フッ素は、歯科の「ポカよけ」かもしれない
上手にできる人だけが救われる仕組みは、いちばん助けが必要な人に届きません。

USBの端子が教えてくれた「誰でも使える」ということ
おはようございます。今朝の朝礼で話したことを、書き残しておきます。
身のまわりのケーブルが、どんどんType-Cに置き換わっていますね。僕が最初に買ったパソコンはWindows 95で、あの頃はマウスにはマウス専用、キーボードにはキーボード専用の差し込み口がありました。挿し間違えると動かないし、挿し直しても再起動するまで認識してくれない。ずいぶん面倒でした。
そのあとのType-Aは、どの機器でも同じ穴に挿せるようになった代わりに、向きが分かりません。「USBは3回挿さないと入らない」と言われるくらいで、一度挿して、逆にして、やっぱり最初が正しかった、と。それがType-Cになって、上下も左右も気にせず繋がるようになりました。
USBのUは、ユニバーサル。誰でも使える、という意味です。技術の進歩とは、こういう方向に進むべきなのだと改めて思いました。

「ポカよけ」という仕組み
ここでつながるのが、フールプルーフという考え方です。使う人がうっかりミスをしても、事故や不具合が起きないように、仕組みの側で防いでおく。歯科の器具でも、きちんと装着されていない状態ではボタンを押しても回りませんし、電子レンジは扉が開いたままでは動きません。あれがフールプルーフです。
もともとは直訳的に「バカよけ」と呼ばれていたそうです。ただ、それでは現場で働く人が「自分たちがバカだと言われている」と感じてしまう。そこで「ポカよけ」という呼び方に変わったと聞きました。
名前ひとつに、その考え方が表れているように思います。

フッ素は、歯科のポカよけではないか
そこで思ったのが、フッ素入りの歯磨き粉です。
歯磨きが上手な人もいれば、そうでない人もいます。どれだけ丁寧に指導しても、全員がプロ並みのブラッシングを身につけられるわけではありません。けれどフッ素をきちんと使っていれば、多少みがき残しがあっても、ある程度は虫歯を防げる。うっかりを仕組みの側で受け止めてくれる、まさにポカよけだと思うのです。
難しい技術を患者さんに頑張って習得してもらう方向にばかり力を入れるより、誰でも使える手段を広く行き渡らせるほうが、ずっとユニバーサルです。Type-Cが向きを気にしなくてよくなったのと、同じ話だと思います。

その先に、高度な技術がある
もちろん、指導しなくていいという話ではありません。まず誰にでも効く土台を全員に届けて、そのうえで、さらに一歩進める方に、より高度な技術やケアを提供する。順番はこちらのほうがいいのではないか、と考えています。
土台を「頑張れる人だけのもの」にしてしまうと、いちばん助けが必要な人に届きません。


