エンド|電気的根管長測定器(EAL)の「0.5」表示と「APEX」表示は、それぞれ根尖のどこを指しているのか。Root ZXとi-Rootの2機種で、ファイル先端から大孔(major foramen)までの距離を顕微鏡で測り、どちらの表示が安定しているかを比べた抜去歯の実験研究(Jung 2011・Journal of Endodontics)
根管長測定器の画面で、「0.5」で止めるか、「APEX」まで進めるか——これは術者の経験と好みで決まっていることが多い選択です。著者らは、抜去した上下顎の小臼歯104本をアルジネート模型に埋め、Root ZXとi-Rootに52本ずつ割り付けて、同じファイルを「0.5」→「APEX」と進めながら長さを記録しました。その後ファイルを歯に固定し、根尖を削って顕微鏡でファイル先端から大孔(major foramen)までの距離を測っています。結果、「APEX」表示の先端は大孔とほぼ同じ位置(平均+0.02mm・+0.06mm)、「0.5」表示は大孔の平均0.26mm・0.29mm手前で止まっていました。大孔との一致度(級内相関係数ICC)は0.976〜0.994とどの表示もほぼ1で、ばらつきも同程度。どちらの表示が信頼できるかに差は見られず、大切なのは「それぞれの表示がどこを指すか」を知ること、というのが著者らの結論です。
①「0.5」で止める?「APEX」まで進める?
根管長測定器のバーが根尖に近づいてくる。「0.5」で止めて長さを読むか、「APEX」まで進めてから引き戻すか——先生ごとに流儀が分かれるところだと思います。
著者らも冒頭でこう書いています。どちらの表示で作業長を決めるかは、ほとんど術者の経験と好みで選ばれている。そこに科学的な目安を出したい、というのがこの研究の出発点です。
結論を先に言います。この研究の2機種では、「APEX」表示のファイル先端はほぼ大孔(major foramen)の位置、「0.5」表示は大孔の平均0.26〜0.29mm手前。そしてどちらの表示も同じくらい安定していました。
②「0.5」は本当に根尖狭窄を指しているのか
Root ZXは、0.4kHzと8kHzの2つの周波数でインピーダンスを測り、その比からファイルの位置を表示する機械です。取扱説明書では、「0.5」表示はファイル先端が根尖狭窄(apical constriction)にあることを示すとされています。作業長は根尖狭窄に置くべきという考えから、「0.5」で作業長を決める研究者も多くいました。
ところが、根尖狭窄はいつもはっきりあるわけではありません。教科書どおりの狭窄が1か所ある歯は半数に満たないという報告があり、根尖病変や歯根吸収があると狭窄そのものが無いこともあります。また、「0.5」表示は狭窄ではなく、それより先の位置を示すという報告も重なっていました。
・「0.5」表示は、根尖狭窄そのものではなく、単に「大孔の少し手前」を示しているのではないか
・狭窄が無い歯が多いなら、「0.5」表示は測るたびにぶれるのではないか
一方の「APEX」表示(ゼロの読み)については、根尖孔より歯冠側のインピーダンスは正確に較正できないので、ゼロで読むのが最も正確だという教科書の意見も紹介されています。
そしてもう1つ。測定器は「正確」なだけでなく「安定して同じ結果が出る(信頼性がある)」必要があるのに、これまでの研究は正確さばかりを見て、信頼性はほとんど調べていなかった——これが今回の着眼点です。
③今回の一手:同じファイルを「0.5」→「APEX」と進め、顕微鏡で大孔までを測る
手順は次のとおりです。
・#15〜25のKファイルを「0.5」表示まで入れ、基準面からハンドル下端までの長さをデジタルノギス(0.01mm単位)で測る
・ファイルを抜かずに、「APEX」表示が点滅し始めるまで進めて、もう一度測る
・ファイルを光硬化型グラスアイオノマーで歯に固定し、根尖3〜4mmを削ってファイルを露出させ、手術用顕微鏡(21.2倍)で撮影
・画像上でファイル先端から大孔までの距離を計測(手前ならマイナス、越えていればプラス)
ポイントは基準点を大孔にしたことです。根尖狭窄は歯によってあったり無かったりするので、狭窄を物差しにすると「0.5」と「APEX」を同じ土俵で比べられない。そこで著者らは、どちらの表示が「正確か」ではなく、どちらが大孔に対して「安定しているか(信頼性)」に絞って比べました。
なお、顕微鏡で直接測ったのは「APEX」表示の位置です。「0.5」表示の位置は、その実測値と、2つの表示の間でファイルを進めた長さから計算しています。
④結果①:「APEX」はほぼ大孔、「0.5」は大孔の約0.3mm手前
「0.5」表示で止めたとき、ファイル先端はRoot ZXで大孔の平均0.26mm手前(95%信頼区間 0.21〜0.31mm手前)、i-Rootで0.29mm手前(0.24〜0.34mm手前)でした。
「APEX」表示ではRoot ZXで平均+0.02mm(−0.02〜+0.07mm)、i-Rootで+0.06mm(+0.01〜+0.11mm)。どちらもほぼ大孔の位置で、i-Rootではわずかに越える側に寄っていました(Root ZXの信頼区間は0をまたいでいます)。
⑤結果②:安定性は「0.5」も「APEX」も同じくらい高い
大孔との一致度を表すICCは、Root ZXで「0.5」0.976・「APEX」0.993、i-Rootで「0.5」0.980・「APEX」0.994。どれも1にかなり近い値でした。
測定のばらつき(残差標準偏差)も0.17〜0.18mmと、両表示でほぼ同じ。箱ひげ図で見ても、データの広がりや外れ値の出方に2つの表示の差は見られませんでした。
つまり、2つ目の見立て(「0.5」は測るたびにぶれるのでは)は、この研究では支持されませんでした。「0.5」は大孔から一定の距離だけ手前で、安定して止まる表示だったわけです。
⑥なぜ「どちらを選ぶか」より「どこを指すか」なのか
「0.5」と「APEX」は、そもそも指している場所が違います。違う場所を指す2つの表示を「どちらが正確か」で比べても答えは出ません。今回はっきりしたのは、どちらの表示も大孔との位置関係が一定だということです。
だから著者らは、どちらを選ぶかより、それぞれの表示がどこを指すかを知っているほうが、作業長を決めるうえで大切だと結論しています。「APEX」で測るなら先端はほぼ大孔、「0.5」で測るなら大孔の約0.3mm手前。その前提がわかっていれば、どちらの表示からでも大孔を基準に作業長を考えられます(作業長をどこに置くのが最適かは、この研究では調べていません)。
⑦明日の臨床へ
・「0.5」表示は「大孔の約0.3mm手前」(平均0.26mm・0.29mm)。メーカーの説明にある「根尖狭窄の位置」とは同じとは限らない。
・どちらで測っても安定性は同じくらい。慣れた流儀を無理に変える根拠は、この研究からは出てこない。
・大切なのは、読んだ値から作業長をどこに置くかを、表示の意味を踏まえて自分の方針で決めること(作業長そのものの最適な位置は、この研究では調べていない)。
・数字はRoot ZXとi-Rootの2機種の結果。別の機種に0.26mm・0.29mmをそのまま当てはめない。
1本ごとには、「APEX」表示でも大孔から±0.3mm余りの幅でずれうる(Root ZXの一致の限界)ことも、頭の片隅に置いておくとよさそうです。
⑧ここだけ、冷静に補助線
今日のひとこと
この研究の2機種(Root ZX・i-Root)では、「APEX」表示のファイル先端はほぼ大孔の位置(平均+0.02mm・+0.06mm)、「0.5」表示は大孔の平均0.26mm・0.29mm手前でした。大孔との一致度(ICC)はどの表示も0.976〜0.994、ばらつき(残差標準偏差0.17〜0.18mm)も同程度で、どちらの表示が信頼できるかに差は見られませんでした。メーカーは「0.5」を根尖狭窄の位置と説明していますが、この研究で見えたのは「大孔の少し手前」という一定のずれです。「どちらを選ぶか」より「その表示がどこを指すか」を知って作業長を決める——これが著者らの持ち帰りです。ただし抜去した小臼歯とアルジネート模型での実験で、口の中での成績を見た研究ではありません。


