朝礼小噺

「斧を研ぐ時間がない」と言っていないか

朝礼小噺

「斧を研ぐ時間がない」と言っていないか

忙しいときほど、一度手を止めて道具を研ぐ。そして、その仕事そのものが本当に必要かを問い直す。

おはようございます。今日は朝礼で話したことを残しておきます。

刃こぼれした斧で木を切り続けるきこりと、声をかける旅人

研ぐ時間がない、と言い続けたきこり

目標設定の場でもよく出てくる、きこりの話があります。ある村に、毎日毎日、斧で木を切り続けているきこりがいました。使い続けるうちに斧はだんだん鈍り、切れ味が落ちていきます。

それを見た旅の人が「斧が鈍っているから、研いだほうがいいですよ」と声をかけました。するときこりは、こう答えたそうです。「私には、斧を研ぐ時間がないんだ」。そして研がないまま、切れない斧で木を切り続けました。

外から見れば答えは明らかです。一度手を止めて斧を研げば、もっと早く、もっとたくさん切れて、早く家に帰れる。それでも、その「手を止める時間」がないと言って、同じやり方を続けてしまうのです。

書類に追われるスタッフと、便利な道具を見せようとする歯科医師

自分の仕事になると、急に見えなくなる

この話を聞けば、誰でも「研げばいいのに」と思います。ところが、いざ自分たちの業務の話になると、同じことを言ってしまいがちです。

先日、ある業務の効率化のためにAIの使い方を教えに行こうとしたら、「今ちょっと忙しいので、少し先でもいいですか」と言われました。まさにきこりの話だな、と思いました。

私自身は今、たとえばメールが届くと、スマートフォンから「返信を書いて」と頼むだけで、AIが返信文を提案してくれます。私は「それでお願いします」と返すだけ。私がやるのは意思決定だけで、作業はほとんどAIが担ってくれる状態です。一日じゅうパソコンに向かう仕事なら、数時間かけて最初に仕組みを整えてしまえば、あとはルーティンワークがどんどん消えていきます。

歯科医師も同じです。「診療が忙しくて勉強会に行く時間がない」と言って、できる治療を増やす機会を逃してしまう。できる治療が増えれば、生産性が上がり、働く時間を短くすることだってできるのに。

ときどき立ち止まって自分を客観視し、何が足りていないのかを見直す。がむしゃらに頑張るだけでは、私たちもきこりになってしまいます。
倉庫の棚を片付け、使わないものを手放すスタッフたち

いちばんの効率化は「やめる」こと

もうひとつ、ぜひ意識してほしいことがあります。業務を根本から変えられないか、そもそもこの業務をやる意味はあるのか、という問いです。

マニュアルを作っていて「この記載、本当に要りますか?」と確認してくれるスタッフがいますが、あの問いかけはとても大事です。AIで効率化するよりも、いちばん効率がいいのは「やめる」ことだからです。

事例

「ハンコを押すのが手間だから電子ハンコにしました」というのは、効率化しているようで、実は「そもそもハンコ自体いらないのでは?」ということがあります。在庫も同じで、棚卸しをいちばん簡単にする方法は、使わないものを捨てること。それだけで数える数がぐっと減ります。

いつもやっているから気づかない。そういう文化だから、と考えずに続けてしまう。だからこそ、捨てることにかかるコストは、どんどんかけてもらって構いません。

忙しいときほど、斧を研ぐ時間をとる。そして研ぐ前に、「その木、本当に切る必要がある?」と問い直す。
今日も一日、よろしくお願いします。