みなさんこんにちは、歯科医師の大原です
今回は感染の窓について、論文ベースで解説したいと思います
この記事を読めば
- 虫歯菌が感染るからキスしない方がいいのか?
- 小さい頃は食器を別にして徹底的に感染させない方がいいのか?
- ミュータンス菌が感染しなければ虫歯にならないのか?
について論文ベースで理解ができ、正しい虫歯予防の方法を身につけることができます
巷で多い嘘情報に惑わされず、正しい知識を身につけたい方は必見です
ではいきましょう!
感染の窓とは?
1歳半〜2歳半になると虫歯の原因菌と言われる
ミュータンス菌が検出されるようになることから
その時期を「感染の窓」と呼んでいました
確かに、この頃にミュータンス菌が感染しなければ
それ以降は免疫反応によって、ミュータンス菌が感染できなくなる可能性があり
虫歯にならなくできる!と考えられていた時期があります
しかしながら、虫歯でもミュータンス菌が検出されないことがあることがわかっています
虫歯の常識を変えた1994年の生態学的プラーク仮説
虫歯はある特定の虫歯菌によって引き起こされると考えられていました
しかし、1994年に発表された生態学的プラーク仮説はその常識を大きく覆すことになりました
簡単にいうと
× ミュータンス菌などの特定の虫歯菌によって虫歯が起こる
○ 生活習慣によってバイオフィルム内の生態が変化し、虫歯が発生しやすい状態になることで起こる
という説です
次からイラストで詳しく解説します
① 糖の摂取により酸を出す
食事を摂るとその糖分が唾液を通してプラーク中の細菌に届きます
プラーク(バイオフィルム)中の細菌で糖分を餌にする酸産生菌の活動が活発になり
糖分から酸を作り出します
この酸はバイオフィルム中に広がります
② 酸によって歯が溶け、バイオフィルム内のpHが下がる
糖の摂取によってできた酸は
歯の表面を溶かすだけでなく、バイオフィルム内に広がります
バイオフィルム内には通常、酸産生菌以外にもたくさんの種類の菌が住んでいます
③ バイオフィルム内の生態系が変わる
糖の摂取が頻回にあると、何度もバイオフィルムのpHが下がるため
酸が多い環境で生きられない細菌が減ります
そうすると酸を出せる菌と、酸に強い菌が多く繁殖し
バイオフィルム内の酸産生菌の割合が増えます
これがバイオフィルム内の生態系の変化です
この状態の人を虫歯リスクが高い人と言います
つまり甘い物好き、食べる回数が多い人は虫歯リスクが高いことになります
④ 酸産生菌が多いバイオフィルムは危険
酸産生菌が多くなると同じ食事をしても
酸の出る量が多くなってしまいます
特にジュース・コーヒー(糖分あり)を常用している人は要注意です
家族で3食同じ食事をしているのに一人だけ虫歯になりやすい場合は
間食に着目してみましょう!
結論:チューしてもOK
「感染の窓」はミュータンス菌が虫歯の原因である
と言われていた頃のお話です
今は生態学的プラーク仮説が虫歯の成り立ちをうまく説明しているとされ
特定のバイ菌ではなく、生活習慣によって虫歯になりやすい常在菌のバランスになっている
と考えられています
キスしないように気にしすぎたり、食器を全部別にしたり
ストレスになってしまう可能性もあります
気にせず、いっぱいお子さんに愛情を注いであげてください!
大原の勤務先HP
論文に基づいた大原のおすすめ口腔ケアグッズです👇