1問1答 論文 虫歯

1歳半で甘い間食が習慣になった子の82.2%は、3歳でもそのままだった——18,251人の健診データ

1問1答 論文 虫歯

カリオロジー|乳幼児健診・甘い間食の習慣化・就寝時授乳

1歳6か月児健診で「おやつはほどほどに」と伝える。その一言のあと、その子たちが3歳までにどうなっていたのかを、僕らはほとんど知りません。健診は点で終わり、次に会うのは3歳児健診だからです。愛知県の35市町村が、同じ子の1歳半と3歳の健診結果を突き合わせました。18,251人分です。

論文
幼児期の甘い間食の習慣的な摂取と生活習慣に関する乳幼児健康診査を活用した分析
著者
佐々木渓円、平澤秋子、山崎嘉久、石川みどり
掲載
日本公衆衛生雑誌. 2021;68(1):12-22
種類
健診データを用いた縦断分析(愛知県35市町村・18,251人)
PMID
33342932

「おやつはほどほどに」と伝えたあと、その子たちはどうなったか

1歳6か月児健診で、僕らは必ずこの話をします。甘いお菓子や甘い飲み物を毎日与えていないか。与えているなら、少し減らしませんかと。

ですがその一言のあと、その子たちが1年半後にどうなっているかを、僕らはほとんど知りません。健診は点で終わり、次に会うのは3歳児健診だからです。(なおこの研究は保健指導の効果を評価したものではありません。指導を受けた群と受けていない群を比べる設計ではなく、あくまで観察です。)

愛知県の35市町村が、同じ子の1歳6か月と3歳の健診結果を、個別識別番号で突き合わせました。18,251人分です。

先に結論: 1歳半で甘い間食が習慣化していた子の82.2%は、3歳でも習慣的に食べていた。そして1歳半の時点の口腔衛生行動——就寝時授乳がないこと——が、3歳までの甘い間食の習慣と関連していた。3歳時点のう蝕有病率の差は、4群で8.9〜10.9%と小さかった。

健診の問診票を、縦につなぐ

日本の乳幼児健診は受診率が極めて高く(この35市町村では1歳6か月児健診97.8%、3歳児健診96.9〜97.4%)、そこで得られる問診の情報は、地域を診断する材料になり得ます。ただし「点」で終わっていては、変化が見えない。この研究の主張はそこにあります。

  • 2013年度に1歳6か月児健診を受けた22,042人のうち、同じ市町村で3歳児健診も受けた19,492人(88.4%)。ここから欠損などを除いた18,251人(男児9,393人・51.5%)が解析対象
  • 「甘い間食」の定義:「甘いおやつ(砂糖を含むアメ、チョコレート、クッキー等)をほぼ毎日食べる習慣がありますか」「甘い飲み物(乳酸飲料・ジュース・果汁・スポーツドリンク等)をほぼ毎日飲む習慣がありますか」——どちらかが「ある」なら習慣化あり
  • この有無を2時点で組み合わせ、N-N(両方なし)・Y-N(1歳半のみあり)・N-Y(3歳のみあり)・Y-Y(両方あり)の4群に分類
  • 「甘い間食」以外の問診項目10個(間食回数・朝食・就寝時授乳・歯みがき・就寝時間・スクリーンタイム・ゆったり気分・相談相手・母の喫煙・父の喫煙)を独立変数に、Y-Y群を対照とした多項ロジスティック回帰を実施。有意水準は1%未満に設定し、99%信頼区間を算出している(=かなり厳しい基準です)

一度ついた習慣は、ほとんど戻らない

0 15% 30% 45% 対象者に占める割合(%) 27.7% 8.6% 24.1% 39.6% N-N(両方なし) Y-N(1歳半のみ) N-Y(3歳のみ) Y-Y(両方あり) 「甘い間食の習慣化」の有無を1歳6か月児健診と3歳児健診で組み合わせた4群。もっとも多いのは両方の時点で習慣化していたY-Y群
18,251人の4群の構成比。もっとも多いのは、両方の時点で習慣化していたY-Y群である

まず全体像です。

  • 1歳半の時点で48.2%の子に甘い間食の習慣化があり、3歳では63.7%に増加していた
  • 4群の構成比はN-N 27.7%/Y-N 8.6%/N-Y 24.1%/Y-Y 39.6%

ここから読める数字が、この研究のいちばんの見どころです。

  • 1歳半で習慣化ありだった子(8,803人)のうち、82.2%(7,234人)が3歳でも習慣的に摂取していた。改善できたのは17.8%だけ
  • 逆に1歳半で習慣化なしだった子(9,448人)のうち、3歳でも習慣がなかったのは53.5%。つまり46.5%が、この1年半で新たに習慣化している

著者らの言葉を借りれば、「1歳6か月時点で習慣化していた児の多くは、3歳までにその習慣を改善できなかった」

う蝕のほうはどうか。1歳半でう蝕ありは1.1%(dmft 0.03)、3歳では9.9%(dmft 0.37)に増えます。ただし4群別に見た3歳時点のう蝕有病率は、N-N 9.3%・Y-N 8.9%・N-Y 9.3%・Y-Y 10.9%、dmft指数は0.35/0.32/0.35/0.40。差は小さいものの、この研究の1%基準では統計学的に有意です(χ²=14.1、P=0.003)。原著も「わずかな差ではあるがY-Y群と比較して低値であった」と書いています。臨床的にはまだ小さい差で、う蝕という結果が出そろうのはもっと先だ——そう読むのが素直だと思います。

1歳半の口腔衛生行動が、3歳の食習慣とつながっていた

0 0.5 1 1.5 オッズ比(対照はY-Y群) 1.25 1.28 0.99 N-N(両方なし) Y-N(1歳半のみ) N-Y(3歳のみ) 多項ロジスティック回帰の調整済みオッズ比。⚠️ 1.00が「関連なし」の位置なので、棒の高さそのものではなく1.00からの距離を見る。99%信頼区間は順に1.11–1.41/1.07–1.52/0.88–1.11で、N-YだけがY-Y群と区別できていない
1歳半の時点で「就寝時授乳がない」ことのオッズ比。Y-Y群を対照としている

本題です。1歳半の時点のどの生活習慣が、その後の甘い間食の有無と関連していたのか

Y-Y群(ずっと習慣化あり)を対照にしたとき、1歳半で「就寝時授乳がない」ことは、

  • N-N群(ずっと習慣化なし)と正の関連:オッズ比 1.25(99%CI 1.11–1.41)
  • Y-N群(1歳半のみあり=改善できた群)とも正の関連:オッズ比 1.28(1.07–1.52)
  • N-Y群(3歳で新たに習慣化した群)とは関連なし:オッズ比 0.99(0.88–1.11)

つまりずっと習慣があった群(Y-Y)と比べれば、「就寝時に授乳をしていない」子は、ずっと甘い間食の習慣がない群や、いったんついた習慣を手放せた群に属しやすかった。一方で3歳で新たに習慣化してしまう群とは、区別がついていません

オッズ比だけでは大きさが掴みにくいので、素の割合も置いておきます。「就寝時授乳がない」子の割合は、N-N群 78.7%/Y-N群 78.5%/N-Y群 74.2%/Y-Y群 73.3%(原著の表4)。オッズ比1.25という数字の実体は、この5ポイントほどの差です

もう一つ、1歳半で「親が仕上げ磨きをする」ことは、N-N群にのみ正の関連を示す傾向にとどまりました(オッズ比 1.10、99%CI 0.99–1.23)——信頼区間が1をまたいでおり、この研究の1%基準では有意ではありません

ほかに大きな関連が出ていたのは、口腔衛生よりむしろ生活全体のリズムでした。1歳半の時点での、N-N群のオッズ比(対照はY-Y群)を大きい順に並べます。

  • 間食回数が1日3回未満:3.17(2.66–3.78)——ただしこの項目は「甘い間食」と測っているものが半分重なるので、別格として扱うのが正確です
  • 母の喫煙なし:1.93(1.48–2.51)
  • スクリーンタイムが2時間未満:1.72(1.56–1.90)
  • 朝食の欠食なし:1.69(1.27–2.26)
  • 就寝時間が21時台以前:1.57(1.38–1.79)

著者らは、「幼児の睡眠覚醒リズムは幼児自身の発育・発達に影響することから、間食の保健指導にあたっては、スクリーンタイムや就寝時間も把握すべきであろう」と書いています。そしてN-N群の母親には「ゆったりした気分で子どもと過ごす時間がある」人が多かったことにも触れ、「理想的な間食摂取のあり方や生活習慣を一方的に説明するだけでなく、育児不安等の潜在的な健康課題に寄り添う姿勢が必要である」と結んでいます。

明日の臨床へ

  • 1歳6か月児健診の重みが変わる。この時点で習慣化していた子の82.2%が3歳でもそのままなら、ここは「様子を見る」場面ではありません
  • 1歳半で習慣がない子も、半分近くが新たに習慣化する(46.5%)。「いまは大丈夫」は、次の1年半の保証にならない
  • 間食の話を、間食だけで終えない。間食回数(オッズ比3.17)は「甘い間食」と測っているものが重なるため別格として、それを除くと母の喫煙1.93・スクリーンタイム1.72・朝食1.69・就寝時間1.57が並びます。生活リズム全体の話として聞く価値がある
  • 就寝時授乳は、う蝕の話としてだけでなく「その後の食習慣」とも関連していた——ただし関連が見られたのはN-N群とY-N群だけで、新たに習慣化する群とは区別がついていません
  • この年齢では、う蝕の差はまだ小さい。3歳時点の4群のう蝕有病率は8.9〜10.9%(統計的には有意だが、臨床的には小さい差)。「いまう蝕がないから大丈夫」ではなく、習慣の側を見る根拠として使うのが正確です
ここだけ、冷静に補助線これは観察研究であり、因果は言えません。曝露も健診の問診票(保護者の自己申告)で、「ほぼ毎日」という主観的な表現に依存しています。著者らが挙げる限界も率直です——対象は愛知県のみで、しかも1歳半と3歳を同じ市町村で受診した児に限られるため、転居が多い家庭は含まれていません。使えたのは共通問診の限られた項目だけで、出生順位・母親の年齢・日中の保育環境・世帯収入といった、食生活に効きそうな要因は調整できていない。項目どうしの内部相関も推測されると著者ら自身が書いています。加熱式たばこの普及で喫煙状況を正確に把握できていない可能性にも言及があります。そして忘れてはいけないのが、この研究のオッズ比は「甘い間食の群分け」に対するもので、う蝕に対するものではないこと。オッズ比の読み方にも一言——ここでのオッズ比は4群への所属しやすさを表すもので、群のサイズが大きく違うため、実際の割合の差はオッズ比の印象より小さくなります(就寝時授乳なしの割合は N-N 78.7% 対 Y-Y 73.3%)。ただし約2万人規模で、受診率97%前後の悉皆に近いデータを縦につないだ点は、他にない強みです。日本の現場から出た数字として、そのまま使えます。

今日のひとこと

1歳半で甘い間食が習慣化していた子の82.2%は、3歳でも習慣的に食べていた。そして1歳半の口腔衛生行動——就寝時授乳がないこと——が、3歳までの甘い間食の習慣と関連していた。

佐々木渓円, 平澤秋子, 山崎嘉久, 石川みどり. 幼児期の甘い間食の習慣的な摂取と生活習慣に関する乳幼児健康診査を活用した分析. 日本公衆衛生雑誌. 2021;68(1):12-22. doi:10.11236/jph.20-009 PMID: 33342932
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。