ペリオ|Phase2 歯周外科
同じ術者が、同じ修正Widmanフラップを、24人全員に行いました。違ったのは術後だけ——片方は2週に1回のクリーニング、もう片方は年1回。2年後、骨欠損124個がすべて骨で埋まった群と、ほとんど埋まらなかった群に分かれます。
①骨欠損が治らないのは、骨の形のせいなのか
歯周外科で骨縁下欠損を前にしたとき、長らく共有されていた考えがあります。「術後にポケットが再発するのは、辺縁の歯槽骨に骨の変形が残っているせいだ」——だから骨を削って生理的な形に整える、という発想です。
一方で反対の主張もありました。「軟組織のポケットを除去し、骨欠損を掻爬するだけで、骨の削除をしなくても、治癒の過程で歯槽骨はリモデリングされ、骨の変形は自然に矯正される」。この立場に立てば、さまざまな形の骨欠損が、新しい付着の座になりうることになります。
そして1975年、Nymanらが人での歯周外科後の治癒を調べ、結果を左右するのは口腔衛生の水準だと報告します。綿密なプラークコントロールを続けた患者では、2年間にわたって病的なポケットの再発もアタッチメントの喪失も起きなかった。一方、適切な口腔清掃を保てなかった患者では、付着装置が徐々に劣化していった。
そこで本研究は、はっきりした仮説を立てて検証します。「歯周炎は治せるのか。そして、最適な口腔衛生水準に保たれた患者では、骨縁下ポケットに骨の再生が起こるのか」。
②変えたのは、術後の間隔だけ
対象は、進行した歯周疾患でイエテボリ大学に紹介された患者24名(29〜68歳)、合計452歯。全員が、通常のフルマウスX線で検出できる複数の骨欠損をもっていることが選択条件でした。
初診時に、プラークインデックス(Silness & Löe)・ジンジバルインデックス(Löe & Silness)・ポケット深さ・アタッチメントレベル・辺縁骨レベル(X線上のBone Score)・歯の動揺を記録します。
その後、患者をランダムに試験群と年齢マッチした対照群に配分。個別のケースプレゼンテーションを行ったうえで、全員に動機づけと口腔清掃法の詳細な指導を実施しました。
ここが大事なところですが、手術は両群まったく同じです。全4顎象限に修正Widmanフラップ(逆斜切開→全層弁を頬側・口蓋/舌側に挙上)。プラーク・歯石・肉芽組織を除去し、根面を丁寧にプレーニング。直視下で歯槽骨の形態を確認し、2壁性・3壁性の骨縁下欠損の数を評価。そして——辺縁歯槽骨の切除は一度も行っていません(Resection of the marginal alveolar bone was never performed)。フラップを戻し、隣接面で個別に縫合して骨を完全に被覆しました。
歯周パックは使わず、術後2週間は0.2%クロルヘキシジンで1日2回・2分間の洗口。1回の手術で1顎象限のみを扱い、ほとんどの患者で4象限すべてを手術したため、クロルヘキシジン期間は通常8〜10週に及びました。手術期間の終了時に、Bass法のブラッシングと歯間清掃(歯間ブラシ・デンタルフロス・トゥースピック)を再指導しています。
そして、ここだけが2群の違いです。
試験群は2週に1回リコールし、プロフェッショナルな歯面清掃を実施(Axelsson & Lindhe 1974のプログラム)。対照群は12か月に1回のリコールでプロフィラキシスのみ。再指導も動機づけの再確認も行いません。
術後6・12・24か月に再検査。評価は隣接面領域に限定し、X線は初診時と6・12・24か月の4回、規格再現性のある方法で撮影して、ペアのX線をトレースして辺縁骨レベルと欠損底の位置の変化を実測しました。
初診時、プラークインデックス・ジンジバルインデックス・ポケット深さ・Bone Scoreのいずれにも両群間に差はありません(試験群 1.4/1.6/4.8mm/5.5、対照群 1.6/1.8/4.9mm/5.7)。
③124個すべてが、骨で埋まった
X線と手術時の直視の両方で確認された骨縁下欠損は、合計226個(試験群124個・対照群102個)ありました。
試験群では、初期に記録された骨欠損がすべて骨で再生しました。2壁性64個は6・12・24か月のいずれの時点でも64個すべてが、3壁性60個も60個すべてが再生しています。
対照群では、2壁性62個のうち再生したのは4個、3壁性40個のうち再生したのは6か月時点で10個、12か月で4個、24か月では0個。初期に存在した2壁性62個のうち58個と、3壁性のすべてが、24か月後もまだ残っていました。
骨の「量」で見るとこうなります。欠損の根尖部で骨がどれだけ増えたか(Distance C)は、試験群が2壁性+2.5mm・3壁性+3.0mm。対照群は2壁性-0.9mm・3壁性-0.5mmで、逆に骨が失われています。
辺縁骨頂の吸収量(Distance B)も、試験群が2壁性0.2mm・3壁性0.5mmに対し、対照群は1.5mm・1.2mm。試験群では24か月後の欠損の深さ(Distance A)が2壁性0.1mm・3壁性0.2mmと、ほぼゼロになりました。2次元のX線描画上で計算すると、試験群の骨充填はおよそ80%に相当します。
そして、この結果はX線だけの話ではありません。24か月のリコール直後、X線上で「治癒した」10部位と、さらに悪化した10部位を外科的に再開放して直接確かめています。対照群の骨縁下ポケットの深さは再エントリー時に平均2.3mm。一方、試験群の病変では、骨縁下ポケットを検出することもプロービングすることもできませんでした。
④付着も、動揺も、同じ方向を向く
骨縁下欠損に隣接する部位のアタッチメントレベルは、試験群で6か月+3.0mm、12か月+3.2mm、24か月+3.5mmの獲得(いずれもP<0.001)。対照群は-1.0mm、-1.2mm、-2.1mmと、手術後も一貫して失われ続けました。24か月時点の両群の差は5.6mmです。
隣接面のポケット深さは、試験群が4.8mm→2.4(6か月)→2.6(12か月)→2.7mm(24か月)。対照群は4.9mm→2.9→3.3→3.9mm。両群の差は0.5mm(NS)→0.7mm(P<0.05)→1.2mm(P<0.01)と、時間とともに開いていきます。
手術直後は対照群も改善しているのが読みどころです。手術は両群に等しく効いた。差がつくのは、そのあとでした。
プラークと炎症の数字が、そのまま理由を語ります。プラークインデックスは、試験群が1.4→0.4→0.4→0.3、対照群が1.6→1.0→1.2→1.4。ジンジバルインデックスは、試験群が1.6→0.3→0.3→0.1、対照群が1.8→0.8→1.1→1.5。対照群も術直後は改善するものの、その後は徐々に悪化して初診時の水準へ戻っていきました。
もうひとつ、臨床家の目を引く数字があります。初診時、骨縁下ポケットに隣接して動揺度2(臨床的に過剰な動揺)を示した歯は81歯(試験群37・対照群44)。試験期間の終了時、試験群では37歯のうち25歯が固定(動揺の徴候なし)に戻り、残り12歯に動揺が残りました。対照群では44歯のうち40歯で動揺が持続し、正常に戻ったのはわずか4歯です。
⑤この研究が置き換えたもの
この試験の設計は、いま読むときれいに一点を突いています。
術式は同じ。術者も同じ。骨切除はしていない。初診時の重症度も同等。変えたのは、術後のリコール間隔だけ——それで骨欠損の運命が正反対になりました。
つまり、「骨の変形が残っているから再発する」という説明では、この結果を説明できない。骨の形を整えなくても、プラークが管理されていれば骨は埋まりました。逆に、同じ手術をしても、プラークが戻れば骨は埋まらないどころか、さらに失われていきます。
骨欠損を埋めたのは術式ではなく、術後の2週間ごとの来院だった——本研究の核心はここに尽きます。
⑥明日の臨床へ
①手術の成否は、手術当日には決まらない。 6か月時点では対照群もポケットが2.9mmまで改善していました。差が開いたのは12か月・24か月です。術直後の見た目で成功を判定しない。
②メインテナンス間隔は「治療の一部」である。 2週に1回という間隔は日常臨床では現実的でないかもしれません。ただ「年1回では骨が失われ続けた」という事実は、間隔の設計そのものが臨床成績を決めることを示しています。
③骨切除をしなくても、骨欠損は埋まりうる。 この研究では骨の削除を一度も行っていません。「形を整えないと治らない」わけではない——ただし、その代わりにプラークコントロールが要求されます。
④動揺歯を、動揺だけで抜歯判断しない。 初期に動揺度2だった37歯のうち25歯が固定に戻りました。骨が戻れば動揺も戻る——治療の順番として押さえておきたい観察です。
⑤患者への説明に使える。 「同じ手術をした2つのグループが、通院の間隔だけで2年後にこうなった」という話は、メインテナンスの必要性を説明するうえでこれ以上ない材料です。
今日のひとこと
進行した歯周疾患をもつ患者24名(29〜68歳・452歯)の全員に、口腔衛生指導と全顎の修正Widmanフラップを行った臨床試験(骨切除は一切行わず、フラップを戻して骨を完全被覆。違いは術後の管理だけで、試験群は2週に1回のプロフェッショナルクリーニング、対照群は12か月に1回のプロフィラキシスのみ)。24か月後、試験群ではX線で確認された骨欠損124個(2壁性64・3壁性60)が、すべて骨で再生しました。対照群では2壁性62個のうち58個と、3壁性40個すべてが、24か月後もまだ残っていました。骨の充填量(欠損の根尖部の骨の増減)は、試験群が2壁性+2.5mm・3壁性+3.0mm、対照群が-0.9mm・-0.5mm。アタッチメントレベルは、試験群が24か月で+3.5mmの獲得、対照群が-2.1mmの喪失で、両群の差は5.6mm。隣接面のポケット深さは、試験群4.8→2.7mm、対照群4.9→3.9mm(24か月でP<0.01)。プラークインデックスは試験群1.4→0.3、対照群1.6→1.4。初期に動揺度2だった歯のうち、試験群では37歯中25歯が固定した一方、対照群では44歯中40歯で動揺が持続。再エントリー手術でも、試験群では骨縁下ポケットを検出もプロービングもできませんでした。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。


