ペリオ|Phase4 メインテナンス
歯周治療を終えてメインテナンスに移った患者は、その後どれだけ歯を失うのか。1988年、テキサス州の一開業医が1949年から1982年までに治療した1,535名を、平均12.9年にわたって集計しました。答えは「1人あたり0.29本」。ただしこの平均値には、注意して読むべき構造があります。
①「治療後は、どれだけもつのか」に数字で答える
患者に歯周治療を提案するとき、必ず聞かれます。「治したら、この歯はどれくらいもちますか」。
この問いに答えるため、1960年代から複数の長期報告が積み重ねられてきました。著者らは冒頭でそれらを並べています——Oliver 1969(442名・10.1年・0.5本)、Hirschfeld & Wasserman 1978(600名・22年・1.8本)、McFall 1982(100名・19年・2.6本)、Becker 1984(95名・6.58年・1.6本)、Lindhe & Nyman 1984(61名・14年・0.49本)、Goldman 1986(211名・22.2年・3.6本)。
ただし著者らは、これらの比較には多くの変数が絡むと注意を促します。喪失歯数の計算方法(予後不良歯を最初に抜いたかどうか)、そしてどれだけの喪失が少数の難治性患者によるものか。
そのうえで、この論文は1,535名という当時最大級のサンプルを提示しました。
②1949年から1982年、一人の診療室の記録
調査対象は、著者の一人(CLN)がサウステキサスで1949年から1982年までに治療し、その後も別の著者(WHS)のもとでメインテナンスを継続していた1,535名(男性475名・女性1,060名)です。
この診療室の治療哲学が、そのまま結果の背景になります。
- 綿密なプラークコントロール、歯周ポケットの除去、そして厳格なリコール・メインテナンスプログラムに基づく
- 73.5%の患者が、組織形態の改善やポケット除去のために切除的あるいは再生的な外科処置を受けた。26.5%は非外科的に管理された
- 50.1%に何らかの咬合治療(全額または限局的)が行われた
- ほぼ全員が3〜6か月のリコール間隔で維持され、リコールの間隔は歯周状態と口腔衛生の有効性に応じて設定された
- 隣接面のプラークコントロールが強調された——そこが歯周破壊の主な部位であり、かつ患者が定期的に思い出させられないと最も怠りやすい部位だから
用いられた口腔清掃指数は、プラークのない歯面の割合を記録するものです(O’Leary のプラークコントロールレコードの逆で、プラークが5%の歯面にしかなければ指数は95%)。
予後の判定基準も明記されています。中等度〜進行した根分岐部病変、二次性咬合性外傷による動揺、歯周支持の50%超の喪失があれば「guarded(要注意)」。クラスⅢの動揺、補綴・修復処置の妨げになるもの、近接や病変の程度から隣在歯を危険にさらすものは「hopeless(絶望的)」。
③平均0.29本の内訳
期間が長くなるほど喪失は増えます。0〜10年群(732名)では95.1%が1本も失わず、11〜20年群(565名)では85.7%、20年以上群(238名)では80.3%。6本以上を失った15名のうち53.3%は、20年以上この診療室にいた患者でした。
喪失本数の分布はこうです。0本=1,371名(89.3%)、1〜2本=108名(7.0%)、3〜5本=41名(2.7%)、6本以上=15名(1.0%)。失われた444本は164名によるもので、残る1,371名は全期間を通じて1本も失っていません。
口腔清掃との関係も示されています。
- プラークのない歯面が90%以上の252名では、6本以上を失った患者はゼロ
- 70%未満の114名では、6本以上を失った患者が7名(この群の6.1%にあたり、6本以上喪失群全体の46.6%を占める)
- 口腔清掃指数の平均は、喪失ゼロ群79.99%、1〜2本群79.35%、3〜5本群77.42%、6本以上群70.53%
そして、初診時の予後判定がその後を予告していました。歯を1本も失わなかった1,371名は、初回検査時に予後不良(doubtful)の歯が平均2.72本。6本以上を失った患者では平均8.93本です。
再治療については、244名(15.9%)が初回の是正治療のあと外科的な再治療を受けています。そのうち163名は歯を失わず、44名が1〜2本、27名が3〜5本、10名が6本以上を失いました。
④15人の症例が語ること
この論文の白眉は、6本以上を失った15名を1例ずつ短く記述している点です。理由の分類がそのまま、メインテナンスのリスク項目になっています。
糖尿病:25年にわたりコントロール不良だった65歳女性は8本を失った。リコールは規則正しく守り、口腔清掃指数は75〜95%だった。コントロール不良の63歳女性は、治療開始時に21本の予後不良歯を持ち、13年で15本を失った。著者らはこの2名で合わせて23本が失われたと総括しています。
不良な口腔清掃:71歳男性は22年間の平均口腔清掃指数が35%で、7本を失った。64歳男性は20〜70%(通常は20〜30%)で、26年間に局所的な外科処置を5回受け、8本を失った。
転医・中断からの復帰:63歳男性は初回治療の23年後に9本を失って戻ってきた。62歳女性は是正治療後に離れ、2年後に6本を失い上顎義歯を装着して戻った。著者らは「診療室を離れて戻った患者は36本を失った」とまとめています。
部分床義歯・固定式スプリント:ここが最も示唆に富みます。71歳女性は4年間、口腔清掃が不良でも歯を失わなかった。その後、上下顎に全顎の固定式スプリントを装着し、27年で21本を失った。口腔清掃指数は15〜40%で、スプリントが良好なプラークコントロールを不可能にしていた。77歳女性は、歯周のコンサルテーションなしにリコールの合間に限局的な固定式スプリントを受け、15年で14本を失った。
著者らは、固定式スプリントで治療された3名で44本が失われ、これは全喪失歯の10%(この群では1人平均14.67本)にあたると計算しています。そして固定式スプリントの問題を列挙します——合着の失敗による二次う蝕、効果的なプラークコントロールの困難さ、プラークを溜める過不足のあるマージン。歯肉縁下のマージンは慢性炎症をもたらし、スプリントを決断させた動揺そのものが、すべての支台の完全な適合を困難にする。
⑤明日の臨床へ
第一に、平均値を患者にそのまま伝えない。0.29本/12.9年という数字は素晴らしいが、その裏で164名が444本を失っている。著者ら自身が「喪失はグループ全体で平均されているが、そのほとんどは少数の患者に起きた」と明記しています。患者に伝えるべきは平均ではなく、その人がどちら側にいるかです。
第二に、初診時の予後不良歯の本数を記録に残す。喪失ゼロ群2.72本に対し、6本以上喪失群8.93本。この差は、メインテナンス開始時点で見えている情報です。
第三に、固定式スプリントの判断は歯周の視点を通す。3名で44本=全喪失の10%という数字と、「歯周のコンサルテーションなしにスプリントが装着された」という記述は、補綴設計を歯周治療の外で決めることの危うさを示しています。
今日のひとこと
1,535名の平均12.9年で、歯周病により失われた歯は合計444本、1人あたり平均0.29本。1,371名(89.3%)は1本も失っていない。一方、444本のうちの大半を失ったのは164名で、6本以上を失った患者は15名(1.0%)だった。期間別では、0〜10年で1本も失わなかった患者が95.1%(732名中696名)、11〜20年で85.7%(565名中484名)、20年以上で80.3%(238名中191名)。6本以上を失った15名のうち53.3%は20年以上の在籍者だった。73.5%の患者が切除的または再生的な外科処置を受け、26.5%は非外科的に管理された。50.1%に何らかの咬合治療が行われた。再治療(外科的再介入)を要したのは244名(15.9%)。口腔清掃指数(プラークのない歯面の割合)の平均は、歯を失わなかった群で79.99%、6本以上失った群で70.53%。初診時に予後不良(doubtful)と判定された歯は、歯を失わなかった1,371名では平均2.72本だったのに対し、6本以上を失った患者では平均8.93本だった。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。


