりそう」な理由がありました。テーパー0.04の器具なら根管壁をより広く削れるかもしれない回転の「アルキメデスのねじ」作用で切削片と細菌を引き出すかもしれない——けれど、感染根管で細菌をどれだけ減らすかは誰も確かめていませんでした。そこでノースカロライナ大学のグループは、根尖性歯周炎の患者48人(下顎大臼歯の近心頬側根管と単根管の下顎小臼歯・1人1歯)を歯種と湾曲で層別して無作為に割り付け、ProFile .04のNiTiロータリー手用ステンレスKファイルのステップバック法で形成しました。形成前(S1)と最後の3本のファイルの直後(S2・S3・S4)に菌を採り、嫌気培養でコロニー数を数えます。洗浄は各採取の前に滅菌生理食塩水2mLだけ——形成そのものの効果を取り出すための条件です。結果、形成前に両群の有意差はなく(log10平均 4.60対5.12・p=0.26)、S2・S3・S4のいずれもS1より有意に少なくなりました(2群合算の解析・p<0.0001)が、減り方のパターンにも全体にも両群の差は検出されませんでした(p=0.40・p=0.42)。2群を合わせると、最終ファイル後(S4)はその前の2段階より有意に少なく、最後の1本まで減り続けました。それでも、形成前に菌が検出された46根管のうち、最終ファイル後に菌が検出されなくなったのは13根管(28%)だけ。著者らは「どちらの方法も根管を予測どおりに無菌にはできなかった」と結論しています。

論文
Bacterial Reduction with Nickel-Titanium Rotary Instrumentation
著者
B. Clark Dalton, Dag Ørstavik, Ceib Phillips, Mary Pettiette, Martin Trope(ノースカロライナ大学歯学部・米国/Ørstavikはスカンジナビア歯科材料研究所・ノルウェー)
掲載
Journal of Endodontics 1998;24(11):763-767
種類
臨床研究(患者の歯・層別ブロック無作為化の2群比較)。対象=根尖部透過像があり温度・電気診に反応せず根管治療歴のない、成熟した下顎第一・第二大臼歯(近心頬側根管のみ採取)と単根管の下顎小臼歯。根尖性歯周炎の患者48人(1人1歯)+陰性対照として不可逆性歯髄炎の生活歯5歯。割付=歯種と湾曲(エックス線上で150度以下を湾曲)で層別したブロック無作為化(ブロック6)。比較=NiTiロータリー(ProFile .04 Tapers Series 29・333rpm)対手用ステンレスKファイルのステップバック法。採取=形成前(S1)と最後の3本のファイル直後(S2〜S4)、PMR法。各採取前の洗浄は滅菌生理食塩水2mLのみ(次亜塩素酸ナトリウムは採取終了後に使用)。評価=嫌気培養(37℃・7日)のCFUをlog10変換し、反復測定の二元配置分散分析。処置・採取は研究責任者1人、検査室は群名を伏せて処理。群ごとの人数の記載なし。資金=米国歯内療法学会(AAE)財団の助成を一部受けた
PMID
9855830

NiTiロータリーにすれば、根管はきれいになる?

「NiTiロータリーのほうが、根管の中まできれいになりそう」——テーパーが大きく、回転で切削片をかき出してくれるイメージがあるからです。

結論を先に言います。根尖性歯周炎の患者48人を無作為に2群へ分け、洗浄を滅菌生理食塩水だけにそろえて比べたところ、NiTiロータリーと手用ステンレスKファイルで、根管内の細菌の減り方に差は検出されませんでした(p=0.42)。

そしてもう一つ。どちらの方法でも細菌は大きく減りましたが、最終ファイルのあとに培養で菌が検出されなくなったのは、菌がいた46根管のうち13根管(28%)だけでした。

なぜ、これが問われたのか

感染根管の細菌を減らす手段は、機械的な形成・洗浄液・根管貼薬の組み合わせです。なかでも機械的な形成は最初の一手。抗菌作用のない洗浄液で形成しても細菌数がはっきり減ることは、古典的な細菌学研究で示されていました。ただしそれらはすべて手用ステンレス器具での話です。

NiTiロータリーには「効きそうな理由」がありました。著者らの挙げる仮説は2つ。テーパー0.04(従来は0.02)の器具なら、根管壁をより広く削れて清掃性が上がるかもしれない。そして回転の「アルキメデスのねじ」作用で、切削片と細菌を根管の外へ引き出すかもしれない。形態を保つ性能は確かめられていても、感染根管で細菌をどれだけ減らすかは報告がなかった——それがこの研究の出発点です。

今回の一手:患者の歯で、形成の途中に3回菌を採る

対象=ノースカロライナ大学の歯内療法科を受診した患者。根尖部透過像があり、温度・電気診で反応がなく、根管治療歴のない成熟した下顎第一・第二大臼歯(近心頬側根管のみ採取)と単根管の下顎小臼歯。1人1歯。
割付=歯種(大臼歯/小臼歯)と根管の湾曲(エックス線上で150度以下を「湾曲」)で層別したブロック無作為化(ブロックサイズ6)。
比較=NiTiロータリー(ProFile .04 Tapers Series 29・333rpm)と手用ステンレスKファイルのステップバック法。処置と採取はすべて研究責任者1人が行った。

採取は4回です。形成前に1回(S1)、そして最後の3本のファイルの直後に1回ずつ(S2・S3・S4)。各採取の前には滅菌生理食塩水2mLで洗浄し、ペーパーポイントで乾燥。少量の還元輸送液を入れて同じサイズのファイルで5回ポンピングし、ペーパーポイントで吸い取りました(PMR法)。試料は群名を伏せて検査室へ送られ、嫌気条件・37℃で7日間培養してコロニー数(CFU)を数えています。

最後の3本のサイズ(S2→S3→S4)は、層ごとにあらかじめ決められていました。
NiTi(Series 29の番号):湾曲した大臼歯 #4→#5→#6、まっすぐな大臼歯 #5→#6→#7、まっすぐな小臼歯 #6→#7→#8
Kファイル:湾曲した大臼歯 #25→#30→#35、まっすぐな大臼歯 #35→#40→#45、まっすぐな小臼歯 #45→#50→#60
(湾曲した小臼歯の層も設計されていたが、期間中に該当する患者は来院しなかった)。Kファイル群は最終サイズのあと、2サイズ上げて作業長の1mm・2mm手前をステップバックし、最終ファイルを作業長へ戻して切削片を除いてからS4を採っている。

ここで押さえたいのは洗浄条件です。S1〜S4を採るあいだ、根管の洗浄は滅菌生理食塩水だけ。形成そのものの効果を取り出すための設計で、次亜塩素酸ナトリウムは採取がすべて終わってから使われました(その後の根管は1%次亜塩素酸ナトリウムで洗浄し、水酸化カルシウムを貼薬)。

結果①:減り方は、ほぼ平行線だった

0 2 4 6 根管内の細菌数(log10 CFU・平均) 4.60 5.12 3.02 3.13 2.59 3.01 2.22 2.68 S1 形成前 S2 S3 S4 最終ファイル後 NiTiロータリー(ProFile .04) 手用ステンレスKファイル(ステップバック) 原著Table 3(NiTiは無作為割付した全員の値)。洗浄は各採取前に滅菌生理食塩水2mLのみ。S2〜S4は最後の3本のファイルの直後に採取。形成前(S1)に両群の有意差はなく(p=0.26)、減り方のパターン(p=0.40)にも全体(p=0.42)にも有意差は検出されなかった。S2〜S4はいずれもS1より有意に少ない(2群合算の解析・p<0.0001)。濃い棒=NiTi、淡い棒=Kファイル
形成の進行と根管内の細菌数(log10 CFUの平均・原著Table 3)。洗浄は滅菌生理食塩水のみ

形成前(S1)の平均はNiTi群4.60、Kファイル群5.12(log10)で、両群に有意差はありませんでした(p=0.26)。元の数に直した平均は、それぞれ1.2×10⁶、2.3×10⁶ CFUです。

形成が進むと、S2・S3・S4のいずれもS1より有意に少なくなりました(ファイルの種類によらない2群合算の解析・p<0.0001)。最終ファイル後(S4)の平均はNiTi群2.22、Kファイル群2.68。S1からの下がり幅はNiTi群2.38、Kファイル群2.44(log10・表の値から計算)で、ほぼ同じです。

統計でも、減り方のパターンに差はなく(p=0.40)、全体としての差も検出されませんでした(p=0.42)。著者らはグラフの2本の線を「ほぼ平行」と表現しています。

NiTi群には、形成前から最後まで一度も菌が検出されなかった患者が2人いました。そもそも菌がいなければ減り方は測れないので、この2人を除いて解析し直しても(有効性解析)、結果の解釈は変わりませんでした

結果②:最後の1本まで、太くするほど減った

2群を合わせて段階ごとに比べると、S2とS3の差は有意ではありませんでしたが(p=0.07)、S4はS2(p=0.0006)よりもS3(p=0.01)よりも有意に少なくなっていました。最初にぐっと減り、そのあとは減り方がゆるやかになりながらも、最後の1本まで減り続けたということです。

著者らは「細菌を減らすという観点では、最終サイズが大きいほど根管内の細菌は少ない」とまとめています。ただし同時に、大きく拡大すれば修復のしやすさ・歯根破折の起こりやすさ・根管の走行の変化も考えなければならないと釘を刺しています。

結果③:菌がゼロになった根管は3割に届かない

0 30% 60% 90% 最終サンプル(S4)の結果(%) 28% 72% 菌が検出されなくなった まだ菌が検出された 原著本文より。形成前に菌が検出された46根管のうち、13根管(28%・原著の値)がS4で培養陰性になり、33根管ではまだ菌が検出された(72%は33÷46から計算)。13根管の内訳はNiTi 7・Kファイル6(群ごとの人数は原著に記載なし)。洗浄は生理食塩水のみの段階の値。原著本文では「48人中33人で菌が検出された」と記載
最終ファイル後(S4)に培養で菌が検出されなかった割合(形成前に菌が検出された46根管)

根尖性歯周炎の48歯のうち46歯(96%)で形成前に菌が検出され、「根尖性歯周炎の根管は感染している」ことがあらためて確かめられました。一方、最終ファイル後に菌が検出されなくなったのは13根管(28%)。内訳はNiTi 7・Kファイル6で、歯種ではまっすぐな大臼歯2・湾曲した大臼歯5・まっすぐな小臼歯6でした。

なお原著本文では「48人中33人で最終サンプルに菌が検出された」と書かれています(菌が一度も出なかった2人を含む分母)。著者らの言葉は率直です。どちらの方法も、根管を予測どおりに無菌にすることはできなかった

比較のために置かれた生活歯(不可逆性歯髄炎・根尖部透過像なし)5歯では、4歯がすべての採取で菌が出ず、残る1歯もS1・S2でわずかに検出された(480・120 CFU)あとは出ませんでした。採取法そのものが汚染を持ち込んでいないことの裏づけであり、生活歯と根尖性歯周炎の歯では、根管内の細菌の状況が同じではない可能性も示唆しています(ただし対照は5歯)。

なぜ残るのか

著者らは、細菌が逃れる場所として象牙細管・切削片・器具が触れなかった根管壁・器具の届かない歯髄の入り組んだ部分を挙げています。どちらの器具を使っても、削れない場所は残るということです。

そして、この研究の洗浄は抗菌作用のない生理食塩水でした。著者らは次亜塩素酸ナトリウムやEDTAといった抗菌性の洗浄液、根管貼薬を使えば、さらに細菌が減ると期待できると書いています。今回採取したのは比較的アクセスしやすい根管だけなので、他の根管ではこの程度の消毒すら難しいかもしれない、とも。

明日の臨床へ

器具をNiTiに替えることは、それだけでは消毒の決め手にならない。生理食塩水の条件では、NiTiロータリーと手用Kファイルで細菌の減り方に差は検出されなかった。
機械的な形成だけでは足りない前提で組み立てる。形成後も7割超の根管で菌が検出された。著者らは根尖性歯周炎の歯には、形成・洗浄・無菌的操作以上の抗菌処置——複数回の来院で根管貼薬をはさむことを含む——が要るかもしれないと述べている。
最終サイズは細菌の面では効く。最後の1本でも有意に減った。ただし修復・破折・根管の走行とのかね合いを忘れない。
・著者らの見立てでは、NiTiの生物学的な価値は「より大きなサイズまで安全に形成できるなら」という点にある。これは今回の研究で確かめたことではなく、今後の検証に委ねられた仮説である。

ここだけ、冷静に補助線

まず、洗浄は生理食塩水だけという条件です。形成の効果を取り出すための意図的な設計ですが、次亜塩素酸ナトリウムを使う実際の臨床の数字ではありません。評価したのも根管内の培養細菌数で、根尖病変の治癒は見ていません。次に規模。48人を2群に分けていますが、群ごとの人数も、この人数で差を見つけられるかの見積もりも原著に記載がありません。「差は検出されなかった」は「同等だと証明された」とは違います。割付は患者の受け入れが決まるまで伏せられていましたが、処置と採取は研究責任者1人が群を知った状態で行っています(検査室側は群名を伏せていた)。対象は下顎大臼歯の近心頬側根管と単根管の下顎小臼歯だけで、湾曲した小臼歯の患者はいませんでした。両群の最終サイズもNiTiはSeries 29の番号、KファイルはISO番号で決められており、同じ太さにそろえた比較ではありません(筆者の読み)。資金は米国歯内療法学会(AAE)財団の助成を一部受けたと記載があり、器具メーカーとの関係についての記載はありません。それでも、患者の歯で形成の途中に3回菌を採って「器具より何が効くのか」を示したこの研究は、化学的な消毒と最終サイズを考える出発点として今も読む価値があります。

今日のひとこと

著者らの結論:生理食塩水を洗浄液とした条件で、テーパー0.04のNiTiロータリーと手用ステンレスKファイルのあいだに、根管内の細菌の減り方の有意差は検出されなかった。形成を進めるほど細菌は大きく減り、大きなサイズまで形成するほど残る細菌は少なかった。どちらの方法も、根管を予測どおりに無菌にすることはできなかった。臨床に効く形に直すと3つです。①器具の種類は消毒の決め手ではない——少なくとも生理食塩水の条件では、NiTiにしても細菌の減り方に有意差は検出されなかった。②形成だけでは足りない——菌がいた46根管のうち、最終ファイル後に菌が検出されなくなったのは13根管(28%)。著者らは次亜塩素酸ナトリウムなどの抗菌性洗浄液や根管貼薬で、さらに減らせると期待しています。③最終サイズは細菌の面では効く——最後の1本でも有意に減った。ただし修復・破折・根管の走行とのかね合いがある。筆者の読みでは、この論文の値打ちは「NiTiか手用か」の勝ち負けより、機械的な形成の限界を患者の歯で数字にした点にあります。ただし洗浄は生理食塩水だけで、評価は治癒ではなく培養細菌数、群ごとの人数も記載がない研究です。

Dalton BC, Ørstavik D, Phillips C, Pettiette M, Trope M. Bacterial reduction with nickel-titanium rotary instrumentation. J Endod. 1998;24(11):763-767. PMID: 9855830
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。