エンド|NiTiファイルは使い捨てか、滅菌して使い回すか。新品は使う前に滅菌しているか。米国歯内療法学会(AAE)の会員約4,000人にメールでアンケートを送り、使い方・再利用・滅菌・保管の実態を調べた研究(Logsdon 2020・Journal of Endodontics)
NiTiファイルは今や根管形成の標準の道具です。では、歯内療法を専門とする歯科医はそれを使い捨てているのか、使い回しているのか。著者らは米国歯内療法学会(AAE)の会員約4,000人に16問のアンケートをメールで送り、957人(回答率23%)の答えを集めました。NiTiファイルを使っていたのは98.3%とほぼ全員。そして74%がNiTiファイルを再利用していました(約10年前、米国の一部地域を対象にした別の調査では50%)。新品の扱いも割れていて、滅菌済みの製品を買う22.9%、使う前に自分で滅菌41.6%、滅菌せずにそのまま使う35.5%。再利用は勤務形態で大きく違い、単独開業81.4%に対して軍は3.7%でした。ただし回答率23%の自己申告のアンケートで、再利用が患者さんの治療結果にどう響くかは調べていません。
①そのNiTiファイル、何回目ですか?
根管形成が終わって、使ったNiTiファイルを洗浄・滅菌に回す。あるいは1回で捨てる。医院によって、先生によって、ここはけっこう違います。
では、エンドの専門医たちは実際にどうしているのか。ここでの「専門医」は、歯内療法を専門とする歯科医(米国歯内療法学会=AAEの会員)のことで、学会の認定医(board certification)とは別です。この研究は、米国歯内療法学会(AAE)の会員にアンケートを送り、NiTiファイルの使い方・再利用・滅菌・保管の実態を数字にしました。
結論を先に言います。回答した専門医957人のうち、74%がNiTiファイルを再利用していました。新品を滅菌せずにそのまま使う人も35.5%。そして再利用の割合は単独開業81.4%に対して軍3.7%と、働く場所で大きく違っていました。
②なぜ「使い回し」と「新品の滅菌」が話題になるのか
NiTiファイルは、従来の器具と比べて手技の失敗が少なく、治療時間が短く、治療成績もよくなる可能性があると報告されてきました。そのためか、市場には160を超えるファイルシステムがある、と著者らは緒言で紹介しています。
一方で、使い方には気になる点が2つあります。
・再利用:多くのメーカーはNiTiファイルを単回使用(シングルユース)と表示している。過去の研究では、ファイル表面の有機物の汚れやプリオンたんぱく質を落としにくいことが示され、単回使用を勧める声がある。滅菌をくり返すと切削効率が落ちる可能性も指摘されている
約10年前の2009年にも、Birdら(今回の責任著者Peters先生も共著)が米国の一部地域の歯内療法医を対象に、似た調査(今回とは別の調査)をしていて、そのときは60%がNiTiを常に(症例の100%で)使い、50%が再利用していました。この10年で何が変わったかを確かめるのが、今回の目的です。
③今回の一手:AAE会員 約4,000人へのメールアンケート
・質問票:NiTiファイルの使用・再利用・保管・合併症を尋ねる16問(卒後年数・専門医認定・年齢・性別・勤務形態、NiTiを使うか、新品を滅菌するか、どのメーカーか、再利用するか、何根管で捨てるか、どう滅菌しどう保管するか、モーター、回転か往復か など)
・回収:6か月間。4か月後に未回答者へ1回だけ催促メール。回答は匿名
・分析:卒後年数(10年未満/10〜25年/25年超)・勤務形態・専門医認定の有無で分けて、カイ二乗検定で比較
集まったのは957人、回答率23%。男性78.8%・女性20.7%、平均年齢は45歳でした。勤務形態は単独開業40.2%、グループ開業41.7%、法人(チェーン)4.3%、大学10.7%、軍3%。専門医認定を持つ人は全体の26.9%です。
④結果①:NiTiはほぼ全員、そして74%が再利用
NiTiファイルを使っていたのは、要旨では98.3%(本文の結果の項では97.8%)。ほぼ全員です。卒後25年を超える人だけは92.6%と、それより若い人(99%)より有意に少なめでした(P<.001)。
そしてNiTiファイルを再利用している人は74%。別の調査である2009年の調査(50%)より高い数字です。再利用の割合は、勤務形態で大きく違いました。
いちばん差が大きかったのは単独開業(81.4%)と軍(3.7%)で、この差は有意でした(P<.001)。大学でも56.3%が再利用しています。いつ捨てるかは、考察では「3回使ったら捨てる」がいちばん多く40.5%とされています(結果の項では、単独開業の歯内療法医の数字として書かれています)。
⑤結果②:新品を滅菌せずに使う人が35.5%
新品のファイルについては、滅菌済みの製品を買う22.9%、使う前に自分で滅菌する41.6%、そして滅菌せずにそのまま使う35.5%。3人に1人強が、新品を滅菌しないまま使っていることになります。
この点は勤務形態や卒後年数で有意な差はなく、例外は軍だけでした。軍の歯内療法医は全員が滅菌した新品を使っていて、88.9%が自分で滅菌し、残りの11.1%は滅菌済みの製品を買っていました。
ほかに、専用のエンドモーターを使う人は97.3%、回転運動のファイルを主に使う人は91%でした。往復運動(レシプロ)を使う人は、卒後10年未満で5%と、10〜25年の10%、25年超の16.5%より有意に少なめです(P=.001)。メーカーの好みも集計されていますが、この記事では省きます。
⑥なぜ使い回すのか——著者らの見立て
単独開業では8割が再利用し、軍ではほとんど再利用しない。この違いについて著者らは、NiTiファイルの値段が理由だろうと考察しています(著者らの推測)。アンケートで理由そのものを尋ねたわけではありません。
再利用に慎重な意見が出る理由として、考察では次の点が紹介されています。
・滅菌をくり返すと切削効率が落ちる可能性がある
・トルコ(イスタンブール)の一般歯科で「滅菌済み」とされていたエンド器具60本を調べたら、12本から培養できる細菌が見つかったという研究がある
著者らは結論で、NiTiファイルの滅菌と使い方の習慣が、臨床家の間でそろっていないことがはっきりしたとまとめています。
⑦明日の臨床へ
・使い回すなら、洗浄・滅菌の方法と、何回で捨てるかを院内で決めてそろえる(この調査では「3回使ったら捨てる」がいちばん多かった)。
・滅菌はオートクレーブが9割超。薬液に浸すだけの消毒で再利用するのは、著者らも気がかりとしている。
・ただしこれは「みんながどうしているか」の調査で、「再利用すると治療成績が落ちる」「何回までなら安全」を示した研究ではない。
自院のやり方を、米国の専門医の実態と並べてみる物差しとして使う——このくらいの距離感がちょうどよさそうです。
⑧ここだけ、冷静に補助線
ここからは筆者の読みです。10年前との比較で著者らは「NiTiの使用が38%増えた」と書いていますが、2009年の60%は「症例の100%でNiTiを使う」人の割合で、今回の98.3%は「NiTiを使う」人の割合です。しかも2009年の調査は米国の一部地域が対象で、今回は全米のAAE会員への調査なので、同じ集団の変化とも、同じ物差しとも言い切れません。また、NiTiの使用率は要旨で98.3%、結果の項で97.8%、単独開業の再利用率は本文で81.4%、Table 3で81%と、本文と表で数字が少しずれている箇所があります。質問票の図には、メーカー別の枝分かれを含めて21行が並んでいます。再利用が患者さんの治療結果や感染に影響したかは調べていません。なお、責任著者のPeters先生はDentsply Sironaのコンサルタントであると記載されています。それでも、米国の専門医957人の再利用と滅菌の実態を、勤務形態・卒後年数ごとに数字で示した点は、自院の手順を見直す材料になります。
今日のひとこと
米国の歯内療法専門医957人の自己申告では、NiTiファイルを98.3%が使い、74%が再利用していました。新品を滅菌せずにそのまま使う人も35.5%。再利用は単独開業81.4%、軍3.7%と勤務形態で大きく違い、著者らはファイルの値段が理由だろうと見ています(著者らの推測)。著者らの結論は、滅菌と使い方の習慣が臨床家の間でそろっていないということ。ただし回答率23%の自己申告のアンケートで、再利用が治療結果を悪くするかどうかを調べた研究ではありません。持ち帰るのは「新品でも滅菌されているとは限らない」「使い回すなら洗浄・滅菌・保管の手順を院内でそろえる」の2点です。


