1問1答 論文 エンド

グライドパスは手用Kファイルか、パスファイルか——S字のレジン模型でパスファイルは湾曲の変化が有意に小さかった

1問1答 論文 エンド

エンド|NiTiロータリーの前に作るグライドパス。手用ステンレスKファイルと、専用のNiTiロータリー「パスファイル」では、根管の元の湾曲の保たれ方が違うのか。専門医と経験の浅い術者で比べたレジン模型の実験(Berutti 2009・Journal of Endodontics)

NiTiロータリーを安全に使うための前提とされるグライドパス。先生は手用のステンレス製Kファイルで作っていますか?著者らはS字に湾曲したレジン模型100本を25本ずつ4群に分け、専門医と経験の浅い術者が、それぞれ手用Kファイル(#08・#10・#15・#20)パスファイル(先端ISO 13・16・19)でグライドパスを作りました。結果、湾曲半径の変化率は歯冠側でパスファイル8%・6% vs Kファイル27%・33%、根尖側で20%・17% vs 27%・38%(専門医・経験の浅い術者の順)と、パスファイルが有意に小さかった(P<.001)アピカルジップはパスファイル群で各1本、Kファイル群で12本・14本(各25本中、P<.001)。さらに経験の浅い術者のパスファイルが、専門医の手用Kファイルより湾曲の変化が小さかった(P<.01)。ただしレジン模型での実験で、治療成績を見た研究ではありません。

論文
Use of Nickel-Titanium Rotary PathFile to Create the Glide Path: Comparison With Manual Preflaring in Simulated Root Canals
著者
Elio Berutti、Giuseppe Cantatore、Arnaldo Castellucci、Giorgio Chiandussi、Francesco Pera、Giuseppe Migliaretti、Damiano Pasqualini(トリノ大学 歯内療法学講座ほか・イタリア)
掲載
Journal of Endodontics 2009;35(3):408-412
種類
レジン模型を使った実験室研究(in vitro)。対象=S字に湾曲したレジン製練習用ブロック(Endo Training Block・ISO 15・テーパー0.02)100本。乱数表で25本ずつ4群1群=専門医が#10のKファイルで作業長まで探索後、パスファイル#1・#2・#3を作業長まで(X-Smart・300rpm・5Ncm)、2群=専門医が手用ステンレスKファイル#08・#10・#15・#20を作業長まで(要旨では#10-15-20と記載)、3群4群=経験の浅い術者が1群・2群と同じ手順。器具操作前後の写真から根管の中心線を曲線で近似し、歯冠側と根尖側の湾曲半径の変化率を算出。前後の画像を重ね、3人の盲検評価者がアピカルジップ・エルボーを判定。統計はKruskal-Wallis検定+Mann-Whitney U検定、変形の発生はモンテカルロ法によるカイ二乗検定。使用した器具・模型・モーターはすべてDentsply Maillefer社製で、謝辞に同社の支援と担当者の協力への謝意あり
PMID
19249606

グライドパス、手用Kファイルで作っていますか?

NiTiロータリーで根管を拡げる前に、細いファイルで根尖までの「通り道」を作っておく。これがグライドパス(原著の言い方ではプレフレアリング)です。先生はこれを、#08・#10・#15・#20…と手用のステンレス製Kファイルで作っていますか?

では、その手用の工程そのものが、根管の元の湾曲を崩していることはないのか。2009年の研究は、手用Kファイルと、グライドパス専用のNiTiロータリー「パスファイル(PathFile)」を、S字に曲がったレジン製の模型で比べました。

結論を先に言います。パスファイルで作ったグライドパスのほうが、元の湾曲がよく保たれ、アピカルジップも少なかった(25本中1本 vs 12〜14本)。しかも経験の浅い術者がパスファイルを使った結果が、専門医の手用Kファイルより湾曲の変化が小さかったのです。ただし、これは模型での実験です。

なぜグライドパスが要るのか

NiTiロータリーの破折には2つの型があります。湾曲で繰り返し曲げられて折れる疲労破折と、先端が噛み込んでねじれて折れるねじれ破折です。

著者らが注目したのは後者です。根管の太さが、最初に入れるロータリーの先端より細いと、先端が食い込んで大きなねじれ応力がかかります。
だから歯冠側を先に拡げ、手用ファイルでグライドパスを作ってからロータリーを入れる——これが安全に使うための前提とされてきました。
ただ、この「手用でのグライドパス作り」は根管治療の最初の段階で、手技上のトラブルが起きやすい工程でもあります。

今回の一手:S字のレジン模型100本を4群に

対象=S字に湾曲したレジン製の練習用ブロック(Endo Training Block)100本。根管はもともとISO 15・テーパー0.02の太さです。乱数表で25本ずつ4群に分けました。
1群:専門医(エンドドンティスト)が、#10のKファイルで作業長まで探索したあと、パスファイル#1・#2・#3(先端ISO 13・16・19、テーパー0.02)を作業長まで。300rpm・5Ncm
2群:専門医が手用ステンレスKファイル#08・#10・#15・#20を作業長まで
3群:経験の浅い術者が1群と同じ手順
4群:経験の浅い術者が2群と同じ手順

評価は2つです。1つは湾曲の変化。器具操作の前後で模型を同じ位置から撮影し、根管の中心線を曲線で近似して、歯冠側と根尖側、2つの湾曲の半径が何%変わったかを計算しました。半径が大きくなるほど、湾曲がまっすぐに近づいたことを意味します。もう1つはアピカルジップ・エルボー(根尖部の変形)の有無で、前後の画像を重ねて3人の評価者が盲検で判定しました。

結果①:パスファイルは、湾曲をまっすぐにしにくかった

0 15% 30% 45% 湾曲半径の変化率(%・平均) 8% 20% 27% 27% 6% 17% 33% 38% パスファイル専門医 Kファイル専門医 パスファイル経験の浅い術者 Kファイル経験の浅い術者 歯冠側の湾曲 根尖側の湾曲 原著Table 1の%Var(平均)。濃い棒=歯冠側の湾曲、淡い棒=根尖側の湾曲。変化率が小さいほど元の湾曲が保たれた(半径が大きくなる=湾曲がまっすぐに近づく)。根尖側はばらつきが大きく、中央値は16・21・17・24%(左の群から順、Table 1)。各群25本・S字のレジン模型
群別の湾曲半径の変化率(原著Table 1の平均値。小さいほど元の湾曲が保たれた)

湾曲半径の変化率(平均)は、歯冠側でパスファイル8%・6%に対してKファイル27%・33%、根尖側でパスファイル20%・17%に対してKファイル27%・38%(いずれも専門医・経験の浅い術者の順。根尖側はばらつきが大きく、中央値では16%・17%に対して21%・24%)。パスファイルの2群は、Kファイルの2群より有意に変化が小さかった(P<.001)。手用Kファイルのほうが、元の湾曲をまっすぐに変えてしまったということです。

同じ器具どうしで比べると、専門医と経験の浅い術者の間に有意差はありませんでした(P=.15)。そして目を引くのが、経験の浅い術者のパスファイル(3群)が、専門医の手用Kファイル(2群)より湾曲の変化が小さかった(P<.01)点です。

結果②:アピカルジップは25本中1本 vs 12〜14本

0 5本 10本 15本 アピカルジップが出た模型(25本中・本) 1本 12本 1本 14本 パスファイル専門医 Kファイル専門医 パスファイル経験の浅い術者 Kファイル経験の浅い術者 原著Results(Canal Aberrations)。各群25本。群間差 P<.001。エルボーはKファイル/経験の浅い術者群の5本で見られた(他群との差 P=.03)
群別のアピカルジップの発生数(原著Results。各群25本、P<.001)

アピカルジップは、パスファイル群で各1本Kファイル群で12本(専門医)・14本(経験の浅い術者)。差は統計学的に有意でした(P<.001)。

エルボーは、経験の浅い術者が手用Kファイルで形成した4群の5本に見られました。ただし他群との差はP=.03で、著者ら自身が「有意性の境界」と表現しています。なお、実験中にパスファイル・Kファイルとも、目に見える変形や破折は1本もありませんでした。

なぜ差がついたのか

原著は、この差の仕組みを実験で確かめてはいません。述べているのは、パスファイルはしなやかで、テーパーの小さいNiTiであること、そして結果として「術者の技量に左右されにくい(less technique-sensitive)」道具だと示唆された、という点です。

一方の手用Kファイルでは、専門医と経験の浅い術者の差は統計学的に有意ではありませんでした(P=.15)。ただ、経験の浅い術者の手用群(4群)では湾曲の変化が最も大きく、崩れる傾向は見えています。アピカルジップ14本・エルボー5本も4群が最多でしたが、ジップの2群(12本)と4群(14本)の差は検定されておらず、エルボーはP=.03で著者ら自身も「有意性の境界」と書いています。

明日の臨床へ

模型では、グライドパスの工程でも根管の形は崩れうる。ロータリーの前段階だからと手早く済ませる工程ではない、というのがこの研究の示すところです。
メーカー推奨の手順は「#10のKファイルで作業長まで探索 → パスファイル#1・#2・#3」。最初の探索は手用で行う前提です。
院内で経験の浅い先生がいる場合、レジン模型の上では「経験の浅い術者の機械式グライドパスのほうが、専門医の手用より形が保たれた」という結果は、教え方や道具選びを考える材料になります。
・一方で、パスファイルでグライドパスを作ると、その後のロータリーの破折が減るかどうかは、この研究では調べていません。著者ら自身も「今後の検証が必要」と書いています。

ここだけ、冷静に補助線

まず、これはS字のレジン模型を使った実験室研究で、抜去歯でも臨床でもありません。一般にレジンは象牙質と硬さが違い(これは本記事の補足です)、根管もこの模型では最初からISO 15まで開いた状態です。術者は専門医1人と経験の浅い術者1人で、「経験の浅さ」の具体的な定義は書かれていません。手用Kファイルの動かし方(ファイリングかウォッチワインディングか等)の記載もなく、最終サイズもKファイル#20とパスファイル先端ISO 19で同じではありません。また、要旨ではKファイルを「#10-15-20」、方法では「#08-10-15-20」と書いており、記載が揃っていません。そして大事な点として、使った器具(パスファイル・Kファイル)・レジン模型・モーターはすべてDentsply Maillefer社製で、同社の支援と担当者の協力への謝意が謝辞にあります。治癒や成功率を見た研究ではないので、「パスファイルを使えば治療成績が上がる」とは、この論文からは言えません。それでも、グライドパス作りの段階で湾曲が崩れうることを数字で示した点は、手順を見直すきっかけになります。

今日のひとこと

著者らの結論:このレジン模型の条件では、パスファイルは手用Kファイルより元の湾曲をよく保ち、根尖部の変形も少なかった。数字で言えば、湾曲半径の変化率は歯冠側でパスファイル8%・6% vs Kファイル27%・33%、根尖側で20%・17% vs 27%・38%(P<.001)。アピカルジップはパスファイル群で各1本、Kファイル群で12本・14本(各25本中、P<.001)。同じ器具なら専門医と経験の浅い術者の差は有意でなく(P=.15)、経験の浅い術者のパスファイルが、専門医の手用Kファイルより湾曲の変化が小さかった(P<.01)グライドパスという最初の工程でも根管の形は崩れうる——この論文の持ち帰りはそこです。ただしS字のレジン模型で術者は各1人、製造元の支援も受けた研究で、破折率や治療成績は調べていません。

Berutti E, Cantatore G, Castellucci A, Chiandussi G, Pera F, Migliaretti G, Pasqualini D. Use of nickel-titanium rotary PathFile to create the glide path: comparison with manual preflaring in simulated root canals. J Endod. 2009;35(3):408-412. PMID: 19249606
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。