ペリオ|Phase4 メインテナンス
2か月ごとに呼んで、指導をして、そのうえでPMTCまでする。それは指導だけの場合より良い結果になるのか。2007年、Hugosonらは若年成人400名を無作為に4群へ分け、3年間追いました。同じ2か月間隔のプログラムで、PMTCを加えた群は加えなかった群に勝てませんでした。
①PMTCは、どこまで効いているのか
予防のアポイントを組むとき、たいていはセットで考えます。染め出して、指導して、PMTCをする。ではそのPMTCは、指導や再指導が生む効果に、どれだけ上乗せしているのか。
この問いは意地悪に見えますが、著者らの立場ははっきりしています。「良い口腔の健康は良い歯科医療の結果である」というモデルは、「良い口腔の健康は良いセルフケアの結果である」というモデルに置き換えられるべきだ——冒頭でそう書いています。プロの役割は助言と励ましであり、本人の責任範囲との線引きを患者に明確に伝えることが重要だという考え方です。
そこでスウェーデン・イェンショーピングの20〜27歳400名を4群に分け、3年間追いました。
②400名を4つのプログラムへ
公的歯科サービスの大規模クリニックと歯科医2名の開業医から、各200名ずつ計400名(男性211名・女性189名、20〜27歳)を集めました。組み入れ条件は「数年以内に市外へ転出する予定がないこと」だけです。
ベースラインでは、う蝕処置とスケーリングを必要に応じて行い、全員の口腔衛生の出発点を揃えました。そのうえで無作為化表で4群(各100名)に割り付けます。
- 第1群(対照):研究の枠組みでの組織的な予防処置は行わない。年1回の追跡検査のみ(通常の歯科診療は受ける)
- 第2群(カールスタッドモデル):2か月ごと年6回。初回に情報提供と、染め出しに基づく口腔衛生指導。以降5回は口腔内を確認し、必要なら情報と指導を繰り返す。この100名はさらに、それ以外の処置を行わない50名(2₀)と、毎回PMTCを行う50名(2₁2₂)に無作為に分けられた
- 第3群(個別教育):スウェーデン保健福祉庁の基本予防プログラム。初年度に2週間隔で3回、以後は1年・2年の追跡後に1回ずつ
- 第4群(集団教育):第3群と同内容を10名単位のグループ活動で実施。スライドと簡単なクイズを使う
設計で効いているのが盲検化です。ベースライン検査を担当した歯科衛生士が毎年の検査も行いますが、その人はどの患者がどの群かを知らされていません。処置は別の衛生士が担当しました。全員に毎年フッ化物配合歯磨剤(0.22%フッ化ナトリウム)を1年分(8本)配布し、条件を揃えています。
PMTCの内容は、研磨ペースト・ラバーカップ・ポイントブラシ、隣接面には往復動チップ。2₁2₂群では、上顎右側と下顎左側、あるいは上顎左側と下顎右側というたすき掛けで施術しています。脱落は3年で52名(13%)で、群間に偏りはありません。
③PMTCを足した群のほうが、少し悪かった
3年後の全顎プラーク陽性歯面は、2₀(PMTCなし)12.9%、2₁2₂(PMTCあり)22.1%、個別教育24.5%、集団教育21.6%、対照群37.6%。全群でベースラインから有意に減少し、対照群はテスト群すべてより有意に高い——ここまでは想定どおりです。
問題は同じプログラムを受けた2₀と2₁2₂の差です。隣接面プラークで見ると、2₀は10.4%、2₁2₂は18.4%で、この差は統計的に有意でした。プラークの約75%は隣接面にあるので、この比較は的を射ています。2か月ごとにPMTCを追加した群のほうが、追加しなかった群より隣接面プラークが多かった。
歯肉炎も同じ絵です。全顎の歯肉炎部位は、3年後に2₀ 15.0%、2₁2₂ 20.6%、個別教育19.4%、集団教育20.5%、対照群28.5%。対照群だけがテスト群より有意に高く、テスト群同士の差は有意ではありません。
ただし個人単位で見ると差が現れます。3年後に歯肉の状態が悪化した人は、対照群30名、集団教育18名、個別教育12名(いずれも100名中)、2₁2₂ 4名、2₀ 0名(いずれも50名中)。2か月ごとに会い続けた群では、悪化した人がひとりも出なかったのです。
多変量ロジスティック回帰では、3年後の歯肉の健康を最もよく予測したのはベースラインの歯肉の状態(オッズ比 1.076、95%CI 1.055–1.099)。次いでテスト群への参加(2₀のオッズ比 0.034、95%CI 0.010–0.121/2₁2₂ 0.046、0.013–0.160/個別教育 0.066、0.023–0.184/集団教育 0.191、0.073–0.497)、そしてう蝕と歯肉炎・歯周炎の両方についての知識(0.351、0.145–0.850)でした。性別と喫煙習慣は有意ではありません。
④なぜPMTCが上乗せにならなかったのか
著者らの解釈は2つあります。
ひとつは「繰り返しの口腔衛生指導は、プロによる機械的プラーク除去と同等の効果を持ちうる」という見方です(Needlemanら2005のシステマティックレビューと一致)。効いていたのは器具ではなく、2か月ごとに会って、口の中を一緒に確認し、必要なら指導し直すという反復そのものだった。
もうひとつは、もっと痛いところを突いています。「プロによるプラーク除去は、それが守ってくれるという誤った安心感に患者を眠らせてしまうのかもしれない」。2₁2₂群のほうが隣接面プラークが多かったという結果は、この説明と整合的です。
もっとも、この研究の対象は20〜27歳の若年成人で、追跡開始時に1歯だけ抜歯された以外は歯の喪失もなく、歯周炎の進行を評価する設計でもありません。Clinical Relevance欄でも著者らは「この若年集団においてPMTCは臨床結果に対して有意でなかった」と、対象を限定した書き方をしています。
加えて対照群でもプラークと歯肉炎は改善しています(54.2%→37.6%、33.2%→28.5%)。年1回の検査と質問票に答えること自体が、口腔の健康への意識を高めた可能性があると著者らは述べています。
⑤明日の臨床へ
第一に、「PMTCをやめよう」という論文ではない。この研究が示したのは、健康な若年成人では、2か月ごとに会って指導を繰り返すことのほうが、PMTCの上乗せより効いたということです。歯周炎が進行した患者や高感受性の患者に、そのまま外挿はできません。
第二に、「会う頻度」と「指導の反復」に価値を置き直す。2か月ごとという頻度は、他のプログラムより時間はかかりますが、3年後に悪化した人をゼロにしました。個人的に会い、繰り返し、状態を確認し、必要なら指導し直す——これが効いた要素です。
第三に、集団教育というカードがある。10名単位の集団教育(第4群)は、個別教育(第3群)と同等のプラーク・歯肉炎の結果を出しました。チェアタイムを使わず、医院の直接費用も患者の負担も下げられる。若年層向けの啓発を院内セミナーやオンラインで組む発想の、古い裏づけになります。
今日のひとこと
20〜27歳の400名を、対照群100名/2か月ごとのプログラム(カールスタッドモデル)100名/個別教育100名/集団教育100名に無作為割り付けし、3年間追った単盲検RCT。2か月群はさらに、PMTCなし50名とPMTCあり50名に分けられている。3年後の全顎プラーク陽性面はPMTCなし12.9%、PMTCあり22.1%、個別教育24.5%、集団教育21.6%、対照群37.6%。隣接面プラークではPMTCなし10.4%が最も低く、PMTCあり18.4%との差は有意。歯肉炎部位も全群で減少し、3年後にPMTCなし群で歯肉の状態が悪化した人はゼロ、対照群では30名。ロジスティック回帰では、3年後の歯肉の健康を最もよく予測したのはベースラインの歯肉の状態で、テスト群への参加とう蝕・歯周病の知識も有意な予測因子だった。著者らは「プロによる機械的なプラーク除去は、ブラッシングと歯間清掃を超える臨床的意義を持たなかった」と結論している。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。


