1問1答 論文 保存修復

高活性触媒ボンドでも、高出力LEDの「3秒」で足りたのは光源が2mmのときだった——12mmで高い接着強さを保ったのは10秒照射の従来型LEDだけだった

1問1答 論文 保存修復

高活性光重合触媒を配合したメガボンド2と従来型メガボンドについて、光源の種類(ハロゲン/従来型LED/高出力LED)と照射距離(2.0・7.0・12.0 mm)が象牙質引張接着強さに与える影響を比較した実験研究(黄地ら 2020・日本歯科保存学雑誌)

高出力LEDが出てきて、ボンディングの照射時間は10秒から3秒になりました。速いのはありがたい。ただ、その3秒は、光源をどこまで近づけた状態で足りているのでしょうか。2級窩洞の歯肉壁や根管治療後の髄腔では、光源の先端と被着面の間に距離が開きます。大阪歯科大学のグループが、照射距離を2mm・7mm・12mmと変えて、この問いを測りました。結論を先に言うと、3秒で足りたのは2mmのときで、12mmでは10秒照射の群だけが高い接着強さを保ちました。

論文
ボンディング材に対する光照射条件がコンポジットレジンの象牙質接着強さに与える影響
著者
黄地智子, 岩田有弘, 劉海濤, 謝洲橋, 王翔宇, 諸頭秀俊, 石田俊輔, 小正玲子, 保尾謙三, 谷本啓彰, 吉川一志, 山本一世(大阪歯科大学歯科保存学講座)
掲載
日本歯科保存学雑誌 63(6):554-562, 2020(doi:10.11471/shikahozon.63.554)
種類
in vitro 実験研究(ヒト抜去小臼歯の唇側象牙質平面、被着面径3.0 mm。メガボンド(MB)とメガボンド2(MB2)を、ハロゲンXL3000 10秒/従来型LEDペンキュア 10秒/高出力LEDペンキュア2000ハイパワーモード 3秒の3条件で、照射距離2.0・7.0・12.0 mmから照射。CRを填塞しXL3000で20秒硬化後、37℃水中24時間保管して引張接着強さ(n=5)を測定。一元配置分散分析+Tukey法・p<0.05。破断面はSEMで分類し、光強度も各距離で測定(n=5)。大阪歯科大学医の倫理委員会承認 110883)
PMID
なし(日本語誌。doi:10.11471/shikahozon.63.554)

その「3秒」は、どこまで近づけた3秒か

光照射器はハロゲンからLEDへ入れ替わり、高出力型(1,500 mW/cm²以上)も普及しました。高活性の光重合触媒を配合したボンディング材なら、照射時間を短くできるとされています。

ただ、臨床では光源と被着面の距離は一定ではありません。著者らは、LED照射器が光学ミラーと非球面レンズで平行・均一な光を出せるため「照射部からある程度離れても十分な光量が届くと推定されている」(原著本文は英文のため、以下「」内は拙訳)という見方を紹介したうえで、2級窩洞の歯肉壁を含む修復や根管治療後の髄腔のような深い窩洞では、光エネルギーの減衰や焦点の不安定が起こりやすく、接着強さにも影響すると予想されると問題を立てています。

先に結論を書くと——MB2の3秒照射で足りたのは光源が2 mmのときで、12 mmでは10秒照射の群だけが高い接着強さを保ちました。そして12 mmでは、高出力機と従来型の光の強さはほぼ並んでいました。

2mm・7mm・12mmから、3種類の照射器で当てる

研究の骨格: ヒト抜去小臼歯の唇側エナメル質を除去して象牙質平面を作り、#600まで研磨。両面テープで被着面を直径3.0 mmに規定した。MB(クリアフィル メガボンド)とMB2(クリアフィル メガボンド2)をメーカー指示どおりに塗布し、照射距離を2.0・7.0・12.0 mmと変えて次の3条件で照射した。
①ハロゲン XL3000 10秒 ②従来型LED ペンキュア 10秒 ③高出力LED ペンキュア2000 ハイパワーモード 3秒。
その後CR(クリアフィル AP-X)を填塞し、全条件共通でXL3000により20秒硬化。37℃水中24時間保管後に引張接着強さ(TBS)をn=5で測定し、照射距離ごとに一元配置分散分析+Tukey法(p<0.05)で6群を比較した。あわせて各距離の光強度を実測し(n=5)、破断面をSEMで分類した。

CRの硬化はすべての群で同じ照射器(XL3000・20秒)に揃えてあります。差が出るとしたら、それはボンディング材の重合条件の差である——という切り分けです。なお統計は同じ距離の中での6群比較で、距離をまたいだ検定はしていません。

結果その一——光は距離で落ちる。落ち方は機種で違う

0 633.3 1266.7 1900 光強度(mW/cm²・図3からの読み取り概数) 370 200 140 1110 1090 910 1710 1460 930 ハロゲンXL3000 従来型LEDペンキュア 高出力LEDペンキュア2000ハイパワー 照射距離 2.0 mm 照射距離 7.0 mm 照射距離 12.0 mm 原著の図3の棒の高さから読み取った概数(各n=5)。すべての照射器で距離が長いほど有意に低下(ペンキュアF=4853.04/ペンキュア2000 F=519.70/XL3000 F=168.74・いずれもp<0.01)。結果の本文は「12.0mmでペンキュア2000とXL3000は2.0 mm時のおよそ半分に低下」と書いており、ペンキュア2000については図の値(約54%)と整合する(XL3000は図では約38%まで低下)。一方、考察の本文には「ペンキュア2000は約1,600→約600、ペンキュアは約1,000→約800」とあり、図とは一致しない
光強度。原著の図3の棒の高さから読み取った概数。12 mmではLED 2機種がほぼ並ぶ

光強度はすべての照射器で、距離が長くなるほど有意に低下しました(ペンキュア F=4853.04、ペンキュア2000 F=519.70、XL3000 F=168.74、いずれもp<0.01)。結果の本文は「12.0 mmでは、ペンキュア2000とXL3000の光強度が2.0 mm時のおよそ半分に低下した」と書いています。

原著の図3を読むと、ペンキュア2000ハイパワーモードは2 mmで約1,710、12 mmで約930 mW/cm²(約46%低下)ペンキュアは約1,110から約910(約18%低下)XL3000はもともと約370と低く、12 mmで約140でした。つまり12 mmでは、LED 2機種の光の強さはほぼ並んでいます

ここで1つ注意があります。考察の本文には「ペンキュア2000は2.0 mmで約1,600、12.0 mmで約600 mW/cm²まで低下」「ペンキュアは2.0 mmで約1,000、12.0 mmでも約800」と書かれており、図3の値と一致しません。この記事では、ペンキュア2000について結果の本文(「およそ半分」)と整合する図3の値を採りました(XL3000は図では約38%まで低下しており、「半分」より大きく落ちています)。

著者らは、ハイパワーモードは光強度を上げるために集光・導光の方式が違い、そのため距離が長くなったときの減衰が大きいように思われる、と推測しています。

結果その二——3秒で足りた条件と、足りなかった条件

引張接着強さの有意差(同じ距離の6群の中での比較・原著図1の記号と本文による)

2.0 mm 7.0 mm 12.0 mm

ハロゲン XL3000 10秒 MB・MB2 とも 有意な低下なし MB2 は ペンキュアMB2 より有意に低い MB は有意差なし MB・MB2 とも ペンキュア2群より 有意に低い

従来型LED ペンキュア 10秒 MB・MB2 とも 有意な低下なし MB2 が最も高く、XL3000 MB2・ハイパワーMB より高い MB は有意差なし MB・MB2 とも 他の4群より 有意に高い

高出力LED ペンキュア2000 ハイパワー 3秒 MB2 は有意差なし MB は XL3000MB・ ペンキュアMB2 より低い MB は ペンキュアMB2 より有意に低い MB2 はばらつき大・差なし MB・MB2 とも ペンキュア2群より 有意に低い

MB=クリアフィル メガボンド(従来型)/MB2=クリアフィル メガボンド2(高活性光重合触媒を配合)。各群n=5。 統計は同じ距離の6群の中での比較で、距離をまたいだ検定はしていない。 破断面:MB2はどの距離でも界面破壊なし。MBの界面破壊は、2.0 mmのハイパワー3秒で5本中1本、 7.0 mmのXL3000で5本中1本。12.0 mmでは、接着強さが低かった群も含めて界面破壊は観察されていない。

照射条件と距離ごとの引張接着強さの有意差(同じ距離の6群の中での比較)。原著の図1の有意差記号と本文にもとづく

TBSは、照射距離ごとの一元配置分散分析でいずれも有意差が出ました(2.0 mm F=5.24 p<0.01/7.0 mm F=3.64 p<0.05/12.0 mm F=11.50 p<0.01)。

2.0 mm。MB2は、ハイパワーモード3秒でも、他の照射条件と有意差がありませんでした。高活性光重合触媒がLED光をよく吸収して活性ラジカルを多く発生させ、硬化速度を上げたためと説明されています。一方、従来型のMBはハイパワーモード3秒で、XL3000 10秒のMBやペンキュア10秒のMB2より有意に低い値でした(図1の有意差記号より)。

7.0 mm。有意差がついたのは、ペンキュア10秒のMB2が、XL3000のMB2とハイパワー3秒のMBより高いという2組でした。ハイパワー3秒のMB2は値のばらつきが大きく、どの群とも有意差がありません。

12.0 mm。ペンキュア10秒のMB・MB2の2群が、XL3000の2群とハイパワー3秒の2群のいずれよりも有意に高い値を示しました。著者は、ペンキュアの光強度が12 mmでもある程度保たれ、かつ照射時間が10秒とある程度長かったためと考察しています。ハイパワー3秒は、2 mmではMB2を固められたのに、12 mmではMB・MB2ともペンキュア10秒より低くなりました。

先ほどの図3と合わせると、12 mmではLED 2機種の光の強さはほぼ同じで、違うのは照射時間(10秒と3秒)です。図3の値に従えば、光の強さより照射時間の差が効いた可能性があります。ただし照射器と時間が同時に違う比較で、時間だけを変えた群はありません。著者自身は、ハイパワーモードの距離による光強度の低下を理由に挙げています。

破断面では、MB2は照射距離が長くても界面破壊が観察されませんでしたMBでは、ハイパワーモード3秒・距離2.0 mmの群で5本中1本に界面破壊が見られ、著者は3秒ではMBのボンディング材の重合が不十分だったためと推測しています(界面破壊は7.0 mmのXL3000のMBでも5本中1本)。12.0 mmでは、接着強さが低かった群も含めて界面破壊は観察されていません。

明日の臨床へ

①光源を近づけられない場面では、照射時間を短縮しない。この研究で12 mmでも高い接着強さを保ったのは10秒照射の群だった。3秒は、光源を被着面に近づけられる場面の選択肢と考えるほうが安全。
②3秒で足りたのは、高活性触媒を配合したMB2と高出力機の組み合わせで、しかも2 mmのとき。同じ3秒でも従来型のMBは2 mmで有意に低かった。照射器だけを新しくしても、ボンディング材の側の条件がそろわなければ、時間は縮められない。
③「出力が高い」と「距離に強い」は別。最大出力の高いハイパワーモードは、距離による減少の割合がペンキュアより大きかった。手持ちの照射器の性格は、カタログの最大出力だけでは分からない。
④ハロゲン照射器は、そもそもの出力を確認する。この研究のXL3000は2 mmでも約370 mW/cm²で、距離が開くと両方のボンディング材で接着強さが低かった。

ここだけ、冷静に補助線

読むときの補助線:まず各群n=5と小さい。引張接着強さ試験は値のばらつきが大きく、7 mmのハイパワー3秒のMB2のように標準偏差が大きい群では、差があっても検出できない可能性があります。第二に、統計は同じ距離の中での6群比較で、「12 mmでも2 mm時と同等」は著者の記述であり距離をまたいだ検定ではありません。第三に、光強度の数値が原著の中で一致していない点(考察本文の約600と図3の約930)は、読み手として留保しておくべきところです。第四に、これは平坦な象牙質面に真上から照射した実験系で、実際の窩洞のように光が壁で遮られたり斜めに入ったりする条件は再現されていません。第五に、評価は37℃水中24時間後の初期接着強さで、経年の耐久性は測られていません。第六に、比較されたのは2種類のボンディング材と3機種の照射器という限られた組み合わせで、他の製品への外挿はできません。著者らは利益相反なしと申告しています。

今日のひとこと

高活性光重合触媒を配合したメガボンド2(MB2)は、照射距離2.0 mmなら高出力LED(ペンキュア2000ハイパワーモード)の3秒照射でも、他の照射条件と引張接着強さに有意差がなかった。一方、従来型のメガボンド(MB)は同じ3秒で、XL3000 10秒のMBやペンキュア10秒のMB2より有意に低かった。照射距離12.0 mmになると、有意に高かったのはペンキュア10秒の2群(MB・MB2)だけで、ハイパワー3秒とハロゲン10秒の4群はそれより有意に低かった。光の強さは距離とともにすべての照射器で有意に低下したが、落ち方が違う。原著の図3を読むと、ハイパワーモードは2 mmの約1,710から12 mmの約930 mW/cm²へ約46%低下、ペンキュアは約1,110から約910へ約18%低下で、12 mmでは両者の光の強さはほぼ並んでいた(考察本文には「約1,600→約600」「約1,000→約800」とあり、図とは一致しない)。図3の値に従えば照射時間の差が効いた可能性があるが、照射器と時間が同時に違うため切り分けはできない。著者はハイパワーモードの光強度低下を理由に挙げている。著者も、ペンキュアが12 mmで高い値を保った理由を「光強度が保たれ、かつ照射時間が10秒とある程度長かった」ことに求めている。

黄地智子, 岩田有弘, 劉海濤, ほか. ボンディング材に対する光照射条件がコンポジットレジンの象牙質接着強さに与える影響. 日歯保存誌 2020;63(6):554-562. doi:10.11471/shikahozon.63.554
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。