歯肉の色と診断 | J Periodontol
赤い=炎症が強い、青みがかる=慢性。歯ぐきの色で重症度を推し量っていませんか。17段階の色見本と生検を突き合わせると、色は”歯肉炎の有無”は示すのに、”重症度”は当てにならなかった。「赤みが引いた=良くなった」と早合点しないための一本。
その歯ぐきの赤み、”どのくらい悪い”まで分かりますか?
歯肉を見て「赤いから炎症が強い」「青みがかっているから慢性だ」——色で重症度を推し量る。日々やっている判断です。でも1966年、Baumgartnerたちは意外な問いを立てました。歯ぐきの色は、本当に”重症度”まで教えてくれるのか。答えは、経過評価のクセを見直させるものでした。
従来の常識:色の濃さで炎症の強さを読む
深い赤ほど炎症が強く、青みが増すほど慢性化——古い教科書にもそう書かれ、私たちは色を”重症度の物差し”として使ってきました。「赤みが引いたから良くなった」という評価も、この延長線上にあります。けれど、その物差しは本当に目盛りとして機能しているのでしょうか。
今回の一手:17段階の色見本で「色 vs 生検」を突き合わせる
著者らはピンク〜赤〜青みまでの17段階の色見本を自作し、38部位(24名)の歯肉の色を判定。同じ部位を生検して炎症の重症度(中等度/重度)を組織学的に確かめ、色と重症度が一致するかを検証しました。色見本の判定自体は術者間で約85%一致——つまり”色は再現性よく測れる”状態での勝負です。
では、測れた色は、重症度とどれだけ一致したのか——。
結果:どの色にも、中等度も重度も混ざっていた
結果は明快でした。中等度も重度も、淡いピンクから濃い赤・青みまで全域に散らばったのです。色は約85%の一致で”測れている”のに、その色は生検の重症度をまったく予測しませんでした。慢性の指標とされた青みも、重症度とは無関係でした。
なぜ?──慢性化した炎症は、むしろ元の色に戻る
色は歯肉表層の見え方の反映。一方、重症度は深部の細胞浸潤の量で決まります。長く続いた炎症は、むしろ元のピンクに戻ることも知られています。だから「淡いピンク=軽い」とは限らず、見た目が落ち着いた歯肉の奥で炎症が進んでいることもある。表層の色と深部の実態がずれるわけです。
明日の臨床へ:「赤みが引いた=治った」で止めない
実務での使い分けはこうです。色(発赤・腫脹)は歯肉炎の”有無”を拾うスクリーニングに使う。そのうえで重症度と経過は、BOP(プロービング時出血)・PPD・付着レベルといった客観指標で追う。「赤みが減ったから改善」と色だけで判断すると、見た目が落ち着いても深部で進む炎症を見落としかねません。色は入口、確認は数字で——という順番が安全です。
今日のひとこと
歯ぐきの発赤は「歯肉炎がある」ことは教えてくれるが、色から”重症度・慢性度”は読めない。17段階の色見本で判定しても、生検の中等度・重度は全色域に散らばり相関なし。だから「赤みが引いた=改善」と単純評価しない。色は有無のスクリーニング、重症度と経過はBOP・PPD・付着(必要なら生検)で追う。


