1問1答 論文 保存修復

セラミック vs レジン、インレー・オンレーはどっちが長持ち?21研究のメタ分析

1問1答 論文 保存修復

補綴・接着 / 部分被覆修復の生存率

臼歯部の部分被覆修復、材料はセラミックとレジンで迷いがち。21研究のメタ分析が、5年・10年の生存率という「時間の答え」を出してくれました。

論文
セラミックとレジンのインレー・オンレー・オーバーレイの臨床成績:システマティックレビュー/メタ分析
著者
Naik VB, Jain AK, Rao RD, Naik BD
掲載
J Conserv Dent. 2022;25(4):347-355
種類
システマティックレビュー/メタ分析(21研究・臨床観察研究中心)
PMID
36187858

「セラミックとレジン、結局どっちが長持ち?」

臼歯部のインレー・オンレー・オーバーレイ。歯を大きく削らずに詰め物・被せ物で機能を戻せる「部分被覆修復」は、いまや日常です。CAD/CAMも普及し、選べる材料も一気に増えました。

そこで必ず出てくるのが、この問いです。「セラミックとレジン(コンポジット)、長い目で見てどっちが持つの?」

接着が効く時代になり、「削る量が少ないなら、扱いやすいレジンでもいいのでは?」という声もあります。一方で「割れにくさや変色を考えるとセラミック」という感覚も根強い。感覚では割れています。ここに、時間軸のデータが欲しくなります。

これまで「メタ分析での比較」が難しかった

実は、この問いに正面から答えた比較は多くありませんでした。過去のレビューは「材料ごとにばらつきが大きく、まとめて数値化(メタ分析)するのが難しい」と結論しがちだったのです。

理由はシンプルで、部分被覆修復の臨床研究は長期のものが少なく、デザインもバラバラだから。RCT(ランダム化比較試験)はごく一部で、多くは後ろ向きの観察研究です。だからこそ「5年・10年でどれくらい生き残るか」を材料別に並べた数字は、現場にとって価値があります。

今回の一手:1983〜2020年の21研究を集めてプール

Naikらは、接着によるセラミック修復が標準化された1983年以降の臨床研究を、PubMed・Embase・Cochrane から網羅的に検索。最終的に21研究(RCT 1・前向き 4・後ろ向き 16)を採用し、レジン/長石系ポーセレン/ガラスセラミックの5年・10年の推定生存率をランダム効果モデルでプールしました。総症例は7,000修復を超えます。

では、実際にどれだけ差が出たのか——結果は「短期は横並び、長期で差が開く」でした。

レジン長石系ポーセレンガラスセラミック

0 33.3% 66.7% 100% 推定生存率 (%) 86% 75% 90% 91% 92% 89% レジン 長石系ポーセレン ガラスセラミック 各グループ左=5年生存率(濃い棒)/右=10年生存率(淡い棒)。レジンは10年で75%まで低下、セラミック2種は約90%を維持。

各材料の推定生存率。グループ内は左=5年・右=10年(右の淡い棒が10年)。レジンだけ10年で75%まで落ち込み、セラミック2種は約90%を保っている。

結果:5年はほぼ横並び、10年でレジンが落ちる

5年生存率は、レジン86%(n=129)/長石系ポーセレン90%(n=1,048)/ガラスセラミック92%(n=2,218)。この時点では、正直どれも「まずまず持つ」レベルで、差は大きくありません。総プールでは5年92%(n=7,148)でした。

差がはっきりするのは10年です。レジンは75%(n=115)まで低下する一方、長石系ポーセレンは91%(n=1,829)、ガラスセラミックは89%(n=1,075)と、セラミック2種は約90%を維持。総プールは10年で87%でした。

つまり: 5年では材料差は小さいが、10年スパンで見るとレジンは生存率が落ち、セラミックは高止まりする。メタ回帰では「セラミックはレジンより長期成績が良い」と示されました。なお長石系ポーセレンとガラスセラミックの間には有意差はありません(5年 P=0.916/10年 P=0.811)。

なぜ差が出る?失敗の中身は「割れ」が主役

失敗の内訳を見ると理由が見えてきます。最も多いのは破折(チッピング含む)で6.2%。次いで歯内的な問題3.0%、二次う蝕1.7%、脱離0.9%。つまり部分被覆修復がダメになる一番の原因は「割れ」でした。

興味深いのは失敗の起き方が材料で違う点です。セラミックは破折(5.9%)で失敗しやすく、レジンは破折が10%と多いうえに、二次う蝕でもやられやすい。強度で勝るセラミックが、長期でじわりとリードする——今回の数字と整合します。

明日の臨床へ:材料より「生活歯かどうか」が効く

この論文でいちばん臨床に刺さるのは、実は材料の話ではありません。生活歯(神経が生きている歯)は、失活歯より失敗が81%少ない(オッズ比0.19)という結果です。

つまり: 修復の生存を左右する大きな因子は「歯そのものの状態」。神経を残せる段階でしっかり守ることが、どの材料を選ぶかと同じか、それ以上に効いてくる、と読めます。

もう一つ実務的な朗報。インレー(86%)とオンレー(89.2%)の5年生存率に有意差はありません(P=0.771)。「咬頭を被覆するかどうか」で生存率が大きく変わるわけではないので、削除量の設計は生存率だけに縛られず、残存歯質や咬合から素直に決めてよさそうです。前歯部・小臼歯・大臼歯といった歯種でも、生存率に有意差はありませんでした。

ここだけ、冷静に補助線
とても実用的なメタ分析ですが、土台は後ろ向き観察研究が中心(21研究中16)でRCTは1本のみ。研究間のばらつきも大きく(I²は90%超と高い異質性)、出版バイアスの検定も陽性でした(Egger P<0.0001)。さらにレジン群は症例数が少なく(10年 n=115)、10年データを出せた研究も限られます。だから「セラミックが必ず持つ」と断定するより、大きな傾向として『長期はセラミックがやや優位、生活歯を残せると強い』と受け取るのが誠実。質の高い長期RCTの続報が待たれます。

今日のひとこと

5年ではセラミックもレジンも横並び。差が出るのは10年——レジンは75%まで落ち、セラミックは約90%を維持する。ただし材料選び以上に効くのは「生活歯を残せているか」。長期を見据えるなら、神経を守る一手を最優先に。

出典:Naik VB, Jain AK, Rao RD, Naik BD. Comparative evaluation of clinical performance of ceramic and resin inlays, onlays, and overlays: A systematic review and meta analysis. J Conserv Dent. 2022;25(4):347-355. PMID: 36187858.
※本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新エビデンスをご確認ください。
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