エンド|ヒトの抜去歯の根管にエンテロコッカス・フェカーリスを3週入れて育て、同じ6%次亜塩素酸ナトリウムを、針による通常の洗浄・エンドアクティベーター・XPエンドフィニッシャー・PIPS(Er:YAGレーザー)の4つの方法で動かして、根管の中の菌の減り方と、象牙細管の深さごとの死んだ菌の割合を比べた実験室研究(Azim・Aksel・Zhuang・Mashtare・Babu・Huang 2016・Journal of Endodontics)
根管の仕上げ洗浄で、液の動かし方を変えると、象牙細管の奥の菌まで届き方が変わるのか。Azim らは2016年、ヒトの抜去歯の根管に1種類の菌を3週入れて育て、同じ洗浄液を4つの方法で動かして比べました。根管の中の菌は4つの方法とも有意に減り(中央値89.6〜98.2%)、XPエンドフィニッシャーが98.2%で最も大きく減らしました。象牙細管の深さ50μmではXPエンドフィニッシャーが、150μmではPIPSが、歯冠側・中央・根尖側のどれでも死んだ菌の割合が最も高い結果でした(50μmの根尖側のエンドアクティベーターとの有意差は、原典の本文と図で記載が食い違う)。ただし象牙細管の結果は各方法1本の歯の割断面から測った値で、患者の根管で洗った研究ではありません。
①根管の仕上げ洗浄、どの方法なら象牙細管の奥まで届く?
根管形成のあと、仕上げの洗浄をどうするか。針で流すだけか、音波で液を揺らすか、専用のファイルで液をかき回すか、レーザーで液を動かすか。根管の中だけでなく、象牙細管に入りこんだ菌まで届くのかは、気になるところです。
この4つの方法を、抜去歯の根管に菌を入れた同じ実験の型で比べたのが、Azim・Huang らが2016年に Journal of Endodontics に出した研究です。
・ヒトの抜去歯の根管に1種類の菌(エンテロコッカス・フェカーリス)を3週入れて育ててから、4つの洗浄方法で洗った実験室研究。患者の根管で洗ったものではない
・根管の中の菌:4つの方法とも菌を有意に減らし、減った割合の中央値は89.6〜98.2%。XPエンドフィニッシャーが98.2%で最も大きく、ほかの3つより有意に大きかった(抄録と図2の記載。針・音波・PIPSの3つの間には有意差を認めなかった)
・象牙細管の浅いところ(50μm):死んだ菌の割合は、歯冠側・中央・根尖側のどれでもXPエンドフィニッシャーが最も高かった(78〜82%。根尖側のエンドアクティベーターとの有意差は、原典の結果の本文と図4の記号で記載が食い違う)
・象牙細管の深いところ(150μm):死んだ菌の割合は、3つの部位のどれでもPIPSが最も高かった(60〜70%)
・ただし象牙細管の結果は、各方法1本の歯の割断面から測った値(各部位3か所の撮影)
②なぜこの研究が必要だったか
著者らは引用文献をもとに、器具で削るだけでは根管のすみずみまで届かず、形成と洗浄のあとでも培養が陰性になるのは40〜60%の症例にとどまる、と書いています。そこで、洗浄液を音波・超音波・陰圧・レーザーなどで動かし、届く範囲を広げる工夫が提案されてきました。
ただ、これまでの比較の多くは根管の中から採った菌の数を見たもので、象牙細管の中で菌がどれだけ死んだかを、深さごとに数で比べた研究は少ない、と著者らは指摘しています。そこで今回は、根管の中の菌の減り方と、象牙細管の深さ50・100・150μmで死んだ菌の割合の両方を、4つの方法で比べました。
③何をどう比べたか
・4つの方法:(1)針による通常の洗浄(SNI:30ゲージの側方開口針を作業長の2mm手前まで入れて上下に動かす)、(2)エンドアクティベーター(EA:音波でプラスチックのチップを振動させる。チップは作業長の1mm手前)、(3)XPエンドフィニッシャー(XP:低速モーターで毎分900回転させて上下に動かすファイル。作業長の1mm手前)、(4)PIPS(Er:YAGレーザー。20mJ・15Hz。チップは髄室に置いて動かさない)
・洗浄液はどの方法も同じ:17%EDTA 2mLを1分、続いて6%次亜塩素酸ナトリウム3mLを「30秒流して30秒止める」をくり返して使い、その間に各方法で液を動かした
・根管の中の菌(MTT法):下顎大臼歯の単根管の遠心根を作業長18mm、25/04まで形成し、滅菌してからエンテロコッカス・フェカーリスを入れて21日育てた。各方法15本(PIPSは採取の誤りで2本を除き13本)。洗浄の前と後に根管の壁をファイルでこすって菌を採り、生きた菌の代謝を色で測るMTT法で減った割合を出した
・象牙細管の菌(共焦点レーザー顕微鏡):下顎小臼歯を同じように準備して各方法4本を洗い、縦に割った。根管の太さが近い1本を各方法から選び、生きた菌は緑・死んだ菌は赤に染めて、歯冠側・中央・根尖側の3つの部位で各3か所を撮影した。根管の壁から50・100・150μmの深さの線に沿って、赤と緑の光の強さから死んだ菌の割合を出した
・処置した人:PIPS以外は歯内療法の専門医1人、PIPSは使い慣れた別の歯科医師が行った
④結果1:根管の中の菌は、XPエンドフィニッシャーで最も大きく減った
4つの方法とも、洗浄の前に比べて菌を有意に減らしました(減った割合の中央値は89.6〜98.2%)。XPエンドフィニッシャーは98.2%で、エンドアクティベーター(93.3%)とPIPS(89.6%)より有意に大きく減らしました。針・エンドアクティベーター・PIPSの3つの間には有意差を認めませんでした。
なお、XPエンドフィニッシャーと針の洗浄の比較は、結果の本文には書かれていません。抄録は「ほかの3つの方法より有意に大きい」、図2の説明は「ほかのすべての群と比べて有意」と書いています。
⑤結果2:浅いところはXPエンドフィニッシャー、深いところはPIPS
どの方法でも、象牙細管の中に死んだ菌が見られました。ただし全体としては、深くなるほど死んだ菌の割合は下がった、と著者らは書いています。
深さ50μmでは、歯冠側・中央・根尖側のどれでもXPエンドフィニッシャーが最も高く、78〜82%でした。ただし根尖側の50μmでのエンドアクティベーターとの比較は、結果の本文が「有意差なし」、図4の有意差の記号は「有意差あり」と、原典の中で食い違っています(抄録は3つの部位ともXPエンドフィニッシャーが最も高いと書いています)。一方で深さ150μmでは、3つの部位のどれでもPIPSが最も高く、60〜70%でした。中央と根尖側では、深さ100μmでもPIPSがXPエンドフィニッシャーを上回りました。
方法ごとのくせも違いました。著者らによると、PIPSは根管の全長・どの深さでも安定していて、XPエンドフィニッシャーは歯冠側が最もよく、中央、根尖側の順に下がりました。エンドアクティベーターは中央より根尖側でよく、針の洗浄は中央が最もよい結果でした。
⑥結果の読み方
著者らは、XPエンドフィニッシャーが根管の中と浅い象牙細管で強かった理由を、ファイルが壁に当たる機械的な働きと液のかき混ぜが合わさったため、と考えています。PIPSが深いところで強かった理由は、レーザーで液の中にできる泡がはじけて衝撃波が生じ、次亜塩素酸ナトリウムが象牙細管の奥まで入りやすくなったため、と考えています。どちらも著者らの推測で、この研究で仕組みを確かめたわけではありません。
根管の中の結果は、PIPSが針の洗浄より強いとした先行研究とは合いませんでした。著者らは、根管の太さや歯の選び方の違いが理由かもしれないと述べています。
⑦明日の臨床へ
この研究から持ち帰れるのは、次のような読み方です(筆者の読み)。
・同じ6%次亜でも、液の動かし方で結果が変わりうる:4つの方法は同じ液・同じ量を使い、液の動かし方を変えた(ただしPIPSだけ操作者が違う)
・全体として、象牙細管の奥ほど死んだ菌の割合は下がった(著者ら):150μmで最も高かったPIPSでも60〜70%だった(3つの部位の範囲)
・機器を選ぶ根拠にするには材料が少ない:抜去歯に1種類の菌を入れた実験室の結果で、象牙細管の結果は各方法1本の歯から。患者の治りは調べていない
著者らは、効率のよい方法を組み合わせると治療成績がよくなる見込みがあると述べつつ、別の根管の形や太い根管でも確かめる必要があるとしています。どの方法を選ぶかは、手持ちの機器・費用・手間と、ほかの研究の結果を合わせて考えることになります。
(2)象牙細管の結果は、各方法1本の歯の割断面を、各部位3か所撮影して測ったものです。各方法1本の歯どうしの比較なので、歯ごとのばらつきは分かりません(筆者の読み)。
(3)根管は25/04までの細めの形成で、単根管の遠心根と下顎小臼歯だけを使っています。著者らも、別の根管の形や太い根管で確かめる必要があるとしています。
(4)PIPSだけ別の歯科医師が操作しています。根管の中の菌は、生きた菌の代謝を色で測るMTT法で見た「おおよその減り方」です。
(5)象牙質への影響や、患者の治りは評価していません。
(6)利益相反は無いと明記されています。研究は米国国立衛生研究所(NIH)などの研究費で行われました。
今日のひとこと
この実験室研究では、根管の中の菌はXPエンドフィニッシャーで最も大きく減り、象牙細管の深さ150μmで死んだ菌の割合はPIPSが最も高いという、物差しによって違う結果になりました。ただし抜去歯に1種類の菌を入れた実験で、象牙細管の結果は各方法1本の歯から測った値です。「根管の中と象牙細管の奥は別々に見る」という視点を持ち帰り、機器の選択はほかの研究と合わせて考える、というのがこの論文に合った読み方です。


