1問1答 論文 歯周病

抗菌薬を3種類、真正面から比べたらどうなったか

1問1答 論文 歯周病

ペリオ|Phase1 初期治療

アジスロマイシン、メトロニダゾール、低用量ドキシサイクリン。どれもSRPの補助として使われますが、直接比べた研究は多くありません。フォーサイス研究所のHaffajeeらが、92人を4群に分けて12か月追いかけました。すると「全員に効く」でも「どれも同じ」でもない、条件つきの答えが出てきます。

論文
Clinical changes following four different periodontal therapies for the treatment of chronic periodontitis: 1-year results
著者
Haffajee AD, Torresyap G, Socransky SS
掲載
Journal of Clinical Periodontology 2007;34(3):243-253
種類
無作為化比較試験(4群・12か月)
PMID
17309596

「結局、どれを出せばいいのか」

SRPの補助として使われる全身抗菌薬には、いくつかの選択肢があります。アジスロマイシン。メトロニダゾール。低用量ドキシサイクリン。

どれも「SRP単独より良い」という報告があります。ですが、それぞれ別々の研究で示された「良い」を並べても、どれが優れているかは分かりません。比べた相手も、患者層も、評価時期も違うからです。

2007年、フォーサイス研究所のHaffajeeらが、この3剤を同じ研究の中で、同じ土俵に乗せました。92人を4群に無作為に割り付け、12か月追いかけています。

先に結論: 4群すべてが改善した。差が出たのは初期ポケット6mm超の部位で、メトロニダゾールとアジスロマイシンが優った。そして12か月でアタッチメントを失った人は、SRP単独群で39%——他群の2倍以上だった。

3剤の考え方は、それぞれ違う

比較された3剤は、狙いが同じではありません。

アジスロマイシン: 500mgを1日1回、3日間だけ。組織内に長く留まる性質を活かした短期投与
メトロニダゾール: 250mgを1日3回、14日間。嫌気性菌に的を絞った古典的な選択
低用量ドキシサイクリン(SDD): 20mgを1日2回、3か月間。抗菌量に達しない用量でコラゲナーゼを阻害する——菌ではなく宿主側に働きかける発想

特に3つ目は毛色が違います。細菌を叩くのではなく、組織破壊の側を抑える。同じ「抗菌薬」という括りでも、期待している経路がまったく別です。

92人を4群に分けて、12か月

対象は慢性歯周炎の92人。SRP単独(23人)/SRP+アジスロマイシン(25人)/SRP+メトロニダゾール(24人)/SRP+低用量ドキシサイクリン(20人)に無作為割り付けされました。

評価は第三大臼歯を除く全歯の6点——最大168部位。歯肉の発赤、プロービング時出血、排膿、ポケット深さ、アタッチメントレベルを、ベースラインと3・6・12か月に測定しています。

主要評価項目は初期ポケットが6mmを超える部位での12か月のアタッチメント変化。深い部位に焦点を当てた設計です。

差が出たのは、やはり深いところだった

全体平均では、4群すべてが3・6・12か月のいずれでも有意に改善しました。補助薬を受けた群がやや良いという傾向は見えるものの、全部位をならすと群間の差は際立ちません。

ところが初期ポケット6mm超の部位に絞ると、景色が変わります。

深い部位(6mm超)で分かったこと: アジスロマイシンまたはメトロニダゾールを受けた被験者は、低用量ドキシサイクリン群・SRP単独群よりもポケットの減少が大きかった。群間差は6か月と12か月で統計学的に有意。多重比較を調整したうえでも、メトロニダゾールは12か月時点でドキシサイクリンより有意に優り(p<0.05)、SRP単独に対しては6か月(p<0.05)・12か月(p<0.01)で有意だった。
アタッチメント変化も同じパターンで、最も改善が大きかったのはメトロニダゾール群

ここまでは、これまでの記事で見てきた「深いポケットでだけ上乗せが出る」という所見と一致します。

もうひとつの見方:悪化した人の数

この論文が面白いのは、平均値だけで語らなかったところです。著者らは「12か月後にアタッチメントを失った被験者が何人いたか」を数えました。

12か月後に平均アタッチメントを失った被験者の割合(%)

40 20 0

15 低用量 ドキシサイクリン 3/20人

16.6 メトロニダゾール 4/24人

39 SRP単独

アジスロマイシン SRP単独と同様に 多かったと記載

SRP単独群では39%の被験者が12か月後にアタッチメントを失っており、これは低用量ドキシサイクリン群(15%)・メトロニダゾール群(16.6%)の2倍以上。アジスロマイシン群はSRP単独群と同様に多かったと報告されている。

ここで低用量ドキシサイクリンが顔を出すのが興味深いところです。深いポケットの平均改善では目立たなかったのに、悪化した人の少なさでは最も良い成績でした。コラゲナーゼ阻害という宿主側への働きかけを考えれば、筋の通る結果です。

明日の臨床へ

この研究から取り出せる示唆は、2つあります。

1. 深いポケットが多い症例では、メトロニダゾールが第一候補になりうる。3剤のなかで、深部の改善が最も大きかった。
2. 「良くする」と「悪くさせない」は別の指標である。低用量ドキシサイクリンは前者では目立たなかったが、後者では最も良かった。目的によって、選ぶ薬が変わる。

そして忘れてはいけないのが、4群すべてが有意に改善しているという事実です。土台はあくまでSRPであり、抗菌薬はその上に載る補助にすぎません。

服薬期間の違いも実務では効いてきます。アジスロマイシンは3日、メトロニダゾールは14日、低用量ドキシサイクリンは3か月。患者さんが飲みきれるかという現実的な条件も、選択の一部です。

ここだけ、冷静に補助線

各群20〜25人と1群あたりの人数は多くありません。また服薬遵守は自己申告と錠剤カウントで確認されていますが、全員が完全に飲みきったわけではないことも正直に記載されています(一部は「飲んだ」と述べたものの確認できず)。プラセボ対照ではなく、SRP単独群が対照である点にも注意が要ります。副作用は各群で数例報告され、SRP単独群では報告なしでした——薬を足せば、当然ながらリスクも足されるということです。それでも、3剤を同一デザインで12か月比べ、平均だけでなく「悪化した人の割合」まで示した設計は誠実で、抗菌薬の選び方を考えるうえで今も参照する価値のある一本です。

今日のひとこと

薬の評価は、平均値を押し上げたかどうかだけでは決まりません。誰も悪くさせなかったかという見方も、同じくらい臨床的です。

次に抗菌薬を選ぶとき、「何ミリ良くなるか」と一緒に「悪化する人をどれだけ減らせるか」を思い出してみてください。

今日のひとこと

4群すべてが12か月で有意に改善しました。差が出たのは初期ポケットが6mmを超える部位で、メトロニダゾールとアジスロマイシンがポケット減少・アタッチメント獲得のいずれも大きく、その差は6か月と12か月で統計学的に有意でした。最も改善が大きかったのはメトロニダゾール群です。一方で12か月時点でアタッチメントを失った被験者は、SRP単独群で39%。低用量ドキシサイクリン群15%・メトロニダゾール群16.6%の2倍以上でした。抗菌薬の価値は「平均を押し上げる」より「悪化する人を減らす」側にあるのかもしれません。

出典:Haffajee AD, Torresyap G, Socransky SS. Clinical changes following four different periodontal therapies for the treatment of chronic periodontitis: 1-year results. J Clin Periodontol 2007;34(3):243-253. PMID: 17309596
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。