1問1答 論文 保存修復

ソフトスタート照射で重合収縮は減る?——コンポジットレジン2種の円盤(厚さ2mm・各条件10個)を4つの照射モードで固めた実験室研究で、ランプ照射は底面の硬化がいちばん高かったが体積収縮は高強度照射と有意差を認めず、ステップ照射の収縮は低強度照射と有意差を認めない少ない側だった(Sudheer 2011)

1問1答 論文 保存修復

保存修復|コンポジットレジン2種(Charisma・Durafill VS)を内径10.69mm・高さ2mmのステンレスのリングに詰め、ステップ照射・高強度照射・ランプ照射・低強度照射の4つのモード(ハロゲン照射器・いずれも40秒)で固め、硬さの比(底面÷上面)と体積収縮率を比べた実験室研究(各条件10個・計80個。Sudheer・Manjunath 2011・Journal of Conservative Dentistry)

弱い光から始めて強くする「ソフトスタート」照射なら、重合収縮は減るのか。Sudheer らは2011年、コンポジットレジン2種の円盤を4つの照射モードで固めて比べました。硬さの比(底面÷上面)は、両方のレジンでランプ照射がいちばん高く、高強度照射とステップ照射は有意差を認めず、低強度照射がいちばん低い値でした。体積収縮率は、ランプ照射と高強度照射に有意差を認めず、ステップ照射と低強度照射にも有意差を認めず、ランプ・高強度の方がステップ・低強度より有意に大きい結果でした。同じソフトスタートでも、収縮が少ない側だったのはステップ照射で、ランプ照射の収縮は高強度照射と有意差を認めませんでした。ただし歯を使わない厚さ2mmの円盤の実験で、照射モードごとに光の総量(原著の照射条件から筆者が概算)が違い、照射器も3機種です。

論文
Contemporary curing profiles: Study of effectiveness of cure and polymerization shrinkage of composite resins: An in vitro study
著者
Vipin Sudheer、MK Manjunath(インド Century Dental College、J.S.S Dental College の Department of Conservative Dentistry and Endodontics)
掲載
Journal of Conservative Dentistry 2011;14(4):383-386
種類
実験室研究(in vitro)。歯は使っていない。コンポジットレジン2種(Charisma=ハイブリッド型・フィラー64体積%、Durafill VS=マイクロフィル型・フィラー40体積%)を内径10.69mm・高さ2mmのステンレスのリングに詰め、カバーガラスの上から40秒照射。照射モードは、ステップ照射(100 mW/cm²を20秒→400を20秒・Elipar Highlight)、高強度照射(700を40秒・Translux Energy)、ランプ照射(0→700へ20秒で上げ700を20秒・Translux Energy)、低強度照射(350を40秒・Translux CL)で、照射器はいずれもハロゲン。各条件10個(計80個)。硬化は上面と底面のスーパーフィシャル・ロックウェル硬さとその比(底面÷上面)、収縮はリングと試料の寸法から計算した体積収縮率。統計は分散分析・Scheffe の多重比較・t検定(p値の数字は示されていない)
資金・利益相反
資金の提供なし(Source of Support: Nil)。利益相反なしと記載
PMID
22144808

①「ソフトスタート照射なら重合収縮が減る」は本当?

照射器には、弱い光から始めて強くする「ソフトスタート」のモードが付いているものがあります。ゆっくり固めれば重合収縮が減り、辺縁がきれいに仕上がる——そう聞いて、このモードを選んでいる方もいるのではないでしょうか。では、ソフトスタートなら本当に収縮は減るのか。硬化は犠牲にならないのか。

これを4つの照射モードで比べたのが、インドの Sudheer と Manjunath が2011年に Journal of Conservative Dentistry に出した実験室研究です。

結論を先に書きます。
・コンポジットレジン2種(Charisma・Durafill VS)を厚さ2mmの金属リングに詰め、4つの照射モードで40秒照射した実験室研究(照射モードとレジンの組み合わせごとに10個・計80個)
・底面の硬化(底面÷上面の硬さの比):ランプ照射がいちばん高く、高強度照射とステップ照射は有意差を認めず、低強度照射がいちばん低かった
・体積収縮:ランプ照射と高強度照射は有意差を認めず、ステップ照射と低強度照射も有意差を認めなかった。ランプ・高強度はステップ・低強度より有意に大きかった
・著者らはソフトスタート(ステップ照射とランプ照射)をすすめていますが、この実験で、ソフトスタートのうち収縮が少ない側だったのはステップ照射だけで、ランプ照射の収縮は高強度照射と有意差を認めませんでした

②なぜこの研究が必要だったか

光で固めるコンポジットレジンには、重合収縮という避けられない性質があります。収縮そのものは無くせなくても、収縮で生じる応力は工夫で減らせる、と著者らは書いています。

その工夫の一つが、はじめは弱い光で重合の進みを抑え、そのあと強くする「ソフトスタート」です。著者らは序論で、ソフトスタートは辺縁の隙間が小さく、辺縁の封鎖が良いと報告されてきたと、引用文献をもとに述べています。ただ、新しい照射モード(ステップ照射・ランプ照射)で硬化と収縮を一緒に調べた研究は少なかった。そこで、4つの照射モードと2種類のレジンを組み合わせて比べたのが今回の研究です。

③何をどう比べたか

・試料:内径10.69mm・高さ2mmのステンレスのリングを厚さ2mmのガラス板に置き、レジンを縁まで詰めて、カバーガラス2枚でおおう。照射器の先端をカバーガラスの真上に置き、40秒照射した
・レジン:Charisma(ハイブリッド型・フィラー64体積%)と Durafill VS(マイクロフィル型・フィラー40体積%)
・照射モード(照射器はいずれもハロゲン):
 ステップ照射=100 mW/cm²を20秒→400 mW/cm²を20秒(Elipar Highlight)
 高強度照射=700 mW/cm²を40秒(Translux Energy)
 ランプ照射=0→700 mW/cm²へ20秒で上げ、700で20秒(Translux Energy)
 低強度照射=350 mW/cm²を40秒(Translux CL)
・規模:照射モード4つ×レジン2種、各10個(計80個)
・硬化の測り方:上面と底面の表面の硬さ(スーパーフィシャル・ロックウェル硬さ)を測り、「底面÷上面」の比を出した。比が1に近いほど、底面まで上面と同じように硬い
・収縮の測り方:デジタルマイクロメーターでリングと固まった試料の直径・高さを測り、体積を計算して「(リングの体積−試料の体積)÷リングの体積×100」を体積収縮率とした
・統計:分散分析、Scheffe の多重比較、t検定(p値の数字は示されていない)

なお、原典の方法の一部では Charisma を「マイクロハイブリッド型」とも書いていますが、ほかの箇所はハイブリッド型なので、この記事はハイブリッド型と書きました。

④結果1:底面の硬化は、ランプ照射がいちばん高かった

上面の硬さは、どの照射モードでも有意差を認めませんでした。差が出たのは底面で、その結果、硬さの比(底面÷上面)にも差が出ました。

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 硬さの比の平均(底面÷上面) 0.88 0.79 0.89 0.81 0.96 0.90 0.80 0.66 ステップ照射 高強度照射 ランプ照射 低強度照射 Charisma Durafill VS Charisma=ハイブリッド型(フィラー64体積%)、Durafill VS=マイクロフィル型(40体積%)。厚さ2mmのレジン円盤・各条件10個・40秒照射。比が1に近いほど底面まで硬い。表4の検定:両レジンともランプ>高強度=ステップ>低強度(=は有意差を認めず)
図1:照射モードごとの硬さの比(底面÷上面)の平均。濃い棒=Charisma、淡い棒=Durafill VS。厚さ2mmのレジン円盤・各条件10個・40秒照射。原著の表2・表4から。

硬さの比の平均は、Charisma でランプ照射0.96、高強度照射0.89、ステップ照射0.88、低強度照射0.80。Durafill VS では0.90、0.81、0.79、0.66でした。検定の結果は、両方のレジンで「ランプ照射>高強度照射=ステップ照射>低強度照射」(=は有意差を認めず)。底面の硬さも同じ並びでした。

ステップ照射は、最初の20秒が100 mW/cm²という弱い光なのに、高強度照射(700 mW/cm²を40秒)と硬さの比に有意差を認めなかった点が目を引きます。

⑤結果2:収縮は、ランプ照射が高強度照射と有意差なし、ステップ照射は少ない側

0 1 2 3 4 体積収縮率の平均(%) 1.723 2.457 2.774 3.804 2.457 3.311 1.567 2.618 ステップ照射 高強度照射 ランプ照射 低強度照射 Charisma Durafill VS 条件は図1と同じ。表5の検定:ランプと高強度は有意差を認めず、ステップと低強度も有意差を認めず、ランプ・高強度はステップ・低強度より有意に大きい
図2:照射モードごとの体積収縮率の平均(%)。濃い棒=Charisma、淡い棒=Durafill VS。条件は図1と同じ。原著の表3・表5から。

体積収縮率の平均は、Charisma で高強度照射2.774%、ランプ照射2.457%、ステップ照射1.723%、低強度照射1.567%。Durafill VS では3.804%、3.311%、2.457%、2.618%でした。

検定の結果(両方のレジン)は、ランプ照射と高強度照射は有意差を認めず、ステップ照射と低強度照射も有意差を認めず、ランプ・高強度はステップ・低強度より有意に大きい、というものです。同じソフトスタートでも、ランプ照射は「収縮が多い側」、ステップ照射は「少ない側」に分かれました。

レジンで比べると、どの照射モードでも Durafill VS の収縮が Charisma より有意に大きく、硬さの比も Charisma の方が高い値でした(硬さの比のレジン間の有意差の記載はありません)。著者らは、フィラーが多いほど重合するレジンの量が少なく、収縮が小さくなると説明しています。

⑥照射の条件を並べてみると(筆者の読み)

4つのモードは、照射時間はどれも40秒ですが、光の強さが違います。光の強さ×時間で「光の総量」を概算すると、次のようになります(論文は光の総量を報告していないので、筆者の計算です)。

表:照射モードごとの照射器・光の強さと時間・光の総量の概算 照射モード 照射器 光の強さ(mW/cm²)と時間 光の総量(筆者の概算) ステップ Elipar Highlight 100を20秒 → 400を20秒 約10 J/cm² 高強度 Translux Energy 700を40秒 約28 J/cm² ランプ Translux Energy 0→700へ20秒で上げ 700を20秒 約21 J/cm² 低強度 Translux CL 350を40秒 約14 J/cm² 照射器はいずれもハロゲン(QTH)で3機種。高強度とランプは同じ Translux Energy、低強度は Translux CL(ともに Heraeus Kulzer)、ステップだけ別メーカーの Elipar Highlight(3M ESPE)(原著の表1と方法から) 光の総量=光の強さ×時間を筆者が計算した概算(例:700×40秒=28,000 mJ/cm²≒28 J/cm²)。ランプ照射は0から 700まで直線的に上げたと仮定。論文は光の総量を報告していない(論文の報告値ではない)。照射器の出力を実測したか は記載されていない
表:照射モードごとの照射器と照射の内容、光の総量の概算。照射器と照射の内容は原著の方法と表1から。光の総量は筆者の計算。

並べると、収縮が少なかったステップ照射(約10 J/cm²)と低強度照射(約14 J/cm²)は光の総量が少ない2つで、収縮が多かったランプ照射(約21 J/cm²)と高強度照射(約28 J/cm²)は多い2つでした。著者らも考察で、収縮は光の強さ×時間と直線的な関係があり、照射時間が同じなら光が強いほど収縮が大きいという先行研究を引いています。

つまりこの実験では、「ソフトスタートかどうか」と「光の総量」と「照射器の違い」が重なっていて、どれが収縮の差を生んだのかは分けられません。照射器も3機種で(高強度照射とランプ照射は同じ Translux Energy、低強度照射は Translux CL、ステップ照射だけ別メーカーの Elipar Highlight)、この違いも重なっています。

⑦著者らの結論と考察

著者らは、ソフトスタートの照射モード(ステップ照射とランプ照射)を、従来の一定の強さの照射(高強度・低強度)より優先して使うべきだ、と結論しています。

考察では、上面の硬化には照射時間がもっとも重要で、光の強さにはあまり左右されない、底面の硬さは光の強さに関係する、と引用文献をもとに説明しています。収縮については、上の⑥のとおり光の総量との関係を挙げています。ただし表5を見る限り、ランプ照射の収縮は高強度照射と有意差を認めていません。ステップ照射は高強度照射・ランプ照射より体積収縮率が有意に小さかったものの、上の⑥のとおり、それがソフトスタートそのものの効果なのかは切り分けられません。

⑧明日の臨床へ

この研究から持ち帰れるのは、次のような読み方です(筆者の読み)。

・「ソフトスタート=収縮が減る」とは限らない:この実験では、ランプ照射の体積収縮は高強度照射と有意差を認めなかった。収縮が少なかったのはステップ照射と低強度照射で、どちらも光の総量が少ない条件だった(原著の照射条件から筆者が概算・ランプは直線的に強くなると仮定)
・収縮と底面の硬化はセットで見る:低強度照射は収縮が少ない側だったが、硬さの比はいちばん低かった。ステップ照射は収縮が少ない側で、硬さの比は高強度照射と有意差を認めなかった
・今の照射器にそのまま当てはめない:使ったのは2011年当時のハロゲン照射器で、厚さ2mm・40秒照射の円盤だけ。LED照射器や手元の照射モードの条件とは違う

照射モードを選ぶ時は、モードの名前より、何 mW/cm² を何秒当てるのか(光の総量)と、積層の厚さで底面まで硬化するかを、照射器と材料の説明書で確かめるのが無難です。

ここだけ、冷静に補助線(1)歯を使わない実験室研究です。金属リングに詰めた厚さ2mmの円盤で、窩洞の中の収縮応力や辺縁の隙間は測っていません。
(2)収縮は固まったあとの寸法から計算した体積の差で、測った時点の記載はありません。収縮応力そのものではありません。
(3)照射モードによって光の総量が約10〜28 J/cm²と違い(原著の照射条件から筆者が概算)、照射器も3機種です(高強度照射とランプ照射は同じ機種、ステップ照射だけ別メーカー)。照射器の出力を実測したかは記載されていません。
(4)各条件10個で、p値の数字は示されていません。
(5)資金の提供はなく、利益相反なしと記載されています。
「ソフトスタート」という名前でひとくくりにせず、中身(光の強さと時間)で効果が分かれうることを教えてくれる研究です。歯の窩洞や今の照射器での続報と合わせて読みたいところです。

今日のひとこと

コンポジットレジンの円盤を使ったこの実験では、ソフトスタートのうちランプ照射は底面の硬化(硬さの比)がいちばん高かったものの、体積収縮は高強度照射と有意差を認めませんでした。収縮が少ない側だったのはステップ照射と低強度照射で、ステップ照射の硬さの比は高強度照射と有意差を認めませんでした。照射モードごとに光の総量(原著の照射条件から筆者が概算した約10〜28 J/cm²)が違い、照射器も3機種で、歯を使わない厚さ2mmの円盤の結果なので、「ソフトスタートという名前だけで収縮が減るとは限らず、光の強さと時間の中身で見る」という程度に受け取るのが、この論文に合った読み方です。

Sudheer V, Manjunath MK. Contemporary curing profiles: Study of effectiveness of cure and polymerization shrinkage of composite resins: An in vitro study. J Conserv Dent. 2011;14(4):383-386. doi: 10.4103/0972-0707.87205. PMID: 22144808
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。