EPP(entire papilla preservation)の1年成績
乳頭を保存する術式は、どれも「乳頭のどこかを切って」きました。水平に、斜めに、切る位置と角度を工夫しながら。——では、まったく切らなければどうなるのか。隣の歯間部から入り、乳頭の下をトンネルで潜るという発想が出てきます。
①「保存」と言いながら、乳頭は切られていた
乳頭保存術、改良型乳頭保存術、簡易型乳頭保存フラップ、MIST、M-MIST——名前は変わっても、共通していたことがあります。どれも乳頭のどこかに刃を入れていたことです。水平に、あるいは斜めに。切る位置と角度を工夫しながら、乳頭を「なるべく」保存してきました。
では、まったく切らなければどうなるのか。
②入口を、隣の歯間に移す
Aslanらが示したEPP(歯間乳頭全保存術)は、欠損に関わる乳頭には一切触れません。代わりに、同じ歯の反対側の歯間乳頭部(欠損に関わらない、比較的安全な部位)の頬側に、斜切(ベベル)を付けた縦切開を1本置きます。この切開は歯肉歯槽粘膜境をわずかに越えて延び、弁を動かす余地を作ります。
頬側の弁を挙上したあと、欠損に関わる乳頭の下をトンネル状に潜って骨欠損へ到達します。著者らはこれを「トンネル様アプローチ」と呼んでいます。
肉芽組織を除去し、根面を清掃したうえで骨補填材とエナメルマトリックスデリバティブを置き、マイクロサージカルの縫合で閉じます。適応の前提は、舌側の骨壁が保たれていること——術前にボーンサウンディングで確認します。
③結果——創閉鎖100%が、治癒期間を通じて維持された
孤立した深い骨縁下欠損をもつ12名。1年後の付着獲得は6.83±2.51mm(P<0.001)、ポケットの減少は7±2.8mm(P<0.001)。
そして軟組織です。歯肉退縮の増加は0.16±0.38mm——統計的に有意ではありませんでした(P=0.166)。早期治癒は全例で順調で、創閉鎖は治癒期間を通じて100%維持されました。
④なぜ、これで治るのか
早期の創離開とそれに続く材料の露出は、再生療法の成績を落とす要因として繰り返し報告されてきました。膜や補填材が露出すれば、再生は大きく妨げられ、成績が落ちます。著者らの見立てはこうです——乳頭に切開が無ければ、そこが離開する契機を減らせる。
そして開かなければ、材料は露出せず、深い骨欠損の中で血餅が安定する。術式そのものが、治癒の条件を守る設計になっています。
⑤明日の臨床へ
EPPは適応を選ぶ術式です。舌側の骨壁が残っていることが前提で、頬側からのアクセスだけで欠損に届く症例に限られます。逆に言えば、術前に欠損の三次元的な形を読めていないと選べません。
術式を選ぶ前に、欠損の形を読む。この順序は、どの低侵襲術式にも共通します。
今日のひとこと
欠損側の乳頭を一切切らず、隣の歯間の頬側から入って下を潜る。創閉鎖は治癒期間を通じて100%維持され、1年の付着獲得は6.83mm、退縮の増加は0.16mmだった。


