1問1答 論文 歯周病

乳頭に刃を入れない——隣の歯間から入って、下を潜る

歯周外科

EPP(entire papilla preservation)の1年成績

乳頭を保存する術式は、どれも「乳頭のどこかを切って」きました。水平に、斜めに、切る位置と角度を工夫しながら。——では、まったく切らなければどうなるのか。隣の歯間部から入り、乳頭の下をトンネルで潜るという発想が出てきます。

論文
Entire papilla preservation technique in the regenerative treatment of deep intrabony defects: 1-Year results
著者
Aslan S, Buduneli N, Cortellini P
掲載
J Clin Periodontol. 2017;44(9):926-932
種類
症例集積(12名の孤立した深い骨縁下欠損・1年)
PMID
28727170

「保存」と言いながら、乳頭は切られていた

乳頭保存術、改良型乳頭保存術、簡易型乳頭保存フラップ、MIST、M-MIST——名前は変わっても、共通していたことがあります。どれも乳頭のどこかに刃を入れていたことです。水平に、あるいは斜めに。切る位置と角度を工夫しながら、乳頭を「なるべく」保存してきました。

では、まったく切らなければどうなるのか。

入口を、隣の歯間に移す

Aslanらが示したEPP(歯間乳頭全保存術)は、欠損に関わる乳頭には一切触れません。代わりに、隣接する歯間部の頬側歯肉に、斜めの縦切開を1本置きます。この切開は歯肉歯槽粘膜境をわずかに越えて延び、弁を動かす余地を作ります。

頬側の弁を挙上したあと、欠損に関わる乳頭の下をトンネル状に潜って骨欠損へ到達します。著者らはこれを「トンネル様アプローチ」と呼んでいます。

つまり: 乳頭の完全性を保ったまま、そのを通って欠損に届かせる——これがEPPの発想です。
EPP(Aslan 2017)——乳頭を切らずに、その下を通る 前の術式との違い:乳頭への切開が消え、入口が隣の歯間部へ移る 歯肉歯槽粘膜境 歯槽骨の頂 垂直性骨欠損 斜めの縦切開 境をわずかに越える 乳頭の下をトンネルで潜る 乳頭には刃を入れない ━━ 歯肉溝内切開  ━━ 縦切開  ┈┈ トンネル 刃が、ついに乳頭から離れた 欠損の隣の歯間部から入り、乳頭の下を通って欠損へ届かせる
〔図〕EPPの切開線。欠損側の乳頭には触れず、隣の歯間部の頬側に斜めの縦切開を置いて乳頭の下を潜る(原著の記述にもとづく模式図)

肉芽組織を除去し、根面を清掃したうえで骨補填材とエナメルマトリックスデリバティブを置き、マイクロサージカルの縫合で閉じます。適応の前提は、舌側の骨壁が保たれていること——術前にボーンサウンディングで確認します。

結果——創閉鎖100%が、治癒期間を通じて維持された

孤立した深い骨縁下欠損をもつ12名。1年後の付着獲得は6.83±2.51mm(P<0.001)、ポケットの減少は7±2.8mm(P<0.001)。

そして軟組織です。歯肉退縮の増加は0.16±0.38mm——統計的に有意ではありませんでした(P=0.166)。早期治癒は全例で順調で、創閉鎖は治癒期間を通じて100%維持されました。

なぜ、これで治るのか

再生療法で失敗が起きるのは、多くが早期の創離開です。膜や補填材が露出すれば、そこで再生は止まります。著者らの主張は明快です——乳頭に切開が無ければ、そこは開きようがない。

そして開かなければ、材料は露出せず、深い骨欠損の中で血餅が安定する。術式そのものが、治癒の条件を守る設計になっています。

明日の臨床へ

EPPは適応を選ぶ術式です。舌側の骨壁が残っていることが前提で、頬側からのアクセスだけで欠損に届く症例に限られます。逆に言えば、術前に欠損の三次元的な形を読めていないと選べません。

術式を選ぶ前に、欠損の形を読む。この順序は、どの低侵襲術式にも共通します。

ここだけ、冷静に補助線 12名の症例集積で、対照群はありません。術者の技量とマイクロサージカルの環境が前提になっています。付着獲得6.83mmという数字は、ベースラインのポケットが深かったこと(減少7mm)と対で読む必要があります。それでも「創閉鎖100%が維持された」という結果は、この術式が何を狙っていたかをそのまま示しています。

今日のひとこと

欠損側の乳頭を一切切らず、隣の歯間の頬側から入って下を潜る。創閉鎖は治癒期間を通じて100%維持され、1年の付着獲得は6.83mm、退縮の増加は0.16mmだった。

Aslan S, Buduneli N, Cortellini P. Entire papilla preservation technique in the regenerative treatment of deep intrabony defects: 1-Year results. J Clin Periodontol. 2017;44(9):926-932. PMID: 28727170
臨床判断は必ず原著をご確認ください。