ペリオ|Phase2 歯周外科
深いポケットには外科を——そう考えるとき、私たちは何を根拠にしているでしょうか。2001年、Beckerらは同じ患者の口の中でSRP・骨切除外科・修正Widmanフラップを比べ、5年間追いかけました。ポケットの深さでは差がつかず、代わりに別の指標がはっきり分かれています。
①「深いポケットには外科」の根拠を確かめる
SRP・骨切除外科・修正Widmanフラップ——いずれも歯周病の治療として有効であることは、繰り返し確かめられてきました。問いはその先です。どれかが、他より優れているのか。
それまでの報告は、期間によって答えが揺れていました。LindheとNymanの14年追跡では、外科・非外科いずれでも治療部位の92〜99%でポケットの減少が維持されています。一方、4術式を比べた別の研究では、2年時点で骨切除外科が4〜6mmのポケットをより大きく減らしたと報告されました。ただし7mm以上では術式間に差がなく、4〜6mmでも付着の喪失量はどの術式でもわずかでした。
2年でついた差は、5年後も残っているのか。この研究は、その追跡です。
②16人を5年、同じ物差しで追う
対象は個人開業医院で治療を受けた、中等度から進行した歯周病の成人16名。まず初期のスケーリングと口腔衛生指導を行い、その「衛生期後(posthygiene)」のデータを基準にしています。治療そのものの効果と、初期治療の効果を混ぜないための工夫です。
比較したのは3術式——SRP(スケーリング・ルートプレーニング)、骨切除外科(OS)、修正Widmanフラップ(MW)。評価はプラーク指数・歯肉炎指数・ポケット深さ(PD)・臨床的付着レベル(CAL)・歯肉退縮で、部位ごとの変化は度数分布で比較されました。
部位は深さで3つに分類されています。1〜3mm、4〜6mm、7mm以上。「もともと浅かった部位に何が起きたか」を、深い部位と分けて見る——この分け方が、結論を決めることになります。
最初の報告はベースラインから1年までで、本報告は5年まで。試験自体は12年まで完了しています。
③ポケットの深さでは、差がつかなかった
4〜6mmのポケットは、3術式すべてで治療前から有意に減少(p<0.0001)。ただし術式間に差はありません。術直後と3回目・4回目の検査では、外科のほうがSRPより深さを減らしていたのですが、5年時点ではその差が消えています。
7mm以上のポケットも同じ形です。3術式すべてで有意に減少(SRP p<0.005、OS p<0.001、MW p<0.001)し、術式を比べた統計学的な差はなし。5年後の平均は、SRP 6.17mm、OS 4.87mm、MW 4.66mmでした。
部位を数え上げると、少し違う顔が見えます。5年後に7mm以上が残っていた部位が最も少なかったのは、意外にもSRP(15部位・3.4%)。次いで骨切除外科(21部位・4.6%)、修正Widman(25部位・5.6%)。4〜6mmの部位が最も少なかったのは修正Widman(98部位・21.8%)でした。
④差が出たのは、浅い部位の付着だった
付着レベルの動きは、ポケットとは違う絵を描きます。
もともと1〜3mmだった浅い部位では、3年目の検査で3術式すべてに統計学的に有意な付着の喪失(p<0.0001)が起こりました。術式を比べると、骨切除外科がSRP・修正Widmanと有意に異なります——浅い部位を外科で触ると、より多くの付着が失われたということです。
4〜6mmの部位と7mm以上の部位では、5年後にわずかな付着の獲得が見られましたが、いずれも有意ではありません。
そして最も分かりやすいのが、部位数です。5年間で2mmを超える付着の喪失が起きた部位は、骨切除外科64部位、修正Widman 34部位、SRP 21部位。外科がSRPの3倍です。
⑤明日の臨床へ
1つ目。浅い部位は、触らないという選択肢を持つ。 1〜3mmの部位で有意な付着の喪失が起き、骨切除外科でそれが最も大きかった——フラップの範囲を決めるとき、健康な部位まで含めるかどうかは判断のしどころです。
2つ目。「深いポケットには外科」は、5年では支持されない。 7mm以上でも術式間に有意差はなく、7mm以上が最も少なく残ったのはSRPでした。外科の適応は、深さだけでは決まらないということになります。
3つ目。術直後の差に一喜一憂しない。 術後と3〜4回目の検査では、外科がSRPより深さを減らしていました。その差が5年で消える——短期の再評価だけで術式の優劣を語れない、という具体例です。
4つ目。結果を支えたのは、やはりメインテナンス。 著者らの結論は「良好なメインテナンスのもとでは、いずれの方法でも優れた臨床結果が得られる」。術式選択より前に、通ってもらう仕組みがあるということです。
今日のひとこと
中等度から進行した歯周病の成人16名に、初期治療と口腔衛生指導を行ったうえで、SRP(スケーリング・ルートプレーニング)・骨切除外科(OS)・修正Widmanフラップ(MW)の3術式を割り付け、5年間追跡した研究(試験自体は12年まで継続)。4〜6mmのポケットは3術式すべてで有意に減少(p<0.0001)し、術式間に差はありません。7mm以上のポケットも3術式すべてで有意に減少(SRP p<0.005、OS・MW p<0.001)し、やはり術式間に統計学的な差はなし——5年後の平均ポケット深さはSRP 6.17mm、OS 4.87mm、MW 4.66mmでした。5年後の残存部位を数えると、7mm以上の部位が最も少なかったのはSRP(15部位・3.4%)で、次いでOS(21部位・4.6%)、MW(25部位・5.6%)。4〜6mmの部位が最も少なかったのはMW(98部位・21.8%)。一方付着レベルでは、もともと浅い(1〜3mm)部位で3術式とも有意な喪失が起こり、その程度は骨切除外科がSRP・MWと有意に異なりました。5年間で2mmを超える付着の喪失が起きた部位数は、骨切除外科64部位、修正Widman 34部位、SRP 21部位。著者らの結論は「良好なメインテナンスのもとでは、いずれの治療法でも優れた臨床結果が得られる」というものです。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。


