1問1答 論文 エンド

峡部の削りカス、レーザーでどこまで取れる?——抜去した下顎大臼歯30本をマイクロCTで比べると、SWEEPS は削りカスの体積を近心根・遠心根それぞれの根全体の平均で約84%減らし、PIPS・超音波(約50〜59%)より有意に多かったが、どの方法でもゼロにはならなかった(Yang 2020)

1問1答 論文 エンド

エンド|抜去した下顎大臼歯30本(近心根は峡部のある2根管、遠心根は1根管)を、洗浄なしで ProTaper で拡大して削りカスをため、超音波(UAI)・PIPS・SWEEPS の3つの方法(各10本)で最終洗浄し、削りカスの体積の減り方をマイクロCTで測った実験室研究(Yang・Peng ら 2020・International Endodontic Journal)

下顎大臼歯の近心根の峡部には、根管を広げたときの削りカスが詰まりやすい場所です。Yang らは、抜去した下顎大臼歯に削りカスをためてから3つの方法で最終洗浄し、削りカスがどれだけ減ったかをマイクロCTで測りました。削りカスの減少率(根全体の平均)は、近心根で SWEEPS 84.3%・PIPS 58.8%・超音波 50.3%、遠心根で SWEEPS 84.0%・PIPS 56.6%・超音波 51.1%で、SWEEPS は近心根・遠心根とも他の2つより有意に多く減らしました(P<0.05)。ただし削りカスがすっかり無くなった根管は、どの方法でも1本もありませんでした。抜去歯で、拡大中は洗浄せず根尖孔も塞いだ条件の実験室研究(各群10本)で、測ったのは硬い削りカスの体積だけです。治療の成績にどう響くかは調べていません。

論文
Micro-CT study on the removal of accumulated hard-tissue debris from the root canal system of mandibular molars when using a novel laser-activated irrigation approach
著者
Q. Yang、M. W. Liu、L. X. Zhu、B. Peng(中国 武漢大学 口腔医学院)
掲載
International Endodontic Journal 2020;53(4):529-538(2019年11月受理・同月オンライン公開)
種類
実験室研究(ex vivo・抜去歯)。抜去した下顎第一・第二大臼歯109本をマイクロCTで下見し、近心根に峡部のある2根管・遠心根が1根管の30本を選んだ。根尖孔をワックスで塞ぎ、拡大中は洗浄も吸引もせずに ProTaper Universal で近心根 F3・遠心根 F4 まで拡大して削りカスをためた。近心根の削りカスの量が近い3本ずつの組から無作為に3群(各10本)へ割り付け、超音波(UAI、チップを作業長の2mm手前まで挿入)・PIPS・SWEEPS(Er:YAG レーザー 2940nm・20mJ・15Hz、チップはアクセス窩洞に置く)で最終洗浄。液は全群1%次亜塩素酸ナトリウム計15.5mL、30秒動かして30秒おくを3回(動かした時間は計90秒)。拡大の前・後と洗浄後にマイクロCT(15μm)で撮り、削りカスの減少率を根全体と3部位で出した。近心根は一元配置分散分析+LSD法、遠心根は Kruskal–Wallis 検定
資金・利益相反
中国国家自然科学基金(81570973・81700966)。著者らは利益相反は無いと記載
PMID
31710382

①峡部に詰まった削りカス、洗浄で取れていますか?

下顎大臼歯の近心根。2本の根管の間の「峡部(イスムス)」には、根管を広げたときの象牙質の削りカスが押し込まれやすい場所です。ファイルが届かないこのすき間を、洗浄でどこまできれいにできているでしょうか。

この削りカスを、超音波と2種類のレーザーで洗浄したときにどれだけ減らせるかを、マイクロCTで測ったのが、Yang・Peng らが International Endodontic Journal に出した研究です(2019年11月オンライン公開、2020年掲載)。

結論を先に書きます。
・抜去した下顎大臼歯30本(近心根は峡部のある2根管、遠心根は1根管)で、洗浄なしで根管を広げて削りカスをためてから、3つの方法(各10本)で最終洗浄した実験室研究。削りカスの体積を洗浄の前後でマイクロCTで測った
・削りカスの減少率(根全体の平均)は、近心根で SWEEPS 84.3%・PIPS 58.8%・超音波 50.3%、遠心根で SWEEPS 84.0%・PIPS 56.6%・超音波 51.1%
・SWEEPS は近心根・遠心根とも、PIPS と超音波より有意に多く減らした(P<0.05)
・削りカスがすっかり無くなった根管は、どの方法でも1本もなかった

②なぜこの研究が必要だったか

根管を回転式のファイルで広げると象牙質の削りカスが出て、根管のくぼみ・フィン・峡部に詰まります。著者らは引用文献をもとに、この「たまった硬組織の削りカス(AHTD)」は、根管充填材の封鎖を妨げたり、根尖性歯周炎の歯で消毒を妨げたりするおそれがある、と書いています。シリンジで流すだけでは、峡部のような入り組んだ場所までは液が届きにくいことも知られています。

そこで超音波やレーザーで洗浄液を動かす方法が使われてきました。レーザーの方法の一つ PIPS は、Er:YAG レーザーの短いパルスで液の中に泡と圧力の波を起こす方法です。SWEEPS は PIPS を改良した新しい方法で、パルスを2つ組で出すのが違いです(開発者らの報告では、圧力の波が PIPS より強くなる)。ところが、SWEEPS が削りカスをどれだけ取り除くかをマイクロCTで調べた研究は、まだありませんでした。

③何をどう比べたか

・歯:抜去した下顎第一・第二大臼歯109本をマイクロCTで下見し、近心根に2本の根管とその間の峡部(歯冠から根尖の方向に2mm以上)があり、遠心根が1根管で、近心根の湾曲が25〜35°の30本を選んだ
・根管の拡大:ProTaper Universal で、近心根は F3、遠心根は F4 まで拡大。根尖孔はワックスで塞いだ(液が根尖から抜けない閉じた状態)。削りカスをためるため、拡大中は洗浄も吸引もしなかった
・群分け:近心根の削りカスの量が近い3本ずつの組を作り、組の中で1本ずつ3群へ無作為に割り付けた(各10本)

最終洗浄は次の3つで、どの群も1%次亜塩素酸ナトリウム計15.5mL、液を30秒動かして30秒おく、を3回(動かした時間は計90秒)です。

・超音波(UAI):#15・テーパー0.02 の超音波チップ(Irrisafe)を作業長の2mm手前まで根管に入れて動かした
・PIPS:Er:YAG レーザー(波長2940nm・20mJ・15Hz・0.3W・パルス幅50μs)。PIPS 用の先端チップを根管には入れず、液を満たしたアクセス窩洞(髄腔)に置いて照射
・SWEEPS:同じ波長・出力の Er:YAG レーザーの Auto SWEEPS モードと SWEEPS 用チップ。こちらもアクセス窩洞(髄腔)に置いて照射

評価は、根管の拡大の前・拡大の後・最終洗浄の後の3回、マイクロCT(解像度15μm)で撮影。拡大前に空気だった根管のすき間に、拡大後に象牙質と同じ濃さの物質が入っていれば「削りカス」として体積を測り、減少率=(1−洗浄後の削りカスの体積÷洗浄前の体積)×100 を、根全体と歯冠側・中央・根尖側の3つの部位ごとに出しました。近心根は一元配置分散分析(多重比較は LSD 法)、遠心根は Kruskal–Wallis 検定で比べています。

④結果1:SWEEPS は近心根・遠心根とも約84%減らした(根全体の平均)

まず、根管の体積(拡大の前と後)と、洗浄前の削りカスの体積には、3群の間で有意差を検出しませんでした。洗浄前の削りカスは、近心根で平均約0.8mm³(拡大後の根管の体積の約7%)でした。

0 25% 50% 75% 100% 削りカスの減少率(%) 50.3% 51.1% 58.8% 56.6% 84.3% 84.0% 超音波(UAI) PIPS SWEEPS 近心根(峡部あり) 遠心根(1根管) 濃い棒=近心根・淡い棒=遠心根。抜去した下顎大臼歯・各群10本。原著の表1・表2の平均
図:最終洗浄による削りカスの減少率(根全体の平均・%)。抜去した下顎大臼歯・各群10本、原著の表1・表2。近心根は3群の全ての組み合わせで有意差(P<0.05)。遠心根は SWEEPS と他の2群の間に有意差(P<0.05)、PIPS と超音波の間には有意差を検出しなかった。

近心根(峡部あり)の減少率は、SWEEPS 84.31%、PIPS 58.79%、超音波 50.27% で、SWEEPS は他の2群より有意に多く減らしました。根全体では PIPS と超音波の間にも有意差がありました。遠心根でも SWEEPS が 83.97% と、PIPS(56.57%)と超音波(51.14%)より有意に多く減らしました。遠心根では PIPS と超音波の間に有意差を検出していません。

⑤結果2:部位ごとに見ても SWEEPS が上、ただしゼロにはならない

根を歯冠側・中央・根尖側に分けた減少率を表にしました(原著の表1・表2の平均を小数1桁に丸めた値)。

表:根の部位ごとの削りカスの減少率(%・平均・各群10本) 根 方法 歯冠側 中央 根尖側 根全体 近心根 超音波(UAI) 55.3 48.6 48.1 50.3 PIPS 57.3 51.6 55.4 58.8 SWEEPS 84.9 87.5 78.9 84.3 遠心根 超音波(UAI) 58.0 58.2 41.5 51.1 PIPS 59.0 57.5 55.1 56.6 SWEEPS 83.8 90.0 80.6 84.0 値は原著の表1(近心根)・表2(遠心根)の平均を小数1桁に丸めた。減少率=(1−洗浄後の削りカスの体積÷洗浄前 の体積)×100(マイクロCTで測定) 近心根:根全体では3群の全ての組み合わせで有意差(P<0.05)。部位ごとでは SWEEPS と他の2群の間に有意差、PIPS と超音波の間には有意差を検出せず 遠心根:部位ごと・根全体とも SWEEPS と他の2群の間に有意差(P<0.05)、PIPS と超音波の間には有意差を検出 せず
表:根の部位ごとの削りカスの減少率(%・平均・各群10本)。原著の表1(近心根)・表2(遠心根)。

どの部位でも SWEEPS の減少率は約79〜90%で、他の2群より有意に高い値でした。一方、近心根を部位ごとに見ると、PIPS と超音波の間には有意差を検出していません(根全体では有意差あり)。そしてどの方法でも、削りカスがすっかり無くなった根管は1本もありませんでした。

⑥著者らの結論と、結果の読み方

著者らは、SWEEPS は PIPS と超音波より多くの削りカスを取り除き、とくに峡部のある近心根でその傾向があった、どの方法でも削りカスをすべては取り除けなかった、と結論しています。ただし数字を見ると、SWEEPS の減少率は近心根 84.31% と遠心根 83.97% でほぼ同じで、近心根と遠心根を直接比べる検定はしていません。「峡部のある近心根でも、遠心根と同じくらい減らせた」と読むのが数字に沿った読み方です。

なぜ SWEEPS が多く取り除けたかについて、著者らは次のように説明しています。2つ目のパルスが1つ目の泡がつぶれるのを早めて強い衝撃波を出し、根管壁の近くでできた泡のつぶれが壁から粒子をはがす流れを生む――これは開発者らの報告などにもとづく著者らの説明で、この研究で測ったものではありません。

もう一つ大事なのは、器具を置いた場所が方法ごとに違うことです。超音波のチップは作業長の2mm手前まで根管に入れ、レーザーの2つはアクセス窩洞(髄腔)に置いただけでした。液の量と動かした時間はそろえてありますが、「それぞれ決められた使い方で比べた結果」と読むのが無難です。

⑦明日の臨床へ

この研究から持ち帰れるのは、次のような読み方です(筆者の読み)。

・峡部の削りカスは、液を動かしても残る前提で:3つの方法のどれでも、削りカスがすっかり無くなった根管は無かった。下顎大臼歯の近心根では、峡部に残りがありうると考えて進めたい
・SWEEPS は、この模型では超音波と PIPS より多く取り除いた:近心根・遠心根それぞれの根全体の平均で、減少率は約84%。PIPS と超音波(約50〜59%)を上回った。ただし Er:YAG レーザーの機器と専用チップが要り、導入のコストは大きい
・治療の成績が良くなるかは、この研究からは分からない:測ったのは抜去歯の削りカスの体積の減り方だけで、封鎖や治癒は調べていない

導入を考える時は、この研究だけでなく、菌の減り方や根尖からの液の押し出し、臨床での研究など、ほかの観点の報告も合わせて判断したいところです。

ここだけ、冷静に補助線(1)抜去した下顎大臼歯での実験室研究で、各群10本と少数です。必要な本数の計算、測る人に群を伏せたかどうか、遠心根の2群ずつの比べ方は書かれていません。
(2)削りカスを最大限ためるため、拡大中は洗浄せず、根尖孔も塞いだという、実際の治療とは違う条件です。最終洗浄も1%次亜塩素酸ナトリウムだけで、EDTA などは使っていません。
(3)マイクロCTで測れるのは硬い(無機の)削りカスだけで、有機物の汚れや菌は測っていません。
(4)超音波のチップは根管に入れ、レーザーのチップはアクセス窩洞(髄腔)に置いたままで、器具の当て方が方法ごとに違います。シリンジだけで流す群(比べる基準の群)も置いていません。
(5)残った削りカスが封鎖や治療の成績にどう響くかは調べていません。研究費は中国の国家自然科学基金で、著者らは利益相反は無いと書いています。
「新しいレーザーの方法で削りカスの体積を平均約84%減らせたが、それでもゼロにはならない」という結果は、峡部の洗浄を考えるうえで参考になる報告です。臨床での検証が楽しみです。

今日のひとこと

抜去した下顎大臼歯のこの実験では、SWEEPS は削りカスの体積を近心根・遠心根とも約84%減らし(各根全体の平均)、PIPS と超音波(約50〜59%)より有意に多く取り除きましたが、どの方法でも削りカスがすっかり無くなった根管はありませんでした。拡大中に洗浄しない特別な条件の実験室研究で、測ったのは硬い削りカスの体積だけです。「新しいレーザーの方法は削りカスを多く減らした、ただし峡部には残りうる」と読み、治療の成績への効果は今後の研究を待つのが、この論文に合った読み方です。

Yang Q, Liu MW, Zhu LX, Peng B. Micro-CT study on the removal of accumulated hard-tissue debris from the root canal system of mandibular molars when using a novel laser-activated irrigation approach. Int Endod J. 2020;53(4):529-538. doi: 10.1111/iej.13250. PMID: 31710382
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。