1問1答 論文 歯周病

深いポケットは、また戻ってくる? 7.8年後の答えは「1.5%」

1問1答 論文 歯周病

骨整形術(FibReORS)+3.4か月リコールで304人を平均7.8年追った後ろ向き研究

「切って浅くしても、どうせまた深くなる」——歯周外科をためらう最大の理由がこれです。ところが、全部位をPD3mm以下に仕上げてから徹底したメインテナンスに乗せた304人では、平均7.8年後に深いポケットとして残っていたのは全28,212部位のわずか1.5%。BOPは2.1%、SPC中の抜歯は0.9%でした。

論文
Long-term effects of supportive therapy in periodontal patients treated with fibre retention osseous resective surgery. I: recurrence of pockets, bleeding on probing and tooth loss
著者
Carnevale G, Cairo F, Tonetti MS
掲載
Journal of Clinical Periodontology 2007;34:334–341
種類
後ろ向きコホート研究(連続症例304名・平均SPC 7.8年)
PMID
17324157

「切って浅くしても、どうせまた深くなる」

再評価でPD 6mmが数か所残っている。外科の適応だとわかっている。それでも患者さんに勧めきれない——理由を突き詰めると、たいてい「どうせ数年で戻るのでは」という自信のなさに行き着きます。

この不安には根拠がありました。長期のメインテナンス研究をいくつか開くと、5〜8年後には2〜3割の部位が4mm以上に戻っていると書いてある。ならば侵襲をかけた意味はどこにあるのか、と思ってしまう。

今日の1本は、その常識に真正面から数字をぶつけた研究です。

今回の一手:全部位を3mm以下に「してから」通ってもらう

イタリア・ローマの歯周専門開業医(Carnevale医師ひとり)が診た連続304名のカルテを後ろ向きに解析した研究です。平均年齢52歳、女性63%、現喫煙者37%。初診時の診断は中等度歯周炎45%、重度歯周炎41%と、決して軽い集団ではありません。

治療の流れはシンプルです。まず全員に原因除去療法(TBI・スケーリング・SRP)。再評価してPD 4mm以上が残った部位はすべて外科へ回し、線維保存型の骨整形術(FibReORS:歯根膜線維の付着部を残しながら骨を整形し、根尖側移動弁で仕上げる術式)を行いました。外科を受けた歯は3,510本(全体の49%)。

そして重要なのはゴールの置き方です。この研究の「active therapy 完了(T1)」は、全顎プラークスコア20%未満、かつ BOPありのPD>3mm部位がゼロ。つまり「深いところを残したままメインテナンスに送らない」。ここを満たした人だけがSPC(サポーティブ・ペリオドンタル・ケア)に進み、平均3.4か月に1回・60分の枠で、診査・再モチベーション・全顎PMTC・全部位への慎重な縁下デブライドメントを受け続けました。

つまり: 「外科でPDを浅くする」+「3.4か月ごとに全部位を触り続ける」。この2つをセットで、平均7.8年(最長17年)続けたらどうなるか、という研究です。

結果①:7.8年後、深いポケットは全部位の1.5%

最終SPC時(T2)に再計測した部位は28,212部位。そのうち98.5%(27,802部位)がPD 3mm以下でした。PDが3mmを超えていたのは410部位=1.5%だけ。

内訳も見ておきます。4〜5mmが342部位(ポケットの83.4%)、6〜7mmが42部位、8mm以上が26部位。つまり残っているものの大半は浅い再発で、6mm以上の深いポケットは全体でわずか68か所、41名(サンプルの13.8%)に集中していました。

本研究(FibReORS+SPC 7.8年)
Tonetti 1998(5.6年)
König 2002(8年)

0 13.3% 26.7% 40% PDが浅くならなかった部位の割合 (%) 1.5% 18.7% 33% 本研究 7.8年 Tonetti 1998 5.6年 König 2002 8年 定義は各研究で異なる(本研究PD>3mm/Tonetti PD≧4mm/König PD>4mm)

長期メインテナンス研究における「浅くならなかった/戻ってしまった」部位の割合。本研究は他の報告より約10倍少ない。ただし各研究でポケットの定義とベースラインの重症度、術式が異なる点は差し引いて読む必要がある。

著者ら自身がこの約10倍の開きを論文中で正面から議論しています。候補として挙がっているのは、ベースラインの重症度の違い、リスクプロファイルの違い、SPCの中身の違い、脱落率の違い、術者の技量、そして「active therapy 中にどれだけ抜いたか」の違い。最後の点は後述します。

結果②:出血しているのは、深いところだけ

炎症の指標も静かでした。全顎プラークスコア13%、全顎出血スコア2%。BOP陽性部位は598部位=全体の2.1%にとどまっています。

面白いのはその分布です。深さ別にBOP陽性率を並べると、きれいな用量反応になりました。

3mm以下
4〜5mm
6〜7mm
8mm以上

0 33.3% 66.7% 100% BOP陽性だった部位の割合 (%) 1.5% 41.5% 66.7% 84.6% 3mm以下 4〜5mm 6〜7mm 8mm以上 各深さの部位のうちBOP陽性だった割合(最終SPC時)

ポケット深さ別のBOP陽性率。3mm以下ではほぼ出血しないのに対し、8mm以上では85%近くが出血する。PD>3mmの部位がBOP陽性になるオッズ比は3mm以下の32.9倍。

PD 3mm以下の部位で出血していたのは1.5%。一方、8mm以上では84.6%が出血していました。多変量解析でも、BOP陽性ポケット数と関連したのは性別(男性)・全顎出血スコア・全顎プラークスコア・分岐部病変・ポケット総数でした。

つまり: 浅く仕上がった部位は、7.8年経っても静かなまま。逆に言えば、出血は「深く残ってしまった数少ない場所」から出ているということです。

結果③:メインテナンス中の抜歯は、7.8年で0.22本/人

歯周治療の本当のゴールは歯が残ることです。SPC期間中に抜けた歯は67本(全体の0.9%/1人あたり0.22±0.6本)で、50名(16%)に限られていました。8割超の患者さんは1本も失っていません。

抜歯理由の1位は歯周病ではなく歯根破折(48%)、2位が歯周病の進行(30%)。歯数はT0の7,696本からT1で7,120本、T2で7,053本へと推移しました。

ただし正直に読むべき数字もあります。active therapy 中(外科までの段階)には576本=7.5%が抜歯されており、1人あたり1.9本。他の長期研究(Tonetti 2000で4.8%、König 2002で4.9%)より高く、累積では8.3%になります。著者らも「重症例の割合が高い」「浅く仕上げるために予後不良歯を先に整理した可能性」を認めており、メインテナンス期の成績の良さは、この”入口での取捨選択”に支えられている面があると考えるのが公平です。

どこが再発するのか——場所は決まっている

臨床的にいちばん使えるのは、この部分かもしれません。410の再発ポケットがどこに出たかを見ると、明確な偏りがありました。

まず補綴装置の支台歯。ポケットの59.8%が支台歯に出ており、支台歯部位での発生率は2.5%(天然歯は0.9%)。6mm以上の深いポケットに限ると82%が支台歯で、天然歯に比べたオッズ比は4.8倍でした。

次に複根歯と分岐部。複根歯では3.1%(単根歯0.9%)に再発があり、分岐部病変のある大臼歯にいたっては、対象76部位のうち41部位=53.9%にポケットが残っていました。多変量解析でも、再発ポケット数と関連したのはベースラインの重度歯周炎・喫煙・全顎出血スコア・外科をした歯の本数・分岐部病変・複根歯。一方でSPCに通った年数とポケット再発には相関がなかった——長く通うほど悪くなる、という現象は起きていません。

つまり: 再発は「全体にじわっと」ではなく、支台歯マージンと分岐部にピンポイントで現れる。リコール時に時間をかけて診るべき場所が、あらかじめ絞れます。

明日の臨床へ

この研究をそのまま真似することは難しくても、持ち帰れる原則が3つあります。

1. メインテナンスに送る前の「仕上がり」を決めておく。 この研究の強さの半分は、SPC開始時点でPD>3mmの部位をゼロにしていたことにあります。「4mmが数か所あるけど、まあメインテナンスで様子を見よう」と送り出すのと、ゴールを決めて仕上げてから送るのとでは、7.8年後が変わりうる。

2. リコールは「見る場所」を決めて臨む。 支台歯マージンと分岐部。この2か所は再発率が桁違いです。全顎を均一に流すのではなく、ここに時間を配分する。

3. 3.4か月・60分・全部位デブライドメント。 「来たら掃除」ではなく、毎回 医療面接→歯周組織の再評価→再モチベーション→全部位の縁下デブライドメント、という定型を回していました。間隔だけでなく中身が成績を作っている可能性が高い。

ここだけ、冷静に補助線これは単一術者・単一施設の後ろ向き研究で、比較群がありません。しかも解析対象は「3年以上SPCに通い続けた人」=脱落しなかった優等生集団です。途中で来なくなった人は数に入っておらず、この1.5%をそのまま自院の平均成績として期待するのは無理があります。加えて active therapy 中の抜歯が7.5%と多く、”難しい歯を先に整理した”効果も混じっている。それでも、「浅く仕上げて、中身のあるリコールを続けた集団は、7.8年後にここまで静かでいられる」という上限値を見せてくれた点で、今も引用され続ける価値のある1本です。前向き研究での検証が待たれる、と著者ら自身も締めくくっています。

今日のひとこと

「浅くしてから、通ってもらう」。この2つが揃った集団では、7.8年経ってもポケット再発1.5%・BOP 2.1%・抜歯0.9%。再発が起きるのは補綴装置の周りと分岐部——見るべき場所は、あらかじめ決まっています。

Carnevale G, Cairo F, Tonetti MS. Long-term effects of supportive therapy in periodontal patients treated with fibre retention osseous resective surgery. I: recurrence of pockets, bleeding on probing and tooth loss. J Clin Periodontol 2007;34:334–341. PMID: 17324157
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。