ペリオ|Phase1 初期治療
深いポケットを非外科で治すとき、器具は繰り返し入れた方がよい——そう考えるのは自然です。治癒の途中で細菌が根面に戻ってくるなら、また取ればいい。1984年、同じ口の左右で「1回だけ」と「3か月おきに3回」を分け、24か月追いかけた研究が、この直感を検証しました。
①「良い結果は、繰り返したからでは?」という疑い
著者らは、この研究の前に2つの研究を発表していました。中等度から重度の歯周炎に対する非外科的治療で、歯周組織の状態は大きく改善する——その結論はしっかりしていました。ただし、その2つの研究では器具操作を2〜4か月あけて3回行っていました。
そこで、自分たちの結果に自分たちで疑いをかけます。「あの一見うまくいった結果は、繰り返した器具操作に費やした時間と労力に関係していたのではないか」。
理屈もあります。深い歯周ポケットを保存的に治療して最良の結果を得るには、繰り返しの器具操作が必要かもしれない。プラーク・歯石・根面の汚染物質を完全に取り切るために。そして、器具操作と器具操作のあいだに根面へ再定着した歯肉縁下プラークを除去するために。
この「再定着(recolonization)」への懸念は、いまも私たちの中にあります。だからこそ、この研究の設計が効いてきます。
②同じ顎の左右で、回数だけを変える
対象は重度に進行した歯周疾患をもつ13名(30〜55歳・男性7名・女性6名)。上顎または下顎の切歯・犬歯・小臼歯を用い、1人あたり最低6歯・最大10歯。顎の左右で同程度に破壊が進んでおり、5mm以上のポケットに歯石と出血が2面以上あることを条件にしています。
割り付けはスプリットマウス。同じ顎の右側と左側を、無作為に「1回」と「3回」へ。3回側では3か月後と6か月後に器具操作を追加しました。
器具操作は1人の術者(著者のJ.E.)が超音波器具で実施。口腔衛生指導は最初の1か月に2〜3回行い、その後も個々の必要に応じて追加指導・強化・ラバーカップ研磨を研究期間中ずっと続けています。
測定は初診時と、以後3か月ごとに24か月まで。1歯6面(近心頬側・中央頬側・遠心頬側・近心舌側・中央舌側・遠心舌側)で、電子式の圧力センサー付きプローブ(0.75N・先端0.5mm径)を使い0.5mm単位で記録。アタッチメントレベルの基準点にはアクリルのオンレーを使いました。
ここが肝心です。測定した著者(A.B.)は、顎のどちら側が1回で、どちら側が3回なのかを知らされていませんでした。
③24か月、どちらも同じように治った
まず全体の推移です。プラークは初診時に78〜82%の歯面で認められ、3か月後には有意に減少してその後も低いまま。出血は78〜80%から、3か月後に26〜31%へ。さらに15〜20%まで下がり、その水準が全観察期間を通じて維持されました。
ポケットは平均5.8〜5.9mmから、3か月後に4.1〜4.2mm。さらに減り続け、9か月の時点で3.5〜3.7mmあたりに安定します。歯肉退縮は24か月で平均1.8mm、その大部分は最初の9か月で起きました。アタッチメントは3か月時点で約0.4mmの獲得が得られ、そのまま維持されています。
そして「治療開始から9か月で緩やかかつ明確な改善が起こり、残る15か月では記録したどの指標にも、それ以上の変化は認められなかった」。
これらすべてについて、1回と3回のあいだに差はありませんでした。
④深いポケットこそ、1回で足りていた
「差がない」という結論は、浅い部位ばかり見ていれば簡単に出ます。この研究が説得力をもつのは、深い部位だけを取り出しても同じだった点です。
7mm以上のポケットをもつ歯面は、開始時に104面(1回側)と110面(3回側)。24か月後にはそれぞれ15面と17面まで減りました。6mm以上でも170面→37面、164面→50面。この深い歯面だけを抜き出して出血・ポケット・アタッチメントの推移を追っても、2つの頻度で経過は同様で、初期治癒の速さも同じ、改善が得られたあとの維持も同じようによかったと報告されています。
初期の深さ別に見ると、いつもの構図が現れます。初期3mm以下の部位は平均0.4〜1.0mmのアタッチメント喪失、初期8mm以上の部位は平均0.9〜2.8mmの獲得。1.5mm以上の獲得/喪失で見ると、8mm以上だった110面のうち喪失はわずか4面、獲得は53面でした。
残ったポケットの深さでも整理されています。24か月時点の残存深さが1.5mm以下、あるいは6mm以上の歯面ではアタッチメントを失う傾向があり、残存3.0〜5.5mmの歯面ではわずかな改善。残存3.0〜4.5mmの歯面では24〜26%が1.5mm以上の獲得を示しました。
⑤明日の臨床へ
1つ目。「もう一度SRP」の前に、プラークコントロールを見る。 この研究で3回側の追加が上乗せを生まなかったのは、両側とも口腔衛生指導が徹底され、必要に応じて再指導が続けられていたからです。再SRPを足す前に、ホームケアが本当に安定しているかを確認する。順番はそちらが先です。
2つ目。再評価は3か月ではなく、9か月の目で見る。 ポケットもアタッチメントも9か月かけて安定しました。3か月時点で「まだ深い」と焦って次の処置を足すより、治癒の途中である可能性を考える余地があります。
3つ目。1回を「丁寧に」やる価値が上がる。 回数で挽回できないなら、その1回の質がすべてになります。深い部位・根面の凹凸にどれだけ時間を割けるか——ここに配分を寄せる根拠になります。
今日のひとこと
重度に進行した歯周炎をもつ13名(30〜55歳)の切歯・犬歯・小臼歯を対象に、同じ顎の左右を「1回のみ」と「3か月おきに3回」に無作為に割り付け、超音波器具で1人の術者がデブライドメントを行いました。計624歯面(各312歯面)、平均初期ポケット深さ5.8〜5.9mm。24か月、3か月ごとに術側を知らされていない検者が測定しています。結果、プラークは78〜82%から3か月で有意に減って低いまま、出血は78〜80%から3か月で26〜31%、その後15〜20%で維持、ポケットは3か月で4.1〜4.2mm、9か月以降は3.5〜3.7mmで安定。歯肉退縮は24か月で平均1.8mm、アタッチメントは3か月時点で約0.4mmの獲得を得てそのまま維持されました。7mm以上のポケットは開始時104面・110面から、24か月後には15面・17面へ。そしてこれらの改善に、1回と3回のあいだで差は認められませんでした。初期の深さ別に見ると3mm以下の浅い部位は平均0.4〜1.0mmの喪失、8mm以上の深い部位は平均0.9〜2.8mmの獲得。著者らは「切歯・犬歯・小臼歯の深い歯周ポケットは、プラークコントロールと1回の器具操作で治療しうる」「治癒期の細菌による歯肉縁下の再定着は、大きな臨床的問題ではないかもしれない」と結論しています。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。


