1問1答 論文 エンド

再根管治療、ファイル1本で充填物はどこまで取れる?——下顎前歯の抜去歯60本の実験で、3000rpmで回したXP-endo Shaperが最も速く、残存はHyFlex EDMと差なし、押し出し量は3種で差なし(2018年)

1問1答 論文 エンド

エンド|再根管治療で古いガッタパーチャを外すとき、1本で使うNiTiファイル(シングルファイル)3種類で、かかる時間・取り残し・根尖の外への押し出しはどう違うのか。WaveOne Gold・HyFlex EDM・XP-endo Shaper(3000rpm)を比べた抜去歯の実験研究(Azim 2018・Journal of Endodontics)

再根管治療では、根管内の古い充填物をどれだけ速く・残さず・根尖の外へ押し出さずに外せるかが勝負になります。著者らは下顎前歯(楕円形の単根管)の抜去歯60本に根管充填をして30日置き、WaveOne Gold Primary(往復運動)・HyFlex EDM(回転 500rpm)・XP-endo Shaper(回転 3000rpm)の3群に20本ずつ割り付けて除去しました。XP-endo Shaperはメーカー推奨の800〜1000rpmでは充填物に入っていけなかったため、予備実験で決めた3000rpmで使っています。結果、除去にかかった時間の平均はXP-endo Shaper 40.5秒・HyFlex EDM 55.8秒・WaveOne Gold 105.9秒で、3群とも互いに有意差あり。根管に残った充填物はWaveOne Gold 26.65%が最も多く、HyFlex EDM 13.51%とXP-endo Shaper 8.59%の間には有意差がありませんでした。根尖の外へ押し出された量は3群で差がありませんでした。ただし抜去歯での実験で、どのファイルでも充填物はゼロにならず、3000rpmはメーカー推奨の範囲外の使い方です。

論文
Comparison between Single-file Rotary Systems: Part 1—Efficiency, Effectiveness, and Adverse Effects in Endodontic Retreatment
著者
Adham A. Azim, Howard H. Wang, Mohamed Tarrosh, Katharina A. Azim, Lucila Piasecki(米国 ニューヨーク州立大学バッファロー校)
掲載
Journal of Endodontics 2018;44(11):1720-1724. doi:10.1016/j.joen.2018.07.022
種類
抜去歯を使った実験研究(in vitro)。楕円形の単根管をもつ下顎前歯の抜去歯60本(Weine I型・根尖の湾曲10°以下・根尖径#25以下)をCBCTで形態をそろえて3群(各20本)に分け、Web上の乱数で各ファイルに割り付けた。30.04まで形成し、ガッタパーチャとAH Plusで加熱垂直加圧充填、37℃・湿度100%で30〜45日保管。再治療はWaveOne Gold Primary 25.07(往復運動)、HyFlex EDM 25.08(回転 500rpm・2.5Ncm)、XP-endo Shaper 27.01(回転 3000rpm・1Ncm)。溶剤の使用は記載なし、洗浄は蒸留水 合計5mL。術者は筆頭著者1人(マイクロスコープ下)、歯は37℃の温水浴中の押し出し回収装置に固定。評価は①時間(洗浄を含む)②CBCTで測った残存充填物の割合③根尖の外へ押し出されたデブリの重さ。時間と残存率はKruskal-Wallis検定、押し出し量は一元配置分散分析(有意水準5%)
PMID
30243662

①再根管治療、そのファイル1本で充填物は取り切れる?

再根管治療で古いガッタパーチャを外す。時間はかかるし、壁には取り残しが見えるし、根尖の外へ押し出していないかも気になる——誰もが一度は悩む場面です。

では、1本で使うNiTiファイル(シングルファイル)で外すなら、どれが速く、どれが残さないのか。この研究は、往復運動のWaveOne Gold、回転運動のHyFlex EDMとXP-endo Shaperの3種類で、下顎前歯の抜去歯から充填物を除去して比べました。

結論を先に言います。3000rpmで回したXP-endo Shaperが最も速く(平均40.5秒)、残った充填物はHyFlex EDMと統計的な差がありませんでした。WaveOne Goldは時間も残存も最も多い結果でした。押し出し量は3種類で差なし。ただし、どのファイルでも充填物はゼロになりませんでした。

②なぜ「ファイル1本での除去」が問われるのか

再根管治療では、消毒を十分に行うために根管内の充填物をできるだけ全部取り除くことが求められます。一方で、ファイルの破折、レッジ、穿孔、根尖の外へのデブリやガッタパーチャの押し出しといった合併症も起こりえます。著者らは緒言で、理想の器具は「短時間で全部取れて、押し出しがなく、根管の形を変えず、折れない」ものだが、今のところそれを満たす方法は無い、とまとめています。

シングルファイルは手順を単純にして時間を短くできるのが魅力です。今回の3種類は次のようなファイルです。

・WaveOne Gold:往復運動(レシプロ)で使う。テーパーが途中で変わる形で、熱処理でしなやかさと疲労への強さを高めたもの
・HyFlex EDM:回転運動で使う。独自の製法と熱処理で、繰り返しの曲げ疲労に強くしたもの
・XP-endo Shaper(論文の表記はXP Shaper):回転運動で使う。号数27・テーパー1%と細く、根管の形に合わせて3次元的に広がる新しいタイプ

著者らによると、XP-endo Shaperを再根管治療に使えるかどうかの情報は、まだ無かったとのことです。

③今回の一手:充填した抜去歯で、時間・取り残し・押し出しを同時に測る

対象=楕円形の単根管をもつ下顎前歯の抜去歯。90本を集め、根尖の湾曲10°以下・根尖径#25以下などの条件で選び、CBCTで長さや根管の形がそろうよう60本を3群(各20本)に分けて、Web上の乱数で各ファイルに割り付けました。
・充填:30.04まで形成し、ガッタパーチャとAH Plusで加熱垂直加圧充填。37℃・湿度100%で30〜45日置いてから再治療
・除去:WaveOne Gold Primary 25.07(往復)、HyFlex EDM 25.08(500rpm)、XP-endo Shaper 27.01(3000rpm)。作業長に届いたら壁に沿って10回ストロークし、見える充填物が無くなるまで10回ずつ追加。溶剤の使用は記載がなく、洗浄は蒸留水 合計5mL
・時間:再治療と洗浄にかかった合計時間を秒で記録
・取り残し:再治療の前後にCBCTを撮り、残ったガッタパーチャの体積の割合を計算
・押し出し:あらかじめ重さを量ったガラス瓶で根尖から出たものを受け、乾かしてから重さの差を量った。装置は37℃の温水浴に沈めた

ポイントはXP-endo Shaperの回転数です。予備実験で、メーカー推奨の800〜1000rpmでは充填物に入っていけず、再治療を終えられなかったため、3000rpmに上げたところ除去できるようになった、と書かれています(この回転数での曲げ疲労の試験はPart 2で報告)。形成は筆頭著者(熟練のエンド専門医)1人がマイクロスコープ下で行いました。

④結果①:時間はXP-endo Shaperが最短、WaveOne Goldは約2.6倍

0 40秒 80秒 120秒 充填物の除去にかかった時間 平均(秒) 105.9秒 55.8秒 40.5秒 WaveOne Gold HyFlex EDM XP-endo Shaper 原著Table 1(平均。SDはWaveOne Gold ±53.92・HyFlex EDM ±19.76・XP-endo Shaper ±28.03)。解析本数17・19・20本。3群とも互いに有意差あり(P<.05)。時間には洗浄も含む
充填物の除去にかかった時間の平均(原著Table 1)。解析本数 WaveOne Gold 17本・HyFlex EDM 19本・XP-endo Shaper 20本

除去にかかった時間の平均は、XP-endo Shaper 40.54秒、HyFlex EDM 55.77秒、WaveOne Gold 105.93秒。3群全体でP<.001、3群とも互いに有意差ありでした。WaveOne GoldはXP-endo Shaperの約2.6倍の時間がかかった計算です(平均値どうしの比)。

なお、再治療の途中で4本が解析から外れています(WaveOne Gold 3本・HyFlex EDM 1本)。理由はファイルの破折1本(WaveOne Gold)、歯の亀裂1本、操作や評価の誤り2本です。

⑤結果②:取り残しはWaveOne Goldが最多、XP-endo ShaperとHyFlex EDMは差なし

0 10% 20% 30% 根管内に残った充填物 平均(%) 26.65% 13.51% 8.59% WaveOne Gold HyFlex EDM XP-endo Shaper 原著Table 1(CBCTで測った残存ガッタパーチャの体積の割合。平均)。WaveOneGoldは他の2群より有意に多い(P=.007/P<.001)。HyFlex EDMとXP-endo Shaperは有意差なし(P=.092)
根管内に残った充填物の割合の平均(原著Table 1。CBCTで測った体積の割合)

残った充填物の割合は、WaveOne Gold 26.65%、HyFlex EDM 13.51%、XP-endo Shaper 8.59%。WaveOne GoldはHyFlex EDM(P=.007)とXP-endo Shaper(P<.001)のどちらより有意に多く、HyFlex EDMとXP-endo Shaperの間には有意差がありませんでした(P=.092)。

つまり「XP-endo Shaperが最も速い」は統計的に言えますが、「最もきれいに取れる」とまでは言えません。取り残しで差が出たのはWaveOne Goldと他の2種の間です。そしてどの群も0%にはなっていません。

⑥結果③:根尖の外への押し出しは3種類で差なし

根尖の外へ押し出された量の平均は、WaveOne Gold 592µg、HyFlex EDM 1177µg、XP-endo Shaper 686µg(µg=マイクログラム)。3群の間に有意差はありませんでした(P>.05)。標準偏差はHyFlex EDMで±1624.8µgと大きく、1本ごとのばらつきが目立ちます。押し出し量と、時間や取り残しとの間に相関もありませんでした。

著者らはここで大事な指摘をしています。理屈の上では、充填物をあまり取れない器具は、そもそも押し出す量も少なくなる。実際、WaveOne Goldは押し出しの平均が最も少ない一方で、約25%の充填物を根管内に残していました。押し出しだけを見て「安全なファイル」と判断すると誤るので、取り残しと押し出しは同時に評価すべきだ、というのが著者らの主張です。

⑦なぜ差が出たのか——形と動かし方、そして回転数

著者らは、XP-endo Shaperが速かった理由を、細く根管に沿って広がる形と先端の形状に加えて、高速回転でガッタパーチャが軟らかくなる(可塑化)ことが除去を助けた可能性に求めています。

WaveOne Goldについては、削りカスの逃げ場が少ない形が切削効率を下げている可能性を挙げています。HyFlex EDMは先端側の断面がWaveOne Goldと似ているのに、除去は有意に効率的でした。そこから著者らは、再根管治療では往復運動より連続回転のほうが向いているようだと述べています。

ただし、これは考察での推測です。可塑化や削りカスの逃げ場を直接測った研究ではありません。今回の3種類・今回の条件(まっすぐな下顎前歯・洗浄は蒸留水・3000rpm)での結果として読むのが妥当です。

⑧明日の臨床へ

・どのシングルファイルでも充填物はゼロにならない。最も少なかったXP-endo Shaperでも平均8.59%が残っていた。
・この抜去歯の条件では、XP-endo Shaper(3000rpm)が最も速く、取り残しはHyFlex EDMと差がなかった。WaveOne Goldは時間も取り残しも最も多かった。
・押し出し量は3種類で差なし。押し出しが少なく見えても、取り残しが多ければ「よく取れていない」だけかもしれない。
・3000rpmはメーカー推奨(800〜1000rpm)の範囲外。論文の結果をそのまま自院の設定にする前に、使用条件を確かめる。
・数字はまっすぐで楕円形の下顎前歯・洗浄は蒸留水だけという条件のもの。湾曲根や大臼歯にそのまま当てはめない。

「シングルファイルでも、種類と動かし方で除去の速さと取り残しは変わる」——再根管治療でファイルを選ぶときの材料の1つとして、このくらいの距離感で使うのがちょうどよさそうです。

⑨ここだけ、冷静に補助線

これは抜去歯を使った実験研究で、患者さんでの治癒や術後の痛みを比べたものではありません。著者らは、どの群でも穿孔やレッジは見られず、XP-endo Shaperは3000rpmでも破折が1本も無かったことから「この高速で使っても安全」と述べています。ただ、根拠は20本での結果と、Part 2の曲げ疲労試験です。
ここからは筆者の読みです。術者は筆頭著者1人で、どの群を処置しているかは分かる状態でした(盲検化の記載なし)。使ったのはまっすぐで楕円形の下顎前歯だけで、各群20本(解析は17〜20本)。溶剤の使用は記載がなく、洗浄は蒸留水だけで、臨床で次亜塩素酸ナトリウムを使う条件とは違います。時間は洗浄を含む合計です。統計はノンパラメトリック検定ですが、結果は平均と標準偏差で示されています。また、要旨とTable 1で数字がわずかに違う箇所があります(WaveOne Goldの時間 105.92秒と105.93秒、XP-endo Shaperの残存 8.60%と8.59%。本記事はTable 1の値を使用)。それでも、時間・取り残し・押し出しを同じ歯で同時に測り、CBCTで群の形態をそろえてから比べた点は、ファイル選びを考える材料になります。著者らは利益相反は無いと記載しています。

今日のひとこと

下顎前歯の抜去歯での実験で、3000rpmで回したXP-endo Shaperは、充填物の除去が最も速く(平均40.5秒)、残った充填物はHyFlex EDMと統計的な差がありませんでした(8.59%と13.51%)。WaveOne Goldは時間が最も長く(105.9秒)、残存も最も多い(26.65%)結果でした。根尖の外への押し出し量は3種類で差がなく、どのファイルでも充填物はゼロになりませんでした。持ち帰るのは「シングルファイルでも種類と動かし方で除去の速さ・取り残しは変わる」こと。ただし3000rpmはメーカー推奨の範囲外で、患者さんでの成績や術後の痛みを比べた研究ではありません。

Azim AA, Wang HH, Tarrosh M, Azim KA, Piasecki L. Comparison between single-file rotary systems: Part 1—efficiency, effectiveness, and adverse effects in endodontic retreatment. J Endod. 2018;44(11):1720-1724. doi:10.1016/j.joen.2018.07.022. PMID: 30243662
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。