1問1答 論文 エンド

NiTiファイルは何回使ったら替える?——不良の9割超は折れていない変形(ほどけ)だった

1問1答 論文 エンド

エンド|「8回使うと必ず折れる」は本当か。歯内療法専門の診療所で2年間に捨てられた電解研磨NiTiファイル(RaCe)を全部集め、何回目にどんな壊れ方をしたかを電子顕微鏡まで使って調べた研究(Shen 2009・Journal of Endodontics)

NiTiロータリーファイルは前触れなく折れる——そう感じている先生は多いはずです。では実際に臨床で使われたファイルは、何回目に、どう壊れていたのか。著者らはカナダ・バンクーバーの歯内療法専門の診療所で、2006〜2007年の24か月・2875歯の治療のあいだに不良で捨てられたRaCe414本を集め、使用回数と壊れ方を調べました。結果、388本(94%)は変形(らせんのほどけ)だけで折れておらず、破折は26本(6%)変形の73%・破折の76%は7〜8回目の使用で起きていました。破折の原因はねじれによる破断(せん断)が22本(85%)、繰り返し曲げによる疲労が4本(15%)。著者らは、RaCeは折れる前にほどけが見えることがあるので、使う前に目で確かめるべきと結んでいます。なお原著の図1には「8回目で100%」という値がありますが、これは不良で捨てられたファイルだけを数えた図で、「8回使えば必ず折れる」という意味ではありません。

論文
Defects in Nickel-Titanium Instruments after Clinical Use. Part 4: An Electropolished Instrument
著者
Ya Shen、Earl Winestock、Gary Shun-pan Cheung、Markus Haapasalo(ブリティッシュコロンビア大学歯学部 歯内療法学講座・カナダ/香港大学歯学部 歯内療法学・香港)
掲載
Journal of Endodontics 2009;35(2):197-201
種類
臨床で使用後に捨てられたファイルの回収・観察研究。カナダ・バンクーバーの歯内療法専門の診療所1か所で、2006年1月〜2007年12月の24か月変形・破折など肉眼でわかる不良のため捨てられたRaCe(FKG社)414本を全数回収(治療歯数2875歯)。形成はメーカー推奨のクラウンダウン、#10・#15のKファイルで穿通後、少なくとも#20 Kファイルまで手用でグライドパスを作ってからロータリーを使用(電気モーター・16:1減速ハンドピース・300rpm一定)。各ファイルの使用回数を記録。メーカーの使用上限は8症例。実体顕微鏡(30倍)で先端から変形部の端までの距離を測り、破折ファイルは走査型電子顕微鏡(SEM)で側面と破断面を観察して疲労破折かせん断(ねじれ)破折かを判定。統計はχ²検定・Fisherの正確確率検定・t検定
PMID
19166772

NiTiファイル、何回使ったら替えていますか

NiTiロータリーファイルは前触れなく折れる。多くの先生がそう感じ、使用回数に悩んでいるはずです。今回の論文の図には「8回目で100%」という数字が出てきます。ただ、原著を読むと、話は少し違いました。

結論を先に言います。臨床で不良のため捨てられたRaCe414本を調べると、388本(94%)は変形(らせんのほどけ)だけで折れておらず、破折は26本(6%)でした。そして変形の73%・破折の76%が7〜8回目の使用で起きていました。

なぜ「使用回数」が悩みの種になるのか

NiTiファイルの破折には、繰り返し曲げられて金属が疲れる「疲労」と、先端が食い込んだまま回されてねじ切れる「せん断(ねじれ)」の2つの型があります。どちらも臨床で起こり得ます。

今回の対象RaCe(FKG社)は、断面が三角形で、らせんの付いた部分と付いていない部分が交互に並ぶ設計です。メーカーはこれで食い込み(スクリューイン)とねじれの力を減らせるとし、表面は電解研磨で滑らかに仕上げています。使用上限は8症例とされていました。
ProFileやProTaperなどでは臨床使用後の調査があった一方、RaCeについては情報が乏しかった——これがこの研究の出発点です。

今回の一手:2年分の「捨てたファイル」を全部集める

場所はカナダ・バンクーバーの歯内療法専門の診療所1か所2006年1月〜2007年12月の24か月、変形や破折など肉眼でわかる不良で捨てられたRaCeを全数回収しました。その間の治療は2875歯、回収は414本です。
形成はメーカー推奨どおり。#10・#15のKファイルで穿通し、少なくとも#20 Kファイルまで手用でグライドパスを作ってから300rpm一定でロータリーを使っています。各ファイルが何回使われたかは記録されていました。

回収したファイルは洗浄・滅菌のうえ、実体顕微鏡で変形の位置を測定。折れたものは走査型電子顕微鏡(SEM)で破断面を観察し、疲労かせん断かを見分けました。

結果①:不良の94%は、まだ折れていなかった

0 33.3% 66.7% 100% 不良ファイル414本の内訳(%) 94% 6% 変形(ほどけ)で見つかり折れていない 破折していた 原著Results。変形・未破折388本(94%)、破折26本(6%)。χ²検定でP<0.01。2006〜2007年の24か月・2875歯の治療で出た不良RaCe
不良で捨てられたRaCe414本の内訳(原著Results。変形・未破折388本、破折26本、P<0.01)

414本のうち388本(94%)は、らせんがほどけるなどの変形があっても折れてはいませんでした。折れていたのは26本(6%)です。

破断面の観察では、せん断(ねじれ)による破折が22本(85%)、疲労による破折が4本(15%)(P<0.05)。折れた26本のうち12本(46%)は.04テーパー#25でした。

結果②:不良は7〜8回目に集中していた

0 60 120 180 不良で捨てられたファイルの本数(本) 1 0 3 1 1 0 13 0 26 0 62 5 133 4 149 16 1回 2回 3回 4回 5回 6回 7回 8回 変形(ほどけ)・折れていない 破折 原著Table 1の合計行。横軸=捨てるまでに使った回数。濃い棒=変形(ほどけ)で折れていない388本、淡い棒=破折26本。対象は不良で捨てられた414本だけで、問題なく使い終えたファイルは数えていない(=使用回数ごとの破折率ではない)
捨てるまでに使った回数ごとの不良ファイルの本数(原著Table 1合計行)。使用回数ごとの「破折率」ではない点に注意

使用回数ごとに並べると、偏りは明らかです。変形388本のうち282本(73%)破折26本のうち20本(原著表記で76%)7〜8回目の使用で起きていました。捨てるまでの平均使用回数は変形で6.9±1.5回、破折で7.2±1.2回です。

「8回で100%」の正体
原著の図1は、使用回数に対する不良の頻度を示した曲線で、7回目45.4%・8回目100%と書かれています。表1から計算すると、これは「その回数まで残っていた不良ファイルのうち、その回で捨てられた割合」と一致します(例:7回目=137÷302=45.4%、8回目=165÷165=100%)。ただし集計の対象は不良で捨てられた414本だけで、問題なく使い終えたファイルは数に入っていません。メーカーの上限が8回で、表にも8回までしかありません。
つまり「8回使えば全部のファイルが折れる」という意味ではありません。原著もそうは書いていません。著者らの結論も「不良の多くは7回目以降に起きた」というところまでです。

なぜほどけるのか——らせんの境目にねじれが集まる

変形の多くはらせんの付いた部分のすぐ隣で起きていました。著者らの説明はこうです。らせんの無い部分は根管壁との摩擦でねじれの力を強く受け、その境目で引っかかりやすい。だから、ほどけはらせんの境目に集まる。

折れ方にも同じ傾向が見えます。破折の多くはらせんに隣接した位置で、26本中8本(31%)は先端から7〜8mm、つまり軸(シャフト)の部分で折れていました(表1・要旨の値。本文Resultsには「半数」との記載もあります)。著者らは、軸で折れた原因としてアクセス窩洞の形成不足か器具の設計かの両方の可能性を挙げつつ、これだけ多くが軸で折れていることから、最終的には術者のミスではなく、器具の設計が関わった可能性が高いと見ています。軸で折れた破片は、比較的取り出しやすいとも述べています。

SEMでは、ほどけた部分に軸方向に走る亀裂や、製造時に混入する介在物と穴の連なり、亀裂に入り込んだデブリも観察されました。電解研磨をしても、介在物や穴は残っていたと記載されています。

明日の臨床へ

根管に入れる前に、らせんを目で見る。著者らの結論は「RaCeはほどけが破折の前に見えることがあるので、使用前に塑性変形がないか確かめるべき」です。
この診療所では、不良の7割超が7〜8回目に出ていました。メーカー上限の8回まで使い切る前提ではなく、回数を記録して、後半は特によく見る運用が現実的です。
折れ方の主役は「ねじれ」。せん断が85%でした。食い込ませない操作とグライドパスの確保が、この結果とかみ合います(この診療所は#20まで手用で拡げてからロータリーを使っていました)。
ただし目視は万能ではない。折れた26本のうち19本(73%)は、破断部の横に変形が見られませんでした

コストの面では、「全部を1回で捨てる」か「上限まで使う」かの二択ではなく、使用回数の記録+毎回の目視という手間の小さい工夫で不良の多い時期に目を配る——という運用が、この結果から考えられる一案です。ただし折れた26本のうち19本は破断部の横に変形がなかった(原著Table 2)ので、目視だけで破折を防げるわけではありません。

ここだけ、冷静に補助線

まず、これは不良で捨てられたファイルだけを集めた研究です。問題なく使い終えたファイルが何本あったかは分からないので、「何回使うと何%折れるか」という破折率は、この論文からは出せません。対象は1か所の歯内療法専門の診療所・1ブランド(RaCe)・2006〜2007年当時の製品で、術者の人数や経験、根管の湾曲度も報告されていません。この診療所は上限の8回近くまで使う運用だったため、7〜8回目に件数が集まったのは使用回数の分布を映しているだけの可能性もあります。原著自身も、他のファイルでは使用回数と破折頻度に相関がなかった報告を引用しています。一般の診療所や現行のファイル、熱処理した新しい合金にそのまま当てはめることはできません。それでも、臨床で本当に使われたファイル414本を電子顕微鏡まで使って調べ、「不良の大半は折れていない変形(ほどけ)」「不良の多くは7回目以降」を示した点は、日々の使い方を見直す確かな材料です。研究資金はブリティッシュコロンビア大学歯学部の博士研究員奨励金の一部で、利益相反の記載はありません。

今日のひとこと

著者らの結論:RaCeの不良の大半は折れていない変形(ほどけ)で、破折はねじれによるせん断が主。不良の多くは7回目以降に起きる。ほどけは破折の前に見えることがあるので、根管に入れる前に目で確かめる。数字で言えば、不良で捨てられた414本のうち388本(94%)は変形だけで折れておらず、破折は26本(6%)変形の73%・破折の76%が7〜8回目の使用で、破折はせん断22本(85%)・疲労4本(15%)でした。ただし、これは不良ファイルだけを集めた研究で、問題なく使い終えたファイルの本数は分かっていません。「8回使うと100%折れる」という意味ではなく、「何回目から壊れやすいか」の目安として読むのが正確です。また、折れた26本のうち19本(73%)は破断部の横に変形が見られなかったので、目視で全部の破折を防げるわけでもありません。

Shen Y, Winestock E, Cheung GS, Haapasalo M. Defects in nickel-titanium instruments after clinical use. Part 4: an electropolished instrument. J Endod. 2009;35(2):197-201. PMID: 19166772
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。