1問1答 論文 歯周病

2度目のSRPに、意味はあるのか——489人が出した答え

非外科治療

残存ポケットへの非外科的再器具操作(ステップ3)の実測

再評価で5mmが残った。切るか、様子を見るか。——その二択の手前に、もう一つ選択肢があります。「もう一度、非外科で触る」。2025年、一般診療で治療された489人のデータが、その2度目の勝率を教えてくれました。そして同時に、1度目の仕上がりがその後をどれだけ左右するかも。

論文
Effectiveness of nonsurgical re-instrumentation of residual pockets as step 3 of periodontal therapy: A field study
著者
Liss A, Abrahamsson KH, Welander M, Tomasi C
掲載
J Periodontol. 2025;96(8):766-776
種類
フィールドスタディ(一般診療で治療された歯周炎患者489人・18か月追跡)
PMID
39826135

再評価の日、5mmが残っていた

SRPをひと通り終えて、6か月後の再評価。ほとんどは3mm以下に落ち着いたけれど、大臼歯の遠心に5mm。ここで何を選ぶでしょうか。

外科へ送るか、メインテナンスで様子を見るか——そう考えがちですが、その手前にもう一つあります。「もう一度、非外科で触る」。ただ、その勝率を答えられる人は多くないはずです。

それまで:「2度目」の数字が無かった

非外科治療の効果を測った研究の多くは、1度きりの介入とその後の経過を見ています。EFPのガイドラインは治療を段階(ステップ)で整理し、残存ポケットへの対応をステップ3として位置づけました。

ところが「ステップ3で実際どれだけ閉じるのか」は、大学病院の選ばれた症例ではなく、ふつうの診療室で測ったデータが要ります。そこがこの研究の狙いです。

今回の一手:489人を、一般診療のまま18か月追う

対象は、歯周炎と診断され非外科で治療された489人。6か月後の再評価で5mm以上の残存ポケットがあれば、そこへもう一度器具を入れます。そして18か月後に最終評価。

設計の巧みなところは、6か月時点の結果で患者を3群に分けたことです。A群=5mm以上の残存なし、B群=残存5〜6mm、C群=残存7mm以上。主要評価項目はポケット閉鎖(4mm以下)です。

結果その1:2度目は、3〜4割が閉じる

0 16.7% 33.3% 50% 再器具操作でポケットが閉じた割合 (%) 39% 28% 残存 5〜6mm 残存 7mm以上 6か月の再評価で残ったポケット(5mm以上)へ、もう一度非外科で器具を入れた結果。閉鎖=4mm以下。手用と超音波の併用が、それぞれ単独より有効だった(Liss 2025)

5〜6mmのポケットへの再器具操作で、B群・C群ともおよそ39%が閉鎖。7mm以上の深い残存部位では28%。

3回に1回強、と読むか。深いところでも4回に1回は閉じる、と読むか。切らずに済む可能性がこれだけ残っているなら、2度目には十分な意味があります。

もうひとつ、道具についての所見があります。手用と超音波を併用したほうが、それぞれ単独よりも有効でした。「道具は結果を変えない」というのが非外科治療の大きな流れですが、残存ポケットという難所では、組み合わせが効いた——数少ない例外にあたります。

結果その2:1度目の仕上がりが、その後を決めていた

0 33.3% 66.7% 100% 6か月時点で治っていた部位が18か月後も閉じたままだった割合 (%) 80% 50% 40% 残存なし 残存 5〜6mm 残存 7mm以上 6か月時点の治療結果で3群に分けたときの、治癒部位の18か月後の維持率。1度目の仕上がりが、その後の安定を分けていた(Liss 2025)

こちらのほうが、じつは重い発見かもしれません。

6か月時点ですでに治っていた部位が、18か月後も閉じたままだった割合を群ごとに見ると——A群(残存なし)で80%、B群(5〜6mm残存)で50%、C群(7mm以上残存)で40%。

同じ「治った部位」なのに、その人の口の中に深い残存ポケットがあるかどうかで、維持率が倍近く変わるのです。部位の勝負ではなく、口全体の勝負だということになります。

ロジスティック回帰では、ステップ1・2の結果の安定性に影響していた因子としてベースラインのポケット深さ、喫煙、年齢、歯種が挙がりました。

明日の臨床へ:2度目は「集中」で戦う

① 残ったところだけに、全部の注意を向ける。 初回は全顎が対象で集中力が続きません。2度目は数部位が相手です。同じ時間でも密度が違います。
② 深い残存には、手用と超音波の両方を使う。 この研究で併用が単独に勝った数少ない場面です。
③ 「治った部位」も、口全体の状態で見る。 深い残存が残っている人では、治った部位も戻りやすい。同じ3mmでも、その後の見方を変える理由になります。

そして、2度目で動かなければ、次は非外科の外側を考えるタイミングです。閉じないポケットを削り続けても、減るのは根面のほうでした。

ここだけ、冷静に補助線 これはフィールドスタディ——一般診療の現実を映すことが目的で、無作為化された比較試験ではありません。術者も器具も統一されていないため、「併用が単独より有効」という所見も、割り付けではなく観察から出たものとして読む必要があります。追跡は18か月で、5年10年の話ではありません。それでも「2度目には3〜4割の勝ち目がある」「1度目の仕上がりがその後を決める」という二つは、再評価の日の判断をかなり具体的にしてくれます。

今日のひとこと

2度目は5〜6mmで約39%、7mm以上で28%が閉じる。そして1度目の仕上がりが、18か月後の安定を決めていた。

Liss A, Abrahamsson KH, Welander M, Tomasi C. Effectiveness of nonsurgical re-instrumentation of residual pockets as step 3 of periodontal therapy: A field study. J Periodontol. 2025;96(8):766-776. PMID: 39826135
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。