1問1答 論文 エンド

先端が噛み込んだNiTiファイルは何度ねじれて折れる?——5製品のねじり試験で、元に戻らない変形は約40°から始まり、破断は平均457.6〜739.7°(1回転以上)。いちばん強いMtwoといちばん粘り強いProFileは別だった(2011年)

1問1答 論文 エンド

エンド|ねじり破折は「先端が根管に噛み込んだまま、シャンクだけ回り続ける」ときに起こり、まっすぐな根管でも起こりうる。断面形状の違う5種類のNiTiロータリーファイルを、先端5mmを樹脂に埋めてねじり切った実験研究(Yum 2011・Journal of Endodontics)

NiTiロータリーファイルの破折には、湾曲根管で曲げが繰り返される周期疲労と、先端が噛み込んで起こるねじり破折の2つがあります。著者らは、Mtwo・ProFile・ProTaper(F1)・RaCe・TF(Twisted File)の新品を各10本、先端5mmを樹脂で埋めて動かないようにし、まっすぐのまま毎分2回転で時計回りにねじって、折れるまでの荷重とねじれ角を記録しました。どの製品も同じ経過をたどり、元に戻らない変形(降伏点)は37.6〜45.6°で始まり、そこから平均457.6〜739.7°——つまり1回転を超えるまでねじれてから折れました。一方で、最大ねじり強さはMtwoが最も高く(2.05)TFが最も低い(1.10)のに対し、折れるまでに吸収するエネルギー=靭性はProFileが最も高く(1064.2)、TFとRaCeが低いという結果で、「強い」と「粘り強い」の順位は一致しませんでした。

論文
Torsional Strength and Toughness of Nickel-Titanium Rotary Files
著者
Jiwan Yum, Gary Shun-Pan Cheung, Jeong-Kil Park, Bock Hur, Hyeon-Cheol Kim(釜山大学校 歯学部 保存学講座・香港大学 歯学部 エンド)
掲載
Journal of Endodontics 2011;37(3):382-386
種類
器具の力学試験(in vitro)。断面形状の違う市販NiTiロータリーファイル5製品=TF・RaCe(正三角形)、ProTaper(凸三角形)、ProFile(U字の溝)、Mtwo(S字)。サイズは#25/.06(ProTaperはD5で同じ直径0.55mmになるF1)。各製品10本の新品の先端5mmを金属ブロックの穴にレジンで埋め、曲げない状態で毎分2回転の時計回りにねじり、0.03秒ごとに荷重とねじれ角を記録。降伏点(0.2%オフセット法)・最大・破断時の強さと角度、曲線下の面積=靭性を求め、一元配置分散分析とDuncan検定(P=.05)で比較。破断面は走査電子顕微鏡で観察
PMID
21329826

①先端が噛んだまま回ったら、何度で折れる?

NiTiロータリーファイルで根管を拡大していて、先端がキュッと噛み込む感触があった。ハンドピースはそのまま回り続けている——このとき、ファイルの中では何が起きているのでしょうか。

著者らによれば、これがねじり破折の典型的な状況です。先端(またはファイルの一部)が根管の中で動かなくなり、ハンドピースにつながったシャンクだけが回り続ける。だからまっすぐな根管でも起こりうる、と書いています。

結論を先に言います。この試験条件(新品・先端5mm固定・毎分2回転)では、5製品のどれも、約40°(37.6〜45.6°)で元に戻らない変形が始まり、平均457.6〜739.7°=1回転を超えるまでねじれてから折れました。そして「いちばん強いファイル」と「いちばん粘り強いファイル」は別の製品でした。

②なぜ「最大の強さ」だけでは足りないのか

NiTiファイルの破折は、大きく2つに分けて調べられてきました。湾曲根管で曲げが繰り返されて起こる周期疲労と、先端が噛み込んで起こるねじり破折です。周期疲労はよく研究されてきた一方、ねじりの研究は少ないと著者らは述べています。臨床で使ったファイルを調べた既報では、ねじりによる破折が56%、周期疲労が44%だったという報告も引用されています(Sattapanら)。

これまでのねじり試験は、ADA規格にならって最大トルク(最大の強さ)と破断時の角度で比べるのが一般的でした。しかし著者らは、それだけでは器具の「持ち」を表しきれないと考えました。

そこで今回は、①どこで元に戻らない変形が始まるか(降伏点)②どこまで強さが上がるか(最大強さ)③折れるまでにどれだけのエネルギーを吸収できるか(靭性)まで、荷重とねじれ角の曲線を丸ごと記録して比べています。

③今回の一手:5製品を各10本、ねじり切る

対象=断面形状の違う市販NiTiロータリーファイル5製品。
・TF(Twisted File)・RaCe=正三角形の断面
・ProTaper=凸の三角形(F1を使用)
・ProFile=U字の溝
・Mtwo=S字の断面
サイズは#25/.06(ProTaperは、先端から5mmの位置=D5で同じ直径0.55mmになるF1)。各製品10本、すべて新品です。長さはTF以外が25mm、TFは23mmと27mmを5本ずつ使っています。
先端5mmを金属ブロックの穴(5×5×5mm)に入れてフロアブルレジンで埋めて動かないようにし、曲げない(まっすぐの)状態で、毎分2回転の時計回りにねじりました。荷重とねじれ角は0.03秒ごとに記録し、折れるまで続けています。

ポイントは曲げをかけずにねじりだけを見ていることです。周期疲労の影響を外して、ねじりに対する素材と形のふるまいだけを取り出す設計です。

④結果①:約40°で変形が始まり、1回転を超えて折れた

0 300° 600° 900° ねじれ角(度・平均) 37.6° 463.0° 41.9° 739.7° 41.4° 511.2° 39.6° 457.6° 45.6° 609.6° Mtwo ProFile ProTaper RaCe TF 降伏点(元に戻らない変形の始まり) 破断時 原著Table 1。各10本・新品・先端5mmを固定し2rpmで時計回りにねじった。淡い棒=破断時。降伏点の角度は5製品で有意差なし、破断時はProFile>TF>他3製品(P<.05)。360°=1回転
降伏点と破断時のねじれ角(原著Table 1)。各10本の平均。360°=1回転

元に戻らない変形が始まる角度(降伏点)は、Mtwo 37.6°・ProFile 41.9°・ProTaper 41.4°・RaCe 39.6°・TF 45.6°で、5製品の間に統計学的な差はありませんでした。

一方、折れたときの角度は、ProFile 739.7°(SD 215.0)、TF 609.6°、ProTaper 511.2°・Mtwo 463.0°・RaCe 457.6°でした。統計の上ではProFile>TF>他3製品(P<.05)で、ProTaper・Mtwo・RaCeの間に有意差はありません。平均で見ると、どの製品も1回転(360°)を超えてねじれてから折れています。

つまりこの試験条件では、先端が噛み込んだファイルは、ほんの1/9回転ほど(約40°)ねじられた時点で、すでに元に戻らない変形が始まっている。そこから折れるまでには、まだ1回転以上の幅がありました。
破断面の電子顕微鏡像は、5製品ともねじり破折に典型的な像(回転の中心付近の円を描くような擦れ跡と、斜めに引き伸ばされたくぼみ)でした。

⑤結果②:「強い」と「粘り強い」は別物

0 0.8 1.6 2.4 最大ねじり強さ(原著表記N・平均) 2.05 1.83 1.84 1.61 1.10 Mtwo ProFile ProTaper RaCe TF 原著Table 1のUltimate point。Mtwo>ProTaper≒ProFile>RaCe>TF(P<.05)。降伏点の強さもMtwoが最大、TF・RaCeが最小
最大ねじり強さ(原著Table 1。単位は原著の表記どおり「N」)

最大ねじり強さは、Mtwo 2.05が最も高く、ProTaper 1.84・ProFile 1.83、RaCe 1.61、TF 1.10が最も低い値でした(P<.05)。降伏点の強さでも、TF(0.42)とRaCe(0.51)は他の3製品より有意に低く、数値の上ではMtwo(0.86)が最も高い値でした。

0 400 800 1200 靭性(N・度・平均) 724.1 1064.2 729.0 534.6 475.2 Mtwo ProFile ProTaper RaCe TF 原著Table 1のToughness(荷重とねじれ角の曲線の下の面積)。ProFile>Mtwo≒ProTaper>RaCe≒TF(P<.05)。最大強さの順位とは一致しない
靭性=荷重とねじれ角の曲線の下の面積(原著Table 1。単位は原著表記の「N degree」)

ところが靭性(折れるまでに吸収できるエネルギー=強さと、変形しても折れずに伸びる性質の両方を合わせたもの)で見ると、ProFileが1064.2で最も高く、ProTaper 729.0とMtwo 724.1が続き、RaCe 534.6とTF 475.2が低いという順になりました(P<.05)。

いちばん強いMtwoは、破断時の角度では数値の上でRaCeを除く全製品より小さい値でした。著者らの言葉を借りれば、折れる前の余裕(安全域)は、強さと必ずしも一致しないということです。

⑥なぜ差が出たのか

荷重とねじれ角の曲線は、ほとんどの金属と同じ形をしていました。最初はまっすぐ立ち上がる弾性域(力を抜けば元に戻る)、降伏点を越えると塑性変形(元に戻らない)に入り、強さがゆっくり上がって最大強さに達し、最後は細くくびれて(ネッキング)折れます。

・強さの差は断面積で説明できそうだ、と著者らは述べています。追加の計測で、先端から5mmの位置の断面積はMtwoが最も大きく、TFが最も小さい値でした。
・ProFileの靭性が高かったのは、折れる前の塑性変形とくびれの時期が長かったため。ProFileは同じメーカー・同じ合金のProTaperと強さはほぼ同じなのに、靭性は大きく上回りました。著者らは、溝の間隔(ピッチ)が細かいことが長いくびれの時期を許したのかもしれない、と推測しています。
・一方で、靭性の順位が形で決まるかは、この結果からはほとんど言えない、とも書いています。

⑦明日の臨床へ

・抜いたファイルを毎回見る。降伏点を越えた変形は元に戻りません。著者らは、ファイルを抜いたときに見える形の崩れ(ねじれの変形)が、折れる前に気づけるサインになると述べています。変形を見つけたファイルはそれ以上使わない、というのは筆者の読みです。
・先端の噛み込みを感じたら、回し続けない(筆者の読み)。この試験条件では約40°=1/9回転ほどで元に戻らない変形が始まっていました。
・「強いファイル=折れにくいファイル」と決めつけない。最大強さ1位(Mtwo)と靭性1位(ProFile)は別の製品でした。
・トルクや回転数の設定は製品ごとに合わせる。著者らは、ファイルの設計ごとに設定や使い方を変えるのが賢明だとしています。

著者らはさらに、最大強さが高く、ラジアルランドのない(摩擦の少ない)ファイルは石灰化して細い(ただし通過できる)根管に、靭性が高いファイル(例:ProFile)は変形に気づく余裕があるので長めの使用に、という使い分けも提案しています。ただしこれは試験結果からの著者らの提案で、臨床で比べて確かめたものではありません。

⑧ここだけ、冷静に補助線

これは新品のファイルを試験機でねじった実験室の研究で、臨床での破折の頻度を比べたものではありません。各製品10本と少数で、ProFileの破断角(739.7°・SD 215.0)のようにばらつきの大きい値もあります。毎分2回転は実際の回転数よりはるかに遅く、先端5mmを完全に埋めたまっすぐな状態での試験なので、曲げとねじりが同時にかかる湾曲根管や、使用を重ねたファイルにそのまま当てはまるとは限りません。ねじれ角はファイルの長さと固定する位置でも変わります(TFは23mmと27mmが混在)。製品の差は断面の形だけでなく、合金や製法の違いも含んだものです。強さの単位は原著の表記(N)のまま示しました。比べたのは2011年時点の5製品で、その後に登場した製品は含まれていません。著者らは利益相反はないと記載しています。それでも、「この試験条件(新品・先端5mm固定・毎分2回転)では、噛み込んだファイルは約40°で変形が始まり、折れるまでに1回転以上の幅があった」「強さと粘り強さは別」という2点は、ファイルの見方と使い方を見直す手がかりになります。

今日のひとこと

この試験条件(新品・先端5mm固定・毎分2回転)では、先端が噛み込んでねじられたNiTiファイルは、5製品とも約40°(37.6〜45.6°)で元に戻らない変形が始まり、平均457.6〜739.7°=1回転を超えるまでねじれてから折れました。変形から破断までのこの幅を、著者らは折れる前に変形として気づける「安全域」と位置づけています。ただし最大ねじり強さはMtwo(2.05)、靭性はProFile(1064.2)が最も高く、強さの順位と粘り強さの順位は一致しません。抜いたファイルに形の崩れ(ねじれの変形)がないかを毎回見ること、そして製品ごとの設定で使うこと——この論文の持ち帰りはそこです。ただし新品を毎分2回転・まっすぐな状態でねじった試験室の実験で、臨床での破折率を見た研究ではありません。

Yum J, Cheung GS, Park JK, Hur B, Kim HC. Torsional strength and toughness of nickel-titanium rotary files. J Endod. 2011;37(3):382-386. doi:10.1016/j.joen.2010.11.028. PMID: 21329826
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。