エンド|一般歯科医9人の患者記録から拾った根管治療歯1,273歯で、築造の方法(6種類と補強なし)とポストの長さごとの成功率、失敗の仕方を数えた後ろ向きの調査(Sorensen・Martinoff 1984・Journal of Prosthetic Dentistry)。統計の検定は示されていない
ポストはどこまで入れるか、どの形にするか。SorensenとMartinoffは1984年、根管治療歯1,273歯(うちポスト420歯)の診療記録を調べました。ポストの長さが歯冠長と同じなら成功率は97.5%、歯冠長より長いと100%。歯冠長より短いと75.0〜85.1%で、ポストのない歯(89.8%)を下回りました。形では、平行で側面に刻みのあるポスト(パラポスト)が97.7〜100%、テーパー型の鋳造ポストコアは87.3%で、補強なし(89.9%)より低い値でした。ただし統計の検定は示されておらず、短いポストの多くがテーパー型だったため、長さの効果と形の効果は分けられません。後ろ向きの記録調査で、「成功」は脱離・破折・穿孔の記録がないことです。
①ポストの長さと形で、成績は変わる?
ポストはどこまで入れるか。平行なポストか、テーパーのついた鋳造ポストか。1980年代、この判断のよりどころは抜去歯や模型の実験で、しかも実験どうしで結果が食い違っていました。
SorensenとMartinoffは1984年、一般歯科医9人の患者記録から拾った根管治療歯1,273歯で、築造の方法とポストの長さごとの成功率、そして失敗の仕方を数えました。ポストが入っていたのは420歯です。
・長さ:ポストが歯冠長と同じなら成功率97.5%、歯冠長より長いと100%(58歯で失敗なし)。歯冠長より短いと75.0〜85.1%で、ポストのない歯(89.8%)を下回った
・形:平行で側面に刻みのあるポスト(パラポスト)は、鋳造コアで100%(38歯)、アマルガムまたはコンポジットレジンのコアで97.7%(132歯)。テーパー型の鋳造ポストコアは87.3%(245歯)で、補強なしの歯(89.9%)より低かった
・壊れ方:テーパー型の鋳造ポストコアは失敗31歯のうち12歯(39%)が抜歯。平行型は失敗3歯で、脱離2歯と穿孔1歯(穿孔は抜歯の区分)。歯や歯根の破折はなかった
・ただし統計の検定は示されておらず、長さと形は重なっている(短いポストの多くがテーパー型)。後ろ向きの記録調査で、どのポストを使うかは担当医が選んでいる
「成功」は、最後の診察で脱離・歯や歯根の破折・歯根の垂直破折・医原性の穿孔の記録がないことです。根尖病変の治癒は見ていません。口の中で1年に満たない歯と、歯周病やう蝕で失敗した歯は対象から外されています。
②長さ:歯冠長より短いと、ポストなしを下回った
ポストの長さはX線写真で測り、歯冠長に対する比を4分の1刻みで記録しています。
・ポストなし:89.8%(766歯/853歯。補強なし832歯に、ピンで保持したコア21歯を足した数。表Iから筆者が確認)
・歯冠長の1/4:75.0%(36歯/48歯)
・1/2:81.5%(53歯/65歯)
・3/4:85.1%(40歯/47歯)
・歯冠長と同じ:97.5%(197歯/202歯)
・1と1/4:100%(21歯/21歯)
・1と1/2:100%(34歯/34歯)
・2倍:100%(3歯/3歯)
著者らは、ポストの長さと成功率に直接の関係が見られたと書いています。歯冠長より短いポストでは、失敗率がポストのない歯を上回りました。歯冠長より長いポストの58歯には、失敗の記録がありません。
とはいえ、長ければよいという話ではないと著者らは続けます。上顎中切歯は、Wheelerの教科書の平均で歯冠長10.5mm、歯根長13mmです。根尖側にガッタパーチャを4mm残すと、歯冠長と同じ長さのポストは入りません。長さは、残っている歯質、根管と歯根の形、ポスト孔形成での穿孔の危険とのかね合いで決めるもの、としています。
③形:平行型は高く、テーパー型の鋳造は補強なしより低かった
・補強なし:89.9%(748歯/832歯)
・テーパー型の鋳造ポストコア:87.3%(214歯/245歯)
・パラポスト+アマルガムまたはコンポジットレジンのコア:97.7%(129歯/132歯)
・パラポストの鋳造ポストコア:100%(38歯/38歯)
・ピン+コンポジットレジンのコア:92.3%(12歯/13歯)
・ピン+アマルガムのコア:75.0%(6歯/8歯)
・ねじ込み式のポスト:60.0%(3歯/5歯)
補強をした歯の中で最も多く使われていたのは、テーパー型の鋳造ポストコアでした(全体の19.2%。補強なしは65.4%)。平行型のパラポストは2つの方法を合わせて170歯で、全体の13.4%です。
テーパー型の鋳造ポストコアの失敗率が、補強なしの歯を上回りました。著者らは、これは自分たちの前の報告(ポストを入れても破折や脱離への抵抗は有意には増えない)と食い違う、と書いています。そのうえで、テーパー型の鋳造ポストコアを除けば、ポストを入れることで成功率はかなり上がっていただろう、としています。
・テーパー型の鋳造ポストコア(失敗31歯):脱離11歯、修復できる歯の破折8歯、抜歯になった歯の破折6歯、歯根の垂直破折4歯、穿孔2歯。修復できた失敗が61%、抜歯が39%
・パラポスト+アマルガムまたはコンポジットレジンのコア(失敗3歯):脱離2歯、穿孔1歯(表IIで穿孔は抜歯の区分)。パラポストの鋳造ポストコアは失敗なし
・ねじ込み式のポスト(失敗2歯):2歯とも歯根の垂直破折で抜歯
・補強なし(失敗84歯):脱離2歯、修復できる歯の破折50歯、抜歯になった歯の破折22歯、歯根の垂直破折10歯。修復できた失敗が約62%、抜歯が約38%
・ピン+コンポジットレジンのコア(失敗1歯):修復できる歯の破折1歯
・ピン+アマルガムのコア(失敗2歯):表IIでは修復できる歯の破折1歯、歯根の垂直破折1歯
・著者らは、失敗の数が少なく一般化はできないと断っている
平行型のポストでは、斜めの歯根破折や垂直破折は1歯も見られませんでした。著者らは、テーパー型のくさび作用や、セメント合着のときの圧力が歯根破折に関わったのではないかと考察しています。パラポストには、合着のときの圧を逃がす溝(ベント)があります。これは著者らの推測で、この調査で確かめたものではありません。
④長さと形は重なっている
ここで注意が要ります。長さの結果と形の結果は、別々の話ではありません。原著の表IVを見ると、歯冠長より短いポストの多く(160歯のうち132歯)がテーパー型の鋳造ポストコアです。
・テーパー型の鋳造ポストコア245歯:歯冠長より短いものが132歯(53.9%)。内訳は1/4が47歯、1/2が61歯、3/4が24歯
・パラポスト170歯(2つの方法の合計):歯冠長より短いものは27歯(15.9%)
・歯冠長の1/4のポスト48歯のうち47歯、1/2のポスト65歯のうち61歯がテーパー型の鋳造ポストコア
著者らも、平行型のポストは長さの中央値が大きかったことが高い成功率に寄与している、と認めています。平行型は長いポスト孔を形成しやすい、というのが著者らの説明です。つまり、この調査からは「長いから良かったのか、平行型だから良かったのか」を分けることはできません。
⑤明日の臨床へ
・条件が許せば、ポストはできるだけ長くする。ただし根尖側にガッタパーチャを4mm以上残す(4mmは根尖の封鎖を調べた別の研究からの引用で、この調査で確かめた数字ではない)
・根管の湾曲や短い歯根で長さが取れないときは、平行で刻みのあるポストを勧める。テーパー型の鋳造ポストコアより、短くても保持がよいため(抜去歯などの実験にもとづく)
・根管治療とポスト孔形成のあとに残る歯質の量が最も大切である。歯根よりはるかに強い、太いポストを作ることは予後を悪くする
・ポストを歯根にぴったり合わせすぎないほうがよいかもしれない。セメントが応力の緩衝になりうる(著者らの考察)
・ねじ込み式のポストは、歯根破折の危険がある
・ポストを入れると決めたら、「歯冠長と同じ長さが取れるか」「根尖側のガッタパーチャを残せるか」を術前のX線写真で先に見積もる、という使い方ができます
・長さが取れない歯に短いテーパー型の鋳造ポストを入れると、この調査ではポストなしより成績が低い側に入っていました。ポストを入れない築造も含めて考え直すきっかけになります
・1984年の調査なので、ファイバーポストや接着性レジンセメントは入っていません。数字をそのまま今の材料に当てはめることはできません
後ろ向きの記録調査で、どのポストをどの長さで入れるかは担当医が選んでいます。残っている歯質の量、歯の位置、歯冠被覆の有無、咬合は、この論文では分けて集計されていません。たとえば、歯質が少ない歯ほど特定の方法が選ばれていた可能性があります。
少数の群があります。ねじ込み式のポストは5歯、ピン+アマルガムのコアは8歯、ピン+コンポジットレジンのコアは13歯、歯冠長の2倍のポストは3歯です。著者ら自身、失敗の数が少なく一般化はできないと書いています。
口の中にあった期間は1年以上としか分からず、方法ごとの経過年数は示されていません。
原著の中で合わない箇所が1つあります。ピン+アマルガムのコアの失敗2歯は、表IIでは「修復できる歯の破折1歯・歯根の垂直破折1歯」ですが、考察の本文は2歯とも抜歯になったと書いています。
資金・利益相反:原著に記載は見当たりません。本文には、平行型ポストの製品名(Parapost・Whaledent社)が出てきます。
それでも、ポストの長さと形という、実験でしか語られていなかった要因を、1,000歯を超える臨床の記録で数えた早い時期の研究です。「ポストは歯冠長と同じ長さに」という以前からあった目安を、臨床の記録で数えた1本です。
今日のひとこと
この調査で数えられたのは、ポストが歯冠長以上の長さだと成功率97.5〜100%、短いと75.0〜85.1%でポストなし(89.8%)を下回ったこと、そして平行型のポストは97.7〜100%、テーパー型の鋳造ポストコアは87.3%で補強なし(89.9%)より低かったことです。著者らは、できるだけ長く、ただし根尖側のガッタパーチャを4mm以上残し、歯質を削りすぎないことを勧めています(4mmは別の研究からの引用)。統計の検定はなく、長さと形は重なっていて切り分けられません。後ろ向きの記録調査で、材料は1984年当時のものです。筆者の読みでは、「ポストは歯冠長と同じ長さに」という以前からの目安を、臨床の記録で数えた1本です。


