1問1答 論文 エンド

ラバーダム、実際に使っている歯科医師はどれくらい?——2001年に日本ヘルスケア歯科研究会の会員へ郵送したアンケート(448人が回答・回収率39.9%)で、「ラバーダムをしている」は51.1%、「ほとんど毎日」は22.5%。使わない理由の1位は「面倒だから」で、「歯内治療の成績が良くなると思う」は、している人67.2%・していない人40.7%だった(内藤 2002)

1問1答 論文 エンド

エンド|2001年、日本ヘルスケア歯科研究会の会員1,124人に郵送した質問紙調査(448人が回答)で、ラバーダムの使用頻度・使う場面・使わない理由・期待する効果を調べた横断的な調査(内藤 2002・日本ヘルスケア歯科研究会誌)

根管治療にはラバーダム、と習っても、毎日の診療で使っているかは人それぞれです。内藤らは2001年、日本ヘルスケア歯科研究会の会員1,124人に郵送のアンケートを送り、448人(39.9%)から回答を得ました。「ラバーダムをしている」は51.1%、「ほとんど毎日」は22.5%(いずれも回答者448人に対する割合)。使わない理由の1位は「面倒だから」(34.3%)で、「歯内治療の成績が良くなると思う」は、している人67.2%・していない人40.7%と、有意な差があったと報告されています(検定の方法とp値は記載なし)。ただし1つの研究会の会員への調査で、答えは自己申告です。治療の成績は測っていません。

論文
ラバーダムの使用状況とその背景因子(Frequency of Use of the Rubber Dam and its Affecting Factors)
著者
内藤 徹、菅 義浩、野村 義明、豊島 義博、藤木 省三、横田 誠(九州歯科大学 歯科保存学第2講座 ほか)
掲載
日本ヘルスケア歯科研究会誌(J Health Care Dent)2002; 4(1): 18–23
種類
郵送の質問紙調査(横断的な調査)。日本ヘルスケア歯科研究会の医療従事の正会員1,124人に2001年3月に送付し、448人が回答(回収率39.9%)。使用頻度・使う場面・使わない理由・期待する効果・背景の属性など20項目
資金・利益相反
原典に記載は無い
DOI
10.51066/jhcda.4.1_18(J-STAGE https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhcda/4/1/4_18/_article/-char/ja)
PMID
なし(PubMed 未収載の和文誌)

①ラバーダム、実際に使っている歯科医師はどれくらい?

根管治療にはラバーダム。学生時代にそう習い、実習でも装着した人がほとんどだと思います。それでも、毎日の診療で本当に使っているかと聞かれると、答えに迷う人も少なくないはずです。

九州歯科大学の内藤徹らは2001年、日本ヘルスケア歯科研究会の会員に郵送のアンケートを送り、ラバーダムをどのくらい使っているか、使わない理由は何か、使う人と使わない人で考え方がどう違うかを調べました。

結論を先に書きます。
・郵送の質問紙調査:日本ヘルスケア歯科研究会の会員1,124人に送り、448人が回答(回収率39.9%)。回答者の99%は歯科医師、96%は診療所の所属
・「ラバーダムをしている」と答えたのは51.1%(229人)。「ほとんど毎日」は22.5%(101人)、「週に数回」13.8%、「月に数回」6.2%、「それよりもまれに」7.1%(いずれも回答者448人に対する割合)
・使う場面で一番多かったのは歯内治療(66.1%)
・使わない理由で一番多かったのは「面倒だから」(34.3%)、次いで「患者さんが嫌がるから」(18.8%)。「コストがかかるから」は2.3%
・ラバーダムで「歯内治療の成績が良くなると思う」と答えたのは、している人67.2%・していない人40.7%で、差は統計学的に有意と報告されている(検定の方法とp値は記載なし)
・注意:1つの研究会の会員への調査で、回収率は約4割。答えは自己申告で、使っている頻度や治療の成績を実際に測ったものではない

②なぜ調べる必要があったのか

ラバーダムは、治療中の歯を唾液から守り、細菌が入るのを防ぐ方法として、多くの教科書が使うことを勧めています。とくに歯内治療では、口の中の細菌による2次感染を防ぐために欠かせないとされてきました。

ところが、日本の診療室で実際にどのくらい使われているかは、ほとんど分かっていませんでした。著者らが序論で引用した調査では、日本歯内療法学会の会員を対象にした2000年の調査で70.3%が歯内治療時に使うと答えていたものの、1,170人に送って回答は74人だけでした。また、大学病院に来た患者に尋ねた1996年の三好らの調査では、ほかの医院でラバーダムをされた経験があったのは2.5%(127人中3人)でした。

さらに、2000年4月の診療報酬の改定で、レジン充填時のラバーダムは算定できなくなりました。使う側の環境が厳しくなるなかで、実態と、使わない理由を確かめようとしたのがこの調査です。

③どんな調査か

対象は日本ヘルスケア歯科研究会に所属する医療従事の正会員1,124人です。2001年3月18日に質問票を郵送し、5月18日までに回収しました。質問は、治療中のラバーダムの使用頻度、ラバーダムについての教育の経験、診療の形態、基本的な属性など20項目です。

回答は448人(39.9%)。男性403人(90%)、歯科医師442人(99%)、診療所の所属431人(96%)で、開業医または勤務医の男性歯科医師が大半を占めていました。

④結果:使っているのは約半数、ほとんど毎日は22.5%

「ラバーダムをしている」と答えたのは51.1%(229人)でした。頻度の内訳は、「ほとんど毎日」22.5%(101人)、「週に数回」13.8%(62人)、「月に数回」6.2%(28人)、「それよりもまれに」7.1%(32人)です。どの割合も、回答者448人を分母にした値でした(101÷448=22.5%など、筆者が人数から確かめた)。

0 10% 20% 30% 回答者448人に対する割合 % 22.5% 13.8% 6.2% 7.1% ほとんど毎日 週に数回 月に数回 それよりもまれに 2001年の郵送アンケート 448人が回答 4区分は101人・62人・28人・32人(原典の本文)
図1 ラバーダムの使用頻度。原典の本文と図1の人数・割合を写した(分母は回答者448人)。4区分の人数を筆者が足すと223人で、「している」の229人とは合わない(原典の記載のまま)。原典の図1の説明文は「している」を228人(51.5%)としている。

「している」と答えた人が一番多く使う場面は、歯内治療が66.1%(150人)で最も多く、次いで小児の治療時の誤飲防止11.9%(27人)、レジン充填時6.6%(15人)、フィッシャーシーラント4.4%(10人)でした(1つだけ選んだ回答を集計し、複数の回答は無効として扱った。「その他」は割合の記載なし)。

ラバーダムをする人としない人の間では、性別・年齢・臨床経験年数・1日の患者数・患者1人あたりのチェアタイムに差は認められなかったと報告されています。大学でのラバーダムの実習も、している人の98.3%、していない人の96.3%が受けていて、差は認められなかったと報告されています。臨床研修でラバーダムを使っていた(症例により使っていたを含む)割合も91.6%と87.2%で、原典は両者にほとんど差が見られないとしています。

保険外の診療の割合が増えるほど、ラバーダムをしている割合は高い傾向でした(すべて・ほとんど保険44.6%、保険外が20%以内52.9%、20%以上58.1%)。ただし、この差は統計学的に有意ではなかったとされています。

「していない」と答えた人の理由は、「面倒だから」34.3%が最も多く、「患者さんが嫌がるから」18.8%、「時間がかかるから」16.0%と続き、「コストがかかるから」は2.3%でした(複数の回答は除外。「治療がしにくくなる」「その他」は割合の記載なし)。

0 25% 50% 75% 100% 「思う」と答えた人の割合 % 67.2% 40.7% 76.0% 53.7% 歯内治療の成績が良くなる レジンの接着力が増す ラバーダムをしている ラバーダムをしていない 原典の図5・図6 歯内治療は有意差ありと報告(検定法とp値の記載なし) 接着力は検定結果の記載なし
図2 ラバーダムで得られる効果を「思う」と答えた人の割合。原典の本文と図5・図6の数値を写した。歯内治療の成績について、両群の差は統計学的に有意と報告されている(検定の方法とp値は記載されていない)。レジンの接着力について、原典は「著しい差異が認められた」と書いているが、検定の結果は記載されていない。

ラバーダムに期待する効果には、両群で大きな違いが報告されています。「ラバーダムを行うと歯内治療の成績が良くなると思う」と答えたのは、している人の67.2%に対して、していない人では40.7%で、差は統計学的に有意と報告されています。「レジン充填時の接着力が増すと思う」も、している人76.0%・していない人53.7%で、「思わない」は3.9%と21.8%でした。

ラバーダムに妥当だと思う診療報酬の点数は、全体の平均50.0点(最小0点・最大500点・標準偏差43.15)でした。している人は47.0±38.43点、していない人は53.8±47.81点で、統計学的な有意差は認められませんでした。

⑤結果の読み方

大学での実習の経験や、ラバーダムのコストに関する回答には両群で大きな差が見られなかったと著者らは述べ、違ったのは効果への期待でした。この点から著者らは、ラバーダムをしていない人の多くは、ラバーダムで得られる効果を期待できないと考えて使っていない可能性がある、と考察しています。これは回答の分布から著者らが読み取った可能性で、理由と使用の因果関係を確かめたものではありません。

著者らは同時に、細菌感染で根尖病変ができることや、唾液が付くと充填材の接着力が下がることは明らかでも、ラバーダムを使わないことでそれが起こるという根拠は傍証にとどまる、とも書いています。ラバーダムが標準の治療とされている今では比較試験は難しく、観察研究に頼るしかないかもしれない、という見方です。

「患者さんが嫌がるから」という理由について、著者らは三好らの1996年の調査を引用しています。大学病院でラバーダムを装着された患者127人のうち118人(92.9%)が、今後の診療でもラバーダムを希望したという結果です。患者が本当に避けたいと思っているのかは疑問だ、というのが著者らの考察です。

⑥明日の臨床へ

ここから筆者の読みです。この調査で、使わない理由の1位は「面倒だから」、2位は「患者さんが嫌がるから」でした。一方で、大学で実習を受けた割合には差が認められず、違いは「使えば成績が良くなると思うかどうか」に表れていました。

そう考えると、院内でラバーダムを広げたい時には、使う目的や、使いにくくしている事情(手間・時間・患者さんへの説明)を話し合うところから始めるのも1つの手です。ただし、どんな広げ方が効くかを比べた調査ではありません。患者さんへの説明も、「嫌がるだろう」と先に決めつけず、唾液や細菌、器具の誤飲から歯と体を守るためだと伝えてから装着する、という順番が試しやすい一手です。

ただし、この調査はラバーダムの有無で治療の成績を比べたものではありません。また、2001年の、1つの研究会の会員の回答であることも頭に置いておきたいところです(ここまで筆者の読み)。

⑦ここだけ補助線

日本の診療室でのラバーダムの使用状況を、数字で示した数少ない調査です。読むときは次の点だけ押さえておきたいところです。
・対象の偏り:日本ヘルスケア歯科研究会という1つの研究会の会員への調査で、回収率は39.9%。日本の歯科医師全体の値とは限らない
・自己申告:使用頻度も理由も本人の回答で、実際の使用を観察したものではない。「している」には「それよりもまれに」も含まれる
・統計の示し方:「有意差あり」「差は認められなかった」と書かれているが、検定の方法とp値は示されていない
・原典の中の食い違い:「している」は本文で51.1%(229人)、図1の説明文で51.5%(228人)。頻度の4区分を筆者が足すと223人。保険診療のみの群は本文44.6%・図3は44%、レジン充填は本文6.6%・図2は6.5%
・時代:2001年の調査で、その後の診療報酬や器材の変化は反映していない
・資金・利益相反:原典に記載は無い
それでも、「使わない理由」と「効果への期待」の違いを示した点は、今も考えるきっかけになる1本です。

今日のひとこと

2001年に1つの研究会の会員へ郵送したアンケートで、「ラバーダムをしている」は51.1%、「ほとんど毎日」は22.5%でした。使わない理由の1位は「面倒だから」で、「歯内治療の成績が良くなると思う」は、している人67.2%・していない人40.7%でした。答えは自己申告で、治療の成績は測っていません。大学で実習を受けた割合には差が認められず、「効果への期待」には大きな違いがありました。使う目的をどう話し合うかを考えさせる1本です。

内藤徹, 菅義浩, 野村義明, 豊島義博, 藤木省三, 横田誠. ラバーダムの使用状況とその背景因子. 日本ヘルスケア歯科研究会誌. 2002;4(1):18-23. doi: 10.51066/jhcda.4.1_18(PubMed 未収載)
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。