エンド|歯根端切除術の成績を、従来法(バー・アマルガム・拡大0〜4倍)とマイクロサージェリー(超音波・IRM/SuperEBA/MTA・10倍以上の拡大)に分けて統合したシステマティックレビューとメタ解析(Setzer ら 2010・Journal of Endodontics)。別々の研究の成績を方法ごとに統合して比べたもので、2つの方法を直接比べた試験の統合ではない
歯根端切除術の成功率は、やり方でどれだけ変わるのか。ペンシルベニア大学のSetzerらは、1966年から2009年10月までの文献を5つの言語で検索し、基準を満たした21研究を、従来法(12研究・925歯)とマイクロサージェリー(9研究・699歯)に分けて統合しました。重み付きで統合した成功率は、従来法59%(95%信頼区間55〜63%)、マイクロサージェリー94%(同89〜98%)で、差は有意でした(P<0.0005)。リスク比は1.58、オッズ比は9.54(95%信頼区間6.90〜13.19)です。ただしこれは、2つの方法を同じ試験の中で比べた結果ではなく、別々の研究の成績を方法ごとに統合して比べたものです。従来法の12研究のうち8研究は後ろ向き研究で、追跡期間の下限もそろっていません。著者の1人は、マイクロサージェリー用の超音波チップの開発に関わる利益相反の可能性を申告しています。
①歯根端切除、従来法とマイクロサージェリーで成功率はどれだけ違う?
歯根端切除の成績をまとめた総説の多くは、古い方法と新しい方法の成績を区別せずに扱ってきました。それでは、方法による違いが見えません。
ペンシルベニア大学のSetzerらは、手術のやり方で研究を分けました。バーとアマルガムを使う従来法と、超音波チップと顕微鏡(または内視鏡)を使うマイクロサージェリー。この2つを分けて、過去の研究を統合したのがこの論文です。
・重み付きで統合した成功率は、従来法59%(12研究・925歯。95%信頼区間55〜63%)、マイクロサージェリー94%(9研究・699歯。同89〜98%)
・差は有意(P<0.0005)。リスク比1.58、オッズ比9.54(95%信頼区間6.90〜13.19)
・著者らの結論は「従来法は、もはや現在の水準の方法(state of the art)とは考えるべきでない」
・2つの方法を同じ試験の中で比べた結果ではない。別々の研究の成績を、方法ごとに統合して比べたもの
②どうやって調べたのか
・Medline・Embase・PubMedを、1966年から2009年10月まで検索。英語・フランス語・ドイツ語・イタリア語・スペイン語の5言語
・関連する5誌は、1975年までさかのぼって手作業で確認
・3名が独立に選別。電子検索の1,152本から64本、引用文献と手作業の検索で34本を加えた計98本の全文を確認し、21研究を採用
・従来法:逆根管形成はバー、逆根管充填はアマルガム、拡大は0〜4倍
・マイクロサージェリー:逆根管形成は超音波、逆根管充填はIRM・SuperEBA・MTAのいずれか、10倍以上の拡大と照明(顕微鏡または内視鏡)
・この定義にぴったり合わない組み合わせの研究は除外
・成功は、X線で完全治癒または不完全治癒(瘢痕)で、痛み・腫れ・打診痛・瘻孔がないこと(RudらとMolvenらの基準)。歯を単位に判定
・追跡は6か月以上
・直径10mmを超える病変、根尖と辺縁がつながる骨欠損や歯周病のある歯、組織再生誘導法を使った症例、再手術の症例、歯根破折や穿孔のある症例を扱った研究は除外
採用された21研究の内訳は、ランダム化試験7、同時対照のある前向き研究3、前向き症例研究3、後ろ向き症例研究8です。著者らは、従来法とマイクロサージェリーを直接比べるランダム化試験は、これまでの成績の差と、水銀を含むアマルガムを使うことを考えると、倫理審査を通りそうにないと述べています。そこで、手に入る最良の証拠として、この方法を選んだという立場です。
③結果:21研究の成功率
・従来法:59%(59.04%。95%信頼区間55〜63%)。12研究・925歯
・マイクロサージェリー:94%(93.52%。95%信頼区間89〜98%)。9研究・699歯
・群の間の差は有意(P<0.0005)。群の間の均質性は成り立たず、ランダム効果モデルで比べている
・リスク比1.58:マイクロサージェリーの成功の確率を、従来法の成功の確率で割った値。原著はリスク比の信頼区間を示していない
・オッズ比9.54(95%信頼区間6.90〜13.19)。原著の本文には、オッズ比を10.01とする記述と9.54とする記述があり、数字が2つ出てくる
・表1の成功・失敗の歯数を筆者が足し合わせると、従来法548/925歯、マイクロサージェリー652/699歯。ここから計算したリスク比は約1.57、オッズ比は約9.54で、原著の値とほぼ合う
リスク比とオッズ比の開きに注目してください。成功のように起こる割合が高い出来事では、オッズ比はリスク比よりずっと大きな数字になります。オッズ比の9.54は、成功の確率が何倍かを表す数字ではありません。成功の確率で比べた値は、リスク比の1.58です。
・従来法の12研究:43.5%〜75.0%。発表は1977〜2003年
・マイクロサージェリーの9研究:88.9%〜100%。発表は1999〜2009年
・100%と報告した1研究は、そのままでは重みを計算できないため、成功率を0.99に置き換えて計算している
④2つの方法は何が違うのか
著者らは考察で、2つの方法の違いを並べています。ただし、どの違いが成績の差の原因かを、このメタ解析が確かめたわけではありません。
・骨を開ける器具と、骨窩洞の大きさ(大きい/小さい)
・器具の大きさ(通常の器具/マイクロ器具)
・ベベルの角度(急/浅い)
・逆根管形成(バー/超音波チップ)と、その方向(根管の軸からずれる/軸に沿う)
・逆根管充填材(アマルガム/生体親和性の高いセメント)
・高倍率の拡大で、マイクロフラクチャーや見落とされた根管を見つけられること
追跡期間について、著者らは自ら弱点を挙げています。マイクロサージェリーの研究はすべて12か月以上の追跡で、従来法には6か月の研究が含まれます。これに対して著者らは、6〜12か月で成功・失敗と判定された症例は、その後も同じ経過をたどると報告されていること、従来法で追跡の長い研究の成功率が特に高いわけではないことを挙げ、追跡を延ばしても結論は変わらないだろうと述べています。失敗の理由としては、アマルガムのクリープや腐食のほうが考えやすい、というのが著者らの見方です。
⑤明日の臨床へ
・マイクロサージェリーの成功の確率は、従来法より有意に高い
・従来法は、もはや現在の水準の方法(state of the art)と考えるべきでない
・従来法の成績だけを見ていると、「歯根端切除はうまくいかない」という印象につながりかねない
・ただし、この成功率を理由に、すぐ外科を選んでよいわけではない。外科と非外科の再治療では治り方が違い、どちらが適するかは症例による
・良い結果には、症例の選び方が欠かせない。著者らが引くKimら(2008)の研究では、歯内由来の病変は95.2%、歯周病変を伴う病変は77.5%だった
・「歯根端切除の成功率」を患者さんに説明するときは、どの方法の、どんな症例での数字かを添える必要があります。94%は、マイクロサージェリーで、病変が大きすぎず、歯周病変を伴わない症例を選んだ研究の数字です
・紹介する側としては、紹介先が拡大(顕微鏡か内視鏡)・超音波チップ・IRMやSuperEBAやMTAなどの充填材で手術しているかが、説明の前提になります
・自院で行うなら、設備と訓練が要ります。このメタ解析は、費用や手術時間は比べていません
このメタ解析は、従来法とマイクロサージェリーを同じ試験の中で比べた研究を集めたものではありません。それぞれの方法で行われた別々の研究の成功率を統合し、その2つを比べています。研究の時期(発表は従来法が1977〜2003年、マイクロサージェリーが1999〜2009年)、術者、患者の選び方の違いが、差に混ざっている可能性があります。
研究デザインにも偏りがあります。表1を数えると、後ろ向き症例研究の8本はすべて従来法の群です。マイクロサージェリーの9研究の追跡は、多くが12〜24か月で、長期の成績を示したものではありません。
原著の表には、同じ研究が採用の表と除外の表の両方に載っている箇所もあります(Taschieri 2005、Hirsch 1979)。
資金・利益相反:著者の1人(Kim)は、マイクロサージェリー用の超音波チップの開発に関わる利益相反の可能性を申告しています。マイクロサージェリーの9研究のうち2研究(Rubinstein・Kim 1999、Kim 2008)はKimが共著者で(参考文献欄で筆者が確認)、表1の重みを筆者が合計すると、この2研究でマイクロサージェリー群の重みの約半分を占めます。
それでも、「歯根端切除の成功率」とひとくくりにされてきた数字を、方法で分けて見せたことに、この論文の価値があります。古い成績と新しい成績が混ざった数字で説明していないか、見直すきっかけになります。
今日のひとこと
21研究を方法ごとに統合すると、歯根端切除術の成功率は、従来法59%(12研究・925歯)、マイクロサージェリー94%(9研究・699歯)、リスク比1.58でした。著者らは、従来法はもはや現在の水準の方法(state of the art)とは考えるべきでないと結論しています。ただし、2つの方法を同じ試験の中で比べた結果ではなく、時代も研究デザインも違う別々の研究を、方法ごとにまとめて比べた数字です。病変が大きい歯や歯周病変を伴う歯は除かれているので、94%は症例を選んだうえでの数字でもあります。


