エンド|電気的根管長測定器Root ZXを、取扱説明書どおりの「0.5」表示と、「Apex」表示の2通りで使い比べ、実際の根管長とのずれと、術者内・術者間で測定値の平均に差が出るかを調べた抜去歯のin vitro研究(Ounsi & Naaman 1999・International Endodontic Journal)
電気的根管長測定器(EAL)は、根管内の導電性の液体で値が狂うことがあり、その使用は長く議論されてきました。Root ZXの取扱説明書は、ファイルを「Apex」表示まで進めてから「0.5」表示(根尖孔の0.5mm手前)まで引き戻す使い方を示していました。先行研究はRoot ZXの精度を示していましたが、著者らは「精度は示されたが、信頼性(何度・誰が測っても同じ結果が出ること)は示されていない」と考えます。そこで抜去した単根のヒト歯39本を生理食塩水で作ったゲルに立てて歯周組織の代わりにし、次亜塩素酸ナトリウムで洗浄した未形成の根管を、2人の術者がそれぞれ2回ずつ測りました。基準は、6倍拡大で根尖孔からファイル先端が見えた長さです。測定できなかった3本を除く36本・各表示144測定で比べると、許容範囲±0.5mmに入ったのは「0.5」表示で止めた場合50%、「Apex」表示で止めた場合84.7%。ずれの平均も「0.5」表示0.75mmに対し「Apex」表示0.34mmでした。一方、術者内・術者間の測定値の平均には、どちらの表示でも有意差がありませんでした。著者らの結論は「Root ZXは『根尖孔から0.5mm手前』の位置を検出できない。根尖孔(大径)の検出にだけ使うべきだ」。ただしこれは抜去歯とゲルを使った実験室の結果で、著者ら自身も生体内での信頼性はまだ証明されていないと書いています。
①「0.5」まで戻して作業長を決めていませんか
電気的根管長測定器で、ファイルを「Apex」まで進めてから「0.5」表示まで引き戻し、そこを作業長の目安にする。Root ZXの取扱説明書が示していたのが、まさにこの使い方でした(「0.5」=根尖孔の0.5mm手前)。
結論を先に言います。抜去歯を使ったこの実験では、「0.5」表示で止めると許容範囲±0.5mmに入ったのは半分(50%)。「Apex」表示で止めると84.7%が入りました。著者らの結論は「Root ZXは『根尖孔から0.5mm手前』の位置を検出できない。根尖孔の検出にだけ使うべきだ」です。
ただし、これは抜去歯とゲルを使ったin vitro(実験室)の結果です。この前提は最後まで持って読んでください。
②「精度」は示されていた。「信頼性」は?
Root ZXの精度を調べた先行研究は、すでにいくつかありました。原著の序論によれば、Falchetta & Castellucciは100例中91%で正確な値を出したと報告し、Shabahangらは26例で96.2%という値を出しています。
ところが著者らは、これらは「精度」を示したが「信頼性」は示していないと指摘します。信頼性とは、同じ術者が何度測っても、別の術者が測っても、同じ結果が出ること。道具として頼れるかどうかは、1回当たることより、繰り返し当たることで決まる、という考え方です。
・精度:「0.5」表示と「Apex」表示、それぞれの長さが実際の根管長とどれだけずれるか
・信頼性:同じ術者の1回目と2回目、術者Aと術者Bで、測定値の平均に差が出るか
③今回の一手:抜去歯をゲルに立て、2つの表示で測る
模型=歯を鉗子で保持し、0.9%食塩水で作ったゼリー状のゲルに接触させて歯周組織の代わりにした。
根管=形成も乾燥もせず、5.25%次亜塩素酸ナトリウム2mLで洗浄した状態。ファイルは#10 Kファイル。
測り方=①取扱説明書どおり「Apex」から「0.5」表示まで引き戻した長さ、②「Apex」表示に達した時点の長さ、の2種類。
基準=#15 Kファイルの先端が根尖孔(大径)に見えた長さを6倍拡大で確認。2術者×2回の4値から両端を除き、中間2値の平均を「実際の根管長」とした。
2人の術者が、それぞれ2回ずつすべての歯を測りました。読み取りは0.25mm刻みです。「0.5」表示の長さは、基準長から0.5mmを引いた位置と比べています。つまりどちらの表示も「狙った位置にどれだけ近いか」で公平に比べています。
④結果①:±0.5mm以内は、50%対84.7%
測定できなかった3本を除く36本で、各表示につき144測定(36本×2回×2術者)が集まりました。
もっとも厳しいとされる許容範囲±0.5mmに入ったのは、「0.5」表示で50%、「Apex」表示で84.7%(「0.5」表示は、範囲外が144測定中72測定=50%という原著の記載から計算)。許容範囲を±0.75mmに広げても、「0.5」表示は68.8%にとどまり、「Apex」表示は97.9%に達しました。
ずれの平均で見ても差ははっきりしています(原著Table 1)。「0.5」表示は平均0.75mm(標準偏差0.63)で、許容範囲の0.5mmを平均値の時点で超えていました。「Apex」表示は平均0.34mm(標準偏差0.23)で、範囲内に収まっています。
⑤結果②:「0.5」表示は、大きく手前にずれることがある
原著の図2では、プラスが根尖孔より手前、マイナスが根尖孔を越えた側です。どちらの表示も、ずれはほとんどが手前側に分布していました。
違いは裾の広がりです。「0.5」表示では144測定中45測定が1mm以上手前でした。「Apex」表示で1mm以上ずれたのは3測定だけで、3つともちょうど1mm、1mmを超えたものはゼロ。「0.5」表示のほうが、ずれ方のばらつきも大きかったわけです。
⑥結果③:術者内・術者間の平均値に有意差はなかった
術者内(1回目と2回目)、術者間(術者Aと術者B)の測定値の平均の差は、どちらの表示でも統計的に有意ではありませんでした(P>0.05・原著Table 2)。
⑦なぜ「0.5」は当たらないのか
著者らは、この結果がMayedaらの「根管長測定器が検出できるのは根管末端の大径(根尖孔)だけ」という結論を裏づけると述べています。機械が確実に捉えられるのは根尖孔の位置であって、その少し手前の位置は捉えられない、という読みです。
また著者らは考察で、根管はいつも根尖狭窄部を持つわけではなく、大径・小径がはっきりしているとも限らないため、±1mmを許容範囲とする著者もいると紹介しています。
なお方法の章では、測定の基準に根尖孔を選んだ理由として、根尖孔が唯一信頼できる根尖側の目印だからと書かれています。
⑧明日の臨床へ
・「0.5」表示の長さを、そのまま「根尖孔の0.5mm手前」と読み替えない。この実験では、半分が±0.5mmの外にあった。
・ただし著者ら自身が、生体内での信頼性はまだ証明されていないと書いています。臨床では、触覚・エックス線写真・ペーパーポイントとの突き合わせが必要だ、と。
・対象は1999年当時のRoot ZXと、その取扱説明書の使い方です。いま手元にある機種の表示が同じ意味かは、それぞれの説明書で確かめてください。
⑨ここだけ、冷静に補助線
今日のひとこと
著者らの結論:Root ZXは「根尖孔から0.5mm手前」の位置を検出できない。根尖孔(大径)の検出にだけ使うべきである。抜去歯36本・144測定のin vitroで、許容範囲±0.5mmに入ったのは「0.5」表示で止めた場合50%、「Apex」表示で止めた場合84.7%。1mm以上ずれたのは「0.5」表示で45測定、「Apex」表示で3測定(3つともちょうど1mmで、1mmを超えたものはゼロ)。一方、術者内・術者間の測定値の平均には、どちらの表示でも有意差がありませんでした(ただし1回ごとのばらつきは、「0.5」表示で標準偏差0.63mmと小さくありません)。だから著者らは、「Apex」表示で長さを測り、そこから術者が自分で安全域を引く使い方を勧めています。ただし抜去歯とゲルの実験室の結果であり、当時の機種と取扱説明書での話です。著者らも、生体内での信頼性はまだ証明されていないので、臨床では触覚・エックス線写真・ペーパーポイントとの突き合わせが必要だと書いています。


