保存修復|ヒト抜去歯の健全象牙質に、アルミナ粒子のエアアブレーションをした群としなかった群のレジン系材料の接着強さを比べた実験室研究を集めた、システマティックレビューとメタ解析(Lima・Soares・Caldeira・Faria-e-Silva・Loomans・Moraes 2021・Operative Dentistry)
間接修復の装着前や仮着材を外したあと、象牙質にサンドブラストをかけてから接着するか迷う場面があります。Lima らは2021年、この問いを実験室研究のメタ解析で調べました。ヒト抜去歯の健全象牙質の実験室研究32本をまとめると、アルミナ粒子のエアアブレーションは、対照の処理ごとに分けたどのメタ解析でも接着強さを有意に下げませんでした。有意に上がったのは、対照の処理と粒径・空気圧の一部の組み合わせだけです。ただし測ったのはほとんどが直後の接着強さで、劣化試験の後を比べることはできていません。
①象牙質にサンドブラスト、接着は上がる?
間接修復の装着前や、仮着材を外したあとの象牙質。口腔内用のサンドブラスターでアルミナ粒子を吹き付けてから接着する先生もいれば、「象牙質を荒らすだけでは」と避ける先生もいます。
この迷いに、実験室研究をまとめて答えようとしたのが、ブラジルとオランダの Lima・Soares・Caldeira・Faria-e-Silva・Loomans・Moraes が2021年に Operative Dentistry に出したシステマティックレビューとメタ解析です。
・ヒト抜去歯の健全象牙質で、アルミナ粒子のエアアブレーション(APA)をした群としなかった群のレジン系材料の接着強さを比べた実験室研究を集め、32本をメタ解析した
・対照の象牙質の処理ごとに分けた5つのメタ解析のどれでも、エアアブレーションの側で接着強さが有意に低い結果は出なかった(著者らは「悪影響はない」と結論)
・有意に高かったのは一部の組み合わせだけ:対照が手用エキスカベーターの時(2研究)、粒径30µm超で対照が処理なし・手用エキスカベーターの時、粒径30µm以下で対照がバーの時、空気圧5bar超で対照がバーの時(2研究)
・測ったのはほとんどが直後の接着強さで、水中保管などの劣化試験の後を比べるメタ解析はできなかった
②なぜこの研究が必要だったか
エアアブレーションは、窩洞形成・着色の除去・選択的なう蝕除去・表面の粗造化など、歯科でいろいろな目的に使われてきました。アルミナ粒子は、セラミックやコンポジットレジンの被着面を粗くして機械的な嵌合を増やす目的でよく使われます。
一方で、セラミックではエアアブレーションが表面の傷や微小なクラックを作り、強度を下げることがあると報告されています。象牙質にかけた時に接着が良くなるのか、悪くなるのかは、実験室研究ごとに粒径・空気圧・時間がばらばらで、はっきりしませんでした。
そこで著者らは、アルミナ粒子のエアアブレーションが、レジン系材料のヒト象牙質への接着強さにどう影響するかを、実験室研究を集めて調べました。帰無仮説は「エアアブレーションは象牙質の接着強さに悪影響を与えない」です。
③何をどう調べたか
・研究の種類:実験室研究(in vitro)のシステマティックレビューとメタ解析。PRISMA に沿い、PROSPERO に登録(CRD42018096128)
・対象(P):ヒトの歯の健全象牙質(ウシの歯は除外)
・介入(I):圧縮空気でアルミナ粒子を吹き付けるエアアブレーション(ほかの粒子は除外)
・対照(C):エアアブレーションをしない象牙質
・評価(O):レジン系材料の象牙質への接着強さ
・検索:PubMed・Web of Science・Scopus を2018年10月まで(英語の論文のみ)。7,340件から重複を除いた5,437件を読み、65本を全文で確認。33本を質的なまとめに、32本をメタ解析に入れた(1本は標準偏差が無いため除外。その研究も接着強さは同程度と報告)
・解析:試験の方法(せん断・引張など)の違いをならすため、標準化平均差(SMD)をランダム効果モデルでまとめた。対照の象牙質の処理(処理なし・バー・SiC耐水研磨紙・手用エキスカベーター・酸エッチング)ごとに分け、さらに粒径(30µm以下/30µm超)、空気圧(5bar以下/5bar超)、時間(10秒以下/15秒以上)で分けた解析も行った(劣化試験の有無で分ける解析も計画したが、⑤のとおり行えなかった)
・使われた条件:70%の研究が30µm超の粒子、空気圧は5bar以下が最多(51.5%)、時間は10秒以下が多かった(54.5%)
SMDは単位の無い指標です。MPaの差ではありません。正の値はエアアブレーションした象牙質のほうが接着強さが高い向き、0をまたぐ信頼区間は有意差を検出しなかったことを表します。
④結果1:対照別の5つの統合結果では有意な低下を検出せず、有意な上昇は手用エキスカベーターの対照だけ
対照の処理ごとに分けた5つのメタ解析では、エアアブレーションの側で接着強さが有意に高かったのは、対照の象牙質を手用エキスカベーターで処理した時だけでした(SMD 1.42、95%信頼区間 0.27〜2.56、p=0.02、I²=67%)。ただし入った研究は2本だけです(原著の参考文献の題名を見ると、2本とも象牙質の清掃方法を比べた研究)。
処理なし・バー・SiC耐水研磨紙・酸エッチングの対照では、有意差を検出しませんでした。5つのどれでも、エアアブレーションの側で接着強さが有意に低い結果は出ていません。なお個々の研究の中には、エアアブレーションの側が有意に低かったもの(SiC耐水研磨紙の対照の一部など)もあります。
⑤結果2:粒径と空気圧で分けると、有意に上がった組み合わせは4つ
粒径・空気圧・時間で分けた20の組み合わせ(表2〜3の全行。原著の図5〜7の小計を筆者が数えた:9+6+5=20)のうち、エアアブレーションの側で接着強さが有意に高かったのは次の4つでした(同じく筆者が数えた:図5で3つ+図6で1つ。有意に低い小計は無し)。
・粒径30µm超・対照が処理なし:SMD 0.66(0.10〜1.21)、p=0.02
・粒径30µm超・対照が手用エキスカベーター:SMD 1.91(1.15〜2.66)、p<0.00001(2研究)
・粒径30µm以下・対照がバー:SMD 0.48(0.21〜0.74)、p=0.0004
・空気圧5bar超・対照がバー:SMD 0.69(0.15〜1.23)、p=0.01(2研究)
吹き付ける時間(10秒以下/15秒以上)では、どの組み合わせでも有意差を検出しませんでした。劣化試験の有無で分けた解析は、直後と劣化後の両方を測った研究が4本しかなく、対照の処理もばらばらだったため、行えませんでした。
研究の質の評価では、無作為な割り付けはおおむね低リスクでしたが、サンプルサイズの計算を報告したのは2研究だけ、術者・評価者の盲検化はどの研究にも報告が無かった、とされています。
⑥著者らの考察
著者らは、どのメタ解析でも接着強さへの悪影響が無かった(統合結果で有意な低下を検出しなかった)ことから、帰無仮説を採択しています。そのうえで次のように考察しています。いずれも著者らの解釈で、この研究で直接確かめたものではありません。
・エアアブレーションで象牙質が不規則・粗造になるという報告はあるが、その表面が接着を妨げるわけではないようだ。アルミナ粒子(ビッカース硬さ約1200kg/mm²)は象牙質(約57〜60kg/mm²)よりずっと硬く、表面を削って粗くし、機械的な嵌合やぬれを良くするのかもしれない
・接着強さが上がるかは粒径と空気圧によった。5bar超は歯科用タービンの空気圧の範囲にあたる。時間は特に重要ではなかった(著者らの表現。実際の結果は、時間で分けた各解析で有意差を検出しなかった、というもの)
・接着の向上を狙って象牙質にかけるなら、30µm超の粒子と5bar超の空気圧が望ましいと思われるが、さらに検討が必要。清掃など別の目的なら粒径や空気圧は問わないが、象牙質を清掃する力そのものはこの研究では調べていない
・先行研究では、直後に見られた差が水中保管後には消えていた。エアアブレーションの良い効果は長くは続かないかもしれない。象牙質にかけるかどうかは歯科医師が自身の臨床経験で決めるもので、文献からは明確な答えは出せない。ただし悪影響も見られなかったので、象牙質への接着という点では安全と考えられる
なお、著者らの結論は「30µm超の粒子と5bar超の空気圧で、直後の接着強さが上がった」とまとめていますが、粒径と空気圧はそれぞれ別の解析で分けたもので、両方を満たす条件を直接比べたわけではありません。また表2のとおり、粒径30µm以下でも対照がバーの時は有意に高い結果でした。
⑦明日の臨床へ
この研究から持ち帰れるのは、次のような読み方です(筆者の読み)。
・ただし「かければ接着が上がる」とまでは言えない:有意に高かったのは、対照の処理と粒径・空気圧の一部の組み合わせだけで、そのうち2つは2研究のみ。バーで仕上げた象牙質やエッチングした象牙質との全体の解析では、有意な上昇を検出しなかった
・使うなら、著者らは30µm超の粒子・5bar超の空気圧を勧めている:ただし著者ら自身が「さらに検討が必要」としている。吹き付ける時間で分けた各解析では、有意差を検出しなかった
すべてヒト抜去歯の健全象牙質での実験室の結果で、口の中での修復物の寿命を調べたものではありません。う蝕影響象牙質や硬化象牙質にもそのまま当てはめられない、と著者らは書いています。「象牙質のサンドブラストは、メタ解析の統合結果では少なくとも直後の接着強さを有意に下げなかった処理」と位置づけて、使うかどうかは目的に応じて選ぶ、という程度に受け取るのが、この論文に合った読み方です。
(2)測ったのはほとんどが直後の接着強さです。劣化試験の後を比べたメタ解析はできず、先行研究では直後の差が水中保管後に消えていました。
(3)有意差が出た組み合わせのうち、手用エキスカベーターの対照と空気圧5bar超・バーの対照は2研究ずつです。SiC耐水研磨紙の対照などは研究間のばらつき(I²)が大きく、個別には有意に低かった研究もありました。
(4)術者・評価者の盲検化はどの研究にも報告が無く、サンプルサイズの計算を報告したのも2研究だけでした。英語の論文だけ、検索は2018年10月までで、う蝕影響象牙質や硬化象牙質には当てはめられません。
(5)SMDは単位の無い指標で、MPaの差には直せません。資金は CAPES(ブラジル)で、利益相反は無いと記載されています。
「象牙質にサンドブラストをかけても、メタ解析の統合結果では直後の接着強さが有意に下がらなかった」という安心材料をくれる一本です。効果が長持ちするかは、劣化試験まで含めた研究で確かめたいところです。
今日のひとこと
ヒト抜去歯の健全象牙質の実験室研究32本をまとめると、対照の処理ごとに分けたメタ解析の統合結果で、アルミナ粒子のエアアブレーションにより直後の接着強さが有意に下がったものはありませんでした(個別の研究には下がったものもあります)。有意に上がったのは、対照が手用エキスカベーターの時や、粒径・空気圧と対照の処理の一部の組み合わせだけです。劣化試験の後は比べられていないので、「象牙質のサンドブラストは、メタ解析の統合結果では少なくとも直後の接着強さを有意に下げなかった。上げる効果は条件つきで、長く続くかは分からない」という程度に受け取るのが、この論文に合った読み方です。


