ペリオ|ペリオ論文100選
初期治療を終えて再評価。5mm、6mm、ときに7mmのポケットが残っている。ここで外科に進むのか、非外科でもう少し粘るのか——歯周治療でいちばん頻度の高い分岐点です。1981年、ルンド大学のBaderstenらは4〜7mmのポケットを持つ患者15人を、非外科治療だけで13か月追いました。初診時に6mm以上あった106部位は、13か月後には13部位。そして手用スケーラーと超音波スケーラーのあいだに、結果の差はありませんでした。
①4〜7mmのポケットは、外科なしでどこまで治るか
初期治療を終えて再評価。5mm、6mm、ときに7mmのポケットが残っている。ここで外科に進むのか、それとも非外科でもう少し粘るのか——歯周治療でいちばん頻度の高い分岐点です。
1981年、ルンド大学(マルメ)とロマリンダ大学のBadersten、Nilvéus、Egelbergが、この問いに正面から答えました。4〜7mmのポケットを持つ患者15人を、非外科治療だけで13か月追うという設計です。
②片側は手用、片側は超音波
対象は中等度に進行した歯周疾患をもつ患者15人(22〜60歳)。上顎または下顎の切歯・犬歯・小臼歯が研究対象で、1人あたり最低4歯・最大10歯。
組み入れの条件は明確です。歯根長の1/3以上の骨吸収があり、1歯につき2面以上に、歯石とプロービング時の出血を伴う5mm以上のポケットが存在すること。
設計はスプリットマウス。左右の歯を無作為に手用器具群と超音波群に割り付けました。術者は2名(1人が8人、もう1人が7人を担当)。器具は術者の好みで選び、超音波はDentsply Cavitron Model 600(TFI-10チップ)を使用しています。
流れはこうです。まず歯科衛生士による口腔衛生指導を1か月かけて4〜5回。多毛束軟毛ブラシ、ワンタフト、歯間ブラシ、三角楊枝、染め出しウェハー、照明付き口腔鏡が配られました。その1か月後に局所麻酔下で1回の来院ですべてのデブライドメントを実施。術者が「根面が十分に清掃・平滑化された」と感じるまで行っています。2か月後と6か月後に、必要に応じた再デブライドメントを検討しました。
評価は毎月。しかも測定者(A.B.)は、その歯がどちらの器具で処置されたかを知らされていません。プラーク、プロービング時の出血、プロービング深さ、プロービングアタッチメントレベル、歯肉退縮を、1歯につき4面(中央頬側・遠心頬側・近心舌側・中央舌側)で記録しています。
プロービングは1mm刻みの校正済みプローブを使い、金属製のオンレーを基準点として設置して測定位置を固定。初診時の測定を1週間空けて2回行い、再現性を確認しました。結果、プロービング深さは67%が0mm差・32%が±1mm差、アタッチメントレベルは69%が0mm差・30%が±1mm差。±2mmずれたのは1%だけでした。
治療されたのは全528部位(手用264・超音波264)。平均初期プロービング深さは手用4.3mm・超音波4.2mmです。
③6mm以上が、106部位から13部位へ
結果を順に見ていきます。
プラーク:初診時は65〜73%の歯面にプラークがありました。口腔衛生指導の1か月後には12%未満まで下がり、その水準が研究期間を通じて保たれています。
プロービング時の出血:初診時77〜90%。口腔衛生指導だけを行った1か月後の時点では変化なしでした。ところが最初のデブライドメントから1か月後には36〜41%へ落ち、その後さらに下がって8〜16%の水準に達しています。
プロービング深さ:初診時は4面とも4.1〜4.5mm。口腔衛生指導の1か月で0.3〜0.7mm減り、デブライドメント後の1か月でさらに0.5〜0.7mm。減少は続き、4〜5か月の時点で合計1.3〜1.7mmの減少に達しました。
そして冒頭の数字です。初診時に6mm以上のプロービング深さを示した部位は106ありました。それが7か月後には11部位、13か月後には13部位。5mm以上で見ても初診時184部位 → 13か月後31部位です。
手用と超音波のあいだにも、2人の術者のあいだにも、結果の差は見られませんでした。ただし器具にかかった時間は、両術者とも超音波のほうがやや短かったと報告されています。
④得をする部位と、損をする部位
アタッチメントレベルの全体平均を見ると、変化はごくわずかです。しかし初診時の深さで分けると、様子が変わります。
- 初診時2.0〜3.5mmの部位:平均でわずかにアタッチメントを喪失
- 初診時7.0〜7.5mmの部位:平均で1.1〜1.5mmのアタッチメント獲得
13か月後の残存深さで切っても同じ構図です。残存1〜2mmの部位はわずかに喪失し、残存3〜6mmの部位はわずかに改善。ただし残存7mmの部位(4部位)は平均0.8mmの喪失でした。1.5mm以上の獲得が起きたのは、残存深さ4〜6mmの部位の10〜14%です。
歯肉退縮は13か月時点で全部位平均1.4〜1.6mm。その大半は最初の2〜3か月に起きており、隣接面で最も大きくなっています。この論文は退縮をアタッチメントレベルとポケット深さの差から算出しているので、深さの減少はこの2つの合計として読めます。
プロービング時の出血についても、残存深さが深い部位ほど出血が残りやすいという関係が見られました。
⑤明日の臨床へ
- 4〜7mmのポケットは、非外科でかなりのところまで行ける。106部位あった6mm以上が13部位になりました。再評価の前に外科を決め打ちしない根拠になります
- 判定は4〜5か月まで待つ。改善はそこでほぼ止まります。逆に言えば、それ以降に大きく変わることは期待しにくい
- この研究では手用と超音波で差が出なかった。ただしp値は報告されておらず、同等性を積極的に示した研究ではありません。ただし時間は超音波のほうがやや短くて済んでいます
- 浅いポケットは触りすぎない。初診時2.0〜3.5mm・残存1〜2mmの部位は、平均するとアタッチメントを失っていました
- 退縮が起きることを先に伝える。13か月で平均1.4〜1.6mm、その多くは最初の2〜3か月です。前歯部なら審美的な説明が要ります
- 残った深い部位は出血も残る。再評価では深さだけでなく出血の分布も見る
⑥ここだけ、冷静に補助線
今日のひとこと
4〜7mmのポケットに対し、口腔衛生指導と、必要に応じた再デブライドメントを含む非外科治療だけで、初診時に6mm以上あった106部位が13か月後には13部位になった(5mm以上でも184部位→31部位)。プロービング深さは4〜5か月の時点で合計1.3〜1.7mm減少し、そこでほぼ頭打ち。プラークは65〜73%→12%未満、プロービング時の出血は77〜90%→8〜16%へ改善した。手用器具と超音波器具のあいだ、2人の術者のあいだで、結果に差は認められなかった(器具にかかる時間は超音波のほうがやや短い)。アタッチメントの動きは部位によって逆で、初診時7.0〜7.5mmの部位は平均1.1〜1.5mmの獲得、初診時2.0〜3.5mmの部位は平均でわずかに喪失した。歯肉退縮は13か月時点で全部位平均1.4〜1.6mm、その大半は最初の2〜3か月に起きている。ただし著者らは「この研究のデザインでは、口腔衛生の改善による効果と、器具によるデブライドメントの効果を分けて解釈することはできない」と明記している。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。


