1問1答 論文 保存修復

0.55mmのオクルーザルベニアで、咬耗した臼歯を覆う——3年後、外れたものは1本もなかった

1問1答 論文 保存修復

咬合面の50%以上を失った重度のエロージョン患者11名の臼歯を、超薄型CAD/CAMオクルーザルベニアで修復し、セラミック(e.max CAD・6名24本)と間接修復用コンポジット(Lava Ultimate・5名36本)を患者単位で無作為に割り付けて最長3年追跡したランダム化臨床試験(Schlichting 2022・J Prosthet Dent)

咬耗が進んだ臼歯を、クラウンにせずに救えないか——そう思っても、実際に0.5mmの薄い板を咬合面に貼るとなれば、割れる予感のほうが先に立ちます。ブラジルとアメリカのグループが、その予感を3年かけて確かめました。

論文
Ultrathin CAD-CAM glass ceramic and composite resin occlusal veneers for the treatment of severe dental erosion: An up to 3-year randomized clinical trial
著者
Schlichting LH, Resende TH, Reis KR, dos Santos AR, Correa IC, Magne P
掲載
The Journal of Prosthetic Dentistry 2022;128(2):158.e1-158.e12(doi:10.1016/j.prosdent.2022.02.009)
種類
ランダム化並行群間比較試験(参加者11名〔平均30.4歳〕・オクルーザルベニア60本・患者単位の割り付けでセラミック6名24本/コンポジット5名36本・平均追跡27.1か月〔9.6〜35.6か月〕・脱落0名・修正USPHS基準で装着時と以後毎年評価・患者と評価者は盲検化、術者は非盲検・Kaplan-Meier法)
PMID
35750501

咬耗した臼歯を、削らずに救えないか

エロージョンで咬合面がすり減った臼歯。知覚過敏があり、進行の所見もある——治療に踏み切るとなったとき、選択肢はそう多くありません。

直接修復で追いつく範囲を超えていれば、次はオンレーかクラウン。ただし、それらは「厚みを確保するために、残っている歯質をさらに削る」ことを意味します。すでに失った歯にさらに削る、という矛盾があります。

ならば薄い板を咬合面に貼るだけではどうか——理屈は分かりますが、0.5mmのセラミックが咬合力に耐えるとは、直感的には思えません。ブラジルとアメリカのグループが、その直感を3年かけて確かめました。

11名・60本を、患者ごとに材料へ無作為に割り付ける

研究の骨格: 咬合面の硬組織の50%以上を失った重度のエロージョン性咬耗(BEWE基準)を持つ14歳以上の患者を組み入れ、臼歯に超薄型CAD/CAMオクルーザルベニアを装着。材料は患者単位で無作為に割り付けた——セラミック(IPS e.max CAD)は6名24本、間接修復用コンポジット(Lava Ultimate)は5名36本(計11名・平均30.4歳・60本)。スプリットマウス法や同一患者内での材料の混在は、計画段階で検討したうえで棄却されている(対合や左右で咬耗のバランスが崩れうるため)。除外基準には、直接修復で足りる軽度の咬耗と、従来型オンレーのような厚みを要する重度の咬耗、失活歯、対合歯のない歯が含まれる。形成はトライアルレストレーション(診断ワックスアップから作った暫間形態)を基準に行い、イミディエイト・デンティン・シーリング(OptiBond FL)を併用。セラミック内面はフッ酸+シラン、コンポジット内面はサンドブラスト+シラン、支台歯はサンドブラスト+リン酸処理を行い、全例加温したコンポジットレジン(Filtek Z100)で接着した。修正USPHS基準で装着時と以後毎年評価。患者と評価者は盲検化(術者2名は非盲検)。平均追跡は27.1か月(9.6〜35.6か月)で、脱落者0名

組み入れ条件でひとつ大事なのが、「修復治療の完了後にオクルーザルデバイスを装着する意思があること」です。この研究は「ナイトガードを使う人」の中で行われています。

ここで押さえておきたいのは、割り付けの単位が「歯」ではなく「患者」だったことです。セラミック6名・コンポジット5名——コンポジット群で起きた5件のチッピングは、わずか5名の中から出ています。

結果——3年で、外れたものは1本もなかった

0 35% 70% 105% 3年生存率(%) 100% 84.7% 88.4% セラミック(e.max CAD) コンポジット(Lava Ultimate) 全体 Kaplan-Meier法による生存率(%・平均追跡27.1か月で、3年まで到達したのは60本中16本)。エンドポイントは修正USPHS基準のスコア4または5(部分的失敗を含む)。両群の差は統計学的に有意ではない(P=.124)。標準誤差は原著の表記のままコンポジット 0.065%、全体 0.054%。セラミック群では歯髄炎を起こした1歯が打ち切りとして扱われている
3年生存率。両群に統計学的な差はなく、失敗はすべて部分的なものだった

まず、いちばん大きな結果から。3年間で脱離した修復物は1本もありません。

Kaplan-Meier法による生存率は、セラミック 100%、コンポジット 84.7%(標準誤差0.065%)。両群の差は統計学的に有意ではありませんでした(P=.124)。全体では 88.4%です。

コンポジット群で起きた5件は、すべて辺縁のチッピングでした(USPHSスコア4=部分的失敗)。最初は8.3か月後の下顎左側第一小臼歯の頬側辺縁。13か月後には別の1名で、同一象限に2件(下顎右側第一大臼歯の遠心頬側咬頭と、第一小臼歯の遠心辺縁隆線)。4件目は23.5か月後に別の患者の上顎左側第二大臼歯、5件目が30.8か月後の下顎右側第二小臼歯です。いずれもラバーダム下で直接修復用コンポジット(IPS Empress Direct)により補修され、最終評価まで機能しました。ただし1本(下顎右側第一大臼歯)だけは、30.8か月時点で同じ遠心頬側咬頭を再度補修する必要がありました。

ここは大事なところで、「失敗」の中身が「作り直し」ではなく「補修で済んだ」という点です。著者らの結論の2番目も「修復物の喪失はなかった。失敗はすべて部分的で、容易に補修でき、最終評価まで成功していた」と書かれています。

0 0.4 0.8 1.2 修復物の厚み(mm) 0.55 0.89 1 0.78 中心溝部 咬頭内斜面 咬頭頂 辺縁隆線 装着された60本のオクルーザルベニアの平均の厚み(mm)。いちばん薄い中心溝部で 0.55mm。従来のオンレーやクラウンとは、削除量の桁が違う
装着された修復物の平均の厚み。いちばん薄い中心溝部で 0.55mm

そしてこの結果が、この厚みで得られていることに注目したいところです。中心溝部 0.55mm、咬頭内斜面 0.89mm、咬頭頂 1.00mm、辺縁隆線 0.78mm。従来のオンレーやクラウンとは、削除量の桁が違います。

差がついたのは、生存率ではなく表面だった

USPHS基準の各項目を比べたところ、ベースラインと最終評価のあいだで両群に有意差がついたのは1項目だけ——表面粗さでした(Mann-Whitney U=230, P=.003)。

コンポジット群では、咬合接触部の粗さが増していました。Lava Ultimateの8本がスコア3(粗さの増加)と判定されています。表面・辺縁の着色や色調適合はセラミック群のほうがやや良い傾向でしたが、有意差はありません(P=.809、P=.280)。

臨床的な含意は、著者らが本文でこう要約しています——「CAD/CAMのコンポジットとセラミックの超薄型オクルーザルベニアは、最適でよく似た臨床成績を示す。コンポジットを選ぶなら、より多くのメインテナンスが予想されるかもしれない」

そのほかの所見も添えておきます。術後の知覚過敏は装着時に8歯、最終評価で7歯に認められました。エロージョンの再発や二次う蝕は検出されていません。ただしセラミック群の1歯が不可逆性歯髄炎を起こし、根管治療が必要になっています(この歯はもともと大きなNCCLと1級窩洞を持っていました)。根管へのアクセスはオクルーザルベニアを貫通して行われ、その修復物は後に交換されており、生存解析上は「打ち切り」として扱われています——つまり「セラミック100%」は、この1本を除いた上での数字です。なお最終評価を受けたのはセラミック23本・コンポジット31本で、USPHSの群間比較は生存している修復物どうしの比較です。

破折についても、著者らは示唆的な観察をしています。中心溝部のクラックの発生が少なかったことから、極端な咬合力(たとえば600Nを超えるような)はかかっていなかったと推定される——in vitro研究で1400Nまでかけたものとは条件が違う、と。そしてチッピングを起こした患者の1人はブラキシズムの既往があり、13か月経ってからナイトガードを使い始めたことにも触れています。

明日の臨床へ

持ち帰れるのは、3つです。

①「厚みを確保するために削る」以外の道がある。0.55mmという厚みで、3年間ひとつも外れませんでした。接着(イミディエイト・デンティン・シーリング+加温コンポジットによる合着)が成立していれば、薄さは即座に脆弱さを意味しない——この研究が示したのはそこです。

②材料の選択より、条件づくりのほうが重い。セラミックとコンポジットに有意差はつきませんでした。それに対して、形成はトライアルレストレーション基準、IDS併用、内面処理と支台歯処理を規定どおり、合着は加温コンポジット——プロトコルの側は緻密に固められています。この結果は材料の性能ではなく、手順の産物と読むほうが実態に近いはずです。

③コンポジットを選ぶなら、メインテナンスを前提に説明する。チッピングは5件ともコンポジット群で、表面粗さも有意に劣化しました。ただしすべて補修可能です。「壊れない」ではなく「壊れても直せる」という説明のほうが、この材料には合っています。なお、この研究で使われたLava Ultimateは、その後メーカー自身が適応を部分修復(インレー・アンレー)に限定し、接着による合着のみを推奨するよう改めています——著者ら自身が考察で触れている点です。

ここだけ、冷静に補助線

ここだけ、冷静に補助線。 いちばん大きな制約は規模です。参加者はわずか11名——著者らは「厳しい組み入れ基準のため、11名を集めるのに3年半近くかかった」と書いています。修復物は60本ありますが、同じ患者に何本も入っているため、独立した60例ではありません(実際、5件のチッピングのうち2件は同一患者・同一象限で起きています)。この規模では、群間の差(100% 対 84.7%)が有意にならないのは当然とも言えます。P=.124は「差がない」ことの証明ではありません。次に集団——「治療後にオクルーザルデバイスを装着する意思がある」ことが組み入れ条件で、失活歯・対合歯のない歯・従来型オンレーが必要なほど重度の咬耗は除外されています。ただし「意思がある」ことと「実際に使う」ことは別で、チッピングを起こした1名は13か月間ナイトガードを使っていませんでした。重すぎる症例も軽すぎる症例も入っていない点は、適応を考えるときに効いてきます。術者は非盲検(著者らは、両群の厚みが同等だったことから影響は最小限と論じています)で、大学の管理された環境で経験のある術者が行ったものであることも本文に明記されています。追跡は平均27.1か月で、3年フルの評価を受けたのは60本中16本にとどまります。失活歯への応用と、新しいCAD/CAMブロックについては、今後の研究が必要と著者ら自身が述べています。例数設計はセラミックとコンポジットの生存率に70%の差を見込み、検出力0.8・有意水準0.05で行われたもので、小さな差を検出する設計ではありません。そして謝辞——資金はブラジル・リオデジャネイロ州の研究支援財団(FAPERJ)から出ていますが、あわせてIvoclar(Variolink Veneer Kit・IPS Empress Directの提供と、IPS e.max CADブロック・Programat P300炉ほかの値引き)、3M ESPE(Protemp 4)、Kerr(OptiBond FL)、Ultradent、Bisco、AdDent、Sirona/Kappler(Cerec一式の値引き)から材料の提供や値引きを受けたことが明記されています。製品名を挙げて論じる以上、ここは押さえておきたいところです。それでも——削って被せるしかないと思っていた歯に、0.55mmという選択肢を、無作為化した臨床試験の形で示した意味は小さくありません。

今日のひとこと

咬合面の半分以上を失った臼歯に、平均0.55mm(中心溝部)の薄い板を接着する——3年間で、外れたものは1本もなかった。生存率はセラミック(e.max CAD)100%、コンポジット(Lava Ultimate)84.7%で、両者に統計学的な差はない(P=.124)。全体では88.4%である。コンポジット群で起きた5件はすべて辺縁のチッピングで、いずれも直接修復用コンポジットで補修されて最終評価まで機能した(うち1本は30.8か月に同じ部位を再補修)。差がついた唯一の項目が表面粗さで、コンポジット群では咬合接触部が荒れていた(P=.003)。ただし参加者はわずか11名、割り付けは患者単位(セラミック6名・コンポジット5名)で、しかも「治療後にオクルーザルデバイスを装着する意思がある」ことが組み入れ条件——参加者を11名集めるのに3年半かかったと著者らが書いているほど厳しい選択である。例数設計も「生存率に70%の差」を見込んだもので、小さな差を検出する設計ではない。それでも、削って被せるしかないと思っていた歯に、0.55mmという選択肢が示された意味は小さくない。

Schlichting LH, Resende TH, Reis KR, dos Santos AR, Correa IC, Magne P. Ultrathin CAD-CAM glass ceramic and composite resin occlusal veneers for the treatment of severe dental erosion: An up to 3-year randomized clinical trial. J Prosthet Dent. 2022;128(2):158.e1-158.e12. doi:10.1016/j.prosdent.2022.02.009 PMID: 35750501
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。