1問1答 論文 エンド

NiTiファイルの芯は太いほど安全?——芯の割合だけを45〜70%に変えた試作ファイルを実験室で比べたら、太い芯はねじりに強く引き込まれにくい一方で疲労破折が早く、著者らは50〜65%を折り合いの範囲とした(2019年)

1問1答 論文 エンド

エンド|NiTiファイルの芯(コア)の太さは、ねじり・疲労・引き込まれにどう効くのか。芯の割合だけを6段階に変えたRフェーズNiTiの試作ファイルで、ねじり・曲げ・疲労破折・スクリューイン・根管の追従性を比べた実験室研究(Izawa 2019・The International Journal of Microdentistry・日本大学松戸歯学部)

NiTiファイルの断面の真ん中には、ファイルを支える「芯(コア)」があります。日本大学松戸歯学部のグループは、形はそのままに芯の割合だけを45%〜70%の6段階に変えたRフェーズNiTiの試作ファイル(先端#25・.06テーパー)をつくり、実験室の試験機で性質を比べました。芯を太くするほどねじりに強く、根管に引き込まれる力も小さくなった一方、硬くなって疲労破折までの回転数は減り(芯45%で約8,500回→70%で約1,500回)、70%では根管の形がほかのすべての芯の割合より有意に大きくずれました。芯45%は強さを保てず、スクリューイン試験から除外されています。著者らはこのトレードオフの折り合いとして芯の割合50〜65%を挙げています。ただし試作ファイル・樹脂ブロックの模型・治具での実験室研究で、ヒトの歯での形成や治療成績は調べていません。

論文
Ni-Ti file fatigue fracture and cuttability investigation, and design with differing core ratios
著者
Masato Izawa, Yasuhisa Tsujimoto(日本大学松戸歯学部 歯内療法学講座ほか)
掲載
The International Journal of Microdentistry 2019;10(1):40–46(原典PDFにDOIの記載なし)
種類
実験室研究(in vitro)。ラジアルランドを1つ持つパッシブ型のRフェーズNiTi試作ファイル(先端#25・.06テーパー)を、芯の割合45・50・55・60・65・70%の6群でつくり、ねじり試験・曲げ試験(ISO 3630-1準拠)、疲労破折試験(半径5 mmの湾曲治具・500 rpm)、スクリューイン試験(樹脂ブロックの根管模型)、根管の追従性試験(人工歯)を実施。ねじり・曲げ・疲労破折・スクリューインは各群10本(追従性試験は本数の記載なし)。一元配置分散分析とTukey検定(有意水準5%)、芯の割合との相関を算出
PMID
なし(PubMed未収載)

①NiTiファイルの「芯」は、太いほど安全?

NiTiファイルの断面を思い浮かべてください。刃と溝の内側に、ファイルを支える「芯(コア)」があります。芯が太ければねじれに強そう。でも太すぎると硬くなって、湾曲根管では疲れて折れやすくなりそうです。では、ちょうどいい芯の太さはどのあたりなのでしょうか。

日本大学松戸歯学部 歯内療法学講座の研究は、この問いに試作ファイルで答えを探しました。形はそのままに、芯の割合(コア比率)だけを45%・50%・55%・60%・65%・70%の6段階に変えたRフェーズNiTiファイルをつくり、ねじり・曲げ・疲労破折・スクリューイン(引き込まれ)・根管の追従性を比べています。

結論を先に言います。芯を太くするほどねじりに強く、引き込まれにくくなる一方で、硬くなり、疲労破折までの回転数は減りました。どちらかを取ればどちらかを失うトレードオフです。著者らは、その折り合いがつく範囲として芯の割合50〜65%を挙げています。

②なぜ「芯の割合」が問題になるのか

NiTiファイルが根管形成中に折れる理由は、大きく分けて2つあります。ねじれて折れる(ねじり破折)と、曲がった状態で回り続けて金属が疲れて折れる(曲げ疲労破折)です。著者らが引用した過去の報告では、破折の55.7%がねじり、44.3%が曲げ疲労でした。つまり、両方に強いファイルが求められています。

・NiTiファイルは、オーステナイト相のものから、オーステナイト相とマルテンサイト相の中間にあたるRフェーズを生かしたものへと開発が進んできた
・Rフェーズのファイルは、疲労破折への強さや根管への追従性でよい結果が報告されている
・メーカーは断面の形を工夫しているが、芯の割合だけを変えて性質を比べた研究はこれまでない、と著者らは書いている

芯の割合は、ねじりへの強さと柔らかさの両方に効いてきそうな設計の要素です。そこで著者らは、芯の割合だけを変えた試作ファイルを並べて、何が変わるかを確かめました。

③今回の一手:芯だけを変えた6本の試作ファイル

ファイルは、刃の外周に平らな面(ラジアルランド)を1つ持ち、すくい角の小さい「パッシブ型」のRフェーズNiTiファイルです。パッシブ型は、切削効率では刃の鋭い「アクティブ型」に劣るものの、根管への追従性と回転疲労への強さで有利とされます。サイズは先端#25・.06テーパーで統一し、芯の割合だけを45〜70%の6段階に変えて試作しました。

・ねじり試験(ISO 3630-1準拠):先端3 mmを固定してねじり、折れるまでの最大トルクと回転角を測定
・曲げ試験(ISO 3630-1準拠):先端3 mmを45°曲げるのに要する最大トルクを測定
・疲労破折試験:半径5 mmで曲げた根管を模した治具の中で500 rpmで回し、折れるまでの回転数を数える
・スクリューイン試験:樹脂ブロックの根管模型(VDW-Zipperer training block・長さ約19 mm・根尖径0.20 mm・.02テーパー)を500 rpm・毎秒0.5 mmで形成し、ファイルが根管に引き込まれる最大の力を測定
・追従性試験:湾曲した人工歯の根管を形成し、形成前後の外弯側・内弯側のずれを1 mmごとに測定
・ねじり・曲げ・疲労破折・スクリューインは各群10本(追従性試験は本数の記載なし)。一元配置分散分析とTukey検定で比較(有意水準5%)し、芯の割合との相関も算出

ここでいう「芯の割合」は、一般にはファイルの外径に対する芯の太さの割合を指します(本文に計算式の記載はありません)。試験機はすべて実験室の装置で、ヒトの歯や患者さんでの試験ではありません。

④結果①:芯が太いほど、疲労破折までの回転数は減った

0 3000回 6000回 9000回 疲労破折までの回転数(回) 8500回 3900回 3300回 2500回 2300回 1500回 芯45% 芯50% 芯55% 芯60% 芯65% 芯70% 湾曲R5の治具・500 rpm。45%約8,500回・70%約1,500回は本文の概数、50〜65%は原著Fig3gの棒から読んだ概数(本文は50・55%が3,000回台、60・65%が2,000回台)。芯の割合とは強い負の相関(r=−0.8177)。各群n=10・試作ファイルの実験室試験。ティール=著者らが勧める50〜65%
芯の割合ごとの、疲労破折までの回転数。45%と70%は本文の概数、50〜65%は原著の図の棒から読んだ概数

疲労破折試験では、芯45%が約8,500回といちばん長く回り続けました。そこから、50%・55%で3,000回台、60%・65%で2,000回台、70%で約1,500回と減っていきます。芯の割合との相関は強い負の相関(r=−0.8177)でした。芯が太いほど硬くなり、曲げられた状態で回ると早く疲れて折れる、ということです。

曲げに要するトルクも同じ方向を示しています。芯45%では約7 gf·cmだったのが、70%では約53 gf·cmまで上がり(r=0.9689)、すべての組み合わせで有意差がありました。

⑤結果②:芯が細いほど、根管に引き込まれやすかった

0 0.6 N 1.2 N 1.8 N 最大の引き込み力(N) 1.5 N 1.5 N 0.9 N 0.9 N 0.6 N 芯50% 芯55% 芯60% 芯65% 芯70% 本文の概数(50・55%約1.5 N、60・65%約0.9 N、70%約0.6 N)。芯45%はファイルがねじれ戻ったため測定から除外。芯の割合とは負の相関(r=−0.7746)=芯が細いほど引き込まれやすい。各群n=10・樹脂ブロックの根管模型(VDW-Zipperer training block)
芯の割合ごとの、スクリューイン試験での最大の引き込み力(本文の概数)。芯45%は測定から除外

スクリューイン試験では、逆の傾向が出ました。ファイルが根管に引き込まれる最大の力は、芯50%・55%で約1.5 N、60%・65%で約0.9 N、70%で約0.6 N。芯の割合とは負の相関(r=−0.7746)で、芯が細いほど引き込まれやすい結果です。

そして芯45%は、この試験の途中でファイルがねじれ戻ってしまい、測定から除外されました。疲労には最も強かった45%が、ねじりの負担には耐えきれなかった、という見え方です。

⑥結果③:ねじりに強いのは太い芯、追従性は70%だけが悪かった

・ねじりの最大トルク:芯が太いほどほぼ直線的に上がった(r=0.9480)
・折れるまでの回転角:芯45%で約1,000°と大きく、50%・55%で約600°、60〜70%でさらに減った(r=−0.8139)=細い芯はよくねじれてから折れる
・根管の追従性:ずれは芯45%がいちばん小さく、50〜65%はほぼ同じ。70%だけがほかのすべての芯の割合より有意に大きくずれた

なお、疲労破折の回転数と引き込み力では、70%と60・65%の差は有意ではありませんでした。70%だけがほかのすべての芯の割合より有意に劣ったのは、根管のずれです。

まとめると、芯を太くするとねじりに強く引き込まれにくくなるが、硬くなって疲労に弱くなる傾向があり、70%では根管の形も有意に崩しやすかった。芯を細くするとその逆で、45%はスクリューイン試験でねじれ戻り、強さを保てませんでした。

⑦なぜ50〜65%なのか——著者らの見立て

著者らは、芯を太くすると断面が大きくなり、ねじりに抵抗する力は上がるが、柔らかさが失われると説明しています。芯の割合が上がるほど柔らかさが減り、疲労破折が起きやすくなる、というのが著者らの読みです。

一方で芯45%については、ファイルの強さを保てなかったことに加え、溝が削りくずで詰まりやすく、引き込みが起きやすくなるため試作から外すべきだ、と考えています(45%の引き込み力そのものは測れていないので、ここは著者らの推論です)。芯70%は、疲労破折の回転数が6群でいちばん少なく(60・65%との差は有意ではない)、根管のずれはほかのすべての芯の割合より有意に大きくなりました。

その両端を外した50〜65%が、疲労破折まで長く持ちこたえ、安全に形成できる範囲——というのが著者らの結論です。

⑧明日の臨床へ

・ファイルの性質は合金の種類だけでなく、芯の太さでも大きく変わる。「折れにくいファイル」は1つの数字では決まらない
・芯が細い=柔らかく疲労に強いが、ねじりと引き込まれには弱い。芯の細いファイルを湾曲根管で使うときは、食い込む感覚に注意する
・芯が太い=ねじりに強いが硬い。強い湾曲では疲労と根管のずれに気を配る
・今回は試作ファイルでの結果で、市販のファイルと芯の割合を対応づけた研究ではない。数字をそのまま製品選びに当てはめることはできない

「どの芯の割合のファイルを買えばよいか」ではなく、ファイルの設計にはねじりと疲労のトレードオフがあることを知っておく。そのうえで、手元のファイルがどちら寄りの性格かを意識して使う——このくらいの距離感がちょうどよさそうです。

⑨ここだけ、冷静に補助線

これは試作ファイルを使った実験室研究(in vitro)で、ねじり・曲げ・疲労破折・スクリューインは各群10本です(追従性試験は本数の記載なし)。疲労破折は根管を模した治具、スクリューインは樹脂ブロックの根管模型、追従性は人工歯で測っており、ヒトの歯での形成や治療成績は調べていません。使ったのは先端#25・.06テーパーのパッシブ型1種類だけで、ほかのサイズや刃の形、往復運動でも同じ範囲になるかはわかりません。市販品との比較もしていません。試験機はMani社製で、試作ファイルの製造元・資金源・利益相反の記載はありません。
ここからは筆者の読みです。著者らは50〜65%を「スクリューインが起きない」範囲としていますが、測った引き込み力は50%・55%がいちばん大きく、どの値なら安全という基準も示されていません。「強さを保てず、著者らが引き込みも起きやすいと見た45%を外し、根管を有意に大きくずらした70%を外した折り合いの範囲」と読むのが実際に近そうです。数値は本文の概数と図から読んだ概数で、表1と図3dには見出しや図の重複と思われる箇所もあります。PubMed未収載の誌の論文です。それでも、芯の割合だけを変えてファイルの性質を並べた点は、ファイルの設計を理解する手がかりになります。

今日のひとこと

芯の割合だけを変えた試作NiTiファイルでは、芯を太くするとねじりに強く引き込まれにくくなる一方で、硬くなって疲労破折が早まり、70%では根管の形も有意に大きくずれました。芯45%は強さを保てませんでした。著者らはその間の50〜65%を折り合いの範囲としています。試作ファイル・模型での実験室研究なので、持ち帰るのは「ファイルの芯には、ねじりと疲労のトレードオフがある」という視点です。

Izawa M, Tsujimoto Y. Ni-Ti file fatigue fracture and cuttability investigation, and design with differing core ratios. The International Journal of Microdentistry. 2019;10(1):40–46.(PubMed未収載・DOIの記載なし)
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。