カリオロジー|ジュース導入時期・その後の飲料摂取・社会経済要因
米国小児科学会は「ジュースを与えるなら12か月以降に」と勧めています。理由として挙げられているのが、肥満と——う蝕です。では実際に、始める月齢はその後の飲み物の選び方とどう関連するのか。ニューヨーク州の出生コホートが、7歳まで追いました(ただし7歳の飲料データが揃ったのは約1,200人です)。
①「100%ジュースなら大丈夫ですよね」に、どう返すか
診療室でよく聞く言葉です。果汁100%なら砂糖ではないし、ビタミンも摂れる——そう思っているご家庭は少なくありません。
米国小児科学会(AAP)は2017年に、ジュースを与えるなら12か月以降にと勧告を改めました(それ以前は6か月以降)。理由として挙げられているのが、肥満と——う蝕です。
ただ、これまでの研究の多くは横断研究で、「いつ始めたか」を前向きに追ったものはほとんどありませんでした。この研究が埋めようとしたのは、そこです。
②4か月から18か月まで、繰り返し聞く
ニューヨーク州(ニューヨーク市を除く)の出生コホート「Upstate KIDS」です。2008〜2010年生まれの子を、7歳まで追跡しています。
- 母親に生後4・8・12・18か月の時点で繰り返し質問紙を送り、「ジュースをもう与えたか、与えたなら何か月からか」を尋ねる。複数回答えた場合はいちばん早い時点の回答を採用し、思い出しバイアスを最小化した
- 導入時期を6か月未満/6〜12か月未満/12か月以降の3群に分類(AAPの旧・新の両ガイドラインに対応)
- 24・30・36か月と7歳の時点で、ジュース・炭酸飲料・水・牛乳の摂取量を母親が報告
- 解析対象は単胎児+双胎からランダムに1人ずつ=4,067人(双子は導入時期の相関が非常に高いため。Spearman r=0.9)
- 導入時期の関連要因はCox比例ハザードモデル、その後の飲料摂取との関連はポアソン回帰/ロジスティック回帰で、社会経済的な共変量と飲料の総摂取量を調整
実際の導入時期は、6か月未満 25%(1,012人)/6〜12か月未満 49%(1,995人)/12か月以降 26%(1,060人)。74%が1歳より前に始めていたことになります。
③始めた時期と関連していたのは、家庭の状況だった
まず、誰が早く始めるのか。多変量解析(ハザード比、大きいほど早く導入)でこうなりました。
- 母親の年齢が1歳上がるごとに 0.97(95%CI 0.96–0.98)=若い母親ほど早い
- 非ヒスパニック系黒人 1.4(1.2–1.6)、ヒスパニック系 1.2(1.1–1.4)(非ヒスパニック系白人が基準)
- 学歴が高卒未満・高卒・一部大学 1.2(1.1–1.3)(大卒以上が基準)
- WIC(低所得層向け栄養支援プログラム)への参加 1.1(1.0–1.2)
- 妊娠中の喫煙 1.2(1.1–1.3)、妊娠高血圧 1.2(1.1–1.4)
- タウンハウス/コンドミニアム 1.2(1.0–1.4)、モービルホーム 1.3(1.1–1.5)(一戸建てが基準)
- 逆に世帯収入が高い 0.94(0.90–0.98)、生後4か月で母乳を与えている 0.8(0.7–0.8)、固形食の導入が遅い 0.91(0.89–0.93)=いずれも遅い導入と関連
著者らの言葉では、「ジュースの導入年齢には、明確な社会経済的な分断が見られる」。
④7歳の飲み物にまで、差が残っていた(ただし解析は24か月からの通し)
7歳の時点で炭酸飲料を飲んでいた割合は、6か月未満で導入 40.5%/6〜12か月未満 34.7%/12か月以降 25.1%(P<0.0001)。割合から計算すると、6か月未満は12か月以降のリスク比 約1.6倍です。加糖飲料全体で見ると69.5%/68.7%/56.5%(P=0.0003)で、こちらはリスク比 約1.2倍。有病割合が25〜40%と高い集団なので、オッズ比はこのリスク比より大きめに出ます。
ここから先の数字は、24・30・36か月と7歳を反復測定として一括で推定したモデルの値です(7歳単独の推定値ではありません)。12か月以降に導入した子を基準にすると、こうなります。
- ジュースの摂取量:リスク比 1.5(95%CI 1.3–1.7、P-trend<0.0001)。ただし6〜12か月未満の群は1.6(1.4–1.7)で、6か月未満よりわずかに高く、用量反応は単調ではありません
- 炭酸飲料を飲む:オッズ比 1.6(1.0–2.4、P-trend=0.01)。6〜12か月未満の群は1.2(0.8–1.7)で有意ではありません
- 水の摂取量:リスク比 0.9(0.8–0.9、P-trend<0.0001)。著者らが「約10%少ない」と書いているのは飲料の総摂取量を調整する前のモデルで、調整後は「その関連はさらに強調された」としています
- 牛乳の摂取量:リスク比 0.9(0.9–1.0、P=0.04)
ここで正直に書いておくと、炭酸飲料のオッズ比1.6は、95%信頼区間の下限が1.0に接しています。著者らは社会経済的な要因を調整したモデル(総飲料量は未調整)の段階で「正の方向だが統計的に有意ではない」と書いています(そのモデルのオッズ比は1.5、95%CI 1.0–2.3)。この一本だけを取り出して強く言うのは避けたほうがよい数字です。なお調整前の粗い比較ではオッズ比17.2(7.2–41.0)と極端に大きく、調整でここまで縮んだという事実のほうが、この数字の性格をよく表しています。
一方で水の摂取量が少ないという所見は、飲料の総摂取量を一定にしたうえで出ています。つまり「飲む量」が増えたのではなく、「何を飲むか」の中身が置き換わっている。著者らはこれを「水を置き換えている可能性がある」と表現しています。
なぜそうなるのか。著者らが挙げるのは甘味への嗜好の形成です。出生時と生後6か月に甘い水と甘くない水を与えた実験では、出生時に甘い水を与えられた乳児だけが、同じ程度の嗜好を示し続けたという報告があり、乳児期のジュースが甘味の好みを”プログラム”している可能性を指摘しています。
⑤明日の臨床へ
- 「いつ始めるか」を独立した話題として持つ。この研究の芯は、その後の総飲料量を調整してもなお差が残った点にあります。著者らも「100%果汁の導入を遅らせることは、すでに嗜好ができてしまった子の摂取量を制限するよりも、保護者にとって取り組みやすい介入になりうる」と述べています——ただしこれは仮説の提示で、介入を比べた研究ではありません
- 置き換わっているのは水かもしれない。「ジュースが増えた」だけでなく「水が減った」——この言い方のほうが、保護者に届きやすいと思います(著者らも「水を置き換えている可能性がある」という書き方をしています)
- 100%ジュースかどうかは、この研究では区別できていない。著者らは「100%果汁と加糖された果汁飲料を区別できない」ことを最大の限界として挙げています。「100%なら別」という反論には、この研究では答えられません
- 相手を見る。導入時期と関連していたのは母親の年齢・学歴・世帯収入・住居形態でした。個別の指導だけで動かせる部分と、そうでない部分がある
- う蝕そのものは測っていない。この研究のアウトカムは飲料の摂取です。AAPがう蝕を理由に挙げていることと、この研究がう蝕を測ったこととは別の話です
今日のひとこと
6か月未満でジュースを始めた子は、24か月から7歳までを通してジュースと炭酸飲料が多く、水が少なかった。そして始める時期と関連していたのは、母親の年齢・学歴・世帯収入といった社会経済的な指標だった。因果は言えない。


