ペリオ|Phase2 歯周外科
「骨移植は必須だ」「いや、価値は不明だ」「むしろ有害だ」——1992年の時点で、専門家の見解はここまで割れていました。Mellonigはその対立を隠さずに並べたうえで、自家骨と同種骨の研究を丁寧に積み上げていきます。読むと、材料の優劣ではなく「何がどこまで確かめられているか」の地図が手に入ります。
①専門家の見解が、真っ二つに割れていた
この総説の書き出しは、いま読んでも清々しい。Mellonigは、自分の専門である骨移植について、賛否の引用をそのまま並べるところから始めます。
推す側——「骨移植材は新付着装置の再生を促進する」(Bowers ら 1989)。「骨移植療法は、患者による日々の効果的なプラークコントロールと専門家による管理を含む包括的なケアプログラムの中では、20年を超える期間にわたって臨床的に成功することが示されている」(Schallhorn 1980)。
否定する側——「ヒトの移植研究のどれ一つとして、新付着形成を明確に示す実験モデルを提供していない。多くの研究者が対照を置かず、既に罹患した根面への新付着を組織学的に疑いなく示した者はいない」(Gara & Adams 1981)。「科学的documentationの観点からは、(再生療法の)価値は明らかでない。骨縁下ポケットの『骨fill』の目覚ましい結果は、骨移植の有無にかかわらず報告されている」(Ramfjord 1984)。
有害だとする側まであります——「骨由来の肉芽組織は歯根吸収と骨性癒着を誘導する可能性があるため、骨移植によって骨の成長を促すという発想は極めて疑わしい」(Karring ら 1980)。
この3つの立場を、同じページに並べたうえで数字を積む。それがこの総説の姿勢です。
②自家骨——どこから採るかで結果は変わるか
自家骨には、皮質骨チップ、骨コアギュラム、骨ブレンド、口腔内・口腔外の海綿骨、そして骨髄があります。
口腔内から採った骨コアギュラム・骨ブレンドでは、25欠損で73%の骨fill(Froum ら 1975)。報告によっては平均3.65mm、症例によっては12mmに達し、「50%以上の骨fill」が予知性をもって達成できるとされました。
口腔外(腸骨)からの海綿骨・骨髄では、182欠損で平均3.33mmの骨fill。根分岐部や歯間部のクレーターが完全に消失した症例が、この材料への関心を高めました。
骨コアギュラムの根拠として語られたのは、粒子が小さいほど良いという考え方です。細かく砕くことで、生着に必要な表面積が増えるという理屈でした。
③凍結乾燥骨(FDBA)——自家骨を足すと予知性が上がる
FDBA(凍結乾燥骨同種移植材)は、この総説の時点で最も多くのデータが集まっていた材料です。
6か月時点の再エントリーによるデータで、FDBA単独で治療された329部位のうち220部位(67%)が「完全または50%以上の骨fill」に到達。自家骨を併用したFDBA(FDBA+A)では、176部位のうち137部位(78%)。ポケットの有意な減少も得られています。
著者はここから「FDBAに自家骨を加えたほうが、FDBA単独より効果的である」と結論づけました。別のグループの報告でも、滅菌処理したFDBAで60%の部位が50%以上の骨fillを達成しています。
④脱灰凍結乾燥骨(DFDBA)——皮質か海綿かで、はっきり分かれた
DFDBA(脱灰凍結乾燥骨)で興味深いのは、由来する骨の種類で結果がはっきり分かれた点です。
皮質骨由来のDFDBAは、47の骨欠損を対象とした対照研究で平均2.6mm(欠損の65%)の骨fill。移植しなかった部位は1.3mm(38%)でした。別の報告では27の骨内欠損で平均2.4mm、6症例では元の欠損の75〜95%が埋まったという結果もあります。
ところが海綿骨由来のDFDBAは、16名のレントゲン分析で平均1.38mm(対照6部位は0.33mm)と、伸びが小さい。
この差の説明が明快です。骨誘導タンパクは骨基質に存在します。海綿骨は皮質骨より骨基質の量が少ないため、新生骨の収量も少なくなると予想される——「脱灰凍結乾燥骨」とひと括りにできない理由がここにあります。
ただしDFDBAとFDBAを11対の部位で直接比べた研究(Rummelhart ら 1989)では、ポケットの減少・付着の獲得・骨fillのいずれにも統計学的な差がありませんでした。著者は「DFDBAの骨誘導タンパクが不十分だった可能性、あるいは移植した病変の種類や深さを反映しているのかもしれない」と、慎重に留めています。
⑤そして、いちばん大事な留保
動物実験のまとめでは、移植と非移植を比べた研究の75%で移植のほうが良好な結果であり、非移植の対照が移植を上回った例はひとつもありません。ただし著者は「動物実験の結果は慎重に見るべきで、ヒトへ直接外挿する傾向は然るべく抑えられねばならない」と即座に釘を刺します。
そしてヒトの組織学。この総説の時点で、およそ159件のヒトの歯周骨移植部位がブロック採取され、組織学的に評価されていました。しかしその多くは「隣接する根面が生物学的に汚染され、結合組織性付着を失っていたことを十分に示せていない」と批判されている——つまり「もともと健康だった部分に骨ができただけ」という可能性を排除できていないのです。
ここがこの総説の誠実さです。骨fillという物差しでは移植が一貫して有利。けれど「新しい付着装置ができたか」という問いには、まだ答えが出ていない。その2つを混ぜないまま、著者は評価の基準を4つに整理しています——①ポケットの減少 ②付着の獲得 ③骨欠損の骨fill ④新生骨・セメント質・歯根膜の再生。
⑥明日の臨床へ
1つ目。材料名ではなく、中身で選ぶ。 皮質骨由来のDFDBAと海綿骨由来のDFDBAでは、報告された骨fillが2.6mmと1.38mmで倍近く違います。製品を選ぶときに、由来と処理を確認する理由になります。
2つ目。自家骨を「足す」という選択肢を覚えておく。 FDBA単独67%に対し、自家骨併用78%。フラップを開けた際に得られる骨片を捨てずに混ぜる、という発想は、いまも生きています。
3つ目。「骨が埋まった」と「治った」を分けて話す。 この総説が最も注意を払っているのがここです。患者さんへの説明でも、レントゲンで白くなったことと、歯が長持ちすることは、同じ言葉で語らないほうが誠実です。
4つ目。土台は変わらず、プラークコントロール。 Schallhornの引用にある「20年を超える成功」にも、日々のプラークコントロールと専門的な管理という条件が明記されています。
今日のひとこと
歯周治療における骨の自家移植(autograft)と同種移植(allograft)について、症例報告・対照臨床試験・ヒトの組織学的研究を横断してまとめた総説。冒頭で、当時の見解が真っ二つに割れていたことが引用で示されます——「骨移植材は新付着装置の再生を促進する」(Bowers 1989)対「ヒトの移植研究のどれ一つとして新付着形成を明確に示す実験モデルを提供していない」(Gara & Adams 1981)、さらに「骨由来の肉芽組織は歯根吸収と骨性癒着を誘導しうるので、骨移植で骨の成長を促すという発想は極めて疑わしい」(Karring 1980)。そのうえで数値が並びます。自家骨(口腔内の骨コアギュラム・骨ブレンド)では25欠損で73%の骨fill、口腔外採取では182欠損で平均3.33mm、報告によっては平均3.65mm。凍結乾燥骨(FDBA)単独では329部位のうち220部位(67%)で「完全または50%以上」の骨fillが得られ、自家骨を併用したFDBAでは176部位のうち137部位(78%)。脱灰凍結乾燥骨(DFDBA)は、皮質骨由来が47欠損で平均2.6mm(欠損の65%)で対照の1.3mm(38%)を上回った一方、海綿骨由来は16名で平均1.38mm(対照0.33mm)にとどまりました——骨誘導タンパクが骨基質にあり、その量が海綿骨で少ないためという説明がつけられています。動物実験では、移植と非移植を比べた研究の75%で移植が有利、非移植が優れた例はゼロでした。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。


