1問1答 論文 虫歯

シーラントは本当に効くのか——38試験7,924人のコクランレビューが出した答え

1問1答 論文 予防・カリオロジー

永久歯の齲蝕予防に対する小窩裂溝填塞(シーラント)のコクラン・システマティックレビュー(Ahovuo-Saloranta 2017・Cochrane Database Syst Rev)

萌出したての第一大臼歯の裂溝を見ながら、シーラントを勧めるかどうか迷うことがあります。取れたら意味がないのでは。低リスクの子にも要るのか。グラスアイオノマーとレジン、どちらがいいのか。2017年に更新されたコクランレビューは、38のランダム化比較試験・7,924人を集めて、この3つの問いに別々の答えを出しました。1つ目には明確に、2つ目には条件つきで、3つ目には「わからない」と。

論文
Pit and fissure sealants for preventing dental decay in permanent teeth
著者
Ahovuo-Saloranta A, Forss H, Walsh T, Nordblad A, Mäkelä M, Worthington HV
掲載
Cochrane Database of Systematic Reviews 2017(doi:10.1002/14651858.CD001830.pub5)
種類
システマティックレビュー・メタ解析(RCT 38試験・7,924名)
PMID
28759120

「この子にシーラント、要りますか」

萌出途中の第一大臼歯。裂溝は深く、遠心はまだ歯肉に覆われている。保護者に「シーラントをしましょう」と言うべきかどうか——迷いの中身は、たいてい次の3つです。

①そもそも効くのか。②むし歯になりにくい子にも要るのか。③レジンとグラスアイオノマー、どちらがいいのか。

1999年の初版以来、2004年・2008年・2013年に続いて4度目の更新となる2017年のコクランレビューは、38のランダム化比較試験・7,924人を集めて、この3つに別々の答えを返しました。

なぜ咬合面なのか

前提の確認から。永久歯で齲蝕のリスクがいちばん高いのは萌出してからの数年間です。そして検出される齲蝕の増加分の多くは第一大臼歯の小窩裂溝に集中している。裂溝の形態がバイオフィルムの形成と停滞を助けるためで、病変はしばしば完全に萌出しきる前から始まっています

しかも、若年者の平滑面の齲蝕は大きく減ったのに、咬合面の齲蝕は同じようには減っていないと報告されています。だから咬合面に物理的なバリアを置いて、バイオフィルムの栄養を断つ——これがシーラントの発想です(1960年代に導入されました)。

研究の骨格: コクラン口腔保健グループの検索担当が、Cochrane Oral Health試験登録・CENTRAL・MEDLINE・Embaseを2016年8月3日まで、進行中試験も含めて言語・出版年の制限なしに検索。対象は20歳までの小児・青年の小臼歯/大臼歯の咬合面について、シーラントを「なし」または「別の材料」と比べたランダム化比較試験で、追跡12か月以上のもの。2名の著者が独立にスクリーニング・データ抽出・バイアスリスク評価を行った。結果は38試験・7,924名(うち7試験1,693名は今回の更新で追加)。内訳はレジン系 vs なし が15試験グラスアイオノマー vs なし が3試験材料同士の比較が24試験。対象児の年齢は5〜16歳。エビデンスの確実性はGRADEで評価した。

①効くのか——効く。ただし「どれだけ」は元のリスク次第

0 26.7% 53.3% 80% 24か月後に齲蝕になった咬合面の割合(%) 16% 5.2% 40% 6.2% 70% 19% 対照が16%のとき 対照が40%のとき 対照が70%のとき シーラントなし(想定) レジンシーラントあり オッズ比 0.12(95%CI 0.08〜0.19・7試験・1,322名を評価・中等度の確実性)を、想定される3つのベースラインリスクに当てはめた値。シーラント群の95%CIは順に 3.13〜7.37%/3.84〜9.63%/12.3〜27.2%。24か月時点の絶対リスクの減少幅は11〜51%。3つのベースラインは著者による例示で、16%は2010年代の中国2試験(対照の齲蝕発生が低い集団)、40%と70%は1976〜79年の分割口腔5試験(対照37〜69%)に由来する
24か月後に齲蝕になった咬合面の割合。オッズ比0.12を、想定される3つのベースラインリスクに当てはめた値

まず結論。5〜10歳の第一大臼歯において、第2・第3・第4世代のレジン系シーラントは齲蝕を予防しました。24か月時点でオッズ比 0.12(95%CI 0.08〜0.19)、7試験・1,548名を無作為化し1,322名を評価、中等度の確実性のエビデンスです。

ここからが大事なところ。レビューはオッズ比に加えて、「もし対照群の◯%が齲蝕になるなら」という形の絶対的な数字を併記しています。

  • 対照群の16%が齲蝕になる集団なら、シーラント群は5.2%(95%CI 3.13〜7.37%)
  • 対照群の40%なら、シーラント群は6.25%(3.84〜9.63%)
  • 対照群の70%なら、シーラント群は19%(12.3〜27.2%)

この3つの数字はいずれも著者による例示です。16%は2010年代の中国2試験(対照の齲蝕発生が低い集団)、40%と70%は1976〜79年の分割口腔5試験(対照37〜69%)に由来します。そこから割合を計算すると、リスク比はそれぞれ約0.33・約0.16・約0.27になります(例示リスクから計算)。

減らせる齲蝕の絶対量は、24か月時点で11〜51パーセントポイント。この幅こそが答えの本体です。もともと齲蝕がほとんど起こらない集団では、減らせる量も小さくなる。レビュー自身がこう書いています——「あらゆる齲蝕予防手段の有効性は、その個人(および集団)の実際の齲蝕リスクに左右される。介入なしでも新病変の発生が小さいなら、追加の予防法が効ける幅もおのずと小さい」。

効果は長期でも保たれました。48〜54か月でオッズ比 0.21(95%CI 0.16〜0.28)(4試験・482名を評価)、リスク比 0.24(95%CI 0.12〜0.45)(並行群間デザインの1試験・203名を評価)。9年後まで利益は維持されていました——クラスターランダム化1試験でリスク比 0.35(クラスター補正95%CI 0.22〜0.55・p<0.0001)シーラントを貼った面の27%が齲蝕になったのに対し、貼らなかった面は77%でした。ただし時間とともに研究数も参加者数も大きく減り、エビデンスの量と質は落ちていきます。

効果は「残っていること」と結びついている

0 33.3% 66.7% 100% レジンシーラントが完全に残っていた割合(%) 80% 80% 70% 39% 12か月 24か月 48〜54か月 9年(再塗布あり) 無シーラント対照と比較した試験群での値。12・24か月は平均80%、48〜54か月は大半の研究で70%。9年は1試験(36か月まで再塗布を実施)の値。シーラントの予防効果は、この保持と結びついている
レジンシーラントが完全に残っていた割合。シーラントの予防効果は、この保持と密接に結びついている

レビューははっきり書いています。「レジン系シーラントの有効性は、シーラントの保持に関係している」。

無シーラント対照と比べた試験では、保持は良好でした。12か月・24か月で完全保持は平均80%48〜54か月では大半の研究が70%と報告しています。ある試験では36か月まで再塗布を行い、9年後の完全保持は39%でした。

材料同士の比較を見ると、この関係はもっとくっきりします。36〜48か月時点で、低粘性グラスアイオノマーやレジン強化型グラスアイオノマーを貼った歯のほうがレジンより有意に齲蝕が多かった5試験では、レジンの完全保持が平均85%だったのに対し、グラスアイオノマーは平均4%でした。逆に、高粘性グラスアイオノマーとレジンで齲蝕減少が同等だった3試験では、グラスアイオノマーの保持もまずまず良好でした。

ただしレビューは慎重です。「保持だけを根拠に、単純な結論を導くことはできない」——研究間で結果が分かれる理由は他にもいろいろありうる、と。

②③の答えと、明日の臨床へ

②グラスアイオノマーはどうか。「なし」との比較はわずか3試験で、24か月時点の結果は一貫せず(inconclusive)、確実性は「非常に低い」。低粘性グラスアイオノマーの2試験は結果が食い違い、保持も差がありました。レジン強化型を使った1試験の著者は「2年間でみれば、低リスク児では口腔保健教育だけで咬合面齲蝕を管理できたが、高リスク児では教育に加えてシーラントを行うのが最善」と結論しています。ただしエビデンスの質が非常に低いため、レビューはここから信頼できる結論を引き出していません。

③材料同士の優劣は。24試験が直接比較していますが、相対的な有効性は不明(確実性は非常に低い)。12か月・60か月・84か月では材料間に差がなく、24か月では大半の試験がどちらにも軍配を上げず、36〜48か月では結果が割れました。高粘性グラスアイオノマーとレジンを比べた3試験では、齲蝕減少に有意差はありませんでした。

実務に落とすと、こうなります。

まず「誰に」。効果の幅がベースラインリスクで決まる以上、理屈のうえでは齲蝕リスクの高い子ほど、シーラントで得られる絶対的な利益は大きい——ただしレビュー自身は「集団や子どものリスクレベルによって効果の大きさがどう変わるかは、依然として不明のままだった」「シーラントの有効性と齲蝕発生レベルとの関係について結論を出すには、情報が不完全だった」と明記しています(レジン系対照群の15試験のうち、ベースラインの齲蝕有病率を報告していたのは5試験だけでした)。ただし齲蝕リスク評価そのものが万能ではないことも、レビューは指摘しています——将来の齲蝕を予測する明らかに優れた方法は無いとする総説がある一方、過去の齲蝕経験が単独では最も精度の高い予測因子(就学前児では中〜良好、学童・青年では限定的)というレビューもある。しかも口腔清掃や食習慣は追跡中に変わるので、リスクは固定されません。

次に「その後」。効果が保持と結びついている以上、貼って終わりにしない。リコールのたびに保持を確認し、脱離していれば再塗布する。9年間で完全保持39%を保った試験が36か月まで再塗布を続けていたことは、そのまま運用の手本になります。

材料は、迷ったら実績のあるレジン系。材料同士の優劣は決着していませんが、「なし」に対する予防効果が中等度の確実性で示されているのはレジン系です。グラスアイオノマーを使うなら高粘性タイプ——低粘性は保持が悪く、それが齲蝕の差として現れた試験があります。レビューは「高粘性グラスアイオノマーは、とくに指で押し込むART術式で貼ったとき、保持の点で有利かもしれないという指摘がある」と書いています(防湿が難しい場面への適応という理由づけは、レビューには書かれていません)。

安全性について。有害事象を評価したのは4試験だけで、アレルギー反応などは報告ゼロでした。ただしレビュー自身が「稀な有害事象や長期的な有害作用は、臨床試験では観察されにくい」と添えています。BPA(ビスフェノールA)の懸念については、レビューが丁寧に整理しています。歯科用レジンは純粋なBPAではなくBPA誘導体で構成されますが、bis-DMAなどの誘導体はシーラント貼付後に加水分解してBPAになり、唾液中に一過性に検出されうる(貼付後3時間まで検出されたとの報告)。ただしレビューは同時に、Kloukos 2013が「歯科用シーラント由来のBPA曝露は、いまだ十分に特徴づけられていない」と結論しつつ、シーラント貼付後の尿検体でBPA値が明らかに上昇していたことを報告していると書き、Fleisch 2010が「汚染された食品などからの総BPA摂取が交絡する」と指摘したことも併記しています。そのうえで、現時点のエビデンスは「レジン系シーラント使用で患者が有害なエストロゲン様作用のリスクにさらされることはない」と示唆しており、米国歯科医師会も同じ立場です。そのうえで予防的な術式——貼付直後にシーラント面を清掃・洗浄する——を勧める報告があります。これは今日から手技に組み込める、コストゼロの配慮です。

ここだけ、冷静に補助線

ここだけ、冷静に補助線。 このレビューが最高評価をつけなかった理由は明快です。すべての試験で「アウトカム評価者の盲検化」を高いバイアスリスクと判定しました——シーラントは目で見て分かるので、齲蝕を判定する人が「貼ってあるかどうか」を隠せないのです。これは構造的な限界であり、今後も解消しません。また試験は参加者のフッ化物曝露の背景やベースラインの齲蝕有病率をほとんど報告していません。主要な結果を支える7試験のうち5試験は1970年代に出版されたもので、当時と今では齲蝕の発生率も予防環境も違います。効果指標にはオッズ比が使われていますが、オッズ比はアウトカムの発生が多い集団ではリスク比から離れ、効果を実際より大きく見せる方向にずれます(本レビューでも48〜54か月時点でオッズ比0.21に対しリスク比0.24)。そのまま倍率として読まないほうが安全です——だからこそレビュー自身が、3つのベースラインリスクに当てはめた絶対的な数字を併記しています(本記事の図もその数字です)。48〜54か月ではリスク比 0.24(95%CI 0.12〜0.45)も報告されました。グラスアイオノマーの評価と材料同士の比較はいずれも「非常に低い」確実性で、実質的に「まだ分からない」が正確な現状です。それでも、レジン系シーラントが効くこと自体は動いていません。次の一手は、著者らが書くとおり長期追跡を伴うさらなる研究です。

今日のひとこと

レジン系シーラントが小児・青年の永久大臼歯咬合面の齲蝕を減らすことは、中等度の確実性で示されている。ただし「どれだけ減るか」は、その子がもともとどれだけ齲蝕になるかで変わる——齲蝕がほとんど起こらない集団では、減らせる量も小さい。もっとも、リスクレベル別にどれだけ効くのかについては、レビュー自身が「情報が不足していて結論を出せなかった」と書いている。そして効果は保持と結びついている。グラスアイオノマーが良いのかレジンが良いのかは、いまだに答えが出ていない。

Ahovuo-Saloranta A, Forss H, Walsh T, Nordblad A, Mäkelä M, Worthington HV. Pit and fissure sealants for preventing dental decay in permanent teeth. Cochrane Database Syst Rev. 2017. doi:10.1002/14651858.CD001830.pub5 PMID: 28759120
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。