1問1答 論文 歯周病

歯間ブラシとフロス、数字で並べるとどちらが上か

1問1答 論文 歯周病

ペリオ|Phase1 初期治療

「フロスも使ってください」「歯間ブラシを入れましょう」。どちらを勧めるかは、術者の好みや患者さんの手先の器用さで決まりがちです。ではデータはどう言っているのか。アムステルダムのSlotらが、334本の候補から9本の臨床試験を選び出し、指標ごとにメタアナリシスをかけました。差が出た指標と、出なかった指標が、はっきり分かれます。

論文
The efficacy of interdental brushes on plaque and parameters of periodontal inflammation: a systematic review
著者
Slot DE, Dörfer CE, Van der Weijden GA
掲載
International Journal of Dental Hygiene 2008;6(4):253-264
種類
システマティックレビュー/メタアナリシス
PMID
19138177

「フロスと歯間ブラシ、どちらを勧めますか」

衛生士さんから聞かれて、あるいは患者さんに聞かれて、答えに迷ったことはないでしょうか。歯間部の形、手先の器用さ、続けられるかどうか——判断材料はいくつもあります。

ですが、そもそも「同じように使えたとして、どちらがよく落ちるのか」。そこが数字で押さえられていないと、あとの議論が組み立てられません。

2008年、アムステルダム歯学教育研究所のSlotらが、この問いをシステマティックレビューにまとめました。MEDLINEの218本とコクランの116本をスクリーニングし、条件を満たした9本を解析しています。

先に結論: フロスとの直接比較で、プラーク指数は歯間ブラシが有意に優った(加重平均差 −0.48、p<0.00001)。一方でプロービング時出血とポケット深さでは有意差がつかなかった

歯ブラシだけでは、歯間は落ちない

大前提から確認しておきます。歯ブラシの毛先は、歯と歯のあいだの面には届きません。特に歯周炎で歯間部が開いた症例では、この面積が無視できない大きさになります。

だからこそ補助的清掃器具が必要なのですが、選択肢は複数あります。フロス、歯間ブラシ、ウッドスティック。それぞれに支持者がいて、それぞれに研究がある。その研究を横並びにして統合したのが、このレビューです

334本から9本へ

組み入れられたのは、歯間ブラシを歯ブラシへの追加として使い、歯ブラシ単独あるいは他の歯間清掃器具と比較した臨床試験。アウトカムはプラーク・歯肉炎・出血・ポケット深さです。

9本のうち2本はクロスオーバー、3本はスプリットマウス。評価期間は4週または6週が中心で、最長12週。ほとんどの研究が開始時にプロフェッショナルクリーニングを行っています。

設計上の制約: 器具の性質上、被験者を盲検化することはできません(自分がどの器具を使っているか分かってしまう)。著者らはこの点を明記したうえで、7本が検者盲検であったことを確認しています。

プラークでは、はっきり差がついた

プラーク指数はどこまで下がったか(Silness & Löe)

1.2 0.6 0

歯間ブラシ 1.12 開始時 0.72 終了時

フロス 1.13 開始時 0.96 終了時

歯間ブラシ −0.40 / フロス −0.17(開始時に差はなかった)

開始時のプラーク指数は両群とも1.12〜1.13で差がない。終了時は歯間ブラシ0.72/フロス0.96。統合すると終了時の加重平均差は −0.48(95%信頼区間 −0.65〜−0.32、p<0.00001)で歯間ブラシ有利。ただしこの解析には研究間のばらつき(I²=85.4%)がある。

形の違いも見られています。円錐形の歯間ブラシは1.69→0.46、円筒形は1.66→0.42。どちらの形でも、大きく落ちているという結果でした。

ところが、炎症の指標では引き分けだった

歯間ブラシ 対 フロス:指標ごとの加重平均差

0(差なし) ← 歯間ブラシ有利

プラーク指数(S&L) −0.48 p<0.00001

プラーク指数(Q&H) −0.25 p=0.12(有意差なし)

プロービング時出血 −0.04 p=0.17(有意差なし)

ポケット深さ −0.04 p=0.77(有意差なし)

有意差がついたのはSilness&Löeのプラーク指数だけ。Quigley-Hein指数、プロービング時出血、ポケット深さでは、フロスとの差は統計学的に示されなかった。

もっとも、記述統計を見ると方向は一貫しています。出血指数は歯間ブラシ0.54→0.25/フロス0.52→0.30。歯間出血指数は0.43→0.10/0.41→0.16。ポケット深さは0.59→0.47/0.60→0.51。いずれもわずかに歯間ブラシが上回っているものの、統合すると有意差には届かない——そういう関係です。

明日の臨床へ

指導の言葉に翻訳すると、こうなります。

1. 歯ブラシだけで終わらせない。歯間清掃を足せば、プラーク・出血・ポケットのいずれも改善する。ここは動かない。
2. 歯間部にブラシが入るなら、フロスより歯間ブラシ。プラーク除去で有意に優る。
3. ただし「炎症が2倍よくなる」わけではない。出血やポケットの差は、統計的には示されていない。

歯周炎で歯間部が開いた患者さんでは、そもそもフロスでは面をカバーしきれません。この論文の結果は、そうした症例で歯間ブラシを第一選択にする根拠になります。逆に歯間が狭くブラシが入らない部位では、無理に押し込まずフロスを選ぶ。器具の選択は、まず入るかどうかから始まります。

ここだけ、冷静に補助線

組み入れられたのは9本、評価期間は多くが4〜6週と短めです。器具の性質上、被験者の盲検化は不可能でした。プラーク指数のメタアナリシスには研究間の大きなばらつき(I²=85.4%)があり、統合値をそのまま一つの真値として読むことはできません。また著者らは出版バイアス——差が出なかった研究は発表されにくい——にも注意を促しています。とはいえ、「プラークでは差がつき、炎症では差がつかない」という結果の分かれ方そのものが誠実で、都合よく丸められていないことの証でもあります。日々の指導の根拠として、十分に使える一本です。

今日のひとこと

「どちらがよく落ちるか」と「どちらが歯肉を健康にするか」は、必ずしも同じ答えになりません。

それでも、入るならブラシ。この一言を持っておくと、指導の迷いが少し減ります。

今日のひとこと

歯ブラシに歯間ブラシを足すと、歯ブラシだけよりプラークが減り、出血もポケットも改善しました。フロスとの直接比較では、Silness&Löeのプラーク指数で歯間ブラシが有意に優り(加重平均差 −0.48、95%信頼区間 −0.65〜−0.32、p<0.00001)。一方でプロービング時出血(−0.04)とポケット深さ(−0.04)では有意差がつきませんでした。つまり「プラーク除去では歯間ブラシに軍配、炎症の指標では引き分け」。歯間部にブラシが入るなら、フロスより歯間ブラシを選ぶ根拠があります。

出典:Slot DE, Dörfer CE, Van der Weijden GA. The efficacy of interdental brushes on plaque and parameters of periodontal inflammation: a systematic review. Int J Dent Hyg 2008;6(4):253-264. PMID: 19138177
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。