エンド|根尖病変に似た白血病・リンパ腫。症例報告26本・症例集積6本のシステマティックレビュー(Queiroga 2025)
根管治療をしたのに、病変が縮小せず広がっている。そのとき、根管の中だけで説明しようとしていないでしょうか。Queirogaらは、根尖病変に似た所見から歯内療法を受けた白血病・リンパ腫37人の報告を集めました。日常診療での頻度は、この研究からは分かりません。歯髄の所見と画像が合わない場合や、治療後も拡大する場合に、診断を見直す手がかりとして読む研究です。
①根尖の影、その正体は?
根管治療をした。それでも腫れが引かず、根尖の影は広がっている。もう一度、根管の中を探すべきだろうか。その前に、「この病変は歯髄から来たのか」と立ち止まる余地がある。
白血病・リンパ腫も、根尖病変に見えることがある。Queirogaらの2025年のシステマティックレビューは、根尖病変に似た所見から根管治療を受けた白血病・リンパ腫37人の報告を集めた。日常診療での頻度は、この研究からは分からない。読んでおきたいのは、見慣れた所見の中で診断を見直す手がかりだ。
②痛み・腫れ・透過像が重なる
根尖部に透過像があり、痛みや腫れを伴う。歯内疾患を考えるのは自然な流れだ。原著の考察でも、こうした症状では歯内療法が最初に選ばれ、悪性腫瘍が候補に挙がらないことがあると述べている。
難しいのは、白血病・リンパ腫でも臨床所見と画像所見が重なりうること。透過像の場所だけでは、歯髄由来とは決められない。このレビューは、その診断の難しさを実際の報告症例からたどっている。
③32研究・37人の報告を集めた
対象は、根尖病変に似た所見を示し、誤診されて歯内療法を受けた白血病・リンパ腫の報告症例。検索は2024年10月まで更新され、症例報告26本・症例集積6本が組み入れられた。対照群はなく、臨床所見・画像所見・病理診断や治療経過を記述的に整理した研究だ。
最初からこのような経過をたどった症例を集めている。したがって、「根管治療を受けた患者のうち、どれくらいが腫瘍だったか」を調べた設計ではない。
④報告された37人の診断内訳
ホジキンリンパ腫
白血病
最も多かった病型は、非ホジキンリンパ腫に含まれるびまん性大細胞型B細胞リンパ腫だった。論文の題名には白血病も入っているが、集まった報告の中心はリンパ腫だったことを押さえておきたい。
⑤見慣れた症状に、感覚の異常も重なる
報告には痛み・腫れに加え、圧痛や打診への反応もあった。感覚異常や歯の動揺も報告された。ただし、これらは悪性腫瘍だけに出る症状だと確かめた結果ではない。
画像では透過像が中心で、境界の不明瞭さ、歯根膜腔の拡大、歯槽硬線の変化、皮質骨の破壊なども記載されていた。境界不明瞭でも、それだけで悪性とは決まらない。原著は先行研究を引き、慢性根尖膿瘍でも不明瞭な境界や皮質骨の破壊を示しうると補足している。反対に、Table 1には境界明瞭と記載されたリンパ腫も載っている。
⑥歯髄の所見と画像が合っているか
「根尖にある」という場所の情報と、「歯髄由来である」という原因の情報は分けて考えたい。原著の考察は、先行文献を踏まえ、生活歯髄でも、失活歯でも、根管治療済みの歯でも、白血病・リンパ腫が根尖病変に似た所見を示しうると述べている。
著者らは、健康な生活歯髄が温度診・電気診に反応し、根尖部には透過像がある場合、歯内由来と確認できるまで治療を始めないよう提案している。一方で、歯内疾患を併存すれば、根管治療が必要な場合もある。腫瘍を疑うことと、必要な歯内療法を行うことは両立する、というのが原著の立場だ。
⑦明日の臨床へ
この研究が確かめたことは、根尖病変に似た所見から歯内療法を受けた白血病・リンパ腫の報告があり、症状や画像が歯内疾患と重なっていたこと。ここから先は筆者の臨床的な読みとして、原著の考察を診査の手順に整理する。以下の手順で診断精度や予後が改善するかを、この研究が検証したわけではない。
- 歯髄の所見と画像が合っているか。病歴・口腔内所見・温度診や電気診・画像を突き合わせる。健康な生活歯髄と根尖の透過像が並ぶ場合は、歯内由来と確認する前に治療へ進まない、という著者の提案を思い出したい。
- 治療後も縮小せず拡大するなら、速やかに口腔外科へ。原著は、無症状の歯髄壊死で透過像がある歯への歯内療法を支持しつつ、病変が退縮せず拡大する場合は悪性腫瘍を疑い、速やかに紹介するよう述べている。
- 著者らは、持続する・非典型的な根尖病変では生検を行い、採取試料を必ず病理検査に提出することを推奨している。紹介時には、血液疾患や悪性腫瘍の既往、抗腫瘍治療歴などの臨床情報と画像も共有したい。
なお原著は、根管治療済みの歯に痛みや持続する透過像があり、治療不成功を示す画像所見がある場合、悪性腫瘍の併存を疑っていても再介入を勧めている。必要な歯内療法と、病変の正体を調べることを並行して考える。追加の根管処置だけで診断の見直しを終えない、という読み方をしたい。
根拠は症例報告と小規模な症例集積で、症例の選ばれ方に偏りがある可能性がある。記載不足もある。日常診療での頻度は、この研究からは分からない。症状から腫瘍を見分ける精度も調べていない。症状の割合には分母が明確でない記載があり、診断までの期間にも表と本文の不整合があるため、それらの集計値はここでは示さなかった。
それでも、歯髄の所見と画像が合わないとき、治療後も病変が拡大するときに、診断の候補を広げるための具体的な報告集として読める。
今日のひとこと
歯髄の所見と画像が合わない、治療後も病変が拡大する。そのときは白血病・リンパ腫も診断の候補に。必要な歯内療法と、病変の正体を調べることを並行して考える。


