ペリオ|Phase2 歯周外科
抜歯窩に骨を入れる。そのとき、脱灰骨(DFDBA)と非脱灰骨(FDBA)のどちらを選ぶかで、結果は変わるのでしょうか。2012年、WoodとMealeyは同じ1人のドナーから採った骨を使い、粒径まで揃えて、違いを「脱灰の有無」だけに絞りました。19週後、歯槽堤の形は同じ。中身が違いました。
①その骨、脱灰されているかどうかを見ていますか
抜歯窩を保存するとき、同種骨(アログラフト)は定番の選択肢です。棚には脱灰凍結乾燥骨(DFDBA)と非脱灰凍結乾燥骨(FDBA)が並んでいて、どちらも「効く」とされています。では、どちらを選ぶべきなのか。この問いに答える直接比較は、2012年まで存在しませんでした。
理屈のうえでは、違いははっきりしています。どちらも骨伝導性(足場になる性質)はある。ただし骨誘導性(間葉系細胞を骨芽細胞へ分化させる性質)が証明されているのはDFDBAだけです。その源は、骨基質に含まれる骨形成タンパク(BMP)。FDBAにも同じBMPは入っていますが、石灰化した基質に閉じ込められているため、破骨細胞が脱灰してくれるまで出てきません。DFDBAは、その工程が済んだ状態で植えられる——というわけです。
ただし話はそう単純でもありません。FDBAのほうが足場としての形態維持に優れ、骨伝導性が高い可能性が指摘されています。また、破骨細胞による分解に時間がかかるぶん、BMPの放出が長く続くという見方もできます。脱灰しすぎればカルシウムが失われ、新生骨基質の石灰化に必要な核が減る(最大の骨誘導能は残存カルシウム約2%とされます)。どこかに折り合いがあるはずですが、ヒトの抜歯窩でどちらが多く骨をつくるかは分かっていませんでした。
②違いを、脱灰の有無だけに絞る
この研究の設計が周到です。対象は、単根の非大臼歯を抜歯してインプラントを希望した40名。封筒法で2群にランダム割り付けされました。大臼歯を外したのは、根間中隔の骨がコア生検に混じるのを避けるため。10mm以上の骨支持があり、根の方向がインプラント埋入の方向に近い歯だけを選んで、生検が確実に「移植した部分」から採れるようにしています。
そして材料です。DFDBAもFDBAも、すべて同一の47歳女性ドナーから採取した骨で作られました。粒径はどちらも250〜750μmに統一。DFDBAの残存カルシウムは3.3%。つまり2つの材料の違いは、最終製品の石灰化率だけです。ドナーの年齢・性別・処理工程といった交絡が、設計の段階で消してあります。
さらに、使用したDFDBAの骨誘導能を、ヌードマウスの筋肉内に埋植する試験で事前に確認しています。結果は4段階中1(誘導能は0より大きく25%未満)=低いが存在する。この確認があるおかげで、結果の解釈が一段深くなります(後述)。
抜歯はペリオトームで低侵襲に行い、必要な場合のみ最小限の弁を挙上。骨を骨頂かやや冠側まで填入し、吸収性コラーゲン膜で覆って非吸収糸で固定しました。18〜20週後、インプラント埋入時に内径2.0mmのトレフィンで約8mmのコアを採取し、切片を新生骨・残存移植片・結合組織その他の3つに分けて、ピクセル単位で面積比を計測しています。33名が完了し、32検体(各群16)が解析されました。
③形は同じ、中身が違う
生検組織に占める新生骨は、DFDBAが38.42±14.48%、FDBAが24.63±13.65%(p=0.010)。残存する移植片は、DFDBAが8.88±12.83%、FDBAが25.42±17.01%(p=0.004)。結合組織などの非骨成分は、DFDBA 52.71%・FDBA 49.94%と、両群ともほぼ半分を占めて差がありません。
ここが読みどころです。非骨成分の割合が両群で同じということは、「移植片が吸収された分だけ、そこが新生骨に置き換わっていた」ことを意味します。実際、新生骨の割合と残存移植片の割合は強く逆相関していました(DFDBAでr=−0.837、FDBAでr=−0.761)。骨組織だけを分母にすると、新生骨の割合はDFDBAで81.26%、FDBAで50.63%(p=0.005)——FDBAでは、19週の時点でも骨の半分が「まだ移植片のまま」だったことになります。
一方で、臨床的な寸法変化には差が出ませんでした。幅の減少はDFDBAが2.18±1.62mm(−22.8%)、FDBAが2.09±1.71mm(−20.9%)。高さの減少は両群とも1mm未満です。抜歯後に何もしない場合の報告値(高さ1.67mm・幅3.87mm)と比べれば、どちらの材料でも保存の効果は明らかですが、2つの材料のあいだに差はありません。
④「誘導能が低くても差が出た」の意味
著者らが事前に骨誘導能を測っておいた意図は、ここで効いてきます。もしFDBAのほうが多く骨をつくっていたら、「使ったDFDBAのロットに誘導能が無かっただけ」と説明できてしまう。逆にDFDBAが圧勝しても、「たまたま誘導能の高いロットだった」と言われかねません。実際に使われたDFDBAの誘導能は4段階中1=低いほうでした。それでも新生骨に有意差が出た——だからこの結果は、「たまたま良いロットだった」では説明できないことになります。
DFDBAのロット差は、以前から知られた問題です。6つのボーンバンクの製品を調べた研究では、大半のロットが異所性の骨形成を誘導した一方、まったく誘導しないロットもありました。BMPは処理工程やドナーの条件で失活しうるためです。この研究は「誘導能の下限に近い製品でも、非脱灰骨より速く自家骨に置き換わった」ことを示したと読めます。
⑤明日の臨床へ
1つ目。目的が「形の維持」なら、どちらでもよい。 インプラントを植えられる幅と高さを残すという目的に限れば、この研究は2つの材料を区別しませんでした。入手性やコストで選んでも、寸法の結果は変わらないということです。
2つ目。目的が「自家骨への置換」なら、脱灰骨に分がある。 19週で新生骨38%対25%、残存移植片9%対25%。埋入時のドリリングで触れる骨質の感触も、この差を反映している可能性があります(ただし著者ら自身、それが臨床的にどう効くかは今後の課題だと述べています)。
3つ目。ロットの誘導能は、こちらからは見えない。 DFDBAの効果はBMPの残存量に依存し、製品によって幅があります。「脱灰骨だから必ず誘導能がある」とは言い切れない——この前提を持っておくと、結果が振れたときの解釈が変わります。
4つ目。19週という時間軸を意識する。 この研究は18〜20週の一時点だけを見ています。FDBAの残存粒子がその後さらに分解されて、いずれ追いつくのかどうかは、この研究では分かりません。
今日のひとこと
単根の非大臼歯を抜歯し、抜歯窩を脱灰凍結乾燥骨(DFDBA)か非脱灰凍結乾燥骨(FDBA)で保存した40名をランダムに2群へ割り付け、19週後(18〜20週)にインプラント埋入と同時に直径2mmのコア生検を採り、組織を計測した研究。骨材はすべて同一の47歳女性ドナーから採取し、粒径も250〜750μmに揃えたので、2群の違いは「最終製品の石灰化率」だけです。結果は明快でした。生検組織に占める新生骨はDFDBAが38.42±14.48%、FDBAが24.63±13.65%(p=0.010)。残存する移植片はDFDBAが8.88±12.83%、FDBAが25.42±17.01%(p=0.004)。結合組織などの非骨成分は両群とも約50%で差がありません。骨組織だけを分母にすると、新生骨の割合はDFDBAで81.26%、FDBAで50.63%(p=0.005)。一方で臨床的な歯槽堤の寸法変化には、まったく差が出ませんでした——幅の減少はDFDBA 2.18mm・FDBA 2.09mm、高さの減少は両群とも1mm未満(移植しない場合の報告値は幅3.87mm・高さ1.67mm)。使用したDFDBAの骨誘導能は4段階中1(低いが存在する)と事前に確認済みで、著者らは「その程度の誘導能でも有意差が出た」点を強調しています。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。


