1問1答 論文 エンド

彎曲根管を#45まで広げても、走行は保てるのか

1問1答 論文 エンド

エンド|「彎曲根管の根尖部は#25〜#30で止める」という当時の常識が、材料を変えれば動かせるのかを検証した研究。フロリダ大学のEspositoとCunninghamが、彎曲20〜45度の抜去歯45本を3群に分け、器具を入れた状態のX線写真を重ね合わせて走行の逸脱を調べた(Esposito・Cunningham 1995・J Endod)

彎曲した根管の根尖部を、どこまで太く広げていいのか。1995年当時の答えは「#25〜#30の範囲に制限することが多い」でした。原著は、処置上の合併症を最小限にするためだと述べ、あわせてEl Deebらがステンレスファイルの種類にかかわらず、サイズが大きくなるほど根管のジッピングの発生が有意に増えると示していたからです。Weineはさらに踏み込んで、あらかじめ彎曲を付けたかどうかにかかわらず、すべてのファイルが彎曲根管をまっすぐにしようとすると述べていました。そこへニチノール(ニッケルチタン合金)製のファイルが登場します。Waliaらの報告では、同じ製法で作った#15のステンレスファイルと比べ、#15のニチノールは曲げとねじりの弾性が2〜3倍で、ねじり破折への抵抗も優れていました。EspositoとCunninghamは、この柔らかさが「根尖部をどこまで広げられるか」を変えるのかを試しました。成熟した根尖を持つ抜去歯45本(Schneider法で彎曲20〜45度)から1根ずつを使い、彎曲度で分けたうえで15本ずつ3群にランダムに割り付け。①K-Flex(ステンレス)②NT Mac(ニッケルチタン手用)③NT Ni-Ti(ニッケルチタン ロータリー・Ni-Ti-matic専用ハンドピース)で、いずれも追加の歯冠側の拡大(コロナルフレア)を行わずに根尖部を#45まで形成します。評価は#15を入れた最初のX線写真に、#25・#30・#35・#40・#45を入れた写真を重ね合わせる方法で、大きいファイルが#15を完全に覆い隠していれば走行維持(+)、根尖側または中央1/3に2本のファイルが見えれば側方の削りすぎかジッピングとして逸脱(−)。2名の検者が盲検で評価しました。結果、ニッケルチタンは手用もロータリーも、すべてのサイズで15本中15本が走行を維持。ステンレスは#25で14本、#30で13本(ここまでは有意差なし)、#35で11本(p=0.008)、#40で10本(p=0.002)、#45で8本(p=0.001)と、サイズとともに逸脱が増えました。3群の平均彎曲度に差はありません(27.86度・28.20度・28.20度、F=0.01・p=0.99)。ただしロータリーには弱点も記録されています。#35以下のロータリーは、推奨された根尖方向の圧を超えずには作業長へ到達できないことが多く#25のロータリーが1本、ハンドピース始動時に先端1.5 mmで分離しました。抜去歯45本のin vitroで、清掃効果や治療成績は評価していません。

論文
A comparison of canal preparation with nickel-titanium and stainless steel instruments
著者
Peter T. Esposito、Charles J. Cunningham(フロリダ大学歯学部 歯内療法学大学院プログラム・米国ゲインズビル)
掲載
Journal of Endodontics 1995;21(4):173-176
種類
抜去歯を用いた3群比較のin vitro研究(X線写真の重ね合わせによる評価・検者盲検)成熟した根尖を持つ抜去ヒト歯45本を使用。Schneider法で彎曲20〜45度(中等度〜重度)のものを選び、1歯につき1根(複根歯は他の根を切除)。髄室を開拡し、#10のパスファインダーで通過性を確認作業長は根尖孔の0.5 mm手前。根管の彎曲がX線束と直交するよう、再現性のある角度で繰り返し撮影できるように植立した。彎曲度で分けたうえで、15本ずつ3群にランダムに割り付け第1群=K-Flex(ステンレス)、第2群=NT Mac(ニッケルチタン手用)、第3群=NT Ni-Ti(ニッケルチタン ロータリー/Ni-Ti-matic エンジン駆動ハンドピース)。全群とも、追加の歯冠側の拡大を行わずに根尖部を#45まで形成。#15を作業長に入れた状態で撮影し、続いて#25・#30・#35・#40・#45を入れた状態でも撮影。最初の写真を各写真に重ね合わせ、NIH Image(Macintosh用のパブリックドメインの画像解析プログラム)でデジタル化・拡大して2名の検者が盲検で評価した。判定=大きいファイルが完全に重なり#15が判別できない=走行維持(+)/根尖側または中央1/3に2本のファイルが見える=側方の削りすぎ(ストリッピング)あるいは根尖部のジッピング=逸脱(−)。中間サイズ(#25・#30・#35)が(ロータリー系に対して)推奨された根尖方向の圧を超えずには作業長まで進められなかった場合でも、到達した深さまで元の走行を保っていれば(+)とした。統計はカイ二乗検定。研究資金=米国歯内療法学会(AAE)の研究教育財団による歯内療法大学院生賞から一部支援(原著に同財団の公式見解ではない旨の断りあり)
PMID
7673815

彎曲根管の根尖部、どこまで太くしていいのか

彎曲した根管の根尖部を、#25や#30で止める。多くの人がそう教わり、そう実践しています。ではその上限はどこから来たのか。

1995年のこの研究の答えは明快です。少なくともこの研究の条件下では、その上限は根管の都合ではなく器具の硬さの都合だったように見えます。彎曲20〜45度の抜去歯45本を3群に分けて#45まで広げると、ニッケルチタンは手用もロータリーも15本中15本で元の走行を保ち、ステンレスは#35から有意に逸脱し始めて、#45では15本中8本(53.3%)まで落ちました。差がつき始めるのは、まさに#30を超えたところです。

「すべてのファイルは彎曲をまっすぐにしようとする」

Schilderは、最終的な根管形成を元の根管の形と方向に沿わせるという目標が、歯内療法で最も無視されている段階かもしれないと述べ、最大の問題は根尖部の彎曲を保とうとするところにあると指摘していました。

Weineの観察はもっと手厳しいものです。あらかじめ彎曲を付けたかどうかにかかわらず、すべてのファイルが彎曲根管をまっすぐにしようとする。そして器具の選択や術式にかかわらず、形成された根管には元の方向と形を保てなかったことを示す望ましくない特徴が現れる、と結論しました。El Deebらはさらに、ステンレスファイルの種類にかかわらず、サイズが大きくなるほどジッピングの発生が有意に増えると示しています。

だから、根尖部を#25〜#30に制限する。原著の言い方では「処置上の合併症を最小限にするため」に、彎曲根管の根尖部形成はしばしば#25〜#30の範囲に制限されていました。一方でエンジン駆動の器具は、時間短縮と術者の疲労軽減のために開発されましたが、彎曲根管ではレッジ・側壁のストリッピング・歯根膜への穿孔・根尖孔のジッピング・器具の分離という問題が手用より起こりやすいことが示されており、彎曲根管の根尖孔まで回転器具を使うことは禁忌とされていました。

そこへニチノール(ニッケルチタン合金)が登場します。Waliaらの報告では、同じ製法で作った#15のステンレスと比べ、#15のニチノールは曲げとねじりの弾性が2〜3倍あり、ねじり破折への抵抗も優れていました。柔らかい器具は彎曲根管をよく辿り、まっすぐにする傾向を減らす——この一般論を、実際の数字にできるかどうかが問われました。

今回の一手:同じ写真に重ねて、ずれたかどうかを見る

設計:成熟した根尖を持つ抜去ヒト歯45本。Schneider法で彎曲20〜45度(中等度〜重度)のものを選び、1歯につき1根を使う(複根歯は他の根を切除)。#10のパスファインダーで通過性を確認し、作業長は根尖孔の0.5 mm手前。根管の彎曲がX線束と直交するよう、再現性のある角度で繰り返し撮影できるように植立する。彎曲度で分けたうえで、15本ずつ3群にランダムに割り付け。第1群=K-Flex(ステンレス)、第2群=NT Mac(ニッケルチタン手用)、第3群=NT Ni-Ti(ニッケルチタン ロータリー/専用のエンジン駆動ハンドピース)。全群とも追加の歯冠側の拡大を行わずに根尖部を#45まで形成した。

評価方法がこの研究の要点です。#15を作業長に入れた状態で撮ったX線写真を基準にして、#25・#30・#35・#40・#45を入れた状態の写真に重ね合わせます。判定は単純で、大きいファイルが#15を完全に覆い隠していれば走行維持(+)。根尖側または中央1/3に2本のファイルが見えれば、側方の削りすぎかジッピングとして逸脱(−)。画像はデジタル化してNIH Imageで拡大・強調し、2名の検者が盲検で評価しました。

ひとつ、判定に条件が付いています。中間サイズ(#25・#30・#35)が、(ロータリー系に対して)推奨された根尖方向の圧を超えずには作業長まで進められなかった場合でも、到達した深さまで元の走行を保っていれば(+)としました。これは後で効いてきます。

結果:差がつくのは#30を超えたところから

0 33.3% 66.7% 100% 元の根管の走行を保てた割合(各群15本) 100% 93.3% 100% 86.7% 100% 73.3% 100% 66.7% 100% 53.3% #25 #30 #35 #40 #45 ニッケルチタン(手用・ロータリーとも) ステンレス(K-Flex) 原著Table 1の実数(ニッケルチタンは手用・ロータリーとも全サイズ15/15、ステンレスは14・13・11・10・8)から計算した割合。p値は#25=0.325、#30=0.101(いずれも有意差なし)、#35=0.008、#40=0.002、#45=0.001。⚠️ 判定規則上、中間サイズ(#25・#30・#35)はロータリー系の推奨圧を超えずには作業長へ届かなくても、届いた深さまで走行を保っていれば「保てた」として数えられている(#40・#45にはこの但し書きは効かない)。群の色は有意差のついたサイズをオレンジで示している
元の走行を保てた割合。ニッケルチタンは全サイズで15本中15本、ステンレスはサイズとともに落ちる(原著Table 1の実数から計算)

ステンレスは#25で14本(93.3%)、#30で13本(86.7%)。ここまではニッケルチタンとの差は統計学的に有意ではありません(p=0.325、p=0.101)。ところが#35で11本(73.3%・p=0.008)、#40で10本(66.7%・p=0.002)、#45で8本(53.3%・p=0.001)と落ちていきます。ニッケルチタンは手用もロータリーも、すべてのサイズで15本中15本が走行を維持しました

比較の前提も確かめられています。

0 13.3度 26.7度 40度 根管の彎曲度(Schneider法・度) 27.9度 28.2度 28.2度 NiTi手用(Mac) NiTiロータリー ステンレス(K-Flex) 原著Table 2。平均彎曲度は27.86度・28.20度・28.20度、標準偏差はそれぞれ7.14・6.86・6.21で、3群間に統計学的な差はない(F=0.01・p=0.99/棒の値ラベルは小数第1位に丸めて表示している)。彎曲度で分けたうえで割り付けているので、走行維持の差を彎曲の偏りでは説明できない
3群の平均彎曲度に差はない(原著Table 2)。走行維持の差を彎曲の偏りでは説明できない

平均彎曲度は27.86度・28.20度・28.20度(標準偏差7.14・6.86・6.21)で、F=0.01・p=0.99。実測として群の難易度は偏っていません。

そして、都合の良い話だけでは終わりません。ニッケルチタンのロータリーが1本、分離しました#25のロータリーファイルの先端1.5 mmが、作業長でX線写真を撮った直後、ハンドピースを始動した瞬間に折れています(他群との比較では統計学的に有意ではないと記されています)。

柔らかいと何が変わるのか、そしてロータリーの落とし穴

著者らの説明は慎重な言い回しです。ニッケルチタンの器具は、根管を根尖側へ進むにつれて最も抵抗の少ない経路を辿るようにたわんでいるように見える。そして元の根管の方向が、より大きな器具にとっての「パイロットの通路」として働くのかもしれない。つまり最初の細いファイルが通った道を、後続の太いファイルがなぞっていく構図です。

ただしこの柔らかさには裏があります。同じ柔らかさが、アンチカーバチャーファイリングとフレアリングの効き方を大きく減らす——狙った側の壁を選んで削るという操作が効きにくくなるわけです。著者らは、もしニッケルチタンが根管の中心軸に沿って円周状に広げることが示されるなら、アンチカーバチャーファイリングの必要性そのものが減るかもしれないと続けています。そして実務的な注意を1つ。ステンレスで必要だったプレベンディング(あらかじめ彎曲を付けること)は、ニッケルチタンでは禁忌です

ロータリーの弱点は、もっと具体的でした。#35以下のロータリーは、推奨された根尖方向の圧を超えずには作業長へ到達できないことが多かった。著者らはこれを#35までの刃(フルート)の設計が控えめであることに帰しうるかもしれない、と書いています。そして推奨圧を超えると器具分離の危険が増す可能性があるとも。実際、すべての症例でより攻撃的な#40なら作業長に到達し、走行も保てました

ここで著者らは、自分たちの手順の異様さを自分で指摘します。小さい器具が作業長に届かなかった直後に、より大きい器具を作業長まで入れるという進め方は、従来のどの形成法も推奨していない。この率直さが、この論文の信頼できるところです。現在のロータリー設計では、根尖部形成を最低でも#40まで広げる必要があるかもしれないという書き方にとどめています。

明日の臨床へ:上限を動かせる、ただし別の制約が来る

①「#25〜#30で止める」の根拠が器具側にあるかもしれないと知る。原著は、この制限が「処置上の合併症を最小限にするため」に行われてきたと述べています。ニッケルチタンなら#45まで走行を保てたという事実は、洗浄液を届かせたい根尖部をどこまで広げるかという設計の自由度が増えたことを意味します。
②プレベンディングはしない。ステンレスの基本動作がそのまま禁忌になります。器具が変われば、手の動きも変えなければなりません。
③アンチカーバチャーの効きが落ちる可能性を織り込む。著者らは「ニッケルチタンの器具は最も抵抗の少ない経路を辿るようにたわんでいるように見える」と述べ、この柔らかさがアンチカーバチャーファイリングとフレアリングの効き方を大きく減らすと書いています。いずれも測定された結果ではなく著者らの見立てですが、「分岐部側を避けて厚いほうを削る」という意図的な操作が効きにくくなる可能性は頭に置いておきたいところです。歯冠側の先行拡大をどこで行うかが、いっそう重要になります(この研究は歯冠側の追加拡大をせずに行われている点にも注意が要ります)。
④届かないときに、より大きい器具で押さない。この研究はそう進めた結果を報告していますが、著者ら自身が「従来のどの技法も推奨していない」と書いています。届かない理由を考えるほうが安全です。
⑤分離は起こる。#25のロータリーが1本、始動の瞬間に折れました。柔軟性は破折しないことの保証ではありません。

ここだけ、冷静に補助線

抜去歯45本のin vitroで、各群15本です。評価しているのはX線写真上で元の走行が保たれたかどうかの1点だけで、清掃効果・デブリの押し出し・充填の質・治療成績はいずれも測っていません。「走行を保てた」ことと「よく治る」ことは、この研究の中ではつながっていません。

判定にも幅があります。重ね合わせで#15が判別できるかどうかという二値の判定で、ずれの大きさは数値化されていません。また中間サイズが作業長に届かなくても、届いた範囲で走行が保たれていれば(+)としている点は、ロータリー群に有利に働きうる扱いです(著者らはこの条件を明記しています)。器具も1995年当時の特定の製品で、現在のニッケルチタン製品とは設計が大きく異なります。

研究資金は米国歯内療法学会(AAE)の研究教育財団による大学院生賞から一部支援を受けており、原著には同財団の公式見解ではない旨の断りが付いています。器具メーカーからの資金提供の記載は見当たりません。

それでも、この論文が引用され続ける理由ははっきりしています。「#30という上限は、根管の性質ではなく器具の性質に由来するのかもしれない」と、同じ条件の比較で示したからです(原著も「強く、かつ柔軟なニッケルチタンの器具の登場は、より硬いステンレスが課してきた従来の制約のいくつかを取り除くかもしれない」という書き方で、結語にも「この研究の条件下では」と付けています)。制約が材料に由来すると分かれば、材料を変えれば動かせる。その後のニッケルチタンロータリーの普及は、ここで測られた1つの差から始まりました。同時に、作業長に届かない・始動の瞬間に折れるという、今日まで続く課題もこの時点で記録されています。

今日のひとこと

著者らの結論:この研究の条件下では、ニッケルチタンの手用(Mac)とロータリー(Ni-Ti)は、根尖部を#35・#40・#45まで広げたときに、ステンレス(K-Flex)より有意に優れて彎曲根管の元の走行を保った。そしてステンレスと比べて、より太い根尖部形成を、走行を保ったまま行える。数字で見ると、ニッケルチタンは両群ともすべてのサイズで15本中15本(100%)。ステンレスは#25で14本、#30で13本までは有意差がなく、#35で11本(p=0.008)、#40で10本(p=0.002)、#45で8本=53.3%(p=0.001)と落ちていきました。差がつき始めるのは#30を超えたところです。ただし著者らはロータリーの弱点も残しています。#35以下のロータリーは推奨圧を超えずに作業長へ到達できないことが多く、その理由を#35までの刃の設計が控えめであることに帰しうるかもしれない、と書いています。そして小さい器具が作業長に届かなかった直後に、より大きい器具を作業長まで入れるという進め方は、従来のどの形成法も推奨していないと自ら書き添えました。#25のロータリーが1本、ハンドピース始動時に先端1.5 mmで分離してもいます。筆者の読みでは、この論文の値打ちは「NiTiのほうが優れている」ではなく、「#30という上限は、器具の硬さに由来する制約だったのかもしれない」と示した点にあります。ただし抜去歯45本のin vitroで、清掃効果・充填の質・治療成績は評価していません。

Esposito PT, Cunningham CJ. A comparison of canal preparation with nickel-titanium and stainless steel instruments. J Endod. 1995;21(4):173-176. PMID: 7673815
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。