1問1答 論文 エンド

レジン系根管シーラーは封鎖性の維持などで従来型を上回る性能を期待しうる——ただし期待されたほどのモノブロック化は達成されていないことが示唆され、要点の一つは適切な根管洗浄とされる

1問1答 論文 エンド

本邦で入手できるレジン系根管シーラーの分類・理工学的性質・接着性・封鎖性・生体親和性・除去性を、原著報告を引きながら整理した総説(興地隆史 2013・接着歯学)

根管シーラーに「歯質接着性」がついた。モノブロック、破折抵抗性の向上、封鎖性——期待は大きく語られました。2013年、新潟大学の興地隆史先生が、本邦で入手できるレジン系シーラーの特性を、分類・理工学的性質・接着性・接着に影響する因子・封鎖性・生体親和性・除去性の順に概観しています。読み進めると、期待できる点と、まだ検証が要る点が、はっきり分けて書かれていることに気づきます。

論文
接着性根管シーラーの現状と臨床(誌上フォーラム:接着性根管シーラー)
著者
興地隆史(新潟大学大学院医歯学総合研究科 口腔健康科学講座 う蝕学分野)
掲載
接着歯学 Vol.31 No.2 58-62, 2013
種類
総説(ナラティブレビュー)。本邦で入手可能な製品を中心に、レジン系根管シーラーの分類・理工学的性質・接着性・接着に影響する因子・封鎖性・生体親和性・除去性を、32本の原著/総説/教科書を引きながら概観したもの。系統的レビューではなく、統合された効果量やメタ解析の数値は示されていない
PMID
なし(日本語総説。PubMed未収載)

「接着するシーラー」に、何が期待されたのか

根管充填の目的は、感染源を可及的に除いた根管を生体親和性のある材料で緊密に封鎖し、再感染を防ぐことです。ガッタパーチャとシーラーの併用が主流で、シーラーは根管充填材と根管壁、あるいは根管充填材どうしの間隙を封鎖する役割を担っています。

接着技術の発展とともに、歯質接着性を備えたレジン系シーラーが次々に開発されました。優れた接着性や封鎖性による歯内療法の成績向上が期待された、と著者は書いています。

この総説は、本邦で入手可能な製品を中心に、その特性を概観したものです。期待できる点と、まだ検証が要る点が、分けて書かれています。

まず整理——メタクリレート系とエポキシ系

レジン系根管シーラーの整理(本邦で入手可能な製品を中心に)

メタクリレート系レジン 2000年代以降に応用が活発化。対応するレジンセメントの特性・操作法を当てはめて考えられる 4-META MMA/TBB系レジンセメントに相当 スーパーボンド根充シーラー(化学重合・還元剤アクセル付属) デュアルキュア型コンポジット系レジンセメントに相当 Epiphany/RealSeal(Resilonと併用する「モノブロック」の考え方) デュアルキュア型セルフアドヒーシブレジンセメントに相当 Epiphany SE/RealSeal SE/MetaSEAL/メタシールSoft

エポキシレジン系 AH Plus 原型は1950年代の AH26 ホルムアルデヒド生成の 問題を除いて生体親和性を向上 付加重合反応で硬化する ガッタパーチャとは 接着しない

共通してわかっていること・示唆されていること ・硬化後の寸法変化を除けば、いずれの製品もほとんどの規格を満たしている ・寸法変化はどの製品も規格値以上の膨張(親水性組成による吸水膨張を反映したものと思われる) ・膨張は重合収縮の補償と考えることもできる一方、長期耐久性に負に働く可能性もある ・期待されたほどの「モノブロック化」は達成されていないことが示唆される(打ち抜き試験の報告から)

本邦で入手できるレジン系根管シーラーの整理。カッコ内は対応するレジンセメントの型

2000年代以降、メタクリレート系レジンのシーラーへの応用が活発になりました。UDMA系デュアルキュア型のEndoREZ(本邦未発売)を皮切りにさまざまな製品が出ており、著者はこれらを対応するレジンセメントの型で整理しています。そして各シーラーの特性や操作法は、基本的には対応するレジンセメントのそれらを当てはめて考えることができる——ここが読み手にとって親切な補助線です。

メタクリレート系(対応するレジンセメントの型で3つ)
・4-META MMA/TBB系レジンセメントに相当 … スーパーボンド根充シーラー
・デュアルキュア型コンポジット系レジンセメントに相当 … Epiphany, RealSeal
・デュアルキュア型セルフアドヒーシブレジンセメントに相当 … Epiphany SE, RealSeal SE, MetaSEAL, メタシールSoft(MetaSEALとメタシールSoftは4-METAを含み、根管壁だけでなくガッタパーチャやResilonにも接着すると謳われている)
エポキシレジン系(別種のレジン系シーラー)
・AH Plus … 原型は1950年代のAH26。重合時のホルムアルデヒド生成という問題があったが、AH Plusではこの性質が除かれ生体親和性の向上が図られた。付加重合反応で硬化する

理工学的性質(硬化時間・フロー・寸法変化・溶解性・X線造影性)については、硬化後の寸法変化を除けば、いずれの製品もほとんどの規格を満たしていると報告されています。寸法変化はどの製品も規格値以上の膨張を示し、概ねEpiphany>MetaSEAL, RealSeal SE>AH Plus, スーパーボンド根充シーラーの傾向。親水性の組成による吸水膨張を反映したものと思われ、重合収縮の補償につながる性質と考えることもできる一方、加水分解やクラック形成で接着の長期耐久性に負の影響が及ぶ可能性もあると、両論が併記されています。

接着性——期待されたほどの「モノブロック化」は達成されていないことが示唆される

Epiphanyはモノブロックの概念を謳った最初の製品でした。ポリエステル系合成樹脂製ポイント(Resilon)を併用し、根管壁・シーラー・ポイントを接着で一体化させて封鎖性や歯根の破折抵抗性を向上させよう、という考え方です。

著者はここを慎重に書いています。EpiphanyとResilonの組み合わせよりも、AH Plusとガッタパーチャの組み合わせのほうが大きい打ち抜き接着強さを示したとする報告から、「期待されたほどの『モノブロック化』は達成されていないことが示唆される」。歯根の破折抵抗性についても、有意な向上は見られないとする報告が大勢を占めている。ただし、RealSeal SEのResilonに対する剪断接着強さがRealSealより有意に大きいという報告もあり、セルフアドヒーシブ型への組成変更がResilonとの接着向上につながっていることが示されているとも書かれています。

根管象牙質への接着では、スーパーボンド根充シーラーが、Epiphanyや Epiphany SEと比較して有意に高い微小引張接着強さを示すことが確認されています。MetaSEALについては、RealSealより有意に高い打ち抜き接着強さや、スーパーボンド根充シーラーに匹敵する微小引張接着強さを示すとの報告がみられます。AH Plusは高い接着力の獲得を意図して開発されたものとは言えないものの、根管象牙質に対してEpiphany や Epiphany SEより大きい打ち抜き接着強さを示します。その接着機構としては、象牙細管内のレジンタグ形成に加えて、象牙質有機成分と化学結合する可能性が提示されています。なおAH Plusはガッタパーチャとは接着しません

接着に影響する4つの因子

接着に影響する4つの因子(うち3つは充填前の処理)

1 次亜塩素酸ナトリウム 分解で酸素を発生し、メタクリレートの重合を 阻害して接着強さを低下させうる → スーパーボンドは還元剤アクセルが付属 → Epiphany SE はアスコルビン酸Naで回復 AH Plus も低下するが、酸素による重合阻害ではなく、 有機成分の溶解や界面への酸素気泡の混入が推定

2 EDTA 最終洗浄 セルフアドヒーシブ型・AH Plus の接着性向上に 寄与するとの報告 → 接着前処理としての意義 → 細管が開口し、酸化亜鉛ユージノール系より   深部まで侵入する セルフアドヒーシブ型シーラーのpHは同型レジンセメントより 高く、スミヤー層の除去が緩徐に進行する

3 根管の湿潤状態 レジン系シーラーはいずれも親水性の組成 完全な乾燥はタグ形成を抑制し接着性・封鎖性の 低下を招くとされる ペーパーポイントで軽く乾燥させた「適度な湿潤」で、 湿潤のまま・エタノールで完全乾燥より AH Plus・ Epiphany が高い打ち抜き接着強さを示した報告(1報)

4 根管の形態と重合収縮応力 C-factor の大きい窩洞ほど収縮応力が大きい → 根管は収縮応力が生じやすい不利な環境 デュアルキュア型の光照射は応力を緩和しきれない可能性 「当日中のポスト孔形成などの特別な理由がない限り、 別種の材料で緊密に仮封して化学重合を進行させる 方が賢明とも思われる」(著者の見立て)

レジン系シーラーの接着に影響する4つの因子(うち3つは充填前の処理、1つは根管の形と充填後の扱い)

1)次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)による根管洗浄。殺菌作用と有機質溶解作用を兼ね備えた唯一の根管洗浄剤として頻用されますが、分解により酸素を発生するため、メタクリレートレジンの重合を阻害して接着強さを低下させうる。この影響を避けるため、スーパーボンド根充シーラーには還元剤(アクセル)が付属しています。Epiphany SEの接着強さもNaClOで低下しますが、アスコルビン酸ナトリウムによる還元処理で回復します。AH PlusもNaClOの作用で接着力が低下しますが、エポキシレジンの付加重合は酸素の影響を受けないことから、酸素による重合阻害ではなく、根管壁表面の有機成分の溶解や界面への酸素気泡の混入などの影響が推定されています。

2)EDTAによる根管洗浄。スミヤー層を除去する洗浄剤として推奨されてきましたが、EDTAでの最終洗浄がセルフアドヒーシブ型レジン系シーラーやAH Plusの接着性向上に寄与することが報告されており、著者は接着前処理としての意義も重視すべきであると書いています。EDTA処理で象牙細管が開口した状態では、レジン系シーラーは酸化亜鉛ユージノール系シーラーと比較して深部まで細管内に侵入します。さらに、セルフアドヒーシブ型シーラーのpHはセルフアドヒーシブレジンセメントより高く、スミヤー層除去が緩徐に進行することからも、接着前処理としてのEDTA洗浄の必要性が示唆されています。

3)根管の湿潤状態。根管充填に先立ち根管内を十分乾燥させることが推奨されていますが、細長く複雑な根管の全周で水分量をコントロールするのは容易ではありません。一方、レジン系シーラーはいずれも親水性の組成で、完全な乾燥はレジンタグ形成を抑制し接着性や封鎖性の低下を招くとされる。実際、水分を吸引後にペーパーポイントで軽く乾燥させた程度の「適度な湿潤状態」では、湿潤状態や、エタノールで完全に乾燥させた状態と比較して、AH PlusやEpiphanyが高い打ち抜き接着強さを示したという報告があります。また4-META MMA/TBB系レジンでは、クエン酸-塩化第二鉄溶液からの鉄イオン存在下で、湿潤象牙質とレジンとの界面から重合が進行します。著者はこれらを「根管という特殊な環境での接着性獲得に有利な性質と言える」としています。

4)根管の形態と重合収縮応力。C-factor(接着面積/非接着面積)の大きい窩洞ほど収縮応力が大きく、コントラクションギャップが発生しやすい。この意味で、根管は重合収縮応力が生じやすい不利な環境と考えることができると著者は書いています。レジン系シーラーの収縮応力はフローによりある程度緩和されると思われる一方、デュアルキュア型ではコロナルリーケージ防止のため光照射が推奨されており、これは重合収縮応力が十分緩和されない結果となりうる。そこで著者は、次のような見立てを示しています。

原文より: 「臨床的には、当日中のポスト孔形成などの特別な理由がない限り、別種の材料で緊密に仮封して化学重合を進行させる方が賢明とも思われる。」
また、加熱ガッタパーチャ充填法もシーラーの急速な硬化による重合収縮応力発生につながる可能性があるが、AH Plusの封鎖性は加熱ガッタパーチャ法、単ポイント法で同等と報告されている。

封鎖性・生体親和性・除去性

封鎖性。従来の酸化亜鉛ユージノール系などは、経時的な溶解や封鎖性の低下を示す不安定な材料でした。レジン系シーラーは概して溶解性が低く、これは封鎖性の維持に有利な性質です。ただし封鎖性の研究法は色素浸透試験・液体移動試験・細菌侵入試験など多彩で、試験条件に評価が影響されるため、レジン系シーラーについての一定の評価は必ずしも確立していない。そのなかで、AH Plusについては他種のレジン系・非レジン系シーラーと同等以上の封鎖性を示すとの報告が支配的で、16か月間の水中浸漬後も充填直後と同等の封鎖性を維持したという報告が引かれています。Epiphany SEやMetaSEALの封鎖性についての報告は限られていますが、概ね他種レジン系シーラーと同等の成績とされます。

なお、スーパーボンド根充シーラーやMetaSEAL、メタシールSoftでは単ポイント根管充填(もしくは加圧せずアクセサリーポイントを挿入)が推奨されています。これはガッタパーチャ充塞率の向上による封鎖性維持とは異なる考え方で、接着耐久性や低溶解性により従来シーラーの不安定な性質が補償されることを期待したもの——ただし著者は「今後の評価が待たれる部分である」と明記しています。

生体親和性。多彩な試験条件で検討されており一定の評価は与えづらいものの、培養細胞では練和直後にある程度の細胞毒性が検出され、その後は低毒性という傾向。皮下組織埋入試験でも埋入初期には炎症が観察され、経時的に軽微になります。許容範囲内の生体親和性を備えていると考えられています。

除去性。硬化体はしばしば無機セメントより強固で、適切な溶解剤が開発されていないため、再歯内治療での除去性への懸念があります。メタシールSoftは除去性の改善を意図して硬化体が軟質になっています。ただし、ガッタパーチャやResilonを熱や溶解剤で適宜軟化させつつ切削除去することで再穿通は十分可能、との見解で概ね一致しており、ガッタパーチャやResilonには除去のガイドとしての役割がある。一方で、厚いシーラー層の突破はしばしば困難とも書かれています。

明日の臨床へ

①EDTAの最終洗浄を、接着前処理として捉え直す。著者は「接着前処理としての意義も重視すべき」と書いている。スミヤー層を取るためだけの工程ではない。
②メタクリレート系を使うなら、NaClOの重合阻害を意識する。スーパーボンド根充シーラーのアクセル、Epiphany SEでのアスコルビン酸ナトリウムのように、還元処理が対応策として挙がっている。
③レジン系シーラーなら、完全乾燥を狙いすぎない。ペーパーポイントで軽く乾燥させた「適度な湿潤状態」で、AH PlusとEpiphanyの打ち抜き接着強さが高かったという報告がある(1報)。
④デュアルキュア型の光照射は、目的を考えて。著者は「当日中のポスト孔形成などの特別な理由がない限り、別種の材料で緊密に仮封して化学重合を進行させる方が賢明とも思われる」と見立てている。
⑤厚いシーラー層は、再治療で突破しにくい。再穿通は、軟化させたガッタパーチャやResilonを除去のガイドにして行う、というのが概ねの見解。

ここだけ、冷静に補助線

読むときの補助線:これは総説(ナラティブレビュー)であり、系統的レビューでもメタ解析でもありません。文献の選び方に明示的な基準はなく、統合された効果量も示されていないので、「AのほうがBより強い」という記述は引用された個々の報告の結論として読む必要があります。第二に、引かれている接着強さのデータは打ち抜き試験・微小引張試験といった試験管内の指標であり、治癒率や生存率といった臨床成績ではありません。著者は最後に「レジン系シーラーに修復材料や接着性セメントほどの高い接着力が要求されるわけではない。しかしながら、被着体である根管壁の性状が多様でコントロールしづらいこと、大きい重合収縮応力が生じやすいことなど、接着には不利な環境下でどの程度安定した性能を示すかについて更なる検証が必要であろう」と書いています——ここは著者自身の限界の記述です。第三に、これは2013年時点の整理で、その後普及したバイオセラミック系シーラーは対象に含まれていません。原著に利益相反・資金の記載はありません。

今日のひとこと

著者の結論は、レジン系シーラーは接着性や低溶解性という性質から、根管封鎖性の維持などの面で従来のシーラーを上回る性能を期待しうるというもの。その性能を発揮させるための臨床上の要点の一つとして、適切な根管洗浄が挙げられている。一方で、Resilonとの組み合わせによる「モノブロック化」については、EpiphanyとResilonの組み合わせよりAH Plusとガッタパーチャの組み合わせのほうが大きい打ち抜き接着強さを示したという報告から、期待されたほどのモノブロック化は達成されていないことが示唆されると慎重に書かれ、歯根の破折抵抗性についても有意な向上は見られないとする報告が大勢とされる。製品間では、スーパーボンド根充シーラーが根管象牙質に対してEpiphany/Epiphany SEより有意に高い微小引張接着強さを示したと報告されている。接着に影響する因子として、次亜塩素酸ナトリウムによる重合阻害、EDTA最終洗浄による接着性の向上、根管の湿潤状態、根管の形態と重合収縮応力の4つが整理されている。そして著者は最後に、被着体である根管壁の性状が多様でコントロールしづらく、大きい重合収縮応力が生じやすいという接着に不利な環境下で、どの程度安定した性能を示すかについて更なる検証が必要と締めている。

興地隆史. 接着性根管シーラーの現状と臨床. 接着歯学 2013;31(2):58-62.
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。